「福利厚生の対象は正社員限定なのでは?」「派遣社員は、派遣先企業の福利厚生を使えないと聞いたことがある」、そんな疑問や悩みを持っている方は少なくないでしょう。
たしかに、以前は正社員と派遣社員の間に福利厚生などの待遇格差が存在していたことは事実です。しかし、2020年の労働者派遣法の改正により同一労働同一賃金の推進が図られ、不合理な待遇格差は是正されることになりました。
福利厚生は「賃金」ではありませんが、給料以外の報酬やサービスに該当します。賃金と同じく不合理な待遇格差は見直しへと向かい、派遣社員でも正社員と同等の福利厚生を受ける環境が整ったのです。
ただし派遣社員の場合、派遣元企業と派遣先企業、どちらの福利厚生を利用できるのかという点で、少々複雑になっています。派遣社員の福利厚生について、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の違いを軸に解説します。
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派遣社員も福利厚生を受けられる
結論からいうと、派遣社員も福利厚生を受けられます。具体的には、以下の福利厚生が対象です。
- 派遣元企業が提供する「法定福利厚生」
- 派遣元企業と派遣先企業が提供する「法定外福利厚生」
ただし、以前は派遣社員への法定外福利厚生は「配慮義務」に留まっていました。福利厚生を提供しない、つまり不合理な待遇差が認められる場合においても、罰則などは規定されていなかったのです。
そのため、正社員が利用できる特別休暇や食事補助、レジャー施設優待制度などの法定外福利厚生を、派遣社員は利用できないケースもありました。このことが「派遣社員は福利厚生を受けられない」というイメージにつながっていたと考えられます。
なお、派遣元企業が提供する法定福利厚生は利用できていたため、実際には福利厚生がまったく無かったというわけではありません。一方、法定外福利厚生に関しては、正社員との間に確かな待遇差も存在していました。
しかし、2020年の労働者派遣法の法改正により、「同一労働同一賃金」すなわち「同じ労働なら給与や待遇も同じであるべき」という概念が導入され、待遇格差の是正が図られました。これにより、派遣社員も法定外福利厚生を利用できるようになったのです。
「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の違い
上述した「法定福利厚生」「法定外福利厚生」、2種類の違いについて確認していきましょう。
- 法定福利厚生:法律で規定が定められている福利厚生のこと。健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料などが該当する
- 法定外福利厚生:企業が独自に提供する、法定福利厚生に含まれない福利厚生のこと。通勤手当や住宅手当、慶弔金制度などが該当する
法定福利厚生は、企業を問わず基本的に同じ内容です。一方、法定外福利厚生の内容は企業によって大きく異なり、企業規模などによって充実度にも違いが見られる傾向があります。
法定福利厚生は、従業員を雇う企業の法的義務となっています。派遣社員は派遣元企業と雇用契約を結んでいるため、派遣元企業の法定福利厚生を受けられます。
法定外福利厚生についても、法改正によって派遣社員も正社員と同等の待遇となりました。なお派遣社員の場合は、法定外福利厚生については派遣元企業と派遣先企業からそれぞれ受けられる構造になっています。
また、法定外福利厚生のうち「教育訓練」と「福利厚生施設」に関するものについては派遣先企業が提供することになっており、それ以外のものは派遣元企業が提供するかたちになっています。
派遣元企業から受けられる法定福利厚生
派遣社員が派遣元企業から受けられる、法定福利厚生には以下のものが挙げられます。
- 社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険、子ども・子育て拠出金)
- 労働保険(雇用保険、労働者災害補償保険)
- 健康診断
- 有給休暇
- 産前産後休業(産休)
- 育児休業(育休)
これらは法律で具体的な内容が定められているため、基本的な内容は企業を問わず同様です。
また、福利厚生を受けるための要件もそれぞれ決まっています。たとえば社会保険はフルタイムでの勤務、あるいは所定労働時間や日数がフルタイムの3/4以上の場合、また「週所定労働時間20時間以上」「月額賃金8.8万円以上」「2ヶ月を超える雇用の見込みがある」「学生ではない」を満たす場合に加入対象となります。
派遣元・派遣先企業から受けられる法定外福利厚生
派遣社員が派遣元企業・派遣先企業から受けられる法定福利厚生にはさまざまな内容があります。まずは派遣元企業が提供する法定外福利厚生から見ていきます。
- 住宅支援:家賃補助・社宅・社員寮・住宅ローン補助など
- 各種給与手当:住宅手当・通勤手当・資格手当など
- 財産形成:財形貯蓄・社内預金・社内貸付など
