”THOGHT LEADERSHIP”に懸ける私たちの「念い」
Photo by Felipe Lopez on Unsplash
Thought Leadershipとは
ソートリーダーシップ(Thought Leadership)という言葉はご存知でしょうか。
市場の伸びが低迷していたり、それまで存在しなかった新しいコンセプトを持つプロダクトを生み出す時、既存の製品やサービスに新たな変化を加える時に効果的なマーケティング戦略です。
新たな考え方を市場に吹き込み、新たな議論や思想・発想を形成し、市場における自らのポジションを作り出すことを目的として使われます。身近な例では、腕時計を安価でシンプル化し「ファッションの一部」としたスウォッチや、ライフスタイルに合わせて家具を買い替えることを提案したIKEAなどが挙げられます。
私たちが去年リリースした”THOGHT LEADERSHIP”は、ここに新しい視点を追加し、組織内のリーダーシップ開発を目的とした人材育成プログラムです。
「社会貢献とビジネスの両立」
新しく加わった視点は、「社会課題とビジネスの両立」という考え方です。それがどのようにリーダーシップ開発と関係してくるのか、詳しく説明する前に、まず関連するキーワードであるESG、SDGs、CSVを図にして整理してみます。
- ESGは、 E(Environment:環境)・ S(Society:社会)・ G(Governance:企 業統治)を考慮した投資活動または経営活動を行うことであり、 それを評価する尺度です。端的に言ってしまえば「企業経営上のリスク対応」が主目的だと言えます。
- SDGs は、 企業・投資家・市民社会だ けでなく、 国や自治体、 国際機関、 NPO・NGO や教育機関などあらゆるステークホルダーが関わり、 気候変動 などの地球規模の社会課題から身近な消費行動、生活様式に至るまでありとあらゆる様々な活動を包含するフレー ムです。
- CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)や CSV(Creating Shared Value:共通価値の創出)は、企業と社会を結ぶ概念です。
このポイントを押さえたうえで、下の図に企業経営におけるフォーカスポイントを可視化してみました。左側に位置するリスク対応のESGから右に向かってトップライン(売上)に貢献するSDGs、そして、ボトムライン(利益)に貢献するCSVというイメージです。
企業経営に携わる人が本当にSDGsに関心があり、 それを実現しようとするならば、必然的にCSV に向かうことになるのではないかと考えます。
リーダーシップ屋の私たちだからできること
Thought Leadershipは、この図の一番右に位置するCSVを真に推進するために必要なリーダーシップを開発すること、つまり、「組織の中に、社会課題とビジネス、その2点の交差するポイントを模索し、周りを巻き込みムーブメントを起こしていくこと。そのための人材をひとりでも多く育成すること」を目的に開発されました。
プログラムで開発する5つの力:
実際のプログラムでは、以下の5つの力の開発をしていきます。
- 関係構築力
- 認知共感力
- 課題形成力
- 問題解決力
- 変化適応力
実はこれらのスキルはインパクトの既存のリーダーシップ開発プログラムでも網羅しています。では、ここで「”THOGHT LEADERSHIP”ならでは」についてお話します。
”THOGHT LEADERSHIP”ならでは。それは「念(おも)い」
CSVには、社会価値と経済価値の2つの軸があるとご説明しました。新規ビジネスを創出し、推進していくにあたっては「なぜやるか」の問いに明確に答える必要があります。経済価値の視点では「利益が出るから」という答えが出せます。では、社会価値の点に関してはどうでしょう。
その答えに必要となってくるのが、「この社会課題を解決したいから」という、強い念いに基づいた動機です。上司から割り振られたりするものでなく、自らを突き動かす強い動機、それを自分の言葉で語れる人の周りに自然とムーブメントが生まれ、変革の土壌が生まれます。
それは、過去の手法やノウハウ、成功事例の分析が意味をなさない今、人を動かすのは「強い念い」であるということなのだと思います。
それを強調したかったので、漢字にもこだわりました。
一般的な見解は以下の通りです。
- 「思い」は考えに近い意味
- 「想い」は感情やイメージがメイン
- 強い意志を表す「念い」
頭で考えている「思い」ではまだ勢いが足りず、感情的な「想い」は長い時間をかけてビジネス創出につなげるには不足、ゆえに「念い」。
インパクトの”THOGHT LEADERSHIP”で開発するのは、強い意志を持って変革を起こしていく、その力なのです。
私たちの気づきと学び
去年、”THOGHT LEADERSHIP”をリリースし、何度かプログラムを運営して得た気づきと学びを正直にお話します。社会課題と自社ビジネスをリンクするのは、日々仕事に忙殺されているビジネスパーソンにとって、実はとても難しいことなのだということ。
突然「社会の課題起点でビジネス創出を。変革を」と言われても、何も出てこないのは当たり前だ、という学びがありました。変革はプロセスであり、目的ではありません。そして、ただ知識やノウハウを習得することで自然発生的に起きるものでもないのです。
だからこそ、半年間の長期プログラム
「自社に変革は必要ない」と考える経営者はまずいないでしょう。
頭ではわかっている、でも気づけば自動的に過去のパターンを繰り返してしまう。それは、企業の成熟と共に"組織の慣性"が働くからです。
リーダーとして、その慣性に戻ることを意識的に拒否し、過去のパターンを打破していくこと。そのためには、間隔を開けつつも半年間の間、ソートリーダーシップの概念に浸っている状態が有効だと考えます。
実は先述の5つのスキルを習得するプロセスは、個人の「念い」を研ぎ澄ますプロセスとも言えます。ぼんやりと抽象的だったものが、リアルな社会課題に触れ、ビジネス創出のコンセプトを理解し、自らのリーダーシップスタイルを認知していくうちに、徐々に自分の中で具体化させていけるようにデザインしたものとなります。
見えてきた課題
事実、”THOGHT LEADERSHIP”の実績つくりには苦戦しています。提案回数も増え、コンセプトには毎回同意してもらうのですが、なかなか通らない理由の一つに、SDGsコンパス*の存在があるのではないかと感じています。
SDGs経営に乗り出した企業の多くが、経営戦略とSDGを統合するための指標「SDGsコンパス」を参考とし、その手引き通りに進めようとするケースが多いと思います。
SDGsコンパスのひとつめのステップは「SDGsの理解」。まずは理解してもらい、社内認知を浸透する。そのフェーズは時間もコストもかかります。そして、いくら社内でSDGsの認知を高めても、「念い」なくして社員の熱を引き出し、共通価値の共創に求心力をもたらすリーダーシップが実現するか、という点においては疑問が残ります。
このコンパスが、そもそも汎用性の高い世界共通のものとするため、一つの文化に特化せずに策定されたものであることも加味する必要があるでしょう。
日本は人も組織もリスクテイクが低水準だと言われます。新しい取り組みにはつい受け身になってしまうスタイルは日本の特徴なのかもしれません。
でも、その「ローリスク、低成長」を打破していく。それこそが、リーダーシップ。
30年間停滞している日本社会のビジネスが、今後緩やかにでも成長し続け持続可能なものになるために。”THOGHT LEADERSHIP”に懸ける私たちの「念い」はこれです。そのためにも、私たちも"THOGHT LEADERSHIP"をあきらめず、念い(= THOUGHT)を形づくるところから企業の変革に貢献したいと思っています。
*SDGコンパス:GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の3団体が共同で作成した、SDGsに関する行動指針。
参考資料:株式会社アスマーク,"日本・アメリカ・中国のSDGsに関する意識比較調査",2022,
内閣府、第1節 国際的にみた日本企業のリスクテイク - 内閣府 (cao.go.jp),2022.08.17