個人事業主は福利厚生費を計上できるのか?|福利厚生費計上のポイント

近年、一般企業において福利厚生制度の充実が重要視されています。福利厚生を導入することで従業員の働きやすさが向上するだけでなく、条件を満たしていれば、かかった費用を福利厚生費として損金に算入できるため、経営側としてもメリットがあります。しかし、個人事業主の場合はどうなるのでしょうか。

そこで今回は、個人事業主が知っておくべき福利厚生制度について解説します。福利厚生費計上の要件やポイントについて、具体例を挙げながら紹介しているので、参考にしてください。

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福利厚生費とは

前提として、福利厚生とは、事業主が従業員に給与や賞与以外に提供するサービスで、従業員の生活の質向上や慰安などを目的としたものです。

福利厚生には、法定福利と、事業主が任意で行う法定外福利の2種類があります。主な費用は以下のとおりです。

法定福利
健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・労災保険料・雇用保険料など、事業主に負担が義務付けられた費用や、事業子ども子育て拠出金の事業者負担分など

法定外福利
家賃補助・生命保険・健康診断・社員旅行・スポーツクラブ・マッサージ・食事代など

福利厚生費とは法定外福利について要した費用のうち、一定の要件を満たすものになります。個人事業主も条件を持たしていれば福利厚生費の計上が可能です。

法定福利厚生についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
「法定福利厚生とは?法定外福利厚生との違いや種類、費用を紹介」

個人事業主でも福利厚生を利用できるケースとは

個人が事業を行う際には、単独経営・家族経営・複数経営(家族以外の従業員を雇用)の3パターンに分かれます。ここではどのような場合に福利厚生費を使えるのか解説します。

【単独経営の場合】計上できない

働いている人が自分だけの単独経営では、福利厚生費は利用できません。前述のとおり、福利厚生費は従業員のためのものであり、個人事業主・一人法人問わず事業主本人は従業員には該当しないため対象外となります。

【家族経営の場合】計上できない

従業員が自分と親族だけという家族経営の場合も、福利厚生費は計上できません。事業主と従業員である親族(以下専従者と表記)は生計が同一であり、家計のなかでお金が移動していると考えるからです。

【家族以外の従業員がいる場合】福利厚生を利用できる

家族以外の従業員を雇用している複数経営の場合は、福利厚生費の使用が可能です。ただし、あくまで従業員のために使用する費用であるため、事業主本人や家族のみを対象に使用した費用は、原則計上の対象外になります。

福利厚生費として認められる条件

従業員の福利厚生に要した費用のすべてが福利厚生費として認められるわけではありません。認定されるためには、全従業員に平等に適用されること、社会通念上妥当と思われる金額であることの両方を満たす必要があります。

条件を満たしていない費用は、福利厚生費として経費算入ができません。給与やその他の費用として計上します。

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全従業員に平等に適用される

福利厚生費として認められるには、会社で働いている従業員の全員に対して、平等に適用されることが条件です。正社員やパートタイマーなどの雇用形態も関係なく、全員が同じように活用できなければなりません。

社会通念上妥当と思われる金額である

福利厚生費に法的な上限は定められていません。しかし、相場とあまりにかけ離れた高額な費用は福利厚生費として認められないため注意しましょう。

福利厚生として利用できるサービス

福利厚生の導入を検討しているが、その内容や費用相場がわからず困っている方もいるのではないでしょうか。ここでは福利厚生として事業主が採用できる主なサービスを、福利厚生費として認められる条件や範囲とあわせて紹介します。

家賃補助

事業主が保有もしくは借り上げた住宅を従業員に貸与している場合は、事業主が負担する賃貸料相当額を福利厚生費に算入できます。

福利厚生費として計上できる条件は以下のとおりです。

・賃貸料相当額の50%以上を従業員が支払っている
・会社が所有する寮や社宅、もしくは会社名義で契約した賃貸住宅である
・賃貸住宅の場合、敷金・礼金なども会社が負担している

賃貸料相当額は、以下の3つを合計した金額になります。実際に支払う家賃とは異なるため注意しましょう。

・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
・12円×(その建物の総床面積(m2)/3.3(m2))
・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

なお、従業員から受け取る家賃が賃貸料相当額の50%未満である場合や無償貸与の場合は、賃貸料相当額との差額が給与扱いとなります。また、従業員が契約している住宅に対して手当を支給するケースも給与扱いとなり、福利厚生費としての計上はできません。

このような場合課税対象となるうえ、会社・従業員双方の社会保険料の負担も増えます。家賃補助は福利厚生制度の一環として有効ではあるものの、実施方法によって税務上の取り扱いが異なってくるため、注意が必要です。

