採用活動のフェーズごとに的確なアトラクト(自社の魅力づけ)を行い、有望な人材が他社に流れるのを防ぎたい。企業の採用担当者が共通して抱いている課題感です。
この記事では、採用におけるアトラクトの重要性から、各社が取り組むアトラクトの内容とその課題を整理。また、アトラクトを実施するうえで気をつけたいポイント、採用フェーズごとの効果的なアトラクトのやり方を解説していきます。
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自社の魅力づけをするアトラクトの重要性
新卒採用・中途採用ともに採用難といわれるなかで、アトラクトの重要性が増しています。自社の魅力の伝え方を工夫すれば、候補者の「この会社で働きたい」という気持ちを高め、入社につなげられるからです。
採用活動におけるアトラクトとは
初めに、採用におけるアトラクトとは何かを再確認しましょう。
アトラクト(attract)とは、「引きつける、魅了する」という意味の英語です。採用活動においては、企業が候補者と接触する機会に自社の魅力を効果的に伝え、一人ひとりの入社意向を高める働きかけをさします。
もちろん、企業側から一方的に魅力を並べ立てても効果は期待できません。採用活動における各フェーズを通じて候補者と対話を重ね、その段階で候補者が最も知りたいことや、会社選び・仕事選びにおいて重視していることを察知します。そのうえで、臨機応変に魅力を伝えていくことがアトラクトの基本となります。
つまり、アトラクトとは候補者の関心の変化に合わせて適切に自社の魅力を伝えていく、段階的なコミュニケーションだといえます。
候補者をアトラクトする場面
次に、採用活動においてアトラクトを行なうべき候補者との接点を整理します。
- インターンシップ
新卒採用においては、企業と学生の相互理解が深まる短期・長期のインターンシップを、効果的なアトラクトの場としても捉えています。
参考:インターン採用を成功させるポイント|実施の流れ・注意点も解説 - 会社説明会
多数の候補者に対する訴求の場では、社風や価値観などインターネットでは拾えない情報を効果的に伝えることが可能です。人間的魅力を含めて司会者やプレゼンターの人選も重要です。 - 社員懇親会
社員との交流の場は、キャリア感や仕事のやりがいなどさまざまな魅力を伝えられます。社員ごとに個人の言葉で、社風などを伝える場としても効果的です。 - カジュアル面談
本選考に入る前に、企業と候補者がざっくばらんな対話を通してお互いの理解を深めるための場です。自社の魅力を1対1で伝える絶好の機会になります。▶採用成功するカジュアル面談の極意について資料をダウンロードする - SNSでの発信
SNSを活用した定期的なコンテンツ発信や双方向のコミュニケーションは、企業ごとに個性を出すことで競合他社と異なるアトラクトが可能となります。参考:SNS採用とは|成功事例12選と特徴や活用ポイントを解説 - 面接
面接は人材を見極める場であると同時に、候補者の知りたいことや就職・転職で重視していることを引き出す場でもあります。そこで得た個人の志向に合わせて自社の魅力を伝えていきます。参考:候補者の本音を引き出す|面接官のための質問集 - オファー面談
内定後に最終的な条件などをすり合わせるオファー面談の場においても、他社を検討中かもしれない候補者の状況に合わせ、適切なアトラクトを実施できます。
アトラクト施策の課題
各社がアトラクトに注力するなか、課題も浮上しています。
最大の課題は、アトラクトにおいて発信したメッセージに対する候補者の共感度が把握しづらいことです。このため、自社のアトラクトは候補者への訴求力が弱いと感じている採用担当者も少なくありません。
アトラクト施策の評価には、内定辞退率の改善など最終的な指標はありますが、1つひとつのアトラクトを定量的に評価するのは困難です。このため、個々のアトラクトのやり方をどのように改善すればより入社意向が高まるのか、具体的な方策が立てにくくなっています。
また、大手企業に関しては、さまざまな接点でのアトラクトを試行錯誤していることから、採用担当者の業務負荷が高まっている実態もあります。
採用活動においてアトラクトを実践する3つのポイント
次に、採用活動でアトラクトに取り組む際、基本となる3つのポイントを整理します。
1.候補者の知りたいことを把握する
前述しましたように、時系列で変化する候補者の興味・関心に沿ってタイムリーに自社の魅力を伝えることが、アトラクトの効果を高めるカギとなります。
中途採用の場合には、その人が転職によってどのような欲求を満たそうとしているのかを把握することが出発点です。
人材の前向きな欲求として、大きく分けて
- もっと成長したい
- これまでの経験を活かしたい
- 新たな挑戦をしたい
という3つの軸があり、人によってバランスが異なります。候補者へのヒアリングを通じてこれらの軸を把握し、優先順位をつけて自社の魅力を伝えていきます。
例えば、営業職の場合。前職での経験を活かしてさらに高いパフォーマンスをあげ続けたい人材もいますし、将来は営業メンバーのマネジメントや組織力の強化を手がけてみたい希望をもつ人材もいます。前職では主に商品を売ってきたので、よりコンサルティング要素の強い営業に挑戦したい人材もいるでしょう。
