株式会社シグマアイ
シグマアイは先進的な最適化技術である量子アニーリングをコアにした東北大学発スタートアップです。 量子コンピューティング技術から価値のあるサービスを生み出し、多くのお客様にお届けします。 この営みを通して持続的に人々に価値を届けることで、量子コンピューティング技術が当たり前に利用され、 役に立っている社会の実現を目指しています。
https://www.sigmailab.com/
先端技術の社会実装を手掛けるシグマアイ。2023年10月31日に、野生鳥獣捕獲管理アプリ「Econnect」の現場実証について発表しました。その開発をリードするのはふたりの大学院生エンジニアです。土井さんと鍬田さんのふたりに、開発のプロセスやクライアントである松山市とのやりとりなど、詳しく聞きました。
土井 幹也(どい・みきや ):シグマアイ「Econnect」開発担当 東北大学大学院 情報科学研究科応用情報科学専攻 博士前期課程2年 在籍中
鍬田 智己(くわた・ともき ):シグマアイ「Econnect」開発担当 東北大学大学院 情報科学研究科応用情報科学専攻 博士前期課程2年 在籍中
―おふたりは学年も入社タイミングも同じで、「同期」と言ってもよいかと思います。まずは、シグマアイにアルバイトとして入社したきっかけを教えてください。
○土井さん
学部4年生の時、東北大学教授 兼 シグマアイ代表の大関さんに卒論を指導してもらっていました。卒論のタイトルを大関さんに確認しに行ったところ、「シグマアイのアルバイトに興味ない?」と誘われたのです。修士課程に進学したタイミングで、アルバイトとして働きはじめました。
○鍬田さん
私も土井くんと同じく、大関研究室に所属しています。展示会『量子コンピューティングEXPO』のアシスタントを、スポットでやらせてもらったことがキッカケです。研究室の先輩が楽しそうに働いていて、時給も良かったので(笑 )、2022年4月から本格的に働くようになりました。
―入社後はどのような仕事を担当しましたか?
○土井さん
鍬田君と一緒に、医療機関向けコールセンター支援システム「whis+」と野生鳥獣捕獲管理アプリ「Econnect」の開発を担当してきました。現在は「Econnect」がメインで、先日プレスリリースが正式に出されました。「Econnect」は、鳥獣を捕獲したユーザーがその記録を登録する「iPadアプリ」と、履歴を管理する自治体や教育機関が操作する「Webアプリ」の2つが組み合わされたサービスです。私が「iPadアプリ」を担当して、鍬田君が「Webアプリ」を開発しました。2022年4月に私たちはプロジェクトにジョインしました。
○鍬田さん
「Webアプリ」側は、同じ学生エンジニアのジャメル君とフィラス君にも手伝ってもらっています。前任の井口さんが開発したシステムをベースに、松山市からのご要望を元に改修を重ねてリリースできたのです。デザインとコーディングは社内のスタッフで内製しています。
―「Econnect」が正式にプレスリリースされましたが、開発のプロセスの中で、難しかったこと、こだわったことはありますか?
○土井さん
「iPadアプリ」においては、導入する地域によって必要な情報が異なり、それぞれに対応するのが難しいポイントです。たとえば、捕獲した動物の写真点数が、地域によって異なります。松山市は2枚でOKですが、6枚の写真が必要な地域もある。動物の尻尾の写真も、求められる自治体があります。それぞれにカスタマイズしなくてはならない難しさがありますが、地域によって違うことは勉強にもなりましたね。
○鍬田さん
「Webアプリ」では、デザインを実装する際に苦労しました。松山市の担当者さまにユースケースのヒアリングを行い、システムの仕様を固めた後に、社内デザイナーの山本あずささんにデザインをお願いしました。既存のアプリにそのまま実装するのは難しかったので、コードをほぼ全部書き直しましたね。入力する項目数が多くて苦労はしましたが、改修前に比べてかなり洗練されたデザインが実装できたので、満足しています。
○土井さん
「iPadアプリ」も、同じくUIを改修しました。鳥獣の捕獲を行う猟師の方が操作するので、とにかく分かりやすく使いやすいデザインを実装しました。また、山奥でモバイルの電波が入らないケースもあります。オフラインでの対応も想定して、システムを構築しました。
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―「Econnect」の開発に当たって、現地を訪れたと聞いています。印象に残っている出来事はありますか?
○土井さん
松山市のプロジェクトが始まる前ですが、鳥獣の捕獲現場に触れるために、愛媛県の離島の「中島」に行きました。若い猟師の方に「動物に対してかわいそうという気持ちはあります」と言われた際に、何とも言えない気持ちになったのを覚えています。自分では経験したことがない世界だったので。
○鍬田さん
今年の6月に松山市の役所を訪れました。「Econnect」の全体的な仕様を固める会議に出席して、直接やりとりをすることができたので、その後の開発はスムーズに進みました。松山市の担当者が熱意のある方で、議論を交わすうちに、動物の捕獲頻度を地図上で表すヒートマップに力を入れることに。「いいものをつくらなくては!」とモチベーションが高まりました。
―現場では同期のおふたりで、どのようなやりとりをしていたのでしょうか?
○土井さん
同期でプロジェクトを担当することで、励みにも刺激にもなりました。「iPadアプリ」の開発のフォローもしてくれましたし、鍬田君は複雑な事象をまとめる能力が高い。開発業務で迷っていることを相談したら、問題を整理してくれますし、松山市での打ち合わせでも議論内容を上手にまとめていました。
○鍬田さん
そう言われると照れるのですが(笑 )、おおざっぱなことが得意ということだと思います。逆に土井君は、細かい部分をチェックしてくれるので助かります。私は楽観主義者で甘い見通しで開発を進めてしまうこともあるのですが、良い意味でブレーキを掛けてくれて感謝していますね。
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―「Econnect」とご自身のキャリアの今後について、どのように考えていますか?
○土井さん
「Econnect」については、松山市の方に使ってもらいながら、ブラッシュアップを重ねていきたいです。他の自治体にも展開できると良いですね。私自身は、2024年4月から博士課程に進学する予定です。修士課程の研究活動において、一定の手応えを得ることができたので、より深めていきたいと考えています。シグマアイでの仕事も続ける予定です。研究だけに特化してしまうと、視野が狭くなってしまうこともあるので、今後もビジネスや社会との接点を持ち続けていきたいですね。
○鍬田さん
私も、「Econnect」の進化にできる限り関わっていきたいと思います。特に地図の見せ方については、改良の余地があると考えていますので。2024年4月からは大手IT企業に就職する予定です。シグマアイで開発に携わった経験は、就職活動においてとても役に立ちました。開発経験者限定のインターンシップに参加できましたし、ビジネスに関する経験も、インターンシップの中では大いに活きましたね。企画段階から実装まで、一連のプロダクト開発に携わったことのある学生は少なかったです。就職後は開発業務だけではなく、事業開発も経験したい。そこでもシグマアイで学んだことは活きると思っています。