企業の人事制度に関連して「アルムナイ採用」という言葉を耳にすることが増えました。
この記事では、アルムナイ採用とはどのような制度なのか?導入している企業の事例や、メリット・デメリット、さらに制度を成功させるためのポイントについて説明します。
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アルムナイ採用とは
アルムナイ(alumni)とは「卒業生・同窓生」を意味する言葉で、「アルムナイ採用」は、一度企業を退職した社員を再び雇用する採用手法を指します。
育児や介護などのやむを得ない事情で離職した社員を再雇用する「ジョブリターン制度」と違い、他社でのキャリア形成を選択して自発的に退職した社員を中心に再雇用するのが特徴です。
再雇用の対象
・アルムナイ採用:他社でのキャリア形成を選択して自発的に退職した社員
・ジョブリターン制度:育児や介護などのやむを得ない事情で離職した社員
アルムナイ採用が注目されている背景
これまで日本の労働環境では、一度退職した社員が同じ企業に再就職することは非常に珍しいケースでした。なぜなら退職原因の多くは「社内の人間関係」であり、退職とはその企業と社員の別離を指すものだったからです。
しかし昨今、転職のカジュアル化やキャリアの多様化によって「個人のキャリア志向」によるポジティブな転職が増えてきました。そのため企業は、元社員を「社内に不満があって辞めた人材」ではなく、「事業や業務内容に対して一定の知見をもちながらも、他社での経験を有する貴重な人材」と捉えるようになってきています。
約7割の企業が退職者を再雇用している
実際に、一度退職した社員を再雇用する企業は年々増加しています。
エン・ジャパン株式会社の調査によると、約7割の企業が元社員を再雇用したことがあると回答。「即戦力を求めていたから」「人となりがわかっているため安心できるから」などが再雇用の理由として挙げられています。
また、懸念点の1つである「出戻り社員」に対する職場の反応も、約8割の企業が「良好」と回答。ただし、在職中の評価が低かった人材や、現在の社内ルールを受け入れる姿勢が見られない人材を再雇用した場合は、職場の雰囲気が悪くなってしまっているようです。
復帰を歓迎される人材でなければネガティブな意見が増えてしまうこと、そして再雇用のきっかけは「本人からの直接応募」がほとんどであることを考慮すると、風通しのよい職場環境と円満退職の実現がアルムナイ採用を成功させるポイントといえるでしょう。
引用:エン・ジャパン株式会社 企業の出戻り(再雇用)実態調査
以下の記事では、これからの採用に必要な基本的な考え方や、採用のトレンドについてわかりやすくまとめています。こちらもぜひご一読ください。
【採用の新常識】上手くいかない採用から脱却するために必要な考え方
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アルムナイ採用のメリット・デメリット
では次にアルムナイ採用のメリット・デメリットについて説明します。
メリット
アルムナイ採用のメリットは以下があげられます。
即戦力になる
アルムナイ人材は、元々自社に在籍した経験のある人材のため、即戦力化が期待できます。
商材への知識や、社内に人脈が残っているケースも多く、戦力化までにかかる時間も通常の新入社員より短く済むことになります。
また、入社後のミスマッチも起こりにくいため、早期退職のリスクも低いと言えるでしょう。
エンゲージメントが高い
アルムナイ人材は、一度退職した後でも自社で働きたいと考えてくれている、自社へのエンゲージメントが高い人材であるといえます。
そのためモチベーション高く、生き生きと仕事に取り組んで貰えることが予想できます。
またそういった人材が社内に増えることにより、自社が「一度退職してもまた戻りたいと思える会社」であることを社内外に認知できます。
アルムナイ採用は、結果として社内全体のエンゲージメント向上にも好影響を与えることが可能です。
採用コストの削減ができる
アルムナイ採用は、退職者からの申出により採用が決まることが多く、求人媒体やエージェントを利用するためのコストが削減できます。
気心の知れた人材であれば、いくつかの採用工程をスキップすることもできるかもしれません。
また、自社への理解やカルチャーにも詳しいことから、オンボーディングに掛かる人的なコストも抑制できます。
自社ブランディングに役立つ
アルムナイ採用は、社内外に対し「一度退職しても、また戻りたいと思える魅力的な会社」であることをPRできます。
アルムナイ採用の実績は、退職後も人間関係が円満であるイメージにも繋がりやすく、企業のイメージアップにも好影響を及ぼします。
デメリット
反対に、アルムナイ採用のデメリットには以下のようなことがあげられます。
人事・賃金制度の再考が必要となる
アルムナイ採用者を、制度上どのように扱うかを検討する必要があります。
とくに古くからの年功序列的な報酬体系の会社では、在籍期間の中断が制度上の大きなデメリットとなりやすいため、アルムナイ採用者に不利な制度と言えます。
「あくまで中途社員」と捉えるのか、キャリアの延長と捉えるのかにより、制度設計は大きく変わることになります。
アルムナイ採用を導入する際には、その点をよく検討した方がよいでしょう。