候補者ごとに欲求の軸を引き出して、自社で挑戦できるプロジェクトや実現可能なキャリア像などを伝えます。このような形で、候補者が知りたいことに合わせて自社の魅力を伝えるアトラクトを進めることができます。
2.自社の魅力を洗い出し、整理する
アトラクトを実施するのに先立ち、採用上の魅力となる自社のアピールポイントを洗い出さなければなりません。この作業には、企業の魅力を4つの軸からみていく手法が役立ちます。
- 理念、目的軸「どんな世界を目指しているか」
自社が大切にしている価値観や企業のパーパスやビジョンなど、企業理念に関わる魅力を抽出していきます。また、創業背景や歴史などもこれに該当します。 - 仕事、事業軸「どんな活動ができるか」
自社が展開するビジネスを通じて、顧客や社会にどのような貢献ができるのか、どんな成長実感が味わえるのかといった軸で魅力を洗い出します。 - 人、文化軸「どんな人と働けるか」
共に働く仲間の人間的魅力やビジネスパーソンとして尊敬できる部分、社内の雰囲気や社風など、自社ならではの人やカルチャーの魅力を言語化します。 - 待遇、制度軸「どんな恩恵が得られるか」
入社することで得られる報酬や福利厚生の他、働き方や研修などキャリアアップ支援などの制度について魅力を列挙していきます。
魅力を抽出する段階では、それぞれの軸で抜け・漏れなくあらゆる要素を抽出・整理することが重要です。そのため採用担当者での洗い出しだけでなく、各事業部の社員の意見も参考にしましょう。
会社説明会や面談でのコミュニケーションに秀でた社員や、中途入社で活躍しているような社員に、客観的に見たときの魅力をヒアリングすると良いでしょう。
3.採用競合のアトラクトを知る
優秀な候補者は複数の企業を就職・転職先として検討しています。採用上の競合となる企業のアトラクトを知ったうえで、自社の魅力をどのように伝えるのかを検討する視点が必要です。
企業の採用担当者は、すでにこれまでの採用活動を通じて競合となる企業を把握しているはずです。また、一定の信頼関係を築いている複数の候補者との会話を通じて、最新の競合環境についても把握することができるでしょう。
自社と比較しながら、競合企業の魅力となるポイントを客観的に言語化しておきましょう。仮に「ここに関しては競合の魅力にかなわない」と感じたとしても、無理に取り繕う必要はありません。別の角度から自社の魅力を伝えることは可能です。
また、例え他社と比べてマイナス要素があったとしても、その部分は率直に候補者に伝えることが、ミスマッチのない採用のために重要です。
採用フェーズごとのアトラクトの方法
次に、母集団形成から内定まで、採用フェーズごとのアトラクトのやり方について解説していきます。
認知形成フェーズでのアトラクト
幅広い候補者に自社の認知形成をはかる段階から、アトラクトは工夫できます。
例えば、採用サイトなどオウンドメディアの社員インタビューや企業カルチャーを伝えるコンテンツを、抽出した自社の魅力を織り込みながら構成できます。幅広い候補者に向けた採用サイトの情報発信を通じたアトラクトが可能となります。
【参考】社員のインタビューを成功させるための質問とは?取材・執筆ノウハウも解説
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/employee_interview_questions/
この段階では、より多くの候補者に自社の魅力に気づいてもらうことが重要です。人や風土、働き方、仕事の面白さ、独自の価値観、自社らしい風土など、できるだけ多角的に幅広い魅力をアピールしましょう。
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カジュアル面談でのアトラクト
先ほども触れましたが、選考を目的とせず、企業と候補者がフラットな立場で相互理解をはかるカジュアル面談は、アトラクトを行なう絶好の機会です。
面談の冒頭で面接官がアイスブレイクを行い、候補者がリラックスして話せる雰囲気をつくりましょう。そして候補者が主に何に関心があるのかをお聞ききします。そして、候補者の知りたいことに沿って自社の魅力をアピールしていき、アトラクトの効果を高めます。
最初に候補者が「なぜ面談で話を聞きたいと思ったのか」を聞くことで、的はずれな自社の紹介をすることがなくなり、より候補者が聞きたい項目について情報を十分に提供することができます。
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面接でのアトラクト
面接では人材の適性を見極めるだけでなく、個別にアトラクトを行なって候補者ごとに入社意向を高める工夫が重要になります。
このため、面接の前段階のカジュアル面談などの接点で、候補者がどのようなことを話していたかを把握したうえで面接に臨みます。
つまり、
- 何を求めて今回の転職行動にいたったのか
- 次のキャリアをめざすうえでどんなことを重視しているか
- 他社の採用進捗はどうか
これらの情報について採用に携わるメンバー内で正確に申し送りを行い、面接官の人選やアトラクトの内容を定め、面接を実施することが重要です。
例えば、仕事内容の詳細や配属先の人間関係を気にされている候補者もいます。そのような場合は、最終選考前であっても事業部門のメンバーと面談する機会を設けるなど、柔軟な対応ができると良いでしょう。
