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ABOUT
今回は業務システム開発の事例をご紹介します。システムを刷新したことで業務効率が上がっただけでなく、事業発展の手段としてシステムを考えられるようになったというこの事例、株式会社ベネッセ i-キャリア様にお話をうかがいました。
ベネッセ i-キャリア様について
株式会社ベネッセホールディングスとパーソルキャリア株式会社の合弁会社であり、新卒大学生と企業をつなぐ採用エージェント事業「doda 新卒エージェント」を展開しています。
https://www.benesse-i-career.co.jp/
業務システム開発、移行プロジェクトについて
採用エージェントが使う業務システムを新規開発し、旧システムから切り替えるプロジェクト。
新システム「Mach(マッハ)」は、学生・求人企業の情報管理、選考進捗管理、コミュニケーション等を一元的に行うためのプラットフォームとして、2020年1月にリリースされました。
[ お話いただいた方]
オンラインでインタビューを実施しました。
ベネッセ i-キャリア 新卒事業本部 事業推進部 事業企画課 出口様
(Machプロジェクト全体統括・写真左)
ベネッセ i-キャリア 新卒事業本部 事業推進部 事業企画課 峯様
(写真右)
新システム開発前の課題と要望「業務にぴったり合ったものを」
——新システム「Mach」の開発以前は、業務システムとしてASPをお使いだったと聞いています。当時どのような課題があり、なぜ乗り換えを検討することになったのでしょうか?
当時使っていたのは、中途採用向けのパッケージシステムでした。弊社向けにカスタマイズしてもらっていたのですが、新卒採用とはそもそも設計思想が異なるので、必要な機能がなかったり、逆に不要な機能があったりして、システムに合わせるために運用面を変えるなど、たくさんの工夫が必要でした。
ただ、すでに学生と求人企業の膨大なデータが入っていましたし、全社で使っているシステムですから、スイッチングコストが非常に高い。いわば、だましだまし使っている状態でした。
そんな中、データ量が増えて処理が重くなったせいか、システムが止まってしまうことが頻発しました。1年前にはなかったようなことが、1か月に数度起きるようになってしまったんです。とても不安定な状態でした。システムが止まると、業務全体が止まってしまい、とても困る状況でした。
ベンダーからはサーバーの増強が必要と言われましたが、カスタマイズを重ねていたため、ASPとはいえ増強費用は弊社持ちでお願いしたい、と。しかし今後ビジネスが拡大していけば、データ量も増えていきます。インフラの増強で対応するには限界があります。
それならばシステムを乗り換えた方がいいのではないか、という話が持ち上がりました。どうせ使い続けるのが難しいなら、早くアクションを起こした方がいいと考えました。
——業務の基幹となるシステムの変更は大変なことだと思います。どのようにしてスクラッチでのシステム開発を決断されたのでしょうか?
乗り換え先を含め、かなり検討しました。外部のベンダーとスクラッチで開発するほかに、親会社であるパーソルキャリアのシステムをカスタマイズする、他社のASPに乗り換えるという選択肢もありました。最終的には、コスト、リリース可能時期、どれだけ業務に合わせられるかという面から、多角的に判断しました。
開発すると決めてからは、複数社でコンペを実施しました。
——その中で、アシアルへの依頼を決定いただいた決め手はありましたか?
費用やスケジュール、提案内容を総合的に見た結果ではありますが、特に業務をしっかり理解して提案してくれたのが大きかったです。
弊社に人を送り込んで、実際に業務を行うスタッフにインタビューをしたり、PCの操作記録を分析した上で、どうすれば改善できるのかを提案してくれました。弊社でも、この部分が非効率だ、なんとかしたいという課題意識ははっきりしていたのですが、解決策を持っていなかったところに、技術力をベースとした解決策をいろいろ提案してもらえました。
パートナーとして、一緒に課題について考えて解決してくれそうだという期待を持てました。
——ありがとうございます。そう言っていただけるのはとても嬉しいです。
システムの移行にあたっては、特にどのようなことを期待されていましたか?
スクラッチで作るからには、自社の業務に完璧に合っているものにしたいと考えていました。
弊社のビジネスは、エージェントが学生と企業とのマッチングを行うので、どうしても労働集約型になります。システムによる効率化のメリットがとても大きいんです。
本質的ではない作業を省き、業務のスピードを上げて、エージェント一人当たりの採用にいたる学生の数を増やしたい、サポートスタッフ一人当たりでこなせる作業を増やしたい、ということを考えていました。
また、期待というかマストの条件として、スケジュールがありました。全社的なシステムであり、切り替えられる時期も限られていましたから、スケジュールは絶対にずらせませんでした。
新システムの成果「UXの改善と事業への好影響」
——開発プロジェクトが進み、今年2020年1月にMachがリリースされたわけですが、ご期待に沿うことはできたでしょうか?
