会社を休職することになった場合、福利厚生を受けられるのかお悩みの方もいるのではないでしょうか。住宅手当などを受けられないとなると、家計に影響を及ぼす可能性があります。
そもそも休職とは、労働契約は維持したまま、労働の義務だけが免除される制度のことで、福利厚生の一種です。ただし、休職中にほかの福利厚生が受けられるかどうかは会社によって異なります。
今回は、休職中の福利厚生について解説します。給与や家賃補助の取り扱い、休職中に利用可能な制度などもあわせて紹介しますので、休職中の生活面が心配な方はぜひご覧ください。
Wantedlyの提供する福利厚生「Perk」
多様な属性の従業員が集まる企業の福利厚生の導入には多くのリソースがかかりがちです。そんな課題を解決するためには福利厚生のアウトソーシング化。代行サービスを利用することは有効な手段となります。
福利厚生サービス「Perk」は、各企業に代わって充実した福利厚生を提供するサービスです。ライフスタイル・グルメ・子育て・ファッション・旅行・など豊富な福利厚生メニューを初期費用無料、おひとり様月額350円〜ご利用いただけます。
休職制度そのものが福利厚生のひとつ
休職制度とは、業務とは関係のない社員の個人的な理由で一定期間休むことを会社が了承し、解雇を猶予する制度のことです。労働契約は継続しているものの、契約で義務付けられている労働が一時的に免除されます。
法律に基づき定められる「休業制度」とは異なり、休職制度は法律で整備を定められている制度ではなく福利厚生の一種です。導入するかどうかは自由に判断できるため、会社によって導入の有無や休める理由・期間などが異なります。
ただし、就業規則の「休業に関する事項」の書きぶりから、休職制度が労働契約の一部にあたると判断される場合は、会社に制度の導入が義務付けられています。
休職中にほかの福利厚生は利用できる?
福利厚生には、法定福利厚生と法定外福利厚生があります。このうち、法定福利厚生に関しては休職中も受けることができます。
それぞれの違いは下記の通りです。
・法定福利厚生…法律で決められている福利厚生。社会保険料を会社が一部または全部を負担することなどが該当する。
・法定外福利厚生…会社独自で定めている福利厚生。住宅手当(家賃補助)や通勤手当、健康診断補助などが該当する。
つまり、厚生年金保険料や健康保険などの社会保険料は原則全部を負担する必要はありません。
一方、住宅手当(家賃補助)や健康診断補助などの法定外福利厚生について、休業中も利用できるかどうかは各会社の方針次第です。
就業規則に休業中でも支給する(福利厚生が適用される)旨の記載があれば受け取ることが可能です。
その際、なぜ休職したのかによって福利厚生の対象となるかを定めている場合もあります。福利厚生に関する就業規則を確認する際は、休職の種類についても記載されているかを確かめましょう。休職の種類について、詳しくは記事後半で紹介します。
休職中でもボーナスは支給される?
休職中のボーナス支給に関して、多くの人が疑問を持っていることでしょう。結論から言うと、休職中のボーナス支給は企業の就業規則や賃金規定によって異なります。また、公務員の場合は基本的に支給されることが多いです。
ここでは休職中のボーナス支給の具体的なポイントについて詳しく解説します。
企業の就業規則によって支給有無が異なる
まず、休職中のボーナス支給に関して、法律上の決まりは存在しません。つまり、労働基準法やその他の労働関連法令では、休職中のボーナス支給について明確な規定はないのです。そのため、ボーナスが支給されるかどうかは、各企業の就業規則や賃金規定によって決まります。
具体的には、企業の就業規則や賃金規定にボーナスの支給条件が明記されている場合、それに従って支給されるかどうかが判断されます。
例えば、就業規則に「休職中もボーナスを支給する」と明記されていれば支給される可能性がありますが、そうでなければ支給されない場合もあります。企業によっては、一定の条件下で、休職中でもボーナスを支給されるケースもあるようです。このため、休職前に自分の会社の就業規則や賃金規定を確認しておくことが重要です。
また、ボーナスの支給に関しては企業の業績や個人の評価が大きな影響を与えることが多いです。休職中であっても、過去の勤務実績や企業の業績が良好であれば、ボーナスが支給される可能性が高まります。逆に、企業の業績が悪化している場合や、休職期間が長期にわたる場合には、ボーナス支給が見送られることも考えられます。