また、選考が進む過程で候補者の考えや他社状況は刻々と変化します。適宜情報をアップデートし、候補者の気持ちに寄り添いながらアトラクトを調整しましょう。選考過程を通じて人事部門の担当者がリクルーターとして伴走できると候補者も安心できます。
また、面接の過程でも「仕事における裁量度の高さは採用サイトのプロジェクトレポートでも確認できますよ」など、既存のWebコンテンツをアトラクトの補強に活用することも可能です。
採用クロージングでの魅力づけ
内定を出した後のクロージング(内定者に入社の意思を固めてもらうためのコミュニケーション)は、内定辞退を低減するうえで欠かせない取り組みです。内定後の企業の対応を判断材料に入社先を決める候補者も多いからです。
電話やメールでの個別フォロー、オファー面談、配属部署の先輩社員との懇親会など、クロージングの過程においてアトラクトを行います。
なかでもオファー面談は、落ち着いた状況でアトラクトできる最後の機会になります。面談前に候補者の状況をあらためて整理しておき、採用競合と比較して自社のアトラクトとなるポイントを訴求しましょう。
また、候補者に会わせたい優秀な社員がいても、たまたま面接や懇親会などの機会を作れないことがあります。その場合、内定後に別途食事会を設定するなどのきめ細かい配慮も大切です。
【参考】採用クロージングの効果的なやり方とは?3つのポイントを解説
自社のアトラクト力を高めるならWantedly
企業認知を高め、採用ターゲットとなる人材の興味関心を惹きつけるには、Wantedlyを活用した費用対効果の高い母集団形成をおススメします。
Wantedlyには、企業の知名度や評判よりも、自分自身が成長できる環境や事業への共感を求めて就職先を探している人材が数多く登録しています。採用広報で活用できるブログのような機能に加え、候補者に直接アプローチするスカウトやカジュアル面談などさまざまな機能を活用できます。
特に、Wantedlyでは会社の魅力を発信するストーリー記事や、一緒に働くメンバーの紹介、ミッション・ビジョン・バリューの掲載などが可能で、こうしたコンテンツは母集団形成フェーズのみならず、内定前のフェーズでもアトラクトに活用することができます。
事例紹介:採用におけるアトラクトに成功している企業
最後に、採用活動を通して自社の魅力づけを工夫し、成果を挙げている企業を紹介します。自社のアトラクト施策の参考にしてください。
Sansan株式会社
国内シェアNo.1の法人向け名刺管理サービスを提供するSansan株式会社(2007年設立)。名刺データの活用を起点に営業DXを支援するさまざまなサービスを展開しています。
同社は新卒エンジニアの採用において内定辞退率が高く、メガベンチャーなどの採用競合から内定が出ると、そちらを選択する候補者が多いことが課題でした。
会社説明会や面談で名刺データ活用の可能性に共感してもらえても、その後の選考が進む過程で、それ以上の魅力を訴求できていなかったのです。そこで、学生一人ひとりの志向に合わせて心の動く体験の提供をめざし、アトラクトのやり方を再設計。
候補者が企業を選ぶうえで最も大事にしているものを把握し、同社でどのようなアクションがとれれば入社の意思を固めてもらえるかを考え抜いています。そして、Wantedlyで学生に合わせた個別スカウトを実施し、約70%の返信率を実現しました。
その結果、Wantedlyを通して、母集団の少ないエンジニア・R&D(研究開発)ポジションで21卒を7名、22卒は3名の採用に成功しています。
【参考】徹底的に寄り添いキャリアをサポート。高い内定承諾率を実現する新卒採用チームの強さ|Sansan株式会社
株式会社アンビスホールディングス
医療施設型ホスピスの運営や訪問看護・訪問介護などの事業を展開する株式会社アンビスホールディングス(2016年設立)。地域の医療関係者の負担軽減に貢献するサービスの提供をめざしています。
設立当初は人材紹介会社経由で人材を雇用していましたが、医療・介護分野は競合が多く、なかなか入社にいたらない悩みがありました。
同社では、医療・介護分野の候補者は、応募する企業や看護・介護の現場を深く知りたい気持ちが強いことに着目。Wantedlyを活用して自社の「素」の部分やスタッフの仕事ぶりを発信することで、直接応募してくれる候補者を増やそうと考えました。
そこで、現場スタッフの写真を使って週1回のストーリー更新をめざしました。自社ならではの魅力の発信を積み重ね、本選考前のカジュアル面談も実施。一連のアトラクト施策が実を結び、現在では直接応募の内定受諾率が9割という成果につなげています。
【事例詳細】https://www.wantedly.com/customer_stories/138
まとめ
自社の魅力をどのように候補者に伝えれば、共感してもらえるのでしょうか。採用におけるアトラクトは昔から検討されてきた課題であり、ほとんどの企業が取り組み、試行錯誤しながら改善を重ねています。
本記事では、採用活動におけるアトラクトの重要性から課題となる点の再確認、具体的な進め方のポイントまで、事例を交えてご紹介しました。
採用手法が多様化し、候補者との接点が増えています。自社のアトラクトのやり方をもう一度チェックし、一人でも多くの有望な候補者に選んでもらえる採用に取り組んでみてはいかがでしょうか。