大企業はどのような福利厚生を実施している?大手の取り組み事例を紹介

企業で働く従業員にとって重要な要素の1つに福利厚生が挙げられます。従業員の生活を支え、仕事のやりがいや快適さを高める福利厚生は、企業が人材を惹きつけ、定着させるための重要な要素といえるでしょう。

特に大企業は、充実した福利厚生を提供することで、働きやすい環境を作り上げています。この記事では、2023年7月現在、日本の大企業が提供している特徴的な福利厚生について紹介しますので、ぜひ自社での取り組みにお役立てください。

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大企業で充実している福利厚生とは?

福利厚生とは、企業が従業員やその家族の健康や生活を向上させる施策全般を指します。給与や賞与以外の利益をもたらし、その具体的な内容は非常に幅広いのが特徴です。特に大企業では、福利厚生が非常に充実していることが多く、従業員・求職者にとっては給与面と同等程度に関心が高いことでしょう。

福利厚生は「法定福利厚生」「法定外福利厚生」の2種類に分けられています。

法定福利厚生とは?

法定福利厚生というのは、企業が自主的に提供するものではなく、法律によって義務づけられた保障制度です。その種類と労働者の負担割合は、福利厚生の種類によって異なり、以下のような種類があります。

<法定福利厚生の種類>
● 健康保険
● 介護保険
● 厚生年金保険
● 雇用保険
● 労災保険
● 子ども・子育て拠出金

法定外福利厚生とは?

法定外福利厚生は、法律で定められた福利厚生以外の全てを指します。その種類は各社さまざまで、事業内容や企業文化を色濃く反映したものもあります。

法定外福利厚生の種類は多種多様で、例示すると以下のようなものが実施されています。

<法定外福利厚生の例>
● 通勤・住宅関連
● 健康・医療関連
● 育児・介護関連
● 慶弔・災害関連
● 自己啓発関連
● 文化・体育・レクリエーション関連
● 財産形成

厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査の概況」を参照すると、「100~299人」の企業では法定外福利費用の1人1カ月平均が「4,546 円」だったのに対し、企業規模が「1,000人以上」の会社では「5,639円」を支払っているとのことです。

よって「大企業ほど福利厚生の内容が充実している」とは、あながち間違いではないといえるでしょう。

大企業の福利厚生は何が優れているのか?

具体的な福利厚生の内容は各社さまざまですが、一般的に大企業は以下の点で優れているといわれています。

● 金銭的な補助を受けられる可能性がある
● フレックスタイム制により柔軟な働き方が可能
● 休暇を取りやすい
● 施設・設備が充実している

次項より、個別に解説します。

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金銭的な補助を受けられる可能性がある

大企業では多くの場合、子育て、教育、住宅などに対する金銭的補助が行われます。例えば、子どもの教育費や通勤費の補助などです。これらは給料に加えられる形で支給されますので、補助が多ければ多いほど金銭的な余裕が増えるということになります。

ただし、これらはボーナス時には計算対象外となります。つまり、基本給によって補助金の額が決まるという点には留意しましょう。

フレックスタイム制により柔軟な働き方が可能

一般的な勤務形態は、朝出勤し夕方帰宅するサイクルですが、フレックスタイムを導入する企業も存在します。その場合は、従業員自身が出勤時間を設定でき「朝に用事があれば、昼から出勤し夜まで働く」といったことも可能です。新型コロナウイルスのパンデミックを経て、このようなリモートワークを認める企業も増えていることでしょう。

これにより、従業員や子育て、介護、学習などのプライベートな時間も確保しやすくなります。また、時短勤務が可能な企業も見受けられます。もちろん、完全な自由出勤ではなく、最低限のルールを設けている企業が多いでしょう。

休暇を取りやすい

大企業における休暇取得制度は個々の従業員に対し、休日出勤の削減や一月の休暇日数の保証を行っていることがあります。それだけでなく、大企業では法定以上の有給休暇を設けることも珍しくありません。例えば、リフレッシュ休暇や子育て休暇、介護休暇、ボランティア休暇などが挙げられます。

長期休暇を認める「サバティカル制度」を導入している企業もあり、これにより従業員はより集中的な学習や家族関係などに時間を割きやすくなっています。

施設・設備が充実している

大企業のオフィスには、働きやすい環境を提供するための施設・設備が揃っていることがあります。具体的には、リラクゼーションスペースやカフェテリア、フィットネスジム、保育所などです。

こういった設備は、従業員の満足度や生産性を向上させる要素です。リフレッシュと働きやすさを提供することで、大企業は従業員がより長く自社に居続けられる環境を作っているといえるでしょう。

大企業で実施されている人気の福利厚生とは?

