昨今、少子高齢化による働き手の不足やさまざまな理由による早期離職の増加によって、多くの業界で慢性的な人手不足が起こっています。このため、人材を確保してもすぐに離職してしまうことが多々あるでしょう。
社員を定着させるには、ワークライフバランスに対する施策が重要です。今回は、ワークライフバランスの必要性や施策導入のメリット、具体的な内容を解説します。
ワークライフバランスの取り組みが必要な理由を紹介
次のような理由から、ワークライフバランスに対する取り組みが必要であるといえます。
離職率を下げるため
少子化が進行しており、一昔前と比べて労働力は不足しています。今後もこの傾向は続く見通しが強いため、各企業は少ない労働力を奪い合うことになります。
それに加えて終身雇用制度の崩壊も相まって、転職が当たり前の時代になりました。これによって、人材はより良い環境を求めてすぐに辞めてしまう傾向にあります。
そのような状況のなかで従業員を定着させるためには、労働環境を見直し、働きやすい環境を整えなければなりません。
また、働きやすいかどうかはライフステージによっても違ってきます。そのため、生活状況の変化に合わせて、ワークライフバランスを整えられる職場は人材が定着しやすいです。
例えば、結婚して子どもが生まれれば育児をすることになり、両親が高齢になれば介護が必要になることもあります。そのような生活の変化が訪れたときに、離職せずに仕事と両立できる環境かどうかが重要となります。
働き方の多様化に対応するため
以前までは正社員として働くのが一般的でしたが、現代では必ずしもそうではありません。働き方が多様化しており、非正規雇用で働く方や、企業に所属せずフリーランスとして働いている方も増えています。
また、近年はプライベートの時間をしっかり確保したいという方が多く見られるようになっています。そのため、企業は労働者のニーズに応えられるよう、多様な働き方を実現できる環境を作っていかなければなりません。働きやすい環境の整備が遅れてしまうと、より良い取り組みをしている企業に人材が流出してしまう可能性があります。
社員の健康を維持するため
長時間労働が常態化している職場では、従業員の健康問題が発生することも多いです。体だけでなく、メンタルヘルスの不調も増えており、問題視されています。
心身の健康に不調をきたした従業員は休職することも想定されます。復職できるようになるまで時間がかかってしまうことも多いです。場合によっては復職が難しく、退職に至ってしまうこともあります。
そのような事態に陥るのを未然に防止する意味でも、ワークライフバランスの取り組みは重要です。
ワークライフバランスに取り組むメリット4つ
企業がワークライフバランスに取り組むことで、次のようなメリットが得られます。
優秀な人材の確保
前述したとおり、現在では、戦後長らく続いた終身雇用制度は崩れつつあり、転職をするのが珍しくない状況です。現在の職場に不満があれば、より良い職場へ転職するのが当たり前になっています。もちろん優秀な人材も、職場の環境が良くなければ転職を検討するでしょう。
ワークライフバランスに取り組んでいる職場であれば、そのような優秀な人材の受け皿になれる可能性があります。
特に子育てをしている女性の場合、能力があるのにも関わらず、仕事と育児の両立が難しいため就業を諦めている方も多いです。ワークライフバランスの推進により、優秀な女性従業員を確保するチャンスにもなります。
業務効率改善
長時間労働が慢性化していると従業員のメンタルヘルス悪化につながるおそれがあるため、ワークライフバランスに取り組むなら、長時間労働の見直しが必須です。
無駄な作業や工程がないかどうかチェックしてみたり、同じ作業をより速く行う方法はないか模索したりすることで労働時間を見直すことができます。その結果、業務効率化を見込める点もメリットです。
ワークライフバランスの取り組みはコストがかかるイメージが強いかもしれません。しかし、業務改善により残業時間が削減されれば、時間外労働手当の分の人件費も削減できます。
企業イメージの向上
ワークライフバランスに取り組んでいると、企業イメージの向上につながることも多いです。「従業員を大切にしている企業」というイメージが世間に浸透すれば、求職者が集まりやすくなるでしょう。求職者に安心して働くことができる職場と捉えてもらえます。
ブラック企業が社会問題化しており、プライベートとのバランスが取れない企業は就職や転職において避けられる傾向が強いです。
そのようななかで、ワークライフバランスがしっかりしている企業はホワイト企業として捉えられ、人材を確保する上で有利に働きます。
中小企業の場合には、給与額で大企業より好条件を示すのは難しいかもしれません。そのため、仕事とプライベートの調和が図れるような取り組みを導入し、求職者にアピールすることが大切です。
意欲低下の防止
