事業拡大や新部署立ち上げのタイミングにて、採用人数を何人にするか、決めかねている企業担当者は少なくないでしょう。
採用人数は多すぎても少なすぎてもいけません。本記事では、採用人数の決定手順とポイントを解説します。万が一、採用予定数に達しなかった際の対処法とあわせてご確認ください。
スタートアップの最適な採用方法
スタートアップ企業において、採用は非常に重要なミッションです。そして、会社のフェーズによって、適切な採用手法は変わるもの。成長フェーズに合わせた採用ができるかどうかで、採用成功の確率は大きく変わってきます。
この資料では、急成長するスタートアップ企業のために、成長フェーズごとに考えるべき採用戦略、適切な手法を事例付きで紹介しています。
適正な採用人数とは
何人が適正な採用人数なのかは、企業によって異なります。1人でよい場合もあれば、300人もの大規模採用が必要になる企業までさまざまです。
企業にとって必要な採用人数を算出するときには、「要員計画」を用います。
要員計画
要員計画とは、企業の事業計画に基づいて、必要人員の採用・配置を行うことです。あわせて、不要な人材を整理するためにも用いられます。
この要員計画の作成から、具体的な希望入社人数を算出します。ただし、希望入社人数ちょうどで採用してしまうと、万が一辞退が発生したときに別の対処が必要に。そのため、ある程度の余裕を持たせた採用人数にするのが一般的です。
同時に、要員計画は「必要なスキルを持っているか」「能力はどうか」などの観点からのアプローチとしても機能します。新卒採用でいえば、文系・理系の採用割合や採用活動の方針決定に関係してくるでしょう。中途採用では、過去の実績や資格、スキルが該当します。
要員計画を用いて採用計画を立てると、採用における質と量を同時に考慮できるのです。なお、要員計画は、部署ごとに作成されるのが一般的です。
要員計画と人員計画の違い
要員計画と同じ意味で使われる言葉に人員計画があります。しかし、この2つは別物です。しっかり区別しておきましょう。
要員計画が、事業計画に基づいて必要人員を算出・計画するものなのに対し、人員計画は配置や適正人材の基準を定めるものです。どの部署にどんな人材が必要なのかを、社員名を入れて具体的に決定するのが人員計画です。
社員名は問わずに、スキル保有者や適正人数を算出する必要がある場合は要員計画を用います。採用人数の決定においては、人員計画ではなく要員計画を用いる必要があることを覚えておきましょう。
【従業員数別】採用人数と新卒・中途採用比率の目安
採用人数の目安や平均値は、企業規模(従業員数)によって異なります。株式会社日経リサーチの調査によると、新卒採用の割合(=新卒採用の人数÷全従業員数)の平均値は以下の通りです。
【全従業員(正社員)に占める新卒の割合】
企業規模(従業員数) | 新卒採用の割合(%) |
---|---|
~500人未満 | 5.1% |
500~1,000人未満 | 3.9% |
1,000~2,000人未満 | 3.6% |
2,000~3,000人未満 | 3.6% |
3,000~5,000人未満 | 3.4% |
5,000~10,000人未満 | 3.3% |
10,000人~ | 3.0% |
つまり新卒採用の人数は、企業規模100人あたり3〜5人を目安にするとよいでしょう。また、企業規模が小さい企業ほど、新卒採用の割合は高い傾向にあります。
次に、新卒採用と中途採用の比率を確認しましょう。株式会社日経リサーチの調査によると、新卒比率(=新卒採用の人数÷全採用人数)は以下の通りです。
【全採用人数における新卒比率】
企業規模(従業員数) | 全従業員数に占める新卒 / 中途の割合(%) | 全採用人数における新卒比率(%) |
---|---|---|
~500人未満 | 5.1% / 6.4% | 44.3% |
500~1,000人未満 | 3.9% / 3.1% | 55.7% |
1,000~2,000人未満 | 3.6% / 2.4% | 60.0% |
2,000~3,000人未満 | 3.6% / 2.6% | 58.0% |
3,000~5,000人未満 | 3.4% / 1.8% | 65.3% |
5,000~10,000人未満 | 3.3% / 1.1% | 75.0% |
10,000人~ | 3.0% / 1.4% | 68.1% |
つまり、企業規模が小さいほど中途採用の比率が高く、企業規模が大きいほど新卒採用の比率が高くなっています。
しかし、上記はあくまで平均値です。新卒採用・中途採用にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、自社の状況や戦略を考慮したうえで、適切な比率・人数を決定しましょう。
新卒採用 | 中途採用 | |
---|---|---|
