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工業大学で学び、美術大学で教えます

私、高卒でしたが、四月から二つの新しいアカデミックなコトに取り組みます。
千葉工業大学の工学研究部デザイン科学専攻にて、 長尾 徹先生の元で修士とその先の博士号取得を目指します。
多摩美術大学の情報デザイン学科にて非常勤講師として、 永原 康史先生や 清水 淳子さんらと三年生の演習を担当させていただきます。 久保田 晃弘先生にお繋ぎいただきました。ありがとうございます。

千葉工大では、修士の研究として、Data Driven Drawingと題して単発ですがアメリカ大使館やフィンランドのアールト大学、京都や渋谷でデザイナーや一般の方向け、千葉県流山市での小学生向けなど、各地で行ってきた手描きデータ可視化ワークショップを発展させてツールキット化し、これまでデータサイエンス側に閉じがちだったデータ可視化の原理原則をデザイナー側でももっと手軽に活用できるツールキットを提供することを目指します。同専攻の前年の修士論文の発表会に立ち合わせていただいたのですが、思い込んでいたような「製品デザイン」的な縛りはなく、ジョセフ・コーネルの木箱や無印良品のアクリルケースのように、なんでも収まってしまいそうな印象でした。良い意味で何でもあり。これまで漫然と行ってきた活動やワークショップなどがこのフォーマットに全部収まってしまいそうだ、というのは思わぬ発見でした。

多摩美大では、私は美術の教育を受けたバックグラウンドはなく実務経験のみですが、データ視覚化の演習を通じた作品作りのための考え方やナレッジを共有し、触媒としてもらいながら、多様な表現手段から作品が生まれてくることを期待しています。日本ではじめて情報デザインの授業が行われた場所であり、これまで書籍などで仰ぎ見ていた環境に少し近づけたようで嬉しいです。自分はいわゆるニューメディアアート表現についてはリソース確保ができなそうなので数年前に諦めたのですが、講師側としても良い意味で刺激や学びのインタラクションが得られたらと思います。小学生〜大学生への単発のワークショップは経験ありますが、通年(受け持ちは半年)でのクラス運営(今年は三十名前後の見込み)は未知の経験ですので、自分が二十歳だったころのことも思い出しながら取り組もうと思います。

修論で扱うテーマや、いま自主開催しているデータ可視化の講習は、各種の英語の書籍・論文や海外のカンファレンスなどで作ってきた人脈を元に、知識や情報・方法論を咀嚼・整理してより多くの方に使っていただけるようにということで行っていますが、雑にまとめると「科学知見に学び、表現活動に活かす」という物事の流れは「工業大学で学び、美術大学で教える」という流れに近いと感じています(もちろん工業大学で学んだもののみを美術大学で教える訳ではないですがあえて構造をシンプルに見立ててます)。学術的には異なるものでしょうがコンピュテーショナル・デザイン的なものが好きなんですよね。個としての成長を諦めず、加えて周囲の方達と連携しながら、この流れを少しでも大きくできることに貢献できたらと思います。工業大学も美術大学もぼくの関わる領域は中長期的には「デザインで未来の当たり前を作る」点では共通だとして、ベクトルがかなり違う方向に向いているのがとても面白いです。

シビックテック活動や、お金も稼がないとならないので受託活動も引き続き行っていきますし、アカデミックなフィールドとうまく結びつけていけたらとも思います。書籍を出すことも一応まだ諦めていません。