まずスケジュールについては、アシアルさんでなければ無理だったのではと思います。とにかくフットワークが軽く、意思決定が速いのが印象的でした。
ほかのベンダーであれば、「こんなことはできますか?」と聞いても、「持ち帰って検討します」とその場では答えてもらえず、1週間経ってから「できません」と言われるようなこともよくあります。でもアシアルさんは、その場で「できます」「こうします」と答えてくれました。あのスピード感がなければ、1月のリリースはありえませんでした。
「できない」と言わない技術力について、社長の田中がアシアルの視点から語った記事はこちら
スケジュールがタイトだった分、優先順位を付けて、リリース時の要件から落としてしまった部分もありますが、根幹的な部分はかなり使いやすくなりました。
ただ、Machを使って成果を上げられたかというと、残念ながらそこはまだ分かりません。新型コロナの影響で、採用活動自体がストップしたり、求人を絞ったりしている企業が多く、採用決定数などをシステム移行前と単純比較できない状況になってしまったので。
——なるほど……。では、使いやすくなったという部分について具体的に教えていただけるでしょうか?
細かい部分は本当にいろいろあるのですが、大きなところだと、まずダッシュボードのUIが改善されました。
トップページで、何人の学生を担当していて、一次面接に進んだ人、最終面接に進んだ人が何人いるのか、というのがぱっと分かるようになりました。たとえば、一次面接に進んだ人が少なければ、「ここを受けてみませんか」と学生に勧めるなどのアクションを取れます。エージェント一人ひとりが目標達成のためにすべきことを、データを見て、リアルタイムに把握できるようになりました。
また、Mach以前は、学生との連絡はメールソフトで、進捗管理は業務システムで、というように複数のツールを行き来して作業していました。それ自体が非効率だったのはもちろんですが、学生に合わせたコミュニケーションツールではないという側面もあったんです。面接日の調整をする際、チャットの様に「受けます」とだけ返信が来たりすると、どの学生のどの求人に対する返信なのかを確認するのに時間がかかってしまったり。
いまの学生は会話的なUIのメッセージツールを使うことが多いので、メールでのコミュニケーションには不慣れです。そこに対して、適切なツールを提供できていませんでした。
でも、Mach開発と同時に学生側にもマイページを用意してもらったことで、コミュニケーションのプラットフォームを一元化できました。マイページ内の選択肢から回答を選んで送信すれば、過不足なく必要事項を連絡できる。弊社もそれをMachで確認し、返信できる。
Webサービスやアプリに慣れた今どきの学生からすれば、やっと「当たり前」の状態になっただけかもしれませんが、不必要なやり取りが減り、調整が楽になったというのは、エンドユーザーである学生にとっても、弊社のエージェントにとってもよいことだと思います。
——実際にヒアリングしながら実装した機能がしっかりとお役に立っているようでなによりです。事業全体で見て、Machへの移行にともなう変化はありましたか?
次年度の見通しや中期経営計画の中で、システムの話をできるようになりました。
ASPを使っていたころは、どれだけ投資しても他社のシステムなので、中長期的な視点で投資や改修の計画を立てることがやりづらかったんです。事業を支えるシステムを自社のものにしたことで、他システムとの連携を考えたり、未来にはこうしていこうということを語れるようになりました。
これまでは人力でなんとかしようとしていたことを、事業の発展のためにシステムをこうしようと話し合う、そのスタート地点に立てた感じです。
今後の展望「誰もが自分を活かせる社会を」
——素晴らしいですね。それでは、最後に今後の展望を教えていただけるでしょうか?
Machは継続的に改修していきたいです。開発スピードを優先して、考慮から漏れてしまったり、見送ってしまった部分もあるので、そこを改善したいです。それから処理スピードももっと上げていきたい。Machという名前を付けたぐらい、速さには期待しています。ASPを使っていた頃よりは快適になっていますが、普段使っているユーザーが体感できるところまで持っていきたいです。
リリース後も、アシアルさんにはMachの保守をお願いしていますが、開発時にしっかり業務を理解して作ってもらったので、この部分をもっとこうしたいという話をしたときにも意思の疎通がしやすいと感じています。
システム面でも事業面でも、最終的に目指すのはよりよいマッチングです。
より価値が高く、意味のあるマッチングを素早く行えるようになりたいと考えています。担当するエージェントによるばらつきを防ぎ高い水準を維持するというのは、システムがサポートできる部分です。
中途採用なら、これまで何をしてきたか、何をできるかというのが、候補者自身も企業も分かりやすい。
一方で弊社がサポートしている新卒採用の場合、一部の専攻を除いては、学んできたことと仕事がそのままイコールになるわけではありません。学生さん側は、なんとなく知っている企業を志望しがちですし、企業も面接で見極めるしかない。結果、ミスマッチが起きてしまいます。
新卒ならではのマッチングを進化させていきたいと思っています。学生が、本当の意味で自分に合う企業、自分を活かせる企業に入れる方がいいですし、企業側もそれを理解して採用できる社会を作っていきたいです。