メリット | ・将来の幹部候補となる人材を獲得できる | ・即戦力を採用できる |
デメリット | ・採用にかかる時間が長い | ・採用コストが高い |
向いている企業 | ・カルチャーを醸成、定着させたい企業 | ・即戦力が必要な企業 |
新卒採用と中途採用の違いは、こちらで詳しく解説しています。ぜひあわせてご確認ください。
【参考】新卒採用とは?メリットや中途採用との違いを解説【比較表付き】https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/new_graduate_merit/
採用人数を決める手順
採用人数を決める手順は次のとおりです。
- 企業の事業計画、人員構成を確認する
- 採用課題を洗い出す
- 採用ニーズを調査する
- 要員数を算出し採用戦略を立てる
上記のフローに沿って採用人数を算出することで、無駄のない採用人数を算出できる確率が高まります。
1.企業の事業計画、人員構成を確認する
人員採用において、事業計画に基づいた計画の策定は不可欠です。企業の成長に直結する重要な要素であるため、企業の幹部や事業計画に関係する社員と綿密な打ち合わせを行い、適切な人員と人数を決定しましょう。
あわせて、企業に所属する従業員の年齢や雇用形態、職種を整理します。現在の数字だけではなく5年後・10年後の人員構成を加味するのがポイントです。能力や経験値で分類すると、より具体的に計画を立てられるでしょう。
企業の事業方針と所属する人員および将来の構成人員を洗い出すことで、具体的かつ適切な計画作成につながります。
2.採用課題を洗い出す
採用課題とは、過去の採用実績や数値をもとに算出した結果、顕在化した課題のことです。
採用人数を算出するうえで、例年の傾向を洗い出すことで選考フローのどこに問題が潜んでいるのかを可視化できます。たとえば1次面接後に選考辞退した人数が多ければ、そこに何かしらの課題が潜んでいる可能性を検知できるのです。
考慮する数字には、次のようなものがあります。
- 応募総数
- 書類選考通過率
- 面接通過率(1次・2次・最終など)
- 内定承諾率
- 選考辞退率(辞退したタイミングを含めて)
3.採用ニーズを調査する
ひと口に採用ニーズといっても、「現場のニーズ」と「経営のニーズ」は一致しないことを忘れてはいけません。それぞれの立場の従業員や幹部にヒアリングを行い、企業としての採用ニーズを洗い出しましょう。
現場と経営のニーズを調査するうえで用意しておくといい質問は次のとおりです。
【現場のニーズ調査項目の例】
- 欠員(予定を含む)のニーズ
- プロジェクト推進のためのニーズ
- 繁忙期の人員に関するニーズ
【経営のニーズ調査項目の例】
- 役職などの人員構成のニーズ
- 新事業の推進・進出に伴うニーズ
何人ぐらいの人員がほしいのかではなく、「どんな」人員が「何人」「どこに」ほしいのかが重要です。また、全員が必ず正社員である必要はないでしょう。雇用形態も含めて調整が必要です。
4.要員数を算出し採用戦略を立てる
1~3までの内容を精査したうえで、要員数を算出します。算出方法には次の2種類がありますが、どちらも単体では使用せず、基本的には両方の計算方法を用いて算出します。
トップダウン方式
企業全体で必要な人員を算出する方法。人件費など財政重視であるため、現場の人員不足につながる可能性がある
ボトムアップ方式
部署単位で必要な人員を算出する方法。必要な人員をすべて鵜呑みにすると人件費が膨大になるリスクがある
企業の経営状況が良好な場合は、はじめにボトムアップ方式で計算し、その後トップダウン方式で再計算します。一方、経営状況がよくない場合はトップダウン方式での計算を先に行い、ボトムアップ方式で調整するのがベターです。
企業の財政状況や経営状況を見極めて計算する必要があります。
採用人数を決める際のポイント
採用人数を決めるときに気を付けなければならないことがあります。
- 求める人材を明確にする
- 要員計画の結果分析を行う
- 採用単価を意識する
上記3点はとくに重要なポイントで、これらを考慮せずに人材採用をプランニングすると、事業発展に遅れが生じたり、財政状況を圧迫する可能性があります。
1.求める人材を明確にする
人材採用は、ただ単に欠員補充をすればいいわけではありません。部署単位でも企業全体でも、求める人材の理想像があるはずです。どのような人物を採用したいのかを明確にし、適切なマーケットでの採用活動が重要です。
そのためには、採用活動を行う企業が外側に向けて、望む人材の理想像を発信する必要があります。企業が掲げる理想像にマッチする人材を集め、その候補となる母集団を形成すると良いでしょう。
また、集まってきた人材に対してのアプローチも求められます。候補者との密なコミュニケーションを可能にするためにも、従来の採用方法をあらためて見直してみてみましょう。理想像にマッチする人材に対してリソースが割けると、定着率向上を図れます。
