近年耳にすることが増えた「オンボーディング」。
取り入れるべき内容だと感じていても、どのような内容を指すのか、しっかり理解できていない方は多いのではないでしょうか?
本記事では、オンボーディングの定義や目的に触れながら、どのような内容に取り組むべきかをご紹介します。
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オンボーディングとは
オンボーディングとは、新たに入社した社員に対する教育や育成のプログラムを指します。
飛行機や船に乗っているという意味を持つ「on-board」から派生した言葉で、アメリカの企業が新入社員を歓迎する際、「Welcome on board!」と声を掛けていることに由来しているといわれています。
オンボーディングが普及した背景
オンボーディングが普及した背景として、企業が新入社員の早期定着や早期活躍に課題を感じていることが挙げられます。
採用活動は、候補者が入社して終了ではありません。入社後にどれだけ早く期待通り、もしくはそれ以上の活躍をしてくれるかという点が大きなポイントになります。
しかし、これまで企業で重視されてきたのは社会人基礎力を養うような研修や、現場に一刻も早く出るための実践的な研修でした。長年このような研修を実施する中で、企業はそれだけでは新入社員は活躍できないということに気付きはじめたのです。
オンボーディングの目的
では、新入社員が早期離職をせずに、より早く会社に馴染み、仕事をこなしていくためにはどのようなことが必要でしょうか。
新入社員研修との違い
その前に、新入社員研修との違いを確認しましょう。
いわゆる新入社員研修は、新入社員が入社したあと、期間を決めて実施する場合が多いのではないでしょうか。例えば1ヵ月という期間を決め、その中で社内ツールの説明や必要な知識を得る研修や、社内の組織体制を知るための研修などを行う場合が多いです。
しかしこのような詰込み型研修は、企業の雰囲気をなんとなく掴むことはできても、いざ業務を開始すると役立ちにくいことも多いです。
そこで役立つのがオンボーディングです。オンボーディングは新入社員の教育や育成を目的とし、継続的に実施されます。
人事担当者など、社内の一部の人が関わるのではなく、組織全体で実施するという点は、新入社員研修と大きく異なる点といえるでしょう。
企業の情報提供
オンボーディングを行う上で、企業の情報を新入社員へ提供することが重要です。
ここでいう情報とは、社内制度や評価制度についてです。ただ制度を伝えるのではなく、組織が人材をどのようにとらえているのかを知ってもらうことにつながります。
また、仕事上かかわる他部署の人や、その人や部署との関係性など、仕事を円滑に進めるために必要な情報を伝えます。
一見すると情報過多に感じる人もいるかもしれません。しかし、仕事を進める上で必要のない時間を少なくするためにも、伝えておくべき情報といえます。
何より、新入社員側にとってもコミュニケーションにおける安心感がまったく異なるといえるでしょう。
価値観の共有
事実に基づいた情報だけではなく、企業の価値観を伝えることも大切です。
企業の価値観と聞くと、既に明文化された理念やビジョンを思い浮かべるかもしれませんが、それらは新入社員も入社前に把握できる情報です。そのためオンボーディングでは、明文化されていない価値観も積極的に伝えていきましょう。
物事を判断する際の基準や、業務における優先順位の付け方を伝えることで、結果的に仕事のスピードは格段にアップします。あえて言語化する内容ではないと思うことが、新入社員にとっては重要な価値観である場合が多いです。
オンボーディングのメリット・デメリット
では、オンボーディングにはどのようなメリットやデメリットがあるのかを見ていきましょう。
メリット
<企業側>
新入社員の定着率アップにつなげることができる
オンボーディングが成功すれば、新入社員にとって働きやすい環境が構築できたと言い換えることができます。したがって、新入社員の定着率をアップさせることが可能です。
企業についてより具体的に知ることができるため、「企業へ所属している」という実感を持ちやすくなるでしょう。その結果として、長く自社で働いてくれることを期待できます。
人材の定着率を上げるための方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ぜひ合わせてご覧ください。