では、大企業ではいったいどのような福利厚生が導入されているのでしょうか。前述のとおり各社で異なりますが、代表的なものは以下となります。

● 住宅手当
● 食事補助
● 育児支援
● 宿泊施設の割引制度
● 特別休暇
● 病気休暇
● 慶弔金
● 財形貯蓄制度・拠出型企業年金

ここからは、それぞれについて個別に解説します。

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住宅手当

住宅手当とは、従業員が賃貸住宅や住宅ローンの負担を軽減するための福利厚生です。給与の一部として支給されることもあれば、別途支給されることもあります。

住宅手当は法定外福利厚生なので、住宅手当・家賃補助の福利厚生の実施は企業の裁量となっています。

支給額は企業によって異なり、一律の額を設定している企業もあれば、従業員の状況に応じて額を設定している企業などさまざまです。住宅手当とはいっても給与所得となるため、課税対象となります。

食事補助

食事補助を設けている企業では、社員食堂を設けるなどして食事を提供し、社員の生活を支援しています。食事内容は一般的にバランスの良い栄養素が提供されており、場合によっては食事補助券や社外のレストランでの割引制度を導入しているケースもあります。

食事補助の目的は、従業員に対して昼食などの食事代を企業が一部負担することで、従業員を労うことです。食事代の負担を軽減することで、給与以外での従業員の経済的支援だけでなく、職場での働き甲斐にも繋がるでしょう。

育児支援

産前・産後休業や育児休業の制度は法律で定められていますが、企業によってはさらに支援を行なっているケースもあります。例えば「社内の託児所の設置」「子どもの病気や学校行事などにおける休暇取得の柔軟性」「子どもの学費補助」などがあります。

育児支援制度は、働き続けたい社会人にとって非常に重要な福利厚生です。特に、育児をしながら働く人にとっては必要不可欠な福利厚生であり、間接的に社会貢献にも繋がっているでしょう。

宿泊施設の割引制度

企業は社員がリーズナブルな価格で旅行や休暇を楽しむことができるよう「社員専用の宿泊施設を提供」「提携ホテルの割引」などの福利厚生を実施している場合があります。

仕事に直接影響を与えるものではありませんが、この福利厚生により、従業員のプライベートの充実に繋がります。中には、家族や友人との旅行などでも割引が適用される企業もあり、充実した休暇を過ごすことができます。

特別休暇

特別休暇とは、結婚や出産、葬儀など人生の重要なイベントで、通常の有給休暇とは別に休暇を取得できる福利厚生制度です。これにより、従業員は仕事を続けながら、プライベートな時間を確保しやすくなります。

特別休暇には、慶弔休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇、傷病休暇などさまざまあり、法律で決められている法定休暇とは別に、企業が自由に条件を設定します。

病気休暇

病気休暇は、従業員が病気や怪我で働けなくなった場合に取得できる休暇制度です。企業側は従業員の健康を重視し、病気休暇制度を導入することで、従業員は必要な医療を受けられる時間を確保できるでしょう。

特別休暇と同じく、法律で規定された休暇ではないため、企業が自由に制度を設定できます。

慶弔金

慶弔金とは、従業員が結婚、出産、死別など人生の大きなイベントがあった際に、会社が金銭的な支援をする制度です。例えば、以下のような種類があります。

● 結婚祝い金
● 出産祝い金
● 死亡弔慰金
● 傷病見舞金
● 災害見舞金
● 就任/昇進祝金
● 成人祝い金
● 創立記念祝い金
● 開店/開業祝い金
● ペット弔慰金

財形貯蓄制度・拠出型企業年金

財形貯蓄制度とは、従業員が給与の一部を自動的に貯蓄に回せる制度のことです。対する拠出型企業年金は、企業が従業員のために年金を準備し、老後の生活を支援する仕組みになっています。

双方の制度は、従業員の生活を維持し、安定した老後を確保するための重要な福利厚生といえるでしょう

特徴的な福利厚生を実施している大企業の例

ここからは、2023年7月現在の情報を基に、特徴的な福利厚生を実施している大企業の例を紹介します。

株式会社ZOZO

株式会社ZOZOが実施している福利厚生では、「家族時短制度」が設けられています。これは、仕事とプライベートをバランスよく充実させるため、育児や介護はもちろんペットや同居人といった従業員の「家族」がサポートを必要としてる場合、1日最大2時間の勤務時間短縮ができる制度です。

さらに、「住宅リモート手当」では、全社員に毎月5万円が支給されます。住宅手当の延長ともいえる制度で、従業員にとっては大きな魅力の1つになっていることでしょう。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社の福利厚生は、キャリア対策プランとして、継続3年以上の正社員を対象に「最長2年、普段の業務を離れて専門的知識などを集中的に取得するための休暇」が取れる「勉学休職制度」を実施しています。