2.要員計画の結果分析を行う
要因計画の結果分析も欠かさず実施してください。先述したとおり、要員計画は事業計画に即して考えられたものであり、企業の事業拡大にとって必要不可欠な要素が盛り込まれています。無下に扱うものではありません。
なお、要員計画の途中変更は望ましくありません。計画どおりに進捗していない場合は、要員計画と要員実績を照合し、不足分を補充する方向に切り替えましょう。
補充もただの数あわせではなく、理想の人物像をもって採用する必要があります。
3.採用単価を意識する
人員ひとりを採用するにあたっていくら必要なのか、採用単価も意識しなければなりません。リクルートが発表した「就職白書2019」では、新卒1人の採用単価は平均72.6万円、中途は84.8万円となりました。
仮に新卒7人、中途3人の計10人を採用するとなると、採用活動にかかる総額は約760万円にもなります。採用にばかり予算が割けるわけではないため、必要な人数と予算を検討しなければなりません。
ただし、昨今は採用方法の変化から、採用単価は下がりつつあります。採用活動に使用できる予算を効率的にねん出すべく、採用方法の見直しも同時に考えるべきでしょう。
目標の採用人数に達しなかった場合の対処法
万が一目標としていた採用人数に到達しなかった場合、以下の手を打ちましょう。
- 候補者にアプローチする
- 選考辞退者にアプローチする
- 選考を仕切り直す
大前提として、各選考段階でさまざまな目標値を設定し、その数値に届くような管理をしなければなりません。それでも目標に到達しない場合は、リカバリーとして実施してみましょう。
1.候補者にアプローチする
もっとも効果を期待できる方法が、応募したものの本選考に進まなかった候補者へのアプローチです。説明会などに参加している以上、企業に対してまったく興味がない層ではありません。
選考に進まなかった理由には、他社の日程とかぶってしまった、授業の関係で行けなかったなど、やむを得ないケースも考えられます。声をかけてみる価値は十分にあるでしょう。
候補者に再び足を運んでもらうには、説明会への参加を促すのではなく、最初から選考へ招くとよいでしょう。リカバリー策として有効であるため、ぜひ実践したい対処法です。
2.選考辞退者にアプローチする
採用において辞退者は「選考辞退者」と「内定辞退者」の2つに分かれますが、ここでアプローチすべきは選考辞退者です。候補者が選考へ進まなかったケースと同様に、相対的・物理的な理由から選考を辞退した可能性もあるためです。
選考辞退者に対しては、電話による案内が有効とされています。時期を図る必要はありますが、タイミングが合致すれば選考に復帰する可能性もあるでしょう。
3.選考を仕切りなおす
候補者も選考辞退者もアプローチした結果、効果が見込めない場合は、再び採用候補の母集団形成からやり直しましょう。
しかし、まったくのゼロからリスタートする必要はありません。すでに内定者がいる状態であれば、内定者からのリファラル(紹介)を働きかけてもよいでしょう。いきなり切り出すと内定者に不信感を与えてしまうため、「一緒に働きたい友人がいたら紹介してほしい」と話してみてください。
この方法でも上手くいかなければ、求人情報の再掲載などを行いましょう。ただし、このタイミングでの採用したい人物像は、先に行ったものよりも明確にしてください。大方が内定が出てしまっている状態であるため、明確な人物像を発信できなければ、施策の効果は薄れてしまうでしょう。
計画通りに採用活動を行うには
計画通りに採用活動を行うには、要員計画だけでは上手くいきません。事前にいつまでに何を行い、アプローチは誰が行うなどの採用計画を作る必要があります。
もちろん、採用計画も企業の事業計画に影響するものであるため、それに基づいた計画が必要になります。要員計画と同時に採用計画も立てるようにしましょう。
採用計画を詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
【参考】採用計画の正しい立て方|採用に失敗しないための6ステップを解説
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まとめ
採用人数の決定に向けたアプローチは、「単にいなくなった人員を補充すればいい」ものではありません。企業の抱える課題や事業計画に基づいて算出する必要があり、適切な手順を踏みながらの進行が求められます。
企業は採用したい人員の理想像を明確にするとともに、現場だけ、経営だけの判断にならないよう、企業全体で採用活動に取り組みましょう。
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ぜひあわせてご覧ください。
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