内定から入社までの期間に企業から音沙汰がないと、内定者は「このまま入社して良いのか」「入社後にうまくやっていけるか」といったさまざまな不安を抱いてしまいます。
結果的に内定辞退につながる可能性のある、「内定ブルー」と呼ばれる現象の軽減に有効なのが、内定者フォローメールです。しかし、送る頻度や内容を間違えると逆に内定辞退を招きかねません。
本記事では、内定者フォローメールの重要性や書き方のポイントを紹介。後半で触れている例文も参考に、適切な書き方を押さえておきましょう。
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内定者へ向けてフォローメールを送る重要性
内定者へ向けたフォローメールは、内定辞退を防ぐためにも重要です。
人手が足りない中小企業を中心に、就職・転職活動は売り手市場とされている昨今。さらに就職活動の長期化で内定から入社までの期間も長くなり、内定を多く勝ち取った内定者は充分に企業を比較検討する余裕があることになります。
その間に別の企業への就職を決められると、つまり企業の内定を辞退されてしまうと、これまで時間と費用をかけた採用活動が水の泡と化してしまうのです。
フォローメールを送って、内定者と定期的に接点を持つことで双方の信頼関係を高め、内定辞退を防ぐためのアクションを講じるべきでしょう。
新卒内定者に送るフォローメール
2018年10月に経団連が「2021年度以降に入社する学生を対象とする採用選考に関する指針を策定しない」ことを発表。いわゆる「就活ルール」は実質的に廃止される運びとなりました。
結果、就職活動は早期化・あるいは通年化すると予想されており、採用から入社までの期間は長期化するでしょう。結果、この期間に内定企業への不安が湧き出てくる「内定ブルー」が生じ、最悪の場合は内定辞退者が出てしまいます。
フォローメールには、こうした内定者の気持ちに寄り添う内容を記載することで内定辞退を防ぐ効果が期待できるでしょう。
中途内定者に送るフォローメール
転職活動も売り手市場といわれています。コロナ禍で多少の変化はあれど、複数社からの内定を獲得する求職者も多く見られるため、内定が出そろった時点で企業側がふるいにかけられる可能性は多いに考えられるでしょう。
そこで生き残るためにもフォローメールが有効です。定期的にフォローメールで気にかけてくれる企業とそうでない企業では、「気にかけてくれる企業を選びたい」と考えるのが心情です。
転職先の候補から外れることがないよう、フォローメールを適切に送りましょう。
内定者へ向けたフォローメールの書き方のポイント
フォローメールで重要なのは、安心感や信頼感を与え、内定者の不安を払拭することです。次の3点をぜひ意識してみましょう。
1.感謝・歓迎の気持ちを伝える
連絡事項のみを淡々と述べていく文章では、機械的で冷たい印象を与えてしまいます。内定者に対する感謝・歓迎の気持ちをきちんと伝え、温かみのある文章を心がけましょう。
たとえば、以下のような文言がオススメです。季節の変わり目などは、体調を気遣う一言を添えるのもよいでしょう。
文頭
・先日はお忙しい中、内定式にご参加いただきありがとうございました。
・厳しい暑さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。文末
・それでは当日、◯◯様にお会いできることを楽しみにしております。
・社員一同、◯◯様とお仕事できる日を楽しみにしております。
2.入社までのスケジュールを伝える
入社までのスケジュールがわからないと、内定者は個人的な予定を組みづらくなってしまいます。内定者研修や内定式などの参加必須イベントを直前になってから案内してしまうと、内定者は不満を覚え、企業に対して不信感を抱いてしまうでしょう。
入社までのスケジュールは、日程・場所まで細かく案内する必要はありません。数ヶ月先の予定でまだ日にちが確定していない場合は、「◯月上旬予定」などとざっくりとした表記で大丈夫です。
おおよそのスケジュールがわかれば、新卒なら安心して学業に専念でき、中途なら退職・引っ越しの日程調整がしやすくなります。また、「入社まで定期的にイベントを用意し、手厚くフォローしてくれる企業」といったプラスのイメージを与えられ、内定者の入社意欲を高められるでしょう。
3.個別に質問・相談できる連絡先を記載する
内定者の不安を払拭するためには、一方的なコミュニケーションにならないよう注意し、個別に質問・相談しやすい雰囲気をつくることがポイントです。
メールの問い合わせ先が代表番号だと、連絡のハードルが高く、質問や相談を遠慮してしまう内定者もいるでしょう。とくに新卒採用の内定者は、ビジネスメールや電話応対に自信がなく、不安や悩みを一人で抱え込んでしまう傾向にあります。
