クルージングヨット教室物語39
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「終わった!」
隆は、お昼前に仕事が一段落して、嬉しそうに雄叫びを上げていた。
「明日からは、1週間お盆休みでずっとお休みだね」
隆は、嬉しそうに麻美子に言った。
「本当に、隆って珍しい社長だよね。社員の中で一番お休みを喜んでいるじゃないの」
麻美子は、笑いを堪えながら、隆に話していた。
「お昼、どうする?」
「社食に行ってから決める」
隆と麻美子は、エレベーターで2階の社員食堂に降りていった。
「午後からどうする?」
「どうするって、午後からだって仕事はあるでしょう」
「でも、特に今日じゅうにやらなければならないって急ぎの仕事は無いし、休み明けでも良いかな」
「何を言っているのよ、そんなこと言っていると、会社が潰れちゃうわよ」
隆の会社は、創業してようやく100名ほどの規模の中小企業にまで成長したIT系の会社だった。
「そういえばさ、今夜にはマリーナを出航して、伊豆七島を目指すのだから、今日じゅうに船を海上に下ろしておかないと出航できなくなるよね」
「心配しなくても大丈夫。しっかりマリーナには連絡して、海上に下ろしてもらってあるから」
「そうなんだ。手際が良いね」
隆が頷いた。麻美子は、昼間のうちに、船を海上に下ろさなきゃを理由にして、早めに仕事を終わりにして、横浜のマリーナに行ってしまおうという隆の考えぐらいお見通しだった。
お昼を食べ終えると、隆と麻美子は社長室に戻ってきていた。
「ここは、こんな感じで良いかな」
隆は、秘書の麻美子に作成した書類の確認をしてもらっていた。
「今、思いついたんだけどさ。うちの会社に、陽子や瑠璃子とかラッコの皆が転職して、ここで働いたら、平日も、いつもヨットにいるみたいで楽しく仕事できるんじゃないかな」
「また、変なことを思いついて」
麻美子は、隆の思いつきに呆れていた。
「良いと思わないか?」
「陽子ちゃんも、瑠璃ちゃんも皆、いま働いている会社があるの」
「それはそうだけどな」
「もちろん、私だって、陽子ちゃんや瑠璃ちゃんたちと一緒に同じ会社でお仕事できたら嬉しいけど」
麻美子は、仕事の手を進めながら、たかしに答えた。
「そうだ!ITを使って、仲の良い人たち同士が一緒に楽しくできる仕事を作り出せないかな」
「そうね。そういう思いつきならば、会社のためにもなって良いアイデアよね」
麻美子は、隆に返事した。
「そのアイデアをプレゼン資料にまとめて、開発部のプログラマーと相談して、もっと仕事として実現できるように具体案へとまとめ上げようか」
麻美子が、隆に指示した。
結局、午後のほとんどは、その資料をまとめ上げることに費やしてしまった。
「資料を開発部のプログラマーに渡してきた」
麻美子は、社長室に戻ってきた。
「どうだった?俺のアイデアは、具現化できそうか」
「なんか、色々突っ込まれて、そのまま具現化するのは難しそうだけど、休み明けから具現化できるように内容を修正して、プロジェクト化してくれるってさ」
麻美子は、隆に答えた。
「じゃ、休み前の仕事はここまでにして、上がろうか」
「了解!お疲れ様」
隆は、麻美子に言われて、既に帰る準備をしてあった自分のバッグを持って立ち上がった。
「このまま、横浜のマリーナまで直行する?」
「お母さんが、夕食の準備して待っているって言うから、まずは中目黒に寄って、うちで夕食を食べてから、横浜にいかない?」
「良いよ、別に」
2人は、一旦、中目黒の麻美子の実家に立ち寄って、夕食を食べてから横浜のマリーナに行って、出航準備をして、その日の夜のうちに伊豆七島、新島に出航する予定だった。
「そうだ、また中村さんがアクエリアスも一緒に行くってさ」
「今夜、一緒に出航するってこと?」
「うん。前回の海の日の連休みたいに」
「そうなんだ、別にいいけど」
隆は、麻美子に返事した。