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福祉教育と地域福祉~徳江薫明

心身の衰えを予防するには、40歳代以降、食生活に気をつけ、体力や個性に応じて全身運動のスポーツを続ける、真に打ち込める趣味やライフワークをもつことができます。この場合、これらのことを媒体にした仲間づくりや、さらに地域での社会的努力が、介護問題の解決とともに大事です。

しかし、地域福祉がどんなに充実しても、それのみで幸せを得ることはできません。日本の母子福祉に尽力した山高しげりさんは「わが幸をわが手で」自らつかむための条件と機会を保障することが福祉であると言いました。究極的には自分の内側で生きがいをもつことが必要です。

同時に、高齢者を大事にする福祉教育を考えていかなければなりません。スウェーデンやイギリスでは工作の時間に一人暮らしの老人宅の壊れたドアを直したり、社会科のリポートに3人の高齢者から1930年代の大恐慌について聞くということなどをします。このように世代の違う人々との触れ合いをこれからの家庭、学校、社会教育で重視していく必要があります。

超高齢化社会は暗いみじめな社会ではありません。不老長寿の夢を描いた人間は、文明を発達させ、豊かな文化を享受しつつ寿命を延ばしてきました。それを暗黒社会、共倒れ社会、世代間バラバラのさみしい社会にしないためにどうすればいいか、その可能性がいま問われています。生命をいとおしみ、モノの生産性だけで人の価値を問うのではなく、存在そのものに価値をおく社会にしていくことがこれからの課題です。

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