在籍社員の退職へのハードルを下げる可能性がある
アルムナイ制度を策定することで、「退職してもすぐに復職できる」という認識が社内に生まれます。
それにより、在籍社員の退職に対するハードルが下がる可能性があります。退職や再入社についてどのような方針をもつのか、社内外にしっかり周知することが必要です。
制度の管理コストがかかる
アルムナイ採用はその性質から、多くの採用数を見込む採用制度ではありません。
従って年間数人程度の採用者のために制度を用意することになります。当然制度の運用に管理コストがかかるため、事前によく検討する必要があります。
アルムナイ採用を成功させるための3つのポイント
ではアルムナイ採用を成功させるためには、どのような点に注意すればよいでしょうか。ここではアルムナイ採用を成功させるポイントについて説明します。
1.アルムナイの受け入れ態勢の整備をする
アルムナイ採用を活用するためには、社内に受け入れ態勢を構築することが必要です。
アルムナイ採用だけに関わらず、多様な価値観や、さまざまなキャリアを持つ人材を受け入れる姿勢・風土があることで、人材はその真価を発揮できます。
中には、一度退職した社員を再雇用することに拒否反応を示す社員が出てくる可能性があります。
退職前の経験や、人間関係などさまざまな理由が想像できますが、アルムナイ採用を積極的に行うのであれば、会社として制度の意義をよく説明し、既存社員の納得感を十分に得る必要があります。
2.イグジットマネジメント(雇用における出口管理)に力を入れる
アルムナイ採用で退職者を再雇用するためには、そもそも円満に退職していることが重要です。そのためには「イグジットマネジメント」の浸透が必要でしょう。
イグジットマネジメントとは、採用から退職までを一つのキャリアパスと考えた際、とくに雇用の出口に関する計画や管理のことを指します。
退職者が少ないことは必ずしも良いことではなく、人が動かない企業では役職者の滞留や、昇給の頭打ち、社内のマンネリ化が問題となります。
イグジットマネジメントでは、退職者や離職率を人員計画としてコントロールすることで、組織の新陳代謝を促します。
企業サポート体制を整える、個人のキャリア志向に合わせた離職提案をする、などがこれにあたります。
3.退職後も関係性を保つ努力をする
これまでの日本の労働環境では、終身雇用が一般的であったため、退職者はそこから離反した者と扱われる風潮がありました。
アルムナイ採用を成功させるには会社を去る方も送り出す方も、お互いが気持ちよく円満退社を迎えられるようなコミュケーションが必要です。
また、退職後も縁を途切れさせない努力をすることが、アルムナイ採用や、別の仕事に繋がることを理解する必要があるでしょう。
アルムナイ採用の成功事例3選
では実際に、アルムナイ採用に成功している企業はどのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは3社の実例をご紹介します。
1.セールスフォース・ドットコム/受け入れ態勢の整備
セールスフォース・ドットコムには、新しい視点を身に付けた人材が自社に戻ってくることを受け入れる文化があります。
社員を家族と捉え、在職時の良い思い出や繋がりを大切にすることで、「社員に再び選んでもらえる魅力的な企業」であることを、内外に示しています。
【参考】重要なのは、エンプロイージャーニーをどれだけ丁寧に描けるか|#8セールスフォース・ドットコム リクルーティング シニアディレクター 古瀬氏 | Wantedly
2.株式会社スープストックトーキョー/関係性を保つ努力
スープストックトーキョーでは、社員やパートナーが会社を卒業したあとも繋がり続けるために、「バーチャル社員証」を発行しています。
バーチャル社員証を有した元社員は、スープストックトーキョーの店舗で、社員と同様に割引で食事ができ、また試食会などの社内イベントにも参加可能です。
アルムナイ採用の実績だけではなく、元社員と繋がりを持ち続けることで、自社のブランディングにも大きな影響を及ぼしています。
参考URL:アルムナイ(卒業生)とのつながりを大切に。スープストックトーキョーの「バーチャル社員証」とは?|リファラル採用活性化サービスのMyRefer (i-myrefer.jp)
3.アクセンチュア株式会社/関係性を保つ、受け入れ態勢
アクセンチュアでは、退職者向けにウェブサイト「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」を開設しており、元社員は同Webサイトを通し、アクセンチュアの採用情報や企業の最新情報を受け取ることが可能です。
アクセンチュアには優秀な人材が多いことから、またそういった環境で働きたい想いで再就職する人材も多いのです。
【参考】アルムナイ・ネットワーク|アクセンチュア (accenture.com)
まとめ
ここまで説明した通り、アルムナイ採用はうまく活用すれば社内外に自社の魅力を伝えることのできる制度です。
アルムナイ採用の力を発揮するためには、多様な人材を受け入れるための風土が必要であり、経営者や人事担当はその方針を固め、発信し続ける必要があります。
全体の採用戦略の中で、一度アルムナイ採用について検討してみるのはいかがでしょうか。