文化の蓄積と場所性/村田有起
文化は、場所の中にこそ蓄積されるもので、場所性にもう一度目を向けることでこそ文化の全体像が見え、回復できるのではと考えます。
東南アジアのカンボジア・アンコール遺跡の修復は各国、統一的に進められていますが、その中で「真実性」という言葉がよく出てきます。
基本的な概念として、材料、デザイン、技法、場所が変わってはいけないということです。
2004年にも奈良県で会議が持たれ、有形と無形の文化財を統合的に考えないと全体的に把握も継承もできないという論議が出ていました。
日本では無形文化財など形のあるものとそうでないものを、統一的にとらえています。
ただ、私たち自身、場所というものを失ってしまっているのではないでしょうか。
建築においては、以前は設計の課題は部屋や間取りなどが中心でした。
しかし現在は地図上にまず建物を置き、周囲の環境との兼ね合いなども考えます。
多くの建築家たちが場所性を重要視し始めているのです。
また外国出身のある方は「どこの出身ですか」と聞かれたときに、現在暮らしている「武蔵小金井」と答えることにしているそうです。
出身を尋ねるということは、どこかの場所にくっつけようとしているので、場所性は中立でなく、色彩とか特別の意味が込められているように思います。
テンポがあまりにも速いと、外からのもっと速いテンポに定義づけられ、アイデンティティーがゆがめられてしまいます。
場所にこそ、文化が蓄積されていくのです。
村田有起
参考:
https://kamittochuuch.com/hathayoga.html
https://www.thaisara.jp/