食事代

従業員が残業や休日夜間の勤務をした際に生じた食費は、全額福利厚生費としての計上が可能です。

また、昼食など通常業務時に発生した食事代については、以下の要件を満たしていれば福利厚生費となります。

・事業主が食事代相当額の半分以上を負担している
・食事代相当額から事業主が負担する額を差し引いた金額が、1ヶ月当たり税別3,500円以下である

なお、忘年会や新年会などのレクリエーションに付随する食事代も、福利厚生費として扱うことができます。従業員全員が参加できるものであれば、個人事業主と専従者に掛かった費用も計上可能です。ただし、全員が参加しない2次会などの費用は、福利厚生費ではなく社内交際費として計上します。

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生命保険

生命保険の保険料は、加入対象が全従業員であれば福利厚生費とすることが可能です。

養老保険は以下の条件を満たす場合、保険料の1/2を福利厚生費、残りを積立保険料として資産計上できます。

・契約者は事業主で、被保険者は従業員、満期保険金の受取人は事業主、死亡保険金の受取人は従業員の遺族であること
・保険金額に差がある場合には、職種・年齢・勤続年数などによる合理的な差であること

満期保険金の受け取りは事業主のため、従業員の退職金資金として活用することも可能です。

なお、従業員の死亡・高度障害時に保険金が支払われる掛け捨て型の定期保険の場合は、資産性がないため全額福利厚生費として計上可能です。

いずれの場合も、事業主や専従者分の生命保険料は、福利厚生費とすることはできません。個人の生命保険料控除を活用します。

健康診断

労働安全衛生法に基づき、事業主には年に一度、従業員に健康診断を受けさせる義務があります。この健康診断の費用は事業主が負担する必要がありますが、福利厚生費に計上することができます。

加えて、人間ドックなどさらに手厚い検診を福利厚生として受けられるようにする場合、従業員全員が対象であれば福利厚生費として計上できます。ただし、宿泊プラン付きなど常識の範囲を超える高額な健康診断や、従業員が診断費用を立て替えた場合には、福利厚生費に計上できず給与扱いとなります。

なお、個人事業主本人及び専従者の健康診断費用は福利厚生費の対象外です。各保険組合や市町村で実施している健康診断を利用すれば、費用を抑えられます。

社員旅行

社員旅行にかかる費用も、以下3つの条件を満たしている場合は福利厚生費へ計上可能です。

・従業員全員を参加対象としていること
・旅行期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は機内時間を除く)
・従業員の50%以上が参加すること

社員旅行は、福利厚生のなかでもレクリエーションに関する支出とされます。そのため、従業員とともに事業主本人や専従者が参加する場合の旅行費用は、同一条件であれば福利厚生費として含むことが認められています。

なお、上記の要件を満たしていても、以下の取り扱いを行った場合には福利厚生費に計上することができず、給与として扱われます。

・参加しない従業員に、代わりに旅行費用相当の金銭を支給した
・参加者が事業主と専従者のみであった
・費用が社会通念上の妥当な範囲を超えている

社会通念上の妥当な範囲は明確に定められていませんが、過去の税務調査事例を参考にすると、1人10万円を超えると福利厚生費として認められなくなるリスクがあるといわれています。豪華な社員旅行にならないよう注意しましょう。

スポーツクラブ

スポーツクラブやジムも、法人契約により全従業員が利用できる状況であれば福利厚生費として計上できます。個人事業主はスポーツクラブと法人契約を結ぶことはできませんが、個人事業主で専従者以外の従業員を雇用している場合には、以下のような方法を取ることで福利厚生費として認められる可能性があります。詳細は税理士に相談すると良いです。

・屋号で契約し、従業員が利用した分のみを計上する
・従業員全員に契約させ、費用負担を事業者とする

ただし、いずれの場合も事業主と専従者の利用は計上の対象となりません。また、福利厚生であることを明確にするために、利用規定の整備や利用実態の記録などを行う必要があります。家族以外の従業員がまったく利用していないと、福利厚生費と認められなくなるリスクがあるため対策が必要です。

マッサージ

マッサージの取り扱いもスポーツクラブの場合と同様に、従業員全員が利用できる契約形態であれば福利厚生費と認められる可能性があります。こちらも、事業主や専従者の利用は対象外です。

マッサージ師の拠点出張型や社内在中型など、サービスの提供パターンはいくつか考えられますが、多く見受けられるのは契約施設へ従業員が訪問する来院型です。この場合は施術内容を指定することで、全従業員が同一の待遇を受けることができます。

まとめ

個人事業主であっても、親族以外の従業員を雇用している場合は福利厚生費を利用できます。ただし、一部の例外を除き事業主や専従者の利用については福利厚生費としての計上はできないため注意しましょう。

福利厚生は上手に活用することで従業員の満足度が上がるだけでなく、節税効果も期待できます。現在従業員を雇用している方はもちろん、これから雇う予定がある方は、福利厚生について正しい知識を身に付け、適切な対応をすることが求められます。

福利厚生の計上可否については、個々の状況により判断が難しいケースも少なくありません。税理士と相談しながら進めていくようにしましょう。

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