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クルージングヨット教室物語53

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「あそこに見えている島は、なんて島なの?」

翌朝早くに、三宅島の阿古漁港を出港してすぐに、麻美子が隆に質問した。

「あれは、御蔵島」

「御蔵島?あれも人とか住んでいるの?」

麻美子は、さらに隆へ質問した。阿古漁港を出てすぐのところ、新島や式根島とは逆方向の方角、沖合いに御蔵島は大きく見えていた。

「どうせなら、上陸してみたいわね」

「近くに見えているのかもしれないけど、意外にあそこまで距離があるよ」

隆は、麻美子に言った。麻美子は、御蔵島に行ってみたがっていた。

「俺もまだ上陸したことない島だ、御蔵島は一度行ってみたいんだ」

「じゃ、また今度、たっぷり時間を作って、ここまで来ないとね」

麻美子は、隆に言った。

「時間を作って、御蔵島に行く時は、俺に付き合って一緒に行ってくれるか?」

「うん!」

麻美子よりも先に、陽子と瑠璃子が大きく頷いていた。

「陽子ちゃん、隆さんは麻美ちゃんと一緒に来たくて聞いたんじゃないの」

「あ、そうか!ごめんごめん」

陽子は、雪に言われて、横の席に座っている隆に謝っていた。

「あ、いや別に、麻美子だけじゃなく陽子とも一緒に行きたかったよ」

隆は、陽子に返事した。

「どうせなら、昨日は新島から直線距離で三宅島まで走ってきたけど、帰りは、このまま沖合いから神津島をぐるっと周って、反対側から式根島の方へ戻ろうか」

隆は、舵を握っている香代に指示を出した。

「はあい!で、私も御蔵島に来るときは、一緒に来たいんだけど」

「ああ、もちろん香代も一緒に、ラッコに乗って御蔵島に来よう」

隆は、香代にも頷いていた。

今日も、真夏にしては珍しく良い風が吹いているので、ラッコはメインセイル、ミズンセイルにジブセイルも出して、エンジンは停止し、セーリングで神津島をぐるりと周っていた。

斜め右前方を走っているアクエリアスも、メインとジブセイルを上げてセーリングしていた。

「アクエリアスって釣りをしているよ」

視力が2.0の香代が、アクエリアスの船尾から垂れ流しているトローリング用の赤い飛行機を見つけて、隆に報告していた。

「昨日、うちが魚を釣ったから、今日は向こうが釣り上げようとはりきっているんじゃない」

麻美子が、香代に言った。

「そういえば、昨日のシイラってまだ残っているの?」

「もう残ってない、みんな食べてしまったじゃない」

麻美子が、隆に答えた。

「そうなんだ。残ってたら、今日のお昼ごはんに食べたかったのに」

隆は、残念そうに呟いた。

「神津島って緑豊かな島なのね」

「三宅島も緑多くなかった・・」

「それに比べると、新島って民家とか岩場が多くて緑が少なかったよね」

麻美子と雪は、話していた。

ラッコとアクエリアスは、順調にセーリングを続けて、昼過ぎには神津島を半周して、神津島の三宅島側とは反対側にたどり着いていた。

「え、家の数が多くない」

さっきまで見ていた側の神津島は緑が多かったのに、逆側に来たら、緑が切り開かれていて、山の上の方まで家々が建ち並び、街が出来上がっていた。

「こちら側が、熱海からやって来ている観光船も泊まる神津島の中心だもの」

隆は、麻美子と雪に伝えた。

「今日は、神津島に入りませんか!?」

ラッコの真横に寄って来て、並んで並走していたアクエリアスから中村さんが、ラッコに向かって大声で呼びかけてきた。隆は、アクエリアスに手を上げて、了解と合図した。

「じゃ、入港しようか」

隆は、セイルを下ろして、港の入り口近くに来るギリギリまで、香代にヘルムを取らせて、港内に入るギリギリでヘルムを交代した。

「ここの港も、ボートやヨットで随分混み合っているな」

岸壁に停泊しているボートとヨットの隙間に、ようやく2艇分の空きスペースを見つけて、アクエリアスと並んで、スターンにアンカーを打って停泊させた。

神津島の港は狭いので、新島のように2艇で縦に並んで停泊できるスペースは無かった。

運よく、ラッコとアクエリアスは停泊できる空きスペースを見つけられたが、その後にやって来たボートとヨットは、もう停泊できるスペースが無く、神津島に停泊するのを諦めて、港外へと出て行った。

「あのヨットって、泊めれなくて出て行ってしまったけど、今晩はどこに泊めるのだろう」

麻美子が心配そうに呟いた。

「神津島って、こちら側でなくて、反対側に少し周ったところにも、もう一箇所港があるんだ」

「そっちに泊めに行ったってこと」

「うん。恐らく、そちらも混んでいるかもしれないけど、こっちほどには混んでいないと思うよ」

隆は、心配性の麻美子に答えた。

「それか新島に泊めに行ったかもしれない。神津の中心はこちら側だから、反対側の港はお店とか買い物できる場所があまり無いんだよね」

「この島の街も、なんか新島の街のような原宿っぽい通りに見える」

「よくわかるじゃん」

山の上の方まで伸びている街の通りを眺めながら、麻美子が言った。

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