リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場|決め方や違法となるケースを解説

労働人口の減少により人材確保が難しくなっている昨今、社員紹介による採用活動は必然とも言えるでしょう。

本記事では、リファラル採用の報酬制度を設計するにあたり必要となる知識を、注意点や成功事例を交えて解説しています。

「そもそも、自社の採用がなぜうまくいかないかわからない」
という方は、「なぜ採用がうまくいかないのか」について解説した、以下の記事からご覧ください。

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リファラル採用とは

リファラル採用とは、社員に友人・知人を紹介してもらうことで候補者を募る採用手法のことです。

リファラル採用のメリットは、企業理念に共感しており、業務内容をよく知る社員がリクルーターとなることで、価値観や志向性のあう人材を獲得しやすい点です。また、基本的にコストがかからない点や、社内に知り合いがいることで被紹介者の定着が見込める点もメリットといえます。

しかし、現場社員の協力が必須な手法のため、多くの社員を巻き込むための施策や、「自社を紹介したい」と思ってもらえるよう従業員満足度を向上させる施策が必要になります。

そのため、短期間でまとまった母集団を獲得したい企業ではなく、長期的な視点で優秀人材の獲得・社員定着率向上を目指す企業にオススメの採用手法です。

【参考】リファラル採用とは?メリットから具体的な施策例まで徹底解説
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/refferal_top/

リファラル採用の報酬(インセンティブ)を設定する際のポイント

多くの企業ではリファラル採用を促進するため、友人・知人を紹介してくれた社員に報奨金を支払う「インセンティブ制度」を設けています。

しかしインセンティブは、あくまで紹介の「後押し」または「労い・賞賛」のために設けるべきものであり、報奨金を目的とした紹介では、求める人材の採用や社員の定着につながらないため注意しましょう。

リファラル採用は、採用活動への当事者意識や従業員満足度を高めてこそ真の効果を発揮します。社員一人ひとりが採用に関心・責任をもち、自ら進んで友人・知人を紹介したいと思える社内環境をつくることがリファラル採用成功の秘訣です。

【参考】ES(従業員満足度)とは|向上のメリットや・高め方・取り組み事例を紹介
https://www.wantedly.com/hiringeek/organization/employeesatisfaction/

リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場

リファラル採用の報酬は30万円未満が相場となっています。しかし、報酬制度を設けていない企業もあれば、30万円以上の高額報酬を用意している企業もあり、インセンティブに対する見解・期待は各社で異なるようです。

リファラル採用の報酬

なし :21社(14.3%)
1~9万円:69社(46.9%)
10~29万円:46社(31.3%)
30万円以上:10社(6.8%)

引用:リファラル採用の実施状況に関する企業規模・業界別統計レポート

採用ポジションごとに報酬を設定するケースもありますが、高すぎる報奨金は違法とみなされる可能性があります。人材紹介会社に支払う報酬よりも低い金額になるよう調整しましょう。

違法とみなされないための報酬設定と注意点

リファラル採用の報酬制度を決める前に、知っておかなければならないことがあります。それは、免許申請がない状態で、社員に職業紹介の報酬を支払うことは法律で禁止されていることです。

では、どのようにすれば報酬制度を導入できるのでしょうか。違法とみなされないための報酬設定のポイントを解説します。

職業安定法・労働基準法に抵触しないか

人材紹介は、厚生労働省の需給調整課管轄の国許認可事業です。免許を取得しなければ、有料職業紹介を行うことはできません。

つまり、免許申請をしていない人が職業紹介をして報酬を受け取ると違法になってしまうのです。

リファラル採用において報酬制度をつくりたいのであれば、人材紹介を社員の業務の一部として位置づけ、人材紹介業務だけに対して報酬を与えているのではないことを、就業規則⋆や賃金規程に記載しておくことが必要です。