- 慶弔金・見舞金:結婚祝い金・出産祝い金・災害見舞金など
- 特別休暇:リフレッシュ休暇・バースデー休暇・アニバーサリー休暇など
- 育児・介護支援:ベビーシッター料補助・男性従業員の育休制度など
- 食事補助:宅配型社食・ランチ代の補助など
- 柔軟な勤務制度:時短勤務・フレックスタイム・テレワークなど
- 資格取得や自己啓発の支援:書籍購入やセミナー受講の費用補助など
- レジャー優待:遊園地やテーマパークといったレジャー施設の割引など
- 旅行や保養所の利用補助:交通費や宿泊費、保養所の利用料金の負担や補助など
- 法定外健康診断:人間ドック・各種がん検診・PCR検査の費用補助など
ただし、法定外福利厚生は企業が独自に提供するものであり、その内容や充実度には企業に応じた差分があります。なお、最近では複数の福利厚生メニューをパッケージで提供するアウトソーシングサービスが多く登場しており、派遣社員への福利厚生を充実させている企業も増えてきています。
【参考】福利厚生を導入する方法|アウトソーシングするメリット・費用相場も解説
https://www.wantedly.com/hiringeek/organization/welfare_method/
続いて、派遣先企業が提供する法定外福利は以下のとおりです。
- 教育訓練:業務の遂行に必要な能力のための研修など
- 福利厚生施設:託児室や保育室・社員食堂・休憩室や、運動場・体育館・保養施設など
なお、法定外福利厚生は企業独自のサービスという側面もあるため、上記の区分けがすべて厳密に適用されているわけではありません。実際には、たとえば正社員の福利厚生として設置しているウォーターサーバーを派遣社員も使える、というような柔軟な運用がなされています。
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派遣社員に福利厚生を提供する目的
派遣法改正によって、正社員と派遣社員の間での待遇格差は無くなったことになります。ただし施行から間もないこともあり、実際の現場レベルでは待遇格差が一切無くなったとまでは言えないのが現状です。
しかし、派遣社員に福利厚生を提供し不合理な待遇差を是正することは、企業にとって大いに意義のある取り組みとなります。
- 求職者や従業員へのアピールになる
- 待遇差を縮めてモチベーションや生産性を高める
- 人材を定着させやすくなる
1.求職者や従業員へのアピールになる
社会全体で人材不足が進行し、採用市場が売り手市場の様相を呈しているなかで、求職者や従業員が福利厚生の内容を重視する傾向が強まっています。また、法的には派遣社員も正社員と同様の福利厚生を受けられるようになったとはいえ、待遇格差がまだ十分には解消されていない企業も存在します。
社員の就労形態に関わらず適切に福利厚生を提供することは、求職者や従業員に対する大きなアピールになります。
2.待遇差を縮めてモチベーションや生産性を高める
派遣社員の立場から考えれば、正社員と同等の待遇を受けられることは仕事へのモチベーションや企業への愛着の向上につながり、労働生産性を高める動機となりえます。
福利厚生制度の整備・提供には金銭的なコストや人的リソースが伴いますが、従業員の労働生産性向上による企業の業績へのポジティブな影響に目を向けるべきでしょう。
3.人材を定着させやすくなる
スキルや経験を考慮して採用する派遣社員は、派遣先企業にとっては貴重な人材です。しかし、正社員とは異なり派遣社員には契約期間が存在します。派遣先企業にとって必要な人材であっても、契約期間終了後にすぐに別の企業へ移ってしまうリスクは無視できません。
充実した福利厚生の提供により企業への愛着度を高められれば、必要な人材である派遣社員に長く働いてもらえる可能性が高まるでしょう。
派遣会社が提供する福利厚生事例
派遣元企業は、具体的にどのような福利厚生制度を整備しているのでしょうか。各企業の具体的な内容を見ていきます。
1.株式会社ネオキャリア
株式会社ネオキャリアでは、休日関連や家族・待遇関連、研修・育成関連など、さまざまな福利厚生制度を豊富に取りそろえています。仕事とプライベートの両面から社員をサポートすることで、安心して働きやすい環境の整備に取り組んでいます。
【休日関連の福利厚生】
成長を見逃さないDAY・夏季休暇・年末年始休暇・年次有給休暇(リフレッシュ休暇あり)・特別休暇・慶弔休暇・生理休暇・介護休暇・マタニティ休暇・産前産後休暇・育児休暇
【家族・待遇関連の福利厚生】
NeoFes(ファミリーイベント)・育児サポート手当・健康保険・雇用保険・労災保険・厚生年金保険・賞与制度
【研修・育成関連の福利厚生】
入社前研修・入社後研修・役職研修・ネオキャリア大学・ネオジェネ・ネオつく・ネオあす
【その他】
社員総会・各種表彰インセンティブ・持株会(持株会奨励金制度有り)・財形貯蓄制度・役職手当・交通費・お菓子販売
【参考】福利厚生こんなにたくさんあるの?!社員の「働きやすさ」を全面的にサポートする会社です!
