ナイル渡邉が気になる、あの会社の採用広報 #3 キャディ浅野 麻妃氏|わずか3年で15人から220人へ拡大。MVCフィットを軸に採用チャネルの底上げを狙う

採用や広報、制度設計などに携わってきたナイルの渡邉慎平氏が、「採用広報」で注目している企業を訪ね、実態をお聞きする本企画。

今回は2017年に創業したキャディです。8月に総額80.3億円の資金調達を行い、これまでの累計調達額は99.3億円。従業員数も200名を突破するなど、短期間で成長を遂げています。採用広報はもちろん、どのような経営・人事戦略を掲げ、施策として取り組んでいるのか。創業間もないころにジョインし、成長をその目で見てきた浅野麻妃氏に聞きました。

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ナイル株式会社
カルチャーデザイン室 マネージャー
渡邉慎平 氏

慶應義塾大学卒業後、ナイル株式会社(当時ヴォラーレ株式会社)に新卒入社。300社以上のデジタルマーケティング支援に携わったのち、2018年5月に人事へ異動し、採用と広報を所管。現在はオウンドメディアの運営をはじめとする、採用広報と採用マーケティングを担当。

キャディ株式会社
広報責任者
浅野麻妃 氏

塾講師からITベンチャーに転職後、法人営業を経て採⽤⼈事と社⻑秘書を兼任したのち広報立ち上げを経験。2018年12月よりキャディ初のコーポレートメンバーとしてジョイン。現在は全社の広報・ブランディングに加え、採用人事を務めている。

製造業のサプライチェーン全体を再定義する受発注プラットフォーム

渡邉慎平氏(以下、渡邉):本日はよろしくお願いします。キャディさんは、今夏、シリーズBラウンドで資金調達を実施されたこともあり、ぜひお話を聞いてみたいと思っていました。はじめに、事業内容をご紹介いただけますか。

浅野麻妃氏(以下、浅野):こちらこそ、よろしくお願いします。キャディは製造業に特化した受発注プラットフォーム「CADDi」を開発・提供しています。これまで、製造メーカーは装置や設備を作る際、購買や調達担当者が設計図面をもとに部品を製造できるサプライヤーを探して数十社と相見積もりを取る、品質条件をすり合わせる、案件管理をするなどの工数が発生していました。大きな機械や設備では部品点数は数千点以上におよび、調達コストは膨大です。

一方サプライヤーサイドを見てみると、8割以上が9人以下の零細企業。すると各社強みと言える加工領域は非常に細分化しているのですが、その強みが可視化されていない。そのため、調達側は価格を下げる手段として相見積もりをするしかなく、またサプライヤーも受注するためには自社が得意としない(またはできない)加工も含めて受注するしかなく、結果多重下請け構造を生んでいます。

渡邉:なるほど。品質・コストどちらにとってもよくないことは明白ですね。

浅野:そこで、弊社で提携している全国のパートナーと呼んでいる町工場の技術や得意分野などの情報をデータベース化しています。メーカーさんから依頼があった図面データを解析し、自社で開発したアルゴリズムをベースに加工工程ごとの価格を自動で算出。どの部品をどの町工場で作るのがQCD(クオリティ・コスト・デリバリー)において最適かをアレンジしたうえでサプライチェーンを構築し、最終納品責任まで負います。多重下請け構造から「強みをベースにフラットに繋がる構造」への変革をリードする、製造業における日本発のグローバルプラットフォームを目指しています。

渡邉:大手機械加工メーカーも含め似たようなサービスがありますが、キャディさんの強みはどのあたりなのでしょう。

浅野:既存のサービスは設計者向けのものが多い一方「CADDi」は、主に調達担当者向けのサービスとなります。顧客対応、生産管理、品質検査、物流、納品まで管理し、最終的な「製造責任」を負っています。CADDi自らが現場のオペレーションを担うことで暗黙知を形式知にし、業界ごとにバラバラな商慣習にデファクト・スタンダードを構築することに挑戦しています。

採用広報はパブリック・リレーションズの一環。MVCをベースに発信の”芯”をつくる

渡邉:まさに、製造業の仕組みそのものを変革するシステムですね。キャディさんが創業されたのが2017年で、浅野さんは会社がこれからグロースしていくタイミングにジョインされたそうですね。当時の組織の状況を教えてもらえますか?

浅野:私が入社したのが2018年の末で、当時はシリーズAの調達直前でメンバーはまだ15名ほどでした。CTOが経理や労務も兼務している状況の中、私はコーポレート部門の1人目である広報職として採用されたんです。実際には、採用などの人事業務も行っていましたし、その時々の全社フォーカスが変わるたびにコミュニティマネージャーなど、多岐にわたる業務に携わっていきました。

渡邉:コーポレート部門の1人目採用が広報とはユニークですね。いまは何名ほどのメンバーがいますか?