「常時10名以上の労働者を使用する企業は、就業規則の作成及び、従業員への周知と行政官庁への届出が必要である」と、労働基準法にて義務付けられています。

<有料職業紹介事業の許可>

第三十条 有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

<報酬の供与の禁止>
第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
引用:職業安定法  

<労働条件の明示>

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

引用:労働基準法

違法とみなされないための3つのポイント

リファラル採用の報酬が違法とみなされないよう、次の3点に留意しましょう。

職業安定法や労働基準法は改正されることがあるため、「知らない間に違法行為をしていた」とならないよう、定期的に社内の法務部と確認することも重要です。

1.就業規則へ明記し、「賃金」として支払う

前述の通り、免許申請がない状態で社員に職業紹介の報酬を直接支払うことは法律で禁止されています。

そのためリファラル採用の報酬は、「業務の中の一つの要素に対する評価」として位置づけ、就業規則や賃金規定に明記し、賃金・給与として支給しましょう。

2.人材紹介会社に支払う報酬より低い金額に抑える

リファラル採用の報酬が高額だと、許可や届け出なく人材紹介業を行ったと判断される可能性があります。

有料職業紹介事業の許可申請では、理論年収の30%〜40%程度を報酬金額として設定することが多いため、それよりも低い金額に抑えるのがポイントです。

3.被紹介者へ「就職お祝い金」は渡さない

2021年4月1日から職業安定法に基づく指針が一部改正され、「就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことは禁止されました。

引用:厚生労働省 東京労働局ホームページ

つまり、リファラル採用において、被紹介者に「入社したらお祝い金が出るよ」という声がけ及び施策はできないということになります。

【採用課題別】リファラル採用の報酬(インセンティブ)の決め方

リファラル採用の報酬は、金額だけでなく「支給するタイミング」も重要です。ここでは、採用課題別に報酬設定のポイントをご紹介します。

1.紹介応募数を増やしたい

「入社が決まったら、報酬を支給する」という一般的なインセンティブだけでなく、紹介の応募数を増やすために「応募してくれた時点で報酬を支給する」という方法もあります。

但し、報酬獲得目的の紹介が増えると、欲しい人材像から外れた応募者が増える可能性もあるため、注意が必要です。

2.紹介入社の離職率を下げたい

離職率の高さは、報酬制度の問題ではなく、マッチング不足が原因です。紹介を受けて選考を行う場合、採用側と応募者側に遠慮の関係性が生まれやすくなります。

「入社後、イメージと違った」とならないように、仕事内容や働き方については、デメリットもしっかり伝えるようにしましょう。

紹介の早期離職におけるコストを下げたい場合は、「入社後、一定期間経過したら報酬を支給する」という制度設計も一案です。

3.スキルの高い人を紹介してほしい

「採用ポジションの人材要件に合わせて報酬額を設定する」という方法もあります。

採用難易度の高いエンジニアのポジションは報酬額をあげるなど、資格保有や経験年数など、高要件を満たす人材の紹介は、報酬額を高く設定することも可能です。

リファラル採用を成功させる3つのポイント

リファラル採用を成功させるためには、報酬設定に加えて「多くの社員を巻き込む施策」が必要です。これから紹介する3つの方法をぜひ試してみてください。

1.社内告知を徹底する

リファラル採用は、現場社員の協力があってはじめて成立します。社内告知を徹底し、全社にリファラル採用の存在を周知しましょう。

社内告知する際は、リファラル採用を導入した背景まで伝えるのがポイントです。「なぜ取り組むべきか」がわかれば、社員一人ひとりが当事者意識をもってリファラル採用に取り組めるようになります。

【参考】リファラル採用の社内告知はどうやる?失敗しない4ステップ
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/referral_announce/

2.現場社員へ直接声をかける

リファラル採用の存在を知っていても、自分の時間を割いてまで能動的に協力してくれる社員はほとんどいません。また、紹介できそうな友人・知人がいたとしても、不安を感じてなかなか行動を起こせない社員も多いでしょう。

そのため、社員一人ひとりに直接声をかけ、具体的な行動を促すのがポイントです。「誰か良い人がいたら紹介してください」といった漠然とした依頼ではなく、以下のようにピンポイントな質問・フォローを行いましょう。

・「同じ業種の知り合いはいますか?」「◯◯のスキルをもつ友人はいますか?」
→知り合いの中から候補者がいないか具体的に想像させる

・「◯月◯日のミートアップに参加できないか、メールで聞いてもらえますか?」
→社員が行動を起こしやすいよう、具体的に何をしてほしいか伝える

・「以前話していた◯◯さんはどうなりましたか?」
→声かけをしてもらえたか、返答はどうだったか結果を追い続ける

株式会社KOMPEITOでは、社内広報用にリファラル採用のQ&A資料を作成したり、Slackや社内懇親会での情報共有を積極的に行っています。

また、「紹介しづらい」「断りにくい」といった雰囲気にならないよう、対等かつ相談しやすい距離感を心がけた結果、社員の3分の2がリファラル経由で入社。リファラル入社した人がリファラルする「2次リファラル」も多いようです。