そのため、フォローメールに記載する問い合わせ先は、代表番号ではなく、採用担当者個人の連絡先が理想です。内定者数が多く、個別対応が難しい場合は、下記のように問い合わせ先をわけて記載するとよいでしょう。
上記内容に関してご不明点などございましたら、下記連絡先までお問い合せください。
株式会社◯◯ 人事部
Mail:××××@××××.co.jp
Tel:03-1234-5678また、入社にあたり質問やご相談がございましたら、採用担当の◯◯(080-××××-××××)までいつでもお気軽にご連絡ください。
内定者が気軽に相談できる環境をつくり、一人ひとりの悩みをスピーディーに解決できれば、安心感・信頼感を与えられ、内定辞退を大きく防げます。
内定者へ送るフォローメールの例文【タイミング別】
内定者へフォローメールを送るタイミングは、大きく分けて下記の5回です。
- 採用通知時
- 内定通知後
- 内定式前
- 内定者研修前
- 入社式前
各タイミングで送る内容は異なります。それぞれ例文を紹介しますので、必要に応じて変更を加えながらご活用ください。
1.採用通知時のフォローメール
採用通知は、企業側から求職者へ「採用の決定」をお知らせするメールです。そのため、まだ求職者側の入社意思が確認できていない状態です。
この時点で企業の印象を悪くしてしまうと内定辞退につながってしまいます。まずはできるだけ迅速に通知を行いましょう。
■件名
選考結果のご連絡(株式会社△△△)採用通知
■本文
○○ ○○○様
お世話になっております。
株式会社△△△、採用担当のA村と申します。
先日は弊社最終面接にご足労いただき誠にありがとうございました。
厳選なる選考の結果、○○○様を弊社社員として○月○日付で採用とする運びとなりましたので、ご連絡いたします。
つきましてはご提出いただきたい書類を本日郵送しておりますので、期日までにご返送くださいますようお願いいたします。
今後の予定につきましては後日メールにてご連絡いたします。
ご不明点などございましたら、弊社採用グループのA村(03-1234-5678)までお問い合せください。
○○○様のご入社を、社員一同心待ちにしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
■署名
【参考】採用メールのテンプレート|採用通知や日程調整など8パターンを紹介
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/recruitment_mail/
2.内定通知後のフォローメール
内定通知後のフォローメールのポイントは、入社までのスケジュールを伝えることです。
内定承諾後、企業から何も連絡がない状態が続くと内定したかどうかに不安を感じやすくなってしまいます。不安を取り除くために、今後のスケジュールを明示しましょう。
■件名
入社までのスケジュールについてのご案内
■本文
○○ ○○○様
株式会社△△△ 採用担当のA村と申します。
先日は内定承諾のご連絡をいただき、ありがとうございました。
社員一同、○○様とお仕事できる日を楽しみにしております。
本日は入社までのスケジュールについてのご案内のため、ご連絡いたしました。
【入社までのスケジュール】
- 令和○年○月○日 内定式・懇親会
- 令和○年○月○日 内定者研修1
- 令和○年○月○日 内定者研修2
- 令和○年○月○日 入社式
内定式の参加は任意となりますが、式後の懇親会では先輩社員とお話できる時間も設けておりますので奮ってご参加ください。
内定式の出欠確認は○月に入ってからご連絡いたしますので、期日までにご返信をお願いいたします。
また、不安なことやご不明点があればお気軽にお問い合せください。
それでは○○様にお会いできることを楽しみにしております。
■署名
3.内定式前のフォローメール
内定式前のフォローポイントは、内定式に参加するメリットを提示することです。内定式に対して、先輩社員やほかの内定者との交流が持てることにポジティブな感情を持つ内定者もいれば、不安を覚える内定者もいます。
不安が大きいと内定式を辞退、引いては内定辞退につながりかねないので、参加するメリットを提示して不安を払拭できるような内容を添えるようにしましょう。
■件名
【要返信】内定式のご案内
■本文
○○ ○○○様
株式会社△△△ 採用担当のA村です。
厳しい暑さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回は令和○年度の内定式についてのご連絡となります。
