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ANDARTのArt Division作品管理担当者に聞く、おすすめのアーティストやアートの楽しみ方

日本初、アート作品の共同保有プラットフォーム「ANDART」や、手に届く価格から本格アート作品を提供するオンラインストア「YOUANDART」を通して、ANDARTは数あるアーティストや作品の中から選りすぐりを日々お届けしています。

そんなANDARTで働くメンバーは、どんなアーティストに注目しているのでしょうか? ANDARTで働くメンバーに、おすすめのアーティストやアートの楽しみ方など、生の声を聞く企画です。今回は、共同保有作品の仕入れや納品など、実際の作品の取り扱いを担当している福丸さんにお話を伺いました。

――まずは好きな作家やアーティストについて、教えてください。

昔から変わらず、今でもずっと好きな作家は鴨居玲ですね。暗いテーマの絵を描くことが多い作家ですが、あれだけ負の感情を惜しみなく出しながらも、それを美に昇華させているという点に惹かれます。誰の中にもある悲しみや苦しみなど、人間の根源的な感情が絵を通じてダイレクトに迫ってくる。そんな風に人間の感情をありのままに表現できるのがある種、美術の面白さだと思います。


画像引用:https://www.pen-online.jp


――もともと美術に興味をもつようになったきっかけはなんでしょう?

僕は出身が鹿児島なのですが、地元の美術館にモネの《睡蓮》が一枚あったんですね。昔から絵が好きで高校時代は美術部だったこともあり、その絵を何度も見に行っていました。なので美術に興味を持つようになったのも、そういうことがまず原点にあると思います。

ちなみに鹿児島は明治時代の頃、薩摩藩士が活躍していたこともあって、かつては海外との交流も盛んな拠点でした。そんな歴史的背景もあって、地元の美術館にはモネやピカソなど、海外から集められた巨匠たちの名画が多く収蔵されているんです。また一方で、大学時代に通っていた大分の美術館では、高山辰雄や平山郁夫など、日本画の大家と呼ばれるような作家たちのコレクションも充実していました。そういうものに触れていく中で、地域ごとのコレクションの特徴や差であったり歴史的な背景が見えてくるようになって、美術の世界にどんどん引き込まれていきました。


画像引用:https://www.city.kagoshima.lg.jp


――そういう中で、現代アートに興味をもつようになったきっかけは?

実は僕、高校から大学まで、地元の美術館にある作品くらいしか見たことがなかったんです。それは一点一点の絵画にじっくり向き合うという意味ではよかったのですが、一方で伝統的な絵画の枠からどうしても抜け出せなくなってしまっている自分もいて。このままでいいんだろうか?と悩んでしまったんです。たしか大学二年生くらいの頃だったと思いますが、ちょうどそんなスランプの時期に会田誠の「天才でごめんなさい」という展覧会があって、東京に見に行くことになったんです。

画像引用:http://www.webdice.jp

会田誠は、日本画の美人画を描くなど伝統的な技法を踏襲しているので絵はすごく上手い方です。でもそれ以上に、テーマの選び方がものすごく斬新で、最初に見た時にものすごく衝撃を受けたんですね。テーマも表現方法も結構ギリギリのラインを攻めているので、もちろん賛否両論はあると思うのですが、完全に振り切っているからすごいインパクトもある。

それまで伝統的な美術しか勉強してこなかった自分にとっては、それがものすごく新鮮で!以来、現代美術が面白いと思うようになって、そこから色々と見始めるようになりました。


――そこから様々な、現代美術に触れるようになったんですね。

はい。それからその後に、六本木で「村上隆の五百羅漢図展」という大きな展覧会があったのですが、その時は会田誠展とはまた違った衝撃を受けました。それまでは美術品はアーティスト自身がコツコツ自分で制作するという固定概念があったのですが、村上隆さん主宰の「カイカイキキ」では、何十人というスタッフたちが一堂に結集して、一つの作品を作り上げていくというスタイルで。村上さんの指示のもと、スタッフがそれぞれの得意分野で協力しながら作っていくのですが、結果、完成した作品はめちゃくちゃクオリティが高いんですよ。

画像引用:https://www.atpress.ne.jp

そういう制作スタイルを知った時にまず思ったのが、「お金がかかっているんだろうな」ということでした。日本の美術業界では、芸術家がお金を稼ぐことに対して正直、世間的にはあまり良いイメージをもたれない風潮もあると思うんです。でも、本当にいい作品を作ろう、さらにそれを残して後世にも伝えていこうと思ったら、資金が要るということは当然あるわけで。その観点からいうと、既存の美術業界の中でやや批判的な扱いをされてしまうことはあるかもしれませんが、やはり現実的な視点からアートとお金、それからビジネスということを視野に入れていくことは大事だと。あの経験を通して、そのことを強く実感しました。


――大事なことですよね。では今、現代アートを見る際にどういった点に注目しているのか、教えてください?

