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ダーウィンの夢のつづき

Photo by TOMOKO UJI on Unsplash

統計学からも〝神〟は存在しないと言える

リチャード・ドーキンス著『さらば、神よ 科学こそが道を作る』(早川書房)が大変面白かったので、早速メモを残したいと思う。

さらば、神よ
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リチャード・ドーキンスについて念のため説明を付け加えると、『利己的な遺伝子』でかつて一世を風靡した人物である。人間は遺伝子の乗り物に過ぎないとする刺激的な論調に、心躍らせた人も多いと思う。

利己的な遺伝子 40周年記念版
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さて、『さらば、神よ 科学こそが道を作る』のメモである。詳しくは本書を実際に読んで欲しいとしか言いようがないのだが、下記2つを例に挙げる。

・宗教の聖典には数多くの偽証が含まれている → 後世の信者が〝盛った〟部分がある。あるは伝言ゲームの要領で、事実でないにもかかわらず歪曲され広まった部分が多々ある。

・宗教は道徳的にも疑わしい部分が数々ある → 宗教を発端とした戦争がいまだ頻発していることを考えても頷ける。また有名な〝殺すな〟とする金言はこと同じ信者に限ってのものであり、仲間内以外の者であれば平気で残虐な行為に及ぶ点も指摘している。

いささか抽象的に書き出すとこうなるが、内容はもちろんこの2つに留まらず、具体的な科学的根拠を踏まえた上できわめて多岐に渡っている。

例えば統計論から導き出せる論理も紹介されている。世の中には数多の聖典が存在し、聖典A、聖典B、聖典C、聖典D……と地図上に散りばめられている。

多くの聖典(と神)が存在する中で、偶然にあなたが生まれた地、あなたが親から与えられた宗教が唯一無二で、ほかはすべて「偽」であるとする根拠はなにか、というわけである。他の多くの宗教が事実ではないならば、あなたが信じる宗教も同じように事実でないとなぜそう思わないのか、ドーキンスは問う。

「予知夢」の統計学

生存者バイアスの観点からも説明できそうだが、私が上の記述から思い出すのは大学の講義で聞いた「予知夢」の統計学である。

夫が船で遭難した際に、無事救助され帰還する夢を妻が見た。そして夫はそのとおり帰還した。予知夢だ、というわけである。

だが世界中で遭難の事例は起こっており、おそらく多くの妻は夫が帰還する夢を同じように見ただろう。そのまま行方不明となった夫は枚挙に暇がないはずだ。

しかし「予知夢」支持者は失敗事例には見向きもしない。夢を見た多くの妻のうち、夫が無事帰還した妻しか取沙汰しない、というわけだ。

残されたネコ

西ヨーロッパでは宗教を信じる人の割合は減っているが、アメリカではおよそ半数がキリスト教を信奉しているという。聖書の記述と反するがために、進化論を学校で教えるかどうかといった議論がなされるというから度肝を抜かれる。

そればかりでなく、「携挙(けいきょ)」というにわかには信じがたい現象が、近い将来確実に起こると多くの人が信じているという。携挙とはまた聞き慣れない言葉だが、一部の牧師と作家が聖書の特定のくだりを根拠に編み出した〝現象〟である。善良さで選ばれた少数の幸運な人々が、ある日突然空へと引き上げられ天国へ消えるという。そしてそれはキリスト再臨の前触れというわけである。

私のつたない知識では、上空は成層圏やオゾン層といった大気圏からなるはずだが、アメリカでは不意に引き上げられた日に備え、取り残されたネコの面倒を見るサービスのwebサイトまで開設されているというから目眩を覚える。頑なな人々の心に科学は響かないのかもしれない。

どうしたいのかは自分で決める

とどのつまり、どうしたいのかは自分で決めなくてはならない。

なにか知識に空白部分が生じたとき、わからないことが芽生えた際に、そこを〝神〟で埋めるのか、あるいは科学に基づいて調べ学ぶのか、ということである。

人類の知識として多くのものが蓄えられている。われわれは魚だった時代から300万世紀を経て人間へとなったこと、この宇宙と似た宇宙が何十億もあること、また人の脳が騙されやすい代物であることも知っているはずだ。

どうしたいのかを根拠に基づいて自分で決める。それこそが〝科学する〟態度の出発地点であるような気がしてならない。

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