さらに、病気やけがで60日(免責期間)を超えて仕事ができなくなった場合「給与の60%を満60歳まで補償する制度」である「長期所得補償制度」も特徴です。これにより、健康保険組合から傷病手当金が18カ月間支給された後のサポートまで受けられますので、従業員の安心に繋がり、離職率の低減に寄与していることでしょう。

株式会社Cygames

株式会社Cygamesが実施している福利厚生の中で特徴的なのは、「健康サポート制度・補助制度」です。これは「年に1度、会社負担でインフルエンザの予防接種を受診できる」「無料で社内のリラクゼーションルームで整体師の施術を受けられる」といった、健康につながる福利厚生です。

さらに、「コミュニケーション活性化制度」の一部として、最新ゲーム機やボートゲームをそろえた「プレイルーム」という社内スペースがあります。ゲームのプレイを通してて交流を深め、チームワークを高められるゲーム開発会社ならではの施策です。

Chatwork株式会社

ビジネスチャット「Chatwork」を運営しているChatwork株式会社の福利厚生は、同社ならではのカルチャー、風習、その他困りごとなどを、入社したばかりの従業員が気軽にメンター(他部署)とエルダー(所属部署)に相談できる「メンター・エルダー制度」を設けています。

さらには、会社全体で採用に取り組むため、紹介したい友人との食事代の全額補助や、紹介した友人が入社した際にボーナスを支給する友人紹介・リファラル制度「おむすび」も特徴的です。

Sansan株式会社

Sansan株式会社の福利厚生は徳島県にある築70年の古民家を会社で借り、サテライトオフィスとして利用できる「Sansan神山ラボ」が特徴的です。自然の中で山籠りして働くことで、集中力・創造性を養うことが目的とされています。

さらに「どに〜ちょ」という福利厚生では、休日の静かな環境で業務を行いたい従業員が、平日・休日の勤務日を入れ替えられる制度です。こちらも静かな環境で業務を進めることで、より生産性や効率をアップさせられるでしょう。

サイボウズ株式会社

「サイボウズoffice」シリーズなどを手掛ける、ソフトウェア開発会社であるサイボウズ株式会社が実施している福利厚生では、育児支援も充実しています。

例えば、最長6年間とることが可能な「育児休暇」制度があり、子どもが小学校に通うまでを限度とし、必要ならば復帰後に再度休暇を取得することも可能です。

さらに、「子連れ出勤制度」では、従業員が「子どもが学童保育に行きたがらない」「預け先が無い」といった場合に、子どもを連れて出勤できます。「チームの生産性を下げないこと」などのルールが設けられていますが、従業員はよりフレキシブルな働き方が可能です。

株式会社サニーサイドアップ

株式会社サニーサイドアップの福利厚生では、「目指せA身体」制度という従業員の健康支援を行うための施策が実施されています。この福利厚生は、例えば健康診断で総合「A」判定を獲得した“健康社員”には3万2,000円が支給されるというものです。

さらに一風変わった福利厚生としては「失恋休暇制度」も挙げられます。これは、「会社に出られなくなるほどの失恋は、人生の中でよい経験になると思う」考えのもと設けられた制度で、自分らしく一生懸命楽しく働くという企業文化が見て取れるでしょう。

GMOインターネットグループ株式会社

日本のインターネットを支える総合インターネットグループGMOインターネット株式会社の福利厚生では、「シナジーカフェ GMO Yours」という社内で24時間365日オープンしているカフェがあります。従業員はドリンクやフードを無料で利用でき、金曜の夜にはバーになるというカジュアルな制度です。

さらに、同社は午後の作業効率アップのため、12:30〜13:30の間に20分程度のお昼寝を推奨してスペースを開放するという「おひるねスペース GMO Siesta」も実施しています。

株式会社中西製作所

学校や病院・事業所・ファストフードショップ・レストラン向け業務用厨房機器の製造・販売を行っている株式会社中西製作所の福利厚生では、「給食費補助制度」という日本初の福利厚生が設けられています。

これは、小学生の子どもを持つ従業員に対し、給食費補助として子ども1人につき年額5万円を支給する制度です。

さらに子どもが小学校、中学校に入学した際に祝金として1人あたり1万円を「入学祝金」として支給する福利厚生もあることから、従業員だけでなく、子どもまで含めて支援する制度が充実しています。

まとめ

福利厚生は、従業員のモチベーションを高め、長期的な信頼関係を築く上で不可欠な要素といえます。特に、日本の大企業は従業員を公私にわたりサポートする福利厚生が充実しており、中には各社の事業特性を反映したユニークなものも存在します。

こういった事例は、企業が独自性を活かしているため、働きやすい環境を構築するための参考にすることが可能です。より魅力的な労働環境を整えれば、従業員のモチベーションアップや採用強化にも繋がるでしょう。

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