一言でいうと、今人気のある、流行っているアートから「今、世の中の人はどんなことに興味を持っているんだろう?」というところに注目して見てみるということでしょうか。

例えば今は、バンクシーがすごく人気ですよね。そこで「このバンクシー人気はどこからきているんだろう?」と考えて自分なりに探っていくと、色々と見えてくることがあると思います。

その背景には、人々の政治的な関心――例えば政府や社会という大きな仕組みに対して、やはり多くの人々が疑問があったり何かしら不満を抱えていて、そういう感情をメッセージとして伝えているアーティストとしてのバンクシーというところに関心が向けられているんじゃないか、とか。つまりバンクシーの作品を通じて、人々は悲しみの感情や社会に対する不満を重ねているとも言えるわけです。

またバンクシーの作風とは別に、今はちょっとキャラクターっぽい人物画が流行っている、そういうトレンドがあると思うのですが、ここにもまた理由があると考えています。

画像引用:https://banksyexplained.com

これは僕なりの分析ですけど、今って対面で人とリアルに会う機会が昔に比べて圧倒的に少なってきていますよね。そういう中で、SNSで人との「つながり」の大切さを感じる機会も増えてきました。ただ、そうなると人と実際に会ってその人を見て受け取る印象とは違って、SNS上の情報として出てくるその人の言葉遣いや映像から、リアルで会ったことのない人に対しても「この人はこういうイメージの人なんじゃないか?」というふうにイメージを偶像化して、自分の中で人物像を作り上げていくっていう時代に移行している流れがあるんじゃないか、と思うんです。

なので、そういう視点で見ていくと、人間の想像力やイメージの蓄積が生活様式にも及んでいるとも言えるわけで。そういう流れで、人々が偶像的な人物像の絵画を求めるのは、ある意味自然の流れなのでしょうね。

もちろんアートの見方は自由なので人それぞれの考え方や捉え方はあると思うのですが、僕自身の印象としては、「アートは時代を反映するもの」という考えがあります。


――確かに。そういう視点で見ると、すごく面白いですね!ちなみに今、現代アーティストで注目されている方は?

ロッカクアヤコ、KYNE、花井祐介あたりでしょうか。これは今お話ししたことにも繋がりますが、これらに共通するのは、人物画を描いているアーティストということなんですね。

とくにロッカクアヤコやKYNEは、オークションでの人気も高く、高値で落札されることも多いアーティストです。

画像引用:https://rokkakuayako.com

なので、オークションで情報をチェックして、「なぜこのアーティストは人気なんだろう」、「こういう作風に高値がつくんだろう?」というところに注目してみるのも、アートを見る上で一つの重要な指標になると思います。

それから最近もう一つ注目して見ている点でいえば、ファッションとコラボをしているアーティストですね。日本だとアートを家に飾るというがあまり生活に馴染んでいないという方も多いと思うのですが、かといってアートに興味がないのかといえば、そういうことでは全然ないと思うんです。

今は、例えばKAWSのイラストがプリントされているTシャツだったり、アーティストとのコラボのスニーカーが人気で、発売当日にものすごい行列ができたりする現象もありますよね。そう考えると、ファッションとコラボすることでアートの認知度が上がっているということは最近の傾向としてとくに強くなってきている感覚もあるので、そういう意味では、ファッション関係と距離の近いアーティストは今後伸びていくのかなと思います。

画像引用:https://www.fashion-press.net


――本当に。ファッション文脈は今後見逃せませんね。SNSでもよく見かけますよね。

そうですね。とくにインスタグラムは、ファッションとの相性も抜群ですし、アーティストもSNSをうまく使いこなしてインパクトのある発信ができると、多くの人の印象に残りやすいのかなと思います。

ちなみに、ちょっと話が横にそれちゃいますけど、最近の傾向を見ながら思うことがあって。

それは、ハイカルチャーからサブカルチャーがメインストリームになりつつあるということです。これまでは、とくに日本ではハイカルチャーが重んじられてきた傾向があって、美術は高尚でややとっつきにくいイメージーーいわゆるお金持ちとか教養のある人たちの間だけで楽しむものという傾向があったと思うんです。

でも今は、ストリートのグラフィティ、ポップで親しみやすいアートが流行っていて、サブカルチャーが盛り上りを見せている。そういう現象を見ながら、ハイカルチャーとサブカルチャーの価値が逆転し始めているんじゃないかな、と感じています。

そういう意味でも、SNSをうまく使えるアーティストは強いですよね。インターネットを使えば誰でも作品を発表できる時代で、昔と比べて圧倒的に知ってもらえるチャンスも増えていると思うので。もちろんインスタグラムに上がってこないアーティストを発掘することも僕たちの大事な仕事ですが、せっかくなのでアーティストの方たちもSNSをうまく使いこなせるといいいなと思います。


――まさに転換期ですね。最後に、アートの楽しみ方について、読者に向けてメッセージをお願いします。

やはり、これから海外の方とのコミュニケーションも増えていくであろう中で、アートはコミュニケーションの入り口として、すごく有効だと思います。アメリカ、イギリス、中国と世界には色々な国がありますが、アートを通してその国の背景が見えてくることがありますし、その背景を知っていることで会話が一気に広がることもある。そういう意味では教養としてのアートではありませんが、知っているとどんな国の人とでも対等に話せるようになりますし、世界が広がっていく感覚もあるので、おすすめです。

それから、今はファッションやストリートカルチャーを通じてアートを知る機会があるなど、ひと昔前に比べてどんどんアートの世界が身近になっていると思うので、これまであまり関心がなかったという方は、まずは気楽に楽しむ気持ちで、興味のあるところから色々と調べてみるのがいいんじゃないかと思います。ファッションでも映画でも、音楽でもいい。自分が好きだなと思うものから興味を持って知っていくことで、世界が広がって、そこからさらに好きな人とも繋がっていけると思うので、ぜひ扉を開いてみてはいかがでしょうか。



――ありがとうございました!



YOUANDART(ユーアンドアート)
YOUANDART(ユーアンドアート)は、手に届く価格から本格アート作品を提供するオンラインストアです。空間にフィットしながら個性を放つ作品を国内外より厳選。入手困難な人気作品を含め、作品点数は約500点を突破。日本初、アート作品の共同保有プラットフォーム「ANDART」の運営会社が運営。
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