【参考】人材の定着率を上げるリテンション・マネジメント|実施のポイントと有効な施策
https://www.wantedly.com/hiringeek/organization/retention/
コスト削減に繋がる
新入社員の定着率が上がれば、必然的にコスト削減につながります。
新たな新入社員を採用し、教育や育成を実施していくためには、相当なコストがかかります。人材の入れ替わりが激しい場合、コストはかさむ一方といえるでしょう。
そのため、新入社員の定着率が上がることで、採用コストや教育・研修コストなどを抑えることにつながります。
生産性向上につながる
社内についての理解を深めながら、新入社員が業務を行うことができれば、必然的に業務生産性は向上します。新入社員個人の業務生産性が上がることはもちろん、メンターとなっている既存社員や、同じ部署やチームの既存社員も、新入社員へかける時間を減らすことが可能です。
結果として、新入社員に関わる人全員の時間を最小限に抑えることができ、高い生産性を期待することができるでしょう。
<従業員側>
エンゲージメント向上につながる
新入社員だけではなく、既存の従業員にとっても、オンボーディングはメリットを期待できます。中でも大きく期待できるのは、従業員のエンゲージメント向上です。
部署の垣根を超えて、全社一体となって実施するため、様々な人との交流を持つことができます。また、従業員自身も知らなかった事実を知ることができるなど、さらに自社を深めるために有効な施策といえるでしょう。
エンゲージメント向上施策は、対従業員向けとして実施すると、期待していた通りの反応を得ることが難しい場合があります。しかし「新入社員向け」という大目的により、自然と力を合わせることができるのです。
【参考】従業員エンゲージメントとは?向上のための施策と事例
https://www.wantedly.com/hiringeek/organization/engagement/
デメリット
<企業側>
定期的なアップデートが必要
オンボーディングは、一度実施する内容を決めたら、半永久的に同じ内容を実施すればいいものではありません。新入社員の反応はもちろん、世の中のトレンドや日々変化する社内の情報を的確にとらえ、定期的にアップデートしていくことが重要です。
またただアップデートするだけではなく、社員への周知も重要です。アップデートするタイミングなどを定め、漏れがないようにしましょう。
<従業員側>
業務とのバランスをとる
従業員個人としてはもちろん、会社全体で業務バランスを取れるような環境を構築しましょう。
上司が積極的に時間をつくりだし、メンバーを巻き込むといった工夫や、「オンボーディングは会社として大切にしているものだ」という価値観を、従業員一人ひとりが認識することが重要です。
一度文化を醸成すると、その後はうまく進んでいくかもしれませんが、オンボーディング導入時はやや根気が必要でしょう。
オンボーディング導入の流れとポイント
では実際に、オンボーディングを導入する際にはどのような流れで行うのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
1.内容を洗い出し、優先順位を決める
まず実施することは、オンボーディングで新入社員へ伝える情報や価値観の洗い出しです。既に明文化されていることを寄せ集めるのではなく、必要あればディスカッションなどを交え、新入社員がすぐに理解できるように可視化しましょう。
その上で、早期活躍や離職防止といった観点で、何から伝えていくべきなのかを決めます。いずれすべての内容を伝えるとしても、何から伝えていけば認識に相違がないか、しっかり洗い出しを行いましょう。
2.環境をつくる
内容や優先順位を決めたら、従業員が内容を伝えやすく、新入社員は内容を受け取りやすい環境を構築していきます。
たとえば、リーダーのような存在の従業員とは、新入社員が定期的に1on1をするといった時間設定や、曜日や日付を決めたランチ会や飲み会の設定など、コミュニケーションが発生する環境をつくりましょう。
直接話をしなくても、社内ポータルやチャットツールに相談できるスペースをつくるなど、従業員をうまく巻き込んだ環境設計が重要です。
3.スパンを決めて計画を練る
内容を決め、環境が整ったら細かな計画を立てていきます。計画を立てる際には、PDCAを回せる時間軸を設定しましょう。
たとえば、3ヵ月で1タームと設定するとします。