下記日程にて内定式を予定しておりますので、○月○日までに本メールにご返信いただく形で出欠のご連絡をお願いいたします。
【内定式について】
- 日時:○月○日(○曜日)13:00~(12:30までに会場にお越しください)
- 会場:株式会社△△△ 本社 第1会議室
- 住所:東京都新宿区~
- 服装:スーツにてご参加ください
- 持参するもの:筆記用具、印鑑
【当日のスケジュール】
- 12:30 本社ロビー集合
- 12:45 内定式会場に移動
- 13:00 内定式
- 15:30 内定者懇親会
- 17:00 解散
懇親会では先輩社員も参加いたします。軽食を取りながら、お仕事のことや残りの学生生活の過ごし方など、お気軽にお尋ねください。
内定式参加にあたって、交通費を支給いたしますので筆記用具と印鑑は必ずお持ちください。
どうぞよろしくお願いいたします。
■署名
4.内定者研修前のフォローメール
内定式を経て、内定者は就職や仕事に対する不安がだいぶ薄れた状態です。そのため、内定者研修前のフォローでは、より親しみを持ってもらえるような文面を心がけると良いでしょう。
【参考】内定者研修の内容と成功させるためのポイント・成功事例
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/joboffer_training/
■件名
【要返信】内定者研修のご案内
■本文
○○ ○○○様
株式会社△△△ 採用担当のA村です。
先日はお忙しい中、内定式にご参加いただきありがとうございました。
少しの間ではありましたが、○○様とお話できてとても嬉しかったです。
さて、今回は内定式でもお伝えした内定者研修の詳細をご連絡いたします。
下記日程で実施を予定していますので、○月○日までに本メールにご返信いただく形で出欠のご連絡をお願いいたします。
【内定者研修1】
- 日時:○月○日 10:00~
(詳細を記載)
【内定者研修2】
- 日時:○月○日 10:00~
(詳細を記載)
内定者研修にご参加の方には交通費を支給いたしますので、筆記用具と印鑑は必ずお持ちください。
なお、研修は両日ともスーツ着用でお願いいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
■署名
5.入社式前のフォローメール
入社式前のフォローでは、これまで内定者向けのイベントに参加してくれたことへの感謝の気持ちとともに入社式の日程を伝えましょう。
送付のタイミングは、入社式の1ヵ月前までです。遅くなりすぎると内定者の不安を煽ってしまいます。
また、入社式当日はメールのチェックがしづらい点を考慮して、電話番号も記載しておくと良いでしょう。
■件名
入社式のご案内
■本文
○○ ○○○様
株式会社△△△ 採用担当のA村です。
これまで内定式や研修など、さまざまなイベントにご参加いただきありがとうございます。
いよいよ入社式が来月となりましたので、詳細のご連絡をいたします。
【入社式】
- 日時:○月○日 10:00~
(詳細を記載)
入社式当日でのお問い合せ、ご連絡は下記番号までご連絡ください。
- 電話番号:03-1234-5673
また本日、入社式のご案内を発送しておりますので、お手元に届き次第ご確認をお願いいたします。
それでは、入社式で○○様にお会いできることを楽しみにしております。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
■署名
内定者へフォローメールを送信する際の注意点
内定者へのフォローメールは、「送れば良い」ものではありません。内容や言葉の選び方によっては、内定者が持つ企業への印象の悪化を招きかねません。
その結果、内定辞退につながることもあるので、下記の点に注意しておきましょう。
- メールの送信時間・頻度
- 距離感
- 返信速度
内定者はこれらから企業の常識度を判断しています。
こちらの記事では採用における「ファンづくり」について実践方法と共に解説しています。
ぜひあわせてご覧ください。
なぜ採用に”ファンづくり”と”カジュアル面談”が必要なのか【採用の新常識】https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/recruiting_textbook_2
1.メールの送信時間・頻度に注意する
早朝・深夜など、相手の生活を考慮していない時間帯にメールを送るのは避けましょう。まだ起きていない時間や寝ている時間にメールが来ていると「こんな時間まで(から)働いているのか?」と不安を抱かせてしまいます。
ブラック企業と認定されかねないので、フォローメールは一般的な就業時間である9~17時の間に送りましょう。