さらに、企業によっては休職中の社員に対して特別な配慮を行い、経済的な支援を行うケースもあります。例えば、育児休業や介護休業などの場合、法定の給付金以外にも独自の手当や支援金を支給する企業も存在します。これらの支援金がボーナスとは別に提供される場合もあるため、休職中の経済的な負担を軽減するために、企業の福利厚生制度をよく確認しておくことが大切です。
支給される場合は休職期間によって変動する
休職中でもボーナスが支給される場合、その支給額は休職期間によって変動することがあります。以下に、具体的な例を紹介します。
査定対象期間を全て休職した場合
査定対象期間を全て休職していた場合、通常のボーナス支給額から大幅に減額されるか、まったく支給されない可能性があります。多くの企業では、ボーナスの査定期間中に勤務実績がない場合、ボーナス支給対象外とする規定を設けています。
例えば、企業の規定で「査定期間中に一定以上の勤務日数が必要」とされている場合、全期間を休職しているとその条件を満たさないため、ボーナスが支給されないことが考えられます。
査定対象期間に勤務実績がある場合
査定対象期間中に一部でも勤務実績がある場合、その期間に応じたボーナスが支給されることがあります。例えば、査定期間が6か月で、そのうち3か月を勤務していた場合、通常のボーナス支給額の半分が支給されることがあります。
勤務実績に応じた支給額の算定方法は企業ごとに異なりますが、一般的には勤務日数や業績評価を基に計算されます。これにより、部分的な勤務でも一定のボーナスを受け取ることが可能です。
休職期間中に有給を消化した場合
休職期間中に有給休暇を消化した場合、その期間は勤務実績とみなされることが多いため、ボーナス支給額に影響を与える可能性があります。有給休暇を消化した日数分だけ勤務実績としてカウントされるため、その分、ボーナスが増加するケースもあります。
例えば、休職期間中に10日間の有給休暇を取った場合、その10日間は勤務日数として計上され、ボーナス算定の際に有利に働くことがあります。ただし、この取り扱いも企業の規定によるため、詳細は自社の就業規則を確認することが重要です。
公務員の場合は基本的に支給される
公務員の場合、休職中でもボーナスが支給されるのが一般的です。公務員のボーナスは査定期間が半年ごとに区切られており、その期間内に勤務実績があればボーナスが支給されます。ただし、休職期間の長さに応じて支給額が変動するため、全額が支給されるわけではありません。
具体的には、査定期間のうち休職していた期間が長ければ長いほど、ボーナス支給額が減額されます。例えば、半年間の査定期間のうち、3か月を休職していた場合、通常のボーナス支給額の半分が支給されるというように、休職期間がボーナス支給額に直接影響します。このため、公務員の方は自分の休職期間がどのようにボーナス支給に影響するかを事前に確認しておくことが重要です。
また、休職期間が長期にわたる場合、支給額の減額幅が大きくなることもあります。特に、育児休業や病気休暇など、法定の休暇制度を利用している場合でも、支給額の調整は避けられません。したがって、公務員であっても休職期間とボーナス支給額の関係については十分に理解しておく必要があります。
まとめると、公務員の場合、休職中でもボーナスは基本的に支給されますが、その支給額は休職期間の長さに応じて変動します。休職前に査定期間や勤務実績について確認し、ボーナスにどのような影響があるかを把握することが大切です。
ボーナス以外に休職中に利用できる制度
休職中は基本的に無給になりますが、福利厚生以外に利用できる公的給付があります。代表例は次の5つです。
・傷病手当金
・労働者災害補償保険
・出産手当金
・育児休業給付金
・介護休業給付金
各制度の内容や申請条件などを解説します。
傷病手当金
病気やけがで休業する際に利用を検討したいのが傷病手当金です。
傷病手当金は、健康保険から支給される公的給付で、病気やけがが原因で3日以上休んだとき、4日目以降仕事ができない期間中支給されます。支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。
なお、病気やけがが原因で休んでいる期間中に、傷病手当金の支給額を超える額の報酬などを受け取っている場合は、傷病手当金の支給を受けられません。
具体的には、下記のような支給を受けている場合、傷病手当金の支給額が調整、もしくは不支給となります。