ワークライフバランスは従業員のモチベーションにも直結しています。残業続きでワークライフバランスが良くない状況だと、業務に対する意欲も低下してしまうことが多いです。生産性も低下し、残業が増えるという悪循環に陥ってしまう可能性があります。
プライベートが充実すれば、心身ともにリフレッシュすることができます。気持ちが前向きになり、仕事に対するモチベーションも上がりやすいです。その結果、生産性が向上し、残業時間が削減され、私生活に充てる時間が増える好循環が生まれます。
ワークライフバランスの取り組みの具体策6つ
ワークライフバランスの施策として具体例を6つ紹介していきます。
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育児休暇
育児と仕事を両立させることが難しいと、女性社員が出産を機に退職してしまう傾向にあります。子育てもしながら働き続けるためには、育児休暇の制度は必須といえます。
また、女性だけでなく男性にも適用させることが重要です。男性も育児に参加することで、負担が分散されて、ワークライフバランスの向上が期待できます。
フレックスタイム
フレックスタイム制は、会社が1ヶ月の総労働時間のみを規定し、具体的な始業時間や終業時間を決めない制度のことです。各従業員は、1ヶ月の総労働時間さえ満たしていれば、自分の都合に合わせて出退勤できます。
フレックスタイム制なら、子育てや介護と仕事を両立させやすくなり、プライベートも充実するでしょう。
総労働時間を減らすわけではないため、導入にあたって給与の調整は必要ありません。昇給に関わる問題も生じないため、取り組みやすいといえます。
ただ、出勤時間と退勤時間が完全に自由だと、業務に支障をきたす場合があることも考えられます。そのような場合には、コアタイムを設ければ対応できます。
コアタイムとは、フレックスタイム制のなかでも、必ず就業していなければならない時間帯のことです。会社にとっては導入のハードルが下がり、従業員にとっても働きやすい環境になります。
短時間勤務
短時間勤務は育児や介護をしている従業員に対して、通常よりも勤務時間を短縮する措置のことです。育児や介護と仕事を無理なく両立できるようになり、離職防止につながります。
短時間勤務を導入する際には、単に勤務時間を短縮するだけでなく、バリエーションを持たせることが重要です。いくつかパターンを用意し、従業員が選択できるようにすれば、ワークライフバランスの向上が見込めます。
それとあわせて、短時間勤務でもコア業務を担当できるように環境を整えることが大事です。短時間勤務を理由に単純作業だけをやらせると、モチベーションの低下につながる可能性があるため注意しましょう。
リモートワーク・テレワーク
リモートワークやテレワークは、オフィス以外の場所で業務を行う働き方のことです。
オフィスに出社しないことで通勤時間を削減できることから、従業員は移動コストを減らせるほか、通勤ストレスの解消にもなります。
また、時間的な余裕が生まれることで、家族と過ごしたり、趣味に充てたりする時間が増えるため、ワークライフバランスの向上が期待できます。
会社にとっては交通費やオフィス賃料、設備費などのコストを削減できるのもメリットです。
ただし、社外で業務をする際は、情報漏洩などに注意しなければなりません。そのほか、業務を円滑に行うためのコミュニケーションの確保や、勤怠管理の仕組み作りなども必要になります。
休暇制度の促進
有給休暇や独自の休暇制度を設けていても、普段から休みづらい職場になっていると、社員が休暇の申請をためらうことがあります。
そのため、休暇を取得しやすい環境を作ることも、ワークライフバランスの取り組みとして効果的です。
例えば、時間単位での有給休暇を取得できる制度にする、一人ひとりの業務量を調整して休みやすい環境を作るといった取り組みが挙げられます。
休暇制度の取得を積極的に推進する雰囲気があれば、従業員も休暇を取得しやすくなります。
時間外労働の削減
残業や休日出勤が多いと、リフレッシュする時間が少なくなり、体調面に悪影響が出る可能性があります。従業員のメンタルヘルスを保つためにも、残業や休日出勤を減らせないかどうか検討してみましょう。
なかにはノー残業デーなどを設けて残業を制限している職場もあるでしょう。しかし、業務量が多いと、家に仕事を持ち帰る従業員が出てくる可能性は十分考えられます。
そのため、残業を制限するだけでなく、時間外労働の根本的な問題を解決する必要があります。
業務量の改善や人員の増員などを実施し、従業員への負担が軽減できる環境を作るようにしましょう。
まとめ
仕事とプライベートのバランスが取れていないと離職率が高くなるほか、人材確保が困難になっています。優秀な人材を長期的に確保するためには、ワークライフバランスへの取り組みが必須です。業務効率の改善やモチベーションの向上などのプラスの効果も期待できます。
フレックスタイム制や短時間勤務などさまざまな施策があるため、自社にあった方法を積極的に取り入れていきましょう。