2.内定者との距離感に注意する
フォローメールでは、内定者に親しみを持ってもらうためにくだけた表現を使用することもあります。しかし、いきすぎてしまうと不快感を与えてしまいます。
メールといえど、企業の顔として対応していることを忘れずに、適切な表現を選ぶことを心がけましょう。
3.内定者への返信はできるだけ早く行う
売り手市場が続いている就職・転職活動では、「返信が遅い」ことも内定辞退につながる可能性があります。
友人同士でも1日返信がない状況は不安を覚えますが、相手が企業となるとなおさらです。「くだらない質問をしたのではないか」「失礼な文章を送ってしまったのではないか」などの不安を助長する可能性があるので、目安として24時間以内には返信しましょう。
内定者フォローの最新事例3選
内定者の抱える不安は、フォローメールの送信だけでは解消できません。内定辞退を防ぐためには、研修・懇親会などのイベントを定期的に開催し、不安の解消および入社意欲の向上を目指す必要があります。
ここでは、3社の内定者フォロー施策をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.プロパティエージェント株式会社
プロパティエージェント株式会社は、営業力を競うコンテスト形式の内定者研修「Sales-1グランプリ」をオンライン形式で開催。仮想のお客様に対して「投資用不動産に興味をもってもらう」というゴールを目指し、実務さながらの商談ロールプレイングを行いました。
同社の研修では、営業のエース社員がお手本となるロールプレイングを披露したり、内定者同士がチームを組んで議論したりすることで、内定者同士の交流を図りつつ、入社意欲・企業理解度の向上に成功。実際に参加者からは「オンラインでも内定者や社員の方としっかり交流できてよかった」「同期の優秀さを感じて刺激になった」といった声が上がっています。
【参考】オンライン内定者研修|S-1グランプリ開催しました!https://www.wantedly.com/companies/propertyagent/post_articles/279862
2.株式会社アルプスピアホーム
株式会社アルプスピアホームは、「内定者同士の交流」および「内定者の社会人スキル向上」をテーマに、複数回にわたって内定者研修を実施しています。
同社の研修では、内定者がお互いにインタビューする形式で、同期となる内定者がどのような人物なのかを深掘りしていきます。内定者にインタビュアーを経験してもらうことで、住宅メーカーに必要な「顧客が望む家づくりをするための聞き取り力」を高める目的もあるそうです。
また、内定者に同社をSWOT分析してもらうプログラムも実施。企業のよい部分だけでなく、これから取り組むべき課題や弱みもきちんと把握してもらうことで、入社後のミスマッチ防止をはかっています。
【参考】第2回内定者フォロー研修を行いました!https://www.wantedly.com/companies/company_2484100/post_articles/337152
3.ソフトブレーン株式会社
ソフトブレーン株式会社は、対面形式(オフライン)で内定者懇親会を実施しています。具体的なコンテンツは以下の通りです。
内定者懇親会の内容
1.本社見学
2.自己紹介プレゼン大会
→趣味・特技・経歴など、内定者がプレゼン形式で自己紹介を実施
3.レストランで食事会
食事会では先に行った自己紹介プレゼンが会話の糸口となり、プレゼンで気になった部分やもっと詳しく知りたいことなどをお互いに聞くことで、内定者同士の交流が盛り上がったようです。実際、懇親会終了後に内定者だけで2次会を開催するほど、内定者同士の親睦が深まっています。
【参考】2020内定者懇親会を実施しました、の話。https://www.wantedly.com/companies/softbrain/post_articles/172154
まとめ
内定者が、社会人として一定期間、あるいは現役生活を終えるまでお世話になる企業で「本当にうまくやっていけるか?」と不安に思うことは当然のことです。不安を不安のまま放置してしまうと、企業として「内定辞退」など最悪の事態を招きかねません。
内定辞退率を下げるためには、内定者フォローメールで内定者の不安や疑問を解消することが重要です。頻度・内容・文章に気を配りながら、効果的なフォローメールを送るようにしましょう。
選考から入社後まで意識すべき候補者体験については以下の記事で解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/recruiting_textbook_3