同社の具体的な施策は以下の記事で紹介していますので、ぜひあわせてご確認ください。

【参考】リファラル採用を成功に導く空気づくりの極意とは|Lab W,【Event Report】
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/labw_02/

3.不採用でも気まずくならない体制をつくる

「紹介した友人が不採用になったら気まずいから」と、リファラル採用に対して協力的になれない社員もいます。そのため、万が一不採用になったとしても、紹介者と被紹介者の関係に不和が生じない体制づくりが重要です。

たとえば、採用基準は一般選考と同じであることを事前にきちんと伝えておくことや、社内見学・ミートアップで企業理解を深めてもらってから選考案内することがトラブル防止につながります。あくまで「候補者本人の意思」で選考に参加するかどうか決めてもらうようにしましょう。

【参考】リファラル採用で起こりうるトラブルとは?5つの防止策を紹介
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/referral_trouble/

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こちらの記事では採用における「ファンづくり」について実践方法と共に解説しています。
ぜひあわせてご覧ください。

なぜ採用に”ファンづくり”と”カジュアル面談”が必要なのか【採用の新常識】https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/recruiting_textbook_2

リファラル採用の成功事例3選【報酬制度や施策を紹介】

最後に、リファラル採用に成功した企業事例を3つご紹介します。ぜひ各社の報酬制度や施策を参考にしてみてください。

1.キャディ株式会社

注目のスタートアップ企業の1社であるキャディ株式会社は、創業期から数々の採用施策を積極的に行っています。リファラル採用では「社員が気軽に紹介できる文化」をつくるため、以下の施策を行いました。

リファラル採用の施策
・チーム対抗戦および優勝チームへノベルティを贈呈
→ミートアップに友人を招待したら1ポイント、候補者が選考へ進んだら5ポイントなど、ゲーム要素を取り入れて社員が能動的に協力する体制をつくる
・オープンなミートアップに加え、クローズドなミートアップを開催
→候補者との関係性をさらに深める
・Slackでの活動報告および全社MTGでの定期発信

上記の施策により、社員の約86%がリファラル採用に協力。結果として約600人の母集団を獲得できました。

Wantedlyでは、注目のスタートアップ2社をお招きし、採用成功の秘訣や工夫のポイントについてトークセッションを行いました。イベントの内容は以下の資料にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

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2.株式会社セールスフォース・ジャパン

株式会社セールスフォース・ジャパンは、毎年数百人規模の採用を実施しています。従来は人材紹介がメインでしたが、現在では内定者の約半数がリファラル経由となっています。

リファラル採用の施策
・紹介してくれた社員へ旅行券をプレゼント
・コアバリューに共感してくれる人材を採用
→エンゲージメントの高い職場環境となり、連鎖的に紹介者数が増えていく
・エンプロイージャーニーに沿った呼びかけを実施
→入社1ヶ月後にリファラル採用の宣伝および協力依頼、入社1年後には転職クチコミサイトへの入力依頼など、段階的に採用活動に対する当事者意識を高めていく

長期的な視点で取り組み、徐々にリファラル採用の文化を浸透させたことが成功の要因です。

【参考】約半数をリファラルで採用するSalesforceの成果を支える「コアバリュー採用」とは
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/eventreport_20210909/

3.株式会社SmartHR

株式会社SmartHRは、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」で人事労務の効率化を提供し、急成長している企業です。同社は社員が16名の時期からリファラル採用を行っています。

リファラル採用の施策
・紹介促進のための会食費は企業が負担
・インセンティブとして「いい人紹介ありがとう手当」を用意
・「ごめんねごはん制度」により社員の心理的負担を軽減
→採用に至らなかった場合、企業負担で候補者を会食に誘える制度

上記の施策により、現在では内定者の約3割がリファラル経由となっています。

引用:株式会社SmartHRオープン社内報

まとめ

リファラル採用は、採用コストが抑えられるだけでなく、優秀な人材を効率よく採用できる非常に有用な採用方法です。

また、社員が知り合いや友人を紹介したくなる環境を整えることで、リファラル採用の促進だけでなく、離職率の低下や組織活性化も期待できます。

本記事では、リファラル採用を始めるために必要な、報酬の考え方や制度設計の注意点をご紹介しました。

リファラル採用は、会社と紹介者、そして被紹介者にもメリットがたくさんあります。自社風土に合ったリファラル制度をつくり、人材獲得を成功させましょう。

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