クルージングヨット教室物語37
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「城ヶ島」
香代は、ヘルムを取りながら、航海計器のモニターに映し出された島の名前を読んでいた。
「城ヶ島は、三浦半島の先っぽにある島の名前」
麻美子は、香代に説明していた。
「伊豆の島も良いけど、今度、三崎にクルージングに行って、城ヶ島に行ってみるか」
「うん!」
香代は、隆に頷いた。
「日の出じゃん」
ラッコは、大島から東京湾内に戻ってきた。
「日の出?」
もう朝はとっくに過ぎていて、そろそろお昼になろうかという時間だ。
「あそこ」
隆は、東京湾内の中央付近、本船航路の方を指差した。
「本当だ!日の出だ」
そこには、フェリー船が走っていて、その船体の左右に大きなお日様の絵が書かれていた。お日様は、ちょうど下半分が海の中で隠れていて、水面にはお日様の上半分しか出ていなかった。
「横浜までお日様と一緒に行きたいのに、向こうの方が速くて追いつけない」
香代は、日の出のついたフェリーに追いてかれるのが悔しそうだった、
「それは無理よ」
麻美子は、フェリー船と無邪気に競争している香代のことをみて微笑んでいた。
「ちょっと、ステアリング握らせて」
隆は、香代からステアリングを交代した。
「まだ少し時間あるし、ちょっと寄り道していこう」
そう言うと、隆は、ラッコが浦賀に差しかかったところで、左折して浦賀のマリーナに途中寄港した。
「ここは、浦賀に在るベラシスマリーナという民間のマリーナだ」
隆は、ベラシスマリーナのポンツーンに着岸させながら、香代たち皆に言った。
「横須賀はカレーの街だろう。で、このマリーナのカレーが美味しいんだ」
ポンツーンにラッコを停泊させると、皆でマリーナのレストランに向かった。
「カレーください」
レストランのシェフに、カレーをオーダーすると、ラッコの今日のお昼ごはんは、ベラシスマリーナのレストラン特製カレーライスになった。
「確かに美味しい」
マリーナレストランには、バルコニーが付いており、表のバルコニーで食事した。
「味は美味しいけど、素材もかなりお高めの良い素材を使っているよね」
麻美子は、カレーを一口食べて感想を述べた。
「サラダとかカレーの野菜は、三浦半島の地のものを使っているはずだよ」
「確かに、野菜は美味しい」
中目黒の良い料理屋さんに鍛えられている麻美子の舌も満足する味のようだった。
「そろそろ1時だ、横浜のマリーナに戻ろう」
隆が言って、皆はレストランの席を立った。
ラッコが、ベラシスを出て、観音崎を周って、横浜港内に入って、横浜のマリーナに到着したのは、アクエリアスよりもだいぶ遅くの到着となった。
「ずいぶん遅かったじゃん」
横浜のマリーナで、再会した中村さんに、隆は言われてしまったぐらいだ。
「ちょっとベラシスに寄って、お昼ごはんしていました」
「それは、良いお昼ごはんだったね」
中村さんは、アクエリアスも行けば良かったと残念そうだった。