https://www.wantedly.com/companies/executive-hakensaiyo/post_articles/389655
2.株式会社グラスト
株式会社グラストでは、社員がワクワクして働き、成長できる職場づくりを目指して、ユニークな福利厚生をそろえています。新しい制度を定期的に企画して導入したり、既存の制度をブラッシュアップしたりと..、社員の満足度を高める努力が図られています。
【株式会社グラストのユニークな福利厚生】
プロポーズ休暇・失恋休暇・サ活(サウナ活動の略)支援制度・アメニティ制度(制汗スプレーや汗拭きシート、ハンドクリーム、リップクリーム、ネクタイ、ストッキングなどの備品サポート)・ランチ代サポート制度・シングルサポート制度(お菓子やカップラーメンなどを無償提供)など
【参考】「多様性ある社員の成長を実現するために」GRUSTがユニークな社内制度をつくる理由
https://www.wantedly.com/companies/grust/post_articles/354386
3.株式会社ウィルオブ・ワーク
株式会社ウィルオブ・ワークでは、ワークライフバランスの充実や多様な働き方をサポートするための福利厚生が豊富に用意されています。休暇・休業制度や勤務制度といったベーシックな福利厚生に加えて、持株会制度や確定拠出型年金制度、住宅ローン金利優遇といった財産形成関連の福利厚生もそろっています。
【休暇・休業制度】
年次有給休暇・弔事休暇・子の看護休暇・産前産後休業・育児休業・介護休業・ファミリー休職(不妊治療や家族の看護・介護のための休職)など
【慶弔見舞金制度】
結婚祝い金・出産祝い金・傷病見舞金・弔慰金など
【勤務制度】
在宅勤務制度・Work@Home・フレックスタイム制・育児短時間制度・介護短時間制度・短日短時間勤務制度・パラレルワーク制度・モバイルワーク
【安全衛生】
健康診断・社内相談窓口・インフルエンザ予防接種など
【転任・社宅】
社宅利用・赴任一時金・単身赴任手当・住宅手当・帰省手当
【その他福利厚生】
資格奨励一時金・ウィルグループ従業員持株会制度・確定拠出型年金制度・住宅ローン金利優遇・レンタカー法人価格利用・グロービス学び放題など
【参考】株式会社ウィルオブ・ワーク
https://www.wantedly.com/companies/willof-work
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従業員が望む福利厚生には、さまざまな内容があります。また、福利厚生制度の充実は、派遣社員にも正社員と同等の待遇を提供し、仕事へのモチベーションや労働生産性を高める契機としても機能するものです。
Wantedlyの提供する福利厚生「Perk」
多様な属性の従業員が集まる企業の福利厚生の導入には多くのリソースがかかりがちです。そんな課題を解決するためには福利厚生のアウトソーシング化。代行サービスを利用することは有効な手段となります。
福利厚生サービス「Perk」は、各企業に代わって充実した福利厚生を提供するサービスです。ライフスタイル・グルメ・子育て・ファッション・旅行・など豊富な福利厚生メニューを初期費用無料、おひとり様月額350円〜ご利用いただけます。
まとめ
派遣社員であっても、派遣元企業や派遣先企業の福利厚生を利用することは可能です。
派遣社員の立場からは、仕事選びの際に派遣元や派遣先企業がどのような福利厚生をそろえているかをよく確認することが重要になります。また、企業の立場からは、待遇格差の是正の取り組みを推し進めることは、モチベーションや従業員定着率の向上の観点からも重要です。