◎なぜやるのか?
・親戚がバタリーケージで排卵鶏14万羽を飼育していたが鳥インフルエンザにより全羽屠殺。物価の優等生といわれる卵の安売り主義に違和感を感じ、動物福祉と持続性を両立する平飼い養鶏をしたいと思ったから
・未利用資源と人の生活の間にニワトリが介在し美味しい循環が産まれる仕組みを構築したいから
・耕作放棄地が激増する中山間地で小さくても強い畜産業/農業を実現したいから
・日本人が年340個食べ、日常に溶け込んだ食材から命を考える機会を届けたいから
◎背景:ニワトリを飼い始めたら生ゴミが発生しなくなった
西粟倉村に移住した2015年に狩猟免許を取得し、くくり罠猟を始めました。同年、耕作放棄地を借りて夏野菜の栽培を始めました。いずれもお金に依存せず美味しい食料を調達できるようになりたいと考えたことがきっかけです。
2020年に自宅でニワトリの飼育を始めました。4年間で名古屋コーチン、岡崎おうはん、烏骨鶏、アイガモと40羽以上を飼育してきました。有精卵を孵化させ、ヒヨコを育て卵を収穫し、卵を産まなくなったメスや肉が付いたオスは屠殺して肉を食べる…というサイクルを回しています。
スーパーマーケットで卵を買うことは一切なくなりました。我が家のニワトリが産む卵が一番美味しいからです。
ニワトリを飼い始めたことで我が家では生ゴミが発生しなくなりました。キャベツの芯や魚の内臓もニワトリにとってはごちそうだからです。鹿の端肉はもちろん、草刈りで発生した青草すら食べてくれます。近所の農家さんが「くず米をやるからニワトリの餌にしたらええがよ」とおすそ分けしてくれるようにもなりました。
人間が食べない生ゴミや未利用資源を食べることでニワトリは美味しい卵を産んでくれます。なによりホームセンターで手に入る配合飼料を与えるよりも、地域の恵みを凝縮した卵の方が臭みがなくすっきりした味わいで美味しいのです。
◎数字で見る養鶏業
・日本人は年間340個(1人1日1個!)を食べる卵大好き国民。メキシコに次ぐ世界2位。また日本の卵自給率は1960年以来94%と高水準
・日本の畜産業は配合飼料の原料(穀物)を海外に依存しており、配合飼料費は経営費の6割を占める。特に養鶏業は米国のトウモロコシ価格に影響を受けやすい
・国内の飼育戸数2000戸のうち、10万羽以上を飼育する上位20%が国内飼育羽数の80%を占め、年を追うごとに大規模化が進んでいる。平飼い養鶏は100羽飼育の個人事業主から10万羽飼育(従業員60名程度)までさまざま
・バタリーケージ飼育の卵は1個20‐30円程度だが、平飼い飼育の卵は1個50-100円と高単価。排卵鶏は年間300個の卵を産むため、季節での売上変動が起きにくい。農地(鶏舎)面積あたりの売上が高い農業といえる。1反(1000㎡)あたりの売上2000万円が可能
・鶏舎はビニルハウスや単管パイプのセルフビルドで建てることができるため初期費用を抑えやすい。100㎡で100万円〜。また、農業用施設の範疇(200㎡以下)の木造鶏舎なら田畑でも建設可能であり、地目変更の必要もない