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クルージングヨット教室物語38

Photo by Buddy Photo on Unsplash

「来週は、お盆で1週間のクルージングに出かけるのだから、今日はその準備をしよう」

お盆休みの前週の日曜日、隆は、横浜のマリーナでラッコの皆に伝えた。

「前回の海の日に行ったクルージングで、何か足りなかった物とかあったら揃えましょう」

麻美子が、皆と話している。

「すぐ近所にニトリとかもあるしな」

横浜のマリーナのすぐ近くには、大手スーパーマーケットの相鉄ローゼンも出店している大きなショッピングモールが在って、モール内には、スーパー以外にニトリやヤマダ電機まで揃っていた。

「ニトリやヤマダ電機があれば、必要な物はほとんど揃うよね」

「本当はさ、ヤマダ電機のある所にダイクマが在って、その時は本当に便利だったんだけどな」

隆は、瑠璃子に言った。

「ダイクマって何?」

「ダイクマを知らないのか?ジェネレーションギャップだな」

隆は、ダイクマを知らないという香代に驚いていた。

「カインズとかケーヨーD2のようなディスカウントストアのことよね」

「ダイクマって、私も知っているよ。昔、うちの近くの港南台にも在ったわ」

年長組の麻美子や雪が答えた。

「ダイクマって、ディスカウントストアだから、あれが横浜のマリーナ近くに在った頃は、ヨットで作業するのに必要な工具とか雑貨品がなんでも近所で買えて便利だったよ」

隆は、懐かしそうに呟いた。

「前回のクルージングであったら良かったものって何だろう?」

「枕とか・・」

キャビンの中に、夜寝るときにかけるタオルケットは、皆の人数分以上に揃っていたのだが、枕の数が少なくて、ライジャケとかバッグを枕にして寝たりしていた。

「クローゼットの中を、各自の荷物を仕分けて入れられるような間仕切りがあったら便利かな」

皆がそれぞれ持ってきた着替えとかを入れたバッグを、クローゼットの中に重ねて入れていたので、上の方の人は良いが、下の方の人は、自分のバッグを取り出す度に苦労していた。

「あと、テレビが欲しいんでしょう?」

「テレビは、クルージングで必要っていうか、せっかくマストの上に防水のテレビの受信機を取り付けてあるのに、何の役にも立っていないから」

「テレビは、あまり見ないけどね」

瑠璃子が言った。

「テレビのアンテナなんて、マストに付いているの?」

陽子が、隆に質問した。

「マストの脇のところ、横に張り出しているスプレッダーに丸い球体のアンテナが付いているだろう」

「あれって、テレビのアンテナだったんだ」

陽子は、あの球体がテレビアンンテナだと初めて気づいた。

「この船を輸入した時の業者が、納品が遅れてしまったお詫びというか、国内に輸入した後に、サービスでおまけに付けてくれたんだよ」

「球体で目立つし、航海計器用のアンテナだと思ってた」

テレビアンテナだと知らなかった瑠璃子も、隆に言った。

「航海計器の、GPS用のアンテナはコクピット後部に細いアンテナが付いているだろう」

「GPSの方があんな細くて、テレビの方が球体でデカいんだ」

航海計器のアンテナの大きさが意外だった。

「枕とか仕切りはニトリで買えるし、テレビはヤマダ電機で買えるわね」

麻美子が皆の話をまとめた。

「香代ちゃん、私たちはローゼンで食料品の買い出しにいかない?」

皆が近くのショッピングモールまでぶらぶら歩いて行くと、麻美子が行った。

「それじゃ、それぞれ別れようか」

麻美子と香代は、食料品の担当として相鉄ローゼンに向かった。隆と瑠璃子は、ヤマダ電機でテレビや航海計器などで必要なケーブル類の調達、陽子と雪がニトリへ向かった。

サイズ的に、ぴったりラッコのダイニングサロンに置けるテレビと必要なケーブルや工具類などを物色し終わって、お財布担当の麻美子が来るのを待っていた。

「最近、お財布はいつも麻美子が持っているからな」

隆は、瑠璃子に答えた。

「戻って来るの遅い」

ようやく戻ってきた麻美子に隆は文句を言っていた。

「だって仕方ないじゃない、スーパーでお買い物した後、ニトリで陽子ちゃんたちとちょうど良いのを探して、買ってからきたんだから」

「間仕切りが、なんかカラフルじゃない」

「赤がだれだれみたいに色で分けておけば、一発でわかりやすいじゃない」

「それは、頭いい分け方だな」

「陽子ちゃんのアイデア」

「ピンク色の間仕切りがないじゃん」

「ピンク色?」

麻美子は、隆に聞き返した。

「ピンクは可愛いから、香代がピンクなのかと思ってたのに」

「だって、香代ちゃんの荷物は、私たちと一緒のアフトキャビンに置くから関係ないじゃない」

麻美子は、隆に答えた。

間仕切りで、それぞれの荷物を分けるのは、フォアキャビンのクローゼットの中だった。香代は、隆と麻美子の3人で並んで、アフトキャビンのバースで寝ているから、荷物も、隆や麻美子の荷物と一緒にアフトキャビンに置いているから関係ないのだった。

「買ってきた食料品って、夏のクルージング出航まで、まだ1週間もあるのになま物まで入っていないか」

「あ、クルージングの食料と今日のお昼ごはんの食料があるんだけど」

食料品などギャレー周りのことは全て、麻美子に任せておけば間違いなかった。

「さあ、船に戻って作業しようか」

皆は、横浜のマリーナに戻って、船の整備や準備に取り掛かるのだった。

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