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良い医者に出会えなければ死ぬ世界~心療内科医はストレス緩和しない

 先日、『日常診療における精神療法:10分間で何ができるか』という本と『精神科医の本音』という本を読みました。

 若い頃、よく洋画を観ていましたが、そのときに主人公がカウンセリングを受ける場面がよく出てきます。私は、カウンセラーと精神科医の違いもわからず、精神科の治療と言うものはあのようにカウンセリング的なことをするのだと思い込んでいました。ですから初めて精神科に行った時にカルチャーショックを受けてしまったのです。

 「京アニ事件」で、社会のセーフティネットの必要性について皆さんが考え直したことと思います。私のように誤解されている人も多いと思いますが、現在、精神科や心療内科では、トラウマやアダルトチルドレンなどのストレスに対する精神療法は行われておりません。薬物処方による対症療法のみであり、カウンセリングも保険適用外で、森田療法やエクスポージャー療法などを行える病院はほんのひと握りです。ですから、お近くの精神科や心療内科に行ってできることといったら、睡眠薬や抗うつ薬、抗不安薬などのお薬を処方してもらうだけです。トラウマ治療は自分自身で行うしかないのです。しかしそれでは患者が本当に救われることはありません。薬には必ず副作用があり、今度はそれに悩まされていくことになります。つまり、トラウマ治療のガイドラインは、現代の日本の精神科には存在しないのです。これが、青葉被告のような人を産む原因であると考えています。そもそも「心療内科」とは、ストレスから起こる病を治療する専門の病院であるにも関わらず、そのストレスを緩和させるような治療が行われないと言うのはかなりスキャンダラスな事実ではないでしょうか? 内科であれば生活習慣の改善のアドバイスなどをしてくれるのに、精神科でそのようなことを言われることは一切ありません。

 私の人生には色々とターニングポイントがありました。中学校で理系特化型の中高一貫校に入学した事、「ポケモン」に依存した事、精神科で発達障害と突然診断された事、機能性低血糖発作を全般性不安障害と誤診された事など、今思えばもっとこうすれば良かった、と思える出来事は沢山ありますし、それに対して不満が無いと言えば嘘になりますし、未練も沢山あります。今の現状が最善だとは言い切れませんが、発達障害を持って生まれた以上はいじめもハンデもストレスも仕方のないものだと考えています。最も最善な道は、出来る限り初期に発達障害を発見し、早くから福祉サービスを利用することではありますが、そうでなかった場合にも、私自身にもっと知識があれば防げた事態は沢山ありました。私は心身症や不眠症状がとてもひどく、デイケアに通う体力もありませんでした。そうなるとどんどん悪い方へと考えてしまい、ストレスは増えていく一方になります。あのとき、もし仲間がいれば、気が狂うような思いをせずに済んだかも知れません。

 自分の人生に意味を作るとすれば、二度と自分のような辛い思いをする人が現れないために、精神科治療のレベルを向上させるための、また、受診者が精神科についての理解を深めるような啓蒙活動をしていくことだと思っています。精神科・心療内科の診療は、内科や外科よりも担当が細分化されており相性と言うものがとても大切です。折角インターネットと言う文明の利器があるのですから、ポータルサイトの充実や医師やカウンセラーとマッチングできるシステム作りなど、これから日本の精神科診療の改善のために出来ることはまだまだ沢山あると思っています。
 また、病院にかかる前のフィルターとしての福祉制度や支援団体は沢山あるにも関わらず、市に相談しても一切情報を教えてくれることはありません。しかも、国分寺市ではそれらへのリモート参加も禁止されています(施設が許可しているにも関わらず)。これは、利用者の増加を防ぐためだと考えられます。体調不良の中自分でそのような制度にアクセスできる人は限られています。このことからも、福祉制度の啓蒙活動をさらに進め、患者さんたちが充分なサービスを受けられるようにしていくことが私の人生のテーマであると考えています。将来、そういった福祉サービスの情報を透明化し、ストレスやPTSD、神経症、心身症に関連した情報を具体的に発信するメディアを立ち上げるのが今の私の夢です。