優秀な人材の獲得競争が激化している近年。終身雇用の崩壊や働き方の多様化によって人材の流動化も加速し、人材不足に悩む企業が増えています。そこで注目されているのが、人材を定着させるリテンション・マネジメントです。
リテンション・マネジメントによって優秀な人材が定着するようになれば、組織力が強化できたり、採用コストを削減できたりと、企業競争力が高まります。「社員が辞めない会社」として、採用においても有利になることから、リテンション・マネジメントについて正しく理解し、実践したいと考える経営者や人事担当者の方も多いことでしょう。
本記事では、リテンション・マネジメントの意味やポイントを伝えると同時に、企業に人材が定着しない理由と、定着率を向上させるために実施すべき施策を解説します。
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リテンション・マネジメントとは
近年注目が集まっている「リテンション・マネジメント」とは、優秀な人材の流出を防ぎ、人材の持つ能力を発揮して成果を出せる環境を作るための人事戦略や施策を指します。
このような取り組みが広まった背景には、国内における人材の流動化があります。2020年9月に厚生労働省が発表した雇用動向調査結果によると、離職率は15.6%となっており、前年より1%増加(*1)。年々、人材の流動性は高まっています。
人材が社外に流出することで、採用や教育にかかるコストの増加、スキルの流出、職場のモチベーション低下など、さまざまなマイナスの影響が考えられます。変化の激しい今の世の中で、人材が入れ替わることによる生産性低下も、企業にとって大きなリスクです。
企業の持続的成長や組織力向上のためにも、積極的なリテンション・マネジメントを行なって優秀な人材の定着を図ることが重要です。
企業に人材が定着しない5つの理由
人材が定着しない企業には、どのような理由があるのでしょうか。ここでは5つの原因をお伝えします。
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1.仕事の要求度が高すぎる
仕事の要求度とは、業務を遂行する上でかかる肉体的負担や精神的負担、役割に対するプレッシャーなどのこと。要求度がその従業員の能力を超えるものであれば、仕事に対してストレスを感じるようになり、離職につながってしまいます。
特に優秀な人材の場合は、仕事のスピードが早く質も高いため、さらに要求度の高い仕事を任される……という循環が生まれがち。その結果、本人や周囲が気付かないうちにストレスを抱えてしまう恐れがあります。
2.裁量を持てない
自分の意見や考えに基づいて仕事をコントロールできるかどうかという裁量の有無も、重要な要素です。いくら意見を伝えても反映されなかったり、業務において決定権を与えられなかったりすると、職場に対して失望感を抱いてしまいます。
このような状態が続くと「どれだけ頑張っても無駄」「自分はこの職場に必要のない存在だ」という思いが生まれやすく、仕事へのモチベーション低下や離職を招きます。
3.業務に集中しづらい職場環境
在籍年数の少なさや若さを理由に雑務を多く与えられるなど、本来の業務に集中しづらい環境も、離職の原因となります。職場の人間関係のトラブルやパワハラといった精神的負担も、従業員の集中力を削いでしまいます。
優秀な人材が望むのは、自身のパフォーマンスを最大限発揮できる環境。業務と関係のないストレスによって集中できないと感じたら、離職する可能性が高まります。
4.企業の理念に共感できない
ひとつの企業で長く働くためには、その企業の目指す場所や掲げる理念に共感できるかどうかも重要なポイント。理念に共感できないと、仕事へのモチベーションが生まれず、働き続けることが難しくなります。
理念や目標が曖昧な企業も同様です。「頑張り続けたら何を達成できるのか」や「自分の仕事が社会にどんな影響を与えるのか」が分かりづらいため、日々の業務に意味を見出せず、結果的に離職につながる可能性があります。
5.キャリアパスが描けない
優秀な人材こそ、自身のキャリア構築に能動的です。チャレンジ精神や成長欲を持ち、新しい仕事やポジションに果敢に挑戦します。そのため、一度入社したら同じ仕事しかできなかったり、昇進の望みが薄く「挑戦的なキャリアパスが描けない」と感じたら、今よりも成長できる環境を探し始めてしまいます。
人材の定着率を向上させる施策
人材を定着させるためには、離職原因を突き止めて手を打つことが重要です。離職原因は企業によってさまざまですが、主に、仕事の負荷によるものと、仕事に対するモチベーションによるものの2つに分けられます。そこで、それぞれの原因に対して有効な施策をご紹介します。
仕事の負荷をケアする施策
業務において一定の精神的負荷や肉体的負荷はつきものですが、負荷が過剰になると離職を招きます。従業員の心身の負荷を減らすことで、ストレス低減やエンゲージメント向上を図ることができます。以下のような施策を行い、離職を防ぎましょう。
1on1ミーティングの導入