・給与の支払い
・障害厚生年金や障害手当金の支給
・老齢退職年金の支給
・労災保険からの休業補償給付
・出産手当金の支給
傷病手当金の支給額は、支給開始日以前の12か月の各標準報酬額を平均した額の2/3です。傷病手当金は、傷病手当金の申請書に医師の診断書などを添えて、加入中の健康保険に提出して申請します。申請後、傷病手当金が支給されるまでには、1か月から2か月程度かかります。
労働者災害補償保険
業務や通勤に関する病気やけがを理由に休業するときは、労働者災害補償保険法に定めのある労働者災害補償保険を受給できる可能性があります。労働者災害補償保険の対象となる災害は、業務中の事由が原因である「業務災害」と、通勤時の事由が原因である「通勤災害」の2種類です。
支給金額は、休業補償給付が1日あたり給付基礎日額の60%、休業特別支給金が1日あたり給付基礎日額の20%です。休業して4日目から支給を受けられます。給付を受けるためには、業務や通勤に関する病気やけがの療養が必要で労働ができないこと、休職する間に給与を受け取っていないことなどの条件を満たす必要があります。
労働者災害補償保険は、指定の医療機関を受診した上で請求書を作成し、労働基準監督署に提出して申請します。会社によっては申請時の手続きを代行している場合もあるので、自力での申請が大変なときは確認してみましょう。
出産手当金
出産手当金は、出産のために休業している場合に受給できる可能性がある公的給付です。休業中に会社から受け取る給与が出産手当金の支給額を下回るようであれば、差額を受給できます。健康保険に加入していて、妊娠4か月以降の出産であれば対象です。
支給額は、支給開始日以前の12か月の各標準報酬額を平均した額の2/3です。出産手当金を受け取れるのは、出産日以前42日から出産日の翌日以降56日までの期間となっています。
出産手当金を受給するには、協会けんぽや健康保険組合など加入中の健康保険に、出産手当金支給申請書を提出して申請することが必要です。申請書には、本人が記入する箇所のほかに、医師または助産師や事業主の記入欄もあります。なお、申請は出産前と出産後に分けて行うこともできます。
育児休業給付金
育児休業を取得する際は、育児休業給付金の対象となる場合があります。育児休業給付金とは、原則として、1歳未満の子を養育するために育児休業を取得しそのほかの要件を満たすと、雇用保険から受給できる公的給付です。
雇用保険に加入しており、育児休業開始日からさかのぼって2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あることなども、支給要件となっています。要件を満たしていれば、性別に関係なく受給できます。
支給額は、育児休業を開始してから180日目までは休業開始時賃金日額の67%、181日目以降は50%です。支給期間は、原則として子どもが1歳になるまでですが、保育園が見つからないなどの一定の要件を満たせば、2歳まで延ばせます。
育児休業給付金の申請手続きは、事業所の所在地を管轄するハローワークに、育児休業給付金支給申請書と賃金台帳などの添付書類を添えて行います。
介護休業給付金
介護休業給付金は、2週間以上にわたる常時介護が必要な家族のために介護休業をする場合に支給される公的給付です。家族には、配偶者・養父母を含む父母・養子を含む子・養父母を含む配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫などが含まれます。
受給要件として、介護休業の開始日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あることなどが必要です。受給できる上限は、同一の家族について最大93日間、3回までと定められています。1日あたりの支給金額は、休業開始時賃金日額の67%です。
申請手続きは、在職中の事業所を管轄するハローワークに、介護休業給付金支給申請書や介護休業申出書などの必要書類を提出して行います。
休職の種類についてもチェックしておく
休職制度と一口にいっても、いくつか種類があります。休職の種類によって福利厚生の対象となるかを定めている場合もあるため、就業規則を確認する際の参考として、それぞれの違いを押さえておきましょう。
休職制度の種類
・病気休職
・事故休職
・起訴休職
・調整休職
・自己都合休職
休職の種類ごとの取得条件や注意点について解説します。
病気休職
