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仕事とは何か

仕事とは何か

このテーマについて思いつく言葉が2つある。

ひとつは先日のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際映画賞を獲った『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督のスピーチでの言葉。

『私が映画の勉強をしていた時に、本で読んだ言葉で、今も大切にしている言葉があります。「最も個人的なことが、最もクリエイティブなことだ」という言葉です。これは、マーティン・スコセッシの言葉です』

もうひとつは書籍『自分をいかして生きる』(ちくま文庫/西村 佳哲 著/2011.6.10)に書かれている言葉。

『「いい仕事」とは、いったいどんなことを指すのか。<中略>僕が魅力を感じ、満足を覚えるのは、「いる」感じがする仕事である。

「いる・いない」は「上手(うまい)・下手(へた)」じゃない。<中略>趣味や考え方は自分とまるで合わないのに、十分に認めたくなる仕事に出会うこともある。<中略>「いい影響」とは、その仕事に接した人間が「よりハッキリ存在するようになる」ことを指すんじゃないか。「より生きている感じになる」と言い換えてもいい』

例えば、駅に貼ってある「乗り換え便利マップ」は当時専業主婦だった一人の女性が、自分の困りごとを解決しようと思いついたことから作られた。

ベビーカーを押しながら駅のホームに降り立ち、改札へ向かう際にエレベーターを探しに探した時、「最初からわかっていれば…」と思ったことがきっかけだ。

今では当たり前のように各駅にあるが、そこにはこれを開発した福井泰代さんの存在を感じずにはいられない。(福井泰代さんは乗り換え便利マップがきっかけで起業することになり、今では株式会社ナビットの代表取締役だ)

川崎和男さんの車いすもそうだ。

川崎和男さんは東芝のインハウスデザイナーだったが、交通事故がきっかけで車いすの生活を余儀なくされることになった。しかし「座りたい」と思える車いすがなく、自分でデザインをしたのが「CARNA(カーナ)」という車いすだ。

『良いデザインはどうしたら生まれるのか。人はどんなモノが欲しいか、何が心地よいか、自分の気持ちは自分で一番よく分かります。だから、デザイナーは、まず「わがまま」になることです。』(朝日新聞デジタル/紙上特別講義「デザインの力」/2008.11.22より)

CARNA(カーナ)はニューヨーク近代美術館に永久収蔵されている。そこには単に車いすがあるというのではなく、川崎和男がいると言っていいだろう。

自己中心的に独りよがりなものづくりをするのがいいと言っているのではない。自分が作ったモノやコトを誰かが使うとき、「こうだったらいいだろうな」と可能な限りの思いやりを仕事に反映させることが大事だと思う。思いやりとは想像力だ。

想像するには、これまでの自分の経験・人の経験からの学び・見聞きしたモノやコトの全てを生かすことが必要だ。だから「自分」が大事なのだ。

私はこんな思想を持っている。

これからも、自分の全体性を生かして仕事がしたい。 

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