1on1ミーティングとは上司と部下が1対1で行うミーティングのことです。1on1では、部下のリソースを把握して業務内容を最適化することで、業務上の負荷の軽減が期待できます。また、上司と部下の相互理解が深まり、コミュニケーションの質が高まったり、部下の成長を促進する効果も期待できます。
継続的な実施が効果をもたらす施策であるため、週1回、月1回など定期的に実施する仕組みにするのが良いでしょう。
テレワーク制度を導入する
コロナ禍で多くの企業がテレワークを導入しました。オフィスに出社する必要がないため、業務効率が上がったりワークライフバランスが取りやすくなったりと、従業員にも企業にも多くのメリットがあります。
公益財団法人日本生産性本部の調査によると、組織で働く人の約6割が今後もテレワークを継続したいと思っているとのこと。テレワークができることを求人の要件とする人材も増えているため、優秀な人材の確保・維持には欠かせない施策だと言えます。
福利厚生を充実させる
充実した福利厚生は、従業員の働くモチベーションを維持するだけでなく、心身の健康を維持するという点においても重要です。例えば、住宅手当や医療補助があることで、従業員の健やかな暮らしが保たれます。休暇取得制度が整っていたり、リフレッシュできる施設が使えたりすると、心身の負荷をケアしやすくなります。
福利厚生を充実させれば、従業員を大切にしていることも伝わりやすいです。
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モチベーションを上げる施策
従業員がモチベーション高く働けているかも、人材を定着させるにあたって重要な要素です。
コロナ禍による業績不振から、従業員の給与やボーナスを削減した企業も多く、一社で勤め続ける不安から転職を考える人が増えています。また、テレワークによって企業と従業員の心理的距離が空いてしまい、頑張りが伝わりにくい環境が生まれました。これまで以上に、モチベーションを上げる施策の重要性は増しています。
適切な目標を設定する
従業員のモチベーションを高めるためには、各従業員の能力に応じた適切な目標設定が不可欠です。簡単すぎず難しすぎない、かつ達成するためには努力が必要な目標に向かうことで、並外れた集中力を発揮し、仕事に没頭するようになります。
その結果、成果を上げることができ、本人も成長を実感。仕事に対する満足感も得られて、モチベーションがさらに高まる、というポジティブなスパイラルが生まれます。
共感を軸にした採用をする
従業員が会社のミッションやビジョンへ共感し、大きな目的の中の一部となる感覚を得られるようになると、モチベーションは高まります。そのためにはまず、企業がミッションやビジョンを積極的に発信して、共感を軸にした採用を行うことが重要です。
ミッション・ビジョンを定期的に発信し、従業員が入社した後も常に共感できる状態にしておかなければなりません。企業の目指す方向について発信したり、トップと従業員がカジュアルに話せる場を作ったりして、共感し続けてもらえる仕掛けを作りましょう。
バリュー(行動指針)を浸透させる
モチベーションを高めるためには、従業員が自律して働ける状態にすることもポイントです。自律に必要なのは、従業員が組織のバリューを理解して、自らの意志決定で仕事を進めていくこと。
そのために、バリューを軸に人事評価を行うなど、「どのように行動すべきなのか」という指針が浸透する環境を作りましょう。特にテレワークが増えて顔を合わせる機会が減っている今、チャットツールを使って日々のコミュニケーションの中でバリューを意識させる仕組みも効果的です。
社内のキャリアパスを作る
働き続けた先にどのようなキャリアがあるのかを明確にすることで、将来を見据えて業務に取り組めるようになります。マネージャーを目指すのかスペシャリストとしてスキルアップを目指すのか、従業員が望むキャリアパスを汲み取って提供できる環境を作りましょう。
社内のロールモデル作りや、目指すキャリアに応じたスキルアップ支援、ジョブ・ローテーションなどの施策も有効です。
コミュニケーションを促進する
定期的に1on1を実施するなど、細やかなコミュニケーションを取ること仕事の負荷をケアするだけでなく、従業員のモチベーション維持にも効果的です。困りごとや悩みを都度ヒアリングして解決に導くことで、下がりかけていたモチベーションを引き上げることも可能です。
職場内のコミュニケーションを活性化することによって、人間関係のトラブル防止や精神的ストレス低減も図れます。
リテンション・マネジメントで人材定着率を上げ、企業競争力を高めよう
人材の流動化が進む中で注目を集めているのが、人材の流出を防ぐリテンション・マネジメント。人材定着率を向上させて企業の競争力を高めるためには、内容を正しく理解し、実践する必要があります。
リテンション・マネジメントで考えられる施策は、主に仕事の負荷をケアする施策とモチベーションを上げる施策の2種類。テレワークの導入や充実した福利厚生によって従業員の心身をケアし、適切な目標設定やビジョンへの共感、バリューを軸にした採用などでモチベーションを上げることがポイントです。
コロナ禍で従業員のモチベーションが低下するケースも考えられます。このような時期だからこそ、リテンション・マネジメントを実践して人材の定着率を上げていきましょう。
【参考】