病気休職とは、業務や通勤とは関係がない病気やけがを理由に、長期間働けない場合に取得する休職のことです。制度の名称は会社によって異なり、「私傷病休職」や「傷病休職」などと呼ばれることもあります。
なお、業務や通勤に関係する病気・けがなど労働災害に該当する場合は、病気休職ではなく、労働基準法や労災保険法で定められた補償を受けながら休業することになります。労働災害と認められるには、病気やけがと業務との因果関係を立証することが必要です。
休職制度については基本、会社に導入義務はありませんが、病気休職は比較的多くの会社が導入しています。病気休職の対象となる傷病や取得条件・休める期間などは、会社によってさまざまです。病気休職の制度内容や取得条件については、一般的に就業規則などに定められています。
事故休職
事故休職は「事故欠勤休職」とも呼ばれ、病気やけが以外の自己都合による休職のことです。一般的に、そもそも出社できない事情があるケースや、就労を続ける適性があるのか疑わしいケースなどに事故休職は使われます。
例えば、刑事事件に巻き込まれて疑いをかけられている場合や、すでに逮捕・拘留されているといった場合が事故休職の対象です。また、親の介護が必要になり長期間休まざるを得ないときに事故休職の対象となることもあります。
「事故」休職という名称ながら、交通事故のようないわゆる「事故」に遭った際に利用する休職ではない点に注意が必要です。交通事故の場合は、プライベートなら病気休職を、勤務中なら労働災害による休業を利用することになります。
起訴休職
起訴休職は、社員が刑事事件の被告として起訴された場合に利用される休職制度です。社員の自己都合による休職であるものの、起訴されたからといってすぐに起訴休職の対象となるわけではありません。
会社側が下記のような理由から「会社の利益を守るためには、出社しないほうが良い」と判断した場合に休職扱いとなります。
・起訴された社員が出社すると職場が混乱し、業務に支障をきたす
・休職させないと会社の信用問題に発展しかねない
休職の期間は会社によって異なり、一定の期間となっているケースや、判決が確定するまでとなっているケースなどさまざまです。判決が確定した後は、刑事処分の内容に応じた懲戒などが行われます。
調整休職
調整休職とは、ほかの制度との調整をする目的で認められる休職制度のことです。ほかの制度との調整とは、具体的に下記のようなケースがあげられます。
・関連会社やグループ会社への出向
・労働組合業務に従事
現在の会社について退職処理することなく関連会社やグループ会社に出向する「在籍出向」をする際は、出向元である現在の会社では出向期間中、調整休職を取得します。籍ごと出向先に移る「転籍出向」では、調整休職は利用しません。なお、出向時の調整休職について、「出向休職」と呼ぶ場合もあります。
また、労働組合によっては、会社の業務時間中に労働組合の業務が発生する「労働組合専従者」を置くことがあります。労働組合専従者は、勤務時間中に会社の仕事ができないので、調整休職の取得が必要です。労働組合業務に従事するための調整休職は、「組合専従休職」とも呼ばれます。
自己都合休職
自己都合休職は、社員が個人的に希望する活動や取り組みをする目的で利用できる休職制度です。具体的には、海外留学やボランティア活動・自己啓発のための研修参加・業務に直接関係ない資格の取得などがあげられます。自己都合休職は、会社によっては「依頼休職」の名称で導入されています。
自己都合休職はこれまで紹介した休職制度とは異なり、休職する理由がやむを得ないものではないのが特徴です。繁忙期がある職場など、同じ部署の社員に負担がかかる場合は、前もって相談し、周囲の理解を得る必要があります。なお、どのような活動であれば自己都合休職が認められるのかなどの取得条件については、会社によって異なります。
自己都合休職を取得する場合は、無給であっても社会保険料の支払いが発生するので、振込を忘れないように気を付けましょう。
まとめ
福利厚生の一種である休職制度は、法的に導入が義務付けられたものではないため、導入状況は会社によって異なります。自己都合による休職中には、基本的に給与などは支給されませんが、会社によっては支給される場合があるので、確認しておきましょう。
また、休職中は、傷病手当金・労働者災害補償保険・出産手当金・育児休業給付金・介護休業給付金など、複数の公的給付が利用できます。対象になる制度は必ず利用し、少しでも生活費の不安などを軽減しましょう。