ある東南アジアの農村を訪問した際に見た光景は衝撃的でした。本来は水田であるというその一帯は、一年のうち半分はメコン川から水が溢れ水没して使えず、そして、そこはかつて森だった地域を開墾した場所だったのです。設備投資ができず生産性の低い農業と人口増加により「農地面積」を追求した結果、森林という自然資本が犠牲になっている良き事例でした。
世界の森林は年平均で330万ha減少*1しており、これは1分間に東京ドーム約1.5個分の森林が純減している計算になります。また、森林破壊による温室効果ガスの排出量は全体の12%*2に相当し、これは交通分野と同程度に匹敵します。実は、この森林破壊の主要な原因は実は農地への転用*3なのです。しかし、彼らは生きていくために森林を伐採し、食べていくためにそしてお金を稼ぐために農地を増やしているだけなのであり、決して責められるものではないのです。ましてや、その生産物を輸入している我々は尚更です。誰も悪いことをしている訳ではないのです。
カーボンクレジットの仕組みは、こういった人々の生活に新たな資金循環を生み出すことによって、「生活していくために自然を破壊する世界」から「自然を守ったり増やしたりすることで生活していける世界」に変えられる可能性を秘めています。
私たちは、信頼性の高いプロジェクト開発を支援することで、この自然資本に対する資金循環を最大化していくことができると信じています。そのために、専門的な知識がなくとも、誰でも「テクノロジーの利用が求められるモダンな方法論」に則ったプロジェクト開発が可能になる世界を目指しています。
アジア発のグローバルスタンダードな自然資本評価システムの構築を通じて、自然を守ることが新たな価値に繋がる世界を実現できるよう驀進してまいります。
代表取締役 津村洸匡
*1:国連食糧農業機関(FAO)(2015年)「Global Forest Resources Assessment 2015」
*2:Brack, Duncan. (2019). Background Analytical Study: Forests and Climate Change. United Nations Forum on Forests.
*3:FAO and UNEP. 2020. The State of the World’s Forests 2020. Forests, biodiversity and people.