浅野:220名ほどですから、私が入社してから3年で約13倍に増えていることになります。ただ人材は現在も足りていない状況で、全職種で絶賛募集中。1年後には現在の倍以上の500名体制を目指しています。

渡邉:すごいペースでの拡大ですね!弊社も50億円調達して年間100名以上採用しており、その人数の採用の取り組みは参考になりそうなので、ぜひ聞きたいです。短期間で急激に組織が拡大している裏側で、採用に対してどんな意識で取り組んできたのでしょう。

浅野:キャディのカルチャーになりますが、目標は常に「ムーンショット」なんです。弊社のミッション自体が「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」と非常に大きなことを掲げているため、事業計画にアラインする採用目標も必然的にムーンショットな数字になります。採用が進まないと事業目標も達成できないので、代表の時間の約4割は採用に割いていますし、面接も人事だけでなく一定レイヤー以上のメンバーは巻き込み対応できる体制を作っています。

渡邉:経営陣が前のめりで採用にコミットするのは重要ですよね、弊社役員の考えも同様です。採用に対する経営陣の姿勢は、会社全体の採用活動にも影響を与えますし。採用広報についての根底の考え方を教えてもらえますか。

浅野:採用広報はあくまで全社PRの一環という位置づけであり、ブランディングでもあると捉えています。そのため、パブリックリレーションズ全般での施策が結果として採用広報に結びついている感覚です。

パブリックリレーションズにおけるステークホルダーはメディアだけでなく顧客やパートナー、採用候補者から投資家、社員まで幅広く対象となります。誰に向けたメッセージなのかを意識する必要はありますが、完全に切り分けることはできません。どの面から見ても矛盾のない、一貫性・統一感のあるイメージを伝えていくためには、コアになるキーメッセージを策定し、それに基づいた発信を強化する必要があると考えます。発信の”芯”をもつイメージですね。

渡邉:露出を増やすことで会社の概要を多くの人に伝えられる一方、具体的な仕事内容までを伝えるのは難しいように思います。にもかかわらず、キャディさんは大手メーカー出身者など、優秀な人材を採用しているイメージがあります。ディアを介したメッセージ発信の際に意識していることはありますか。

浅野:前提としてキャディの採用で最も重視していることはミッション、ビジョン、カルチャー(MVC)のフィットです。会社としての発信やメディア露出の際はMVCが伝わるメッセージやコンテンツを意識します。短期間で組織の建て付けなどもダイナミックに変わってしまうタイミングでもあるので、細かい仕事内容や職種の名前などは少し抽象化した表現を使うようにしています。

一方手触り感のある「現場の声」や「旬のキャディ」に触れられることも重要だと思っていて、メンバーが書いたnoteやTech Blogを定期的に発信したり、テーマごとにイベントを開催しています。

渡邉:製造業で、かつ採用職種ごとに発信していくとなると、専門的に見えすぎて正しく理解してもらうのが難しそうですね。

浅野:はい。実はキャディに転職する人の過半数は非製造業出身者なんです。そのため、専門的な表現に寄せすぎてしまっても一部の人にしか伝わらない表現になってしまうので、バランスは難しいですね。また、代表がコンサルティングファーム出身だからか、実際はコンサルタント出身者はごく少数しかいないのに、マジョリティだと思われていることもしばしば。そういった受け手との認識ギャップを埋めるべく、コンテンツの発信設計はおこなうように工夫しています。

渡邉:特定のイメージに偏りすぎないように、発信するコンテンツの量や種類でバランスをとっているんですね。弊社の場合も、モビリティ事業の急成長に伴い、フェーズによって発信方法やコンテンツバランスを変えてきました。実際に発信方法を変えてから、すぐに候補者がキャディに対して抱くイメージは変わりましたか?

浅野:実際、候補者からの反応は発信を強化してから半年から1年ほどタイムラグがあるように感じます。会社のフェーズが変わると共に、採用に求める要素も少しずつ変化し、そうするとまたそこに合わせた認知形成が必要になってくるんですよね。一朝一夕でできることではないので、いつまでもイタチごっこのような感じですが、地道にコツコツやるしかないと思います。

クロスチャネル施策のポイントは「フォーカス」と「捨てる」

渡邉:組織の実状と世の中の認知の間でのタイムラグはどうしても発生しますよね。このタイムラグをいかに縮めていくのかというのは、まだまだ工夫の余地がありそうです。コンテンツを発信するメディアや、採用チャネルの使い分けで意識していることはありますか。

浅野:ターゲットごとにメディアの使いわけは常に意識していかなければならないなと思いつつ、ここは悩みながら進めているところではあります。現段階では、転職顕在