その場合には、3ヵ月の間にどのような場を用意したらいいのかなどを検討できます。オンボーディングを実施する従業員側が目途を立てやすいのはもちろんですが、新入社員側もどのくらいの期間の間に、どれだけの情報が伝えられるのか、イメージしやすくなります。
フォロー体制は長く継続するとしても、注力期間を決めるイメージで計画を練っていきましょう。
4.実施する
ここまで進んだら、実施していきます。実施する中で、計画通りに行かない点も出てくるでしょう。新入社員の悩みが思った点と異なっていて、業務が大変に見えるなどの場合が想定できます。
計画通りに進めることが大切なのではなく、臨機応変に新入社員に寄り添ったオンボーディングが大切です。柔軟に計画変更も視野に入れ、進めていきましょう。
5.振り返る
事前に決めていた期間分の実施が完了したら、振り返りを行います。うまくいかなかった点だけではなく、うまくいった点もしっかり認識をすり合わせましょう。
また、オンボーディングの振り返りは社員だけでするのは危険です。可能であれば新入社員の意見を交え、既存社員と認識にずれがないか、しっかりすり合わせましょう。
オンボーディング施策の成功事例5選
最後に、オンボーディングに成功している企業の施策を5つご紹介します。ぜひ各社の取り組みを参考にし、新入社員の早期活躍を実現させましょう。
1.株式会社TBM
株式会社TBMは、入社直後のギャップ解消や早期活躍を目指してオンボーディング体制を整えています。
具体的な施策としては、企業理念や組織の価値観を共有するため、入社直後に3日間の導入研修を実施。また、上司との定期的な1on1を実施したり、他部門の社員と関係構築できるバディ制度を設けたりすることで入社後の活躍をサポートしています。
【参考】理念への共感をエンジンに。躍進する組織の「変わるニーズと変わらない価値観」|NEXT UNICORN RECRUITING #2 TBM 舟木祐介氏
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/rc_nur2/
2.freee株式会社
freee株式会社は、中途入社の社員に対して採用に関するオンボーディングを行っています。
入社直後から採用への熱意を伝えることで、新入社員の採用活動に対する当事者意識が向上。その結果、現場メンバーがダイレクトリクルーティングや面談に協力的になり、採用チームだけでなく全社員が一丸となった採用活動が実現できています。
【参考】全社員が採用に本気。採用チームが仕掛ける、高い熱量の保ちかた|Best Team of the Year GOLD:freee株式会社
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/award2021_gold/
3.GMOペパボ株式会社
GMOペパボ株式会社では、チャットツールを有効活用しオンボーディングを実施しています。
新入社員はまず、チャットツール内の社内チャンネルである「カクテルチャンネル」に入ります。新入社員を歓迎する文化が既に醸成されているため、既存社員が積極的に新入社員とコミュニケーションを取っているようです。
また、「ペパボカクテル」「ペパボテックフライデー」「ランチワゴン」など、さまざまなオンボーディングプログラムが実施されています。イベント化されているため、新入社員と既存社員の双方が気軽に参加できるようです。
4.LINE株式会社
LINE株式会社は、自社サービスであるLINEを有効活用してオンボーディングを実施しています。
「多方面で事業展開しており、新入社員が馴染みにくい」という従来の課題を解決するためLINE上に相談窓口を設置。パソコン操作や福利厚生など、広く相談できる窓口をつくり、新入社員をフォローしています。
5.コネヒト株式会社
入社後90日間を注力期間と設定するコネヒト株式会社では、3つの柱を軸にオンボーディングを実施しています。
素早く成果を出すことで、名実ともに社内の信頼を勝ち取る「クイックウィン」をはじめ、「カルチャーの理解支援」や「コミュニケーション支援」を行っているそうです。
実体験を積みながら手厚いサポートを受けられるため、新入社員も安心の環境といえるでしょう。
まとめ
オンボーディングは、継続をすることが大切です。
すぐに終わってしまう施策ではなく、長期的に続く施策として、オンボーディングを実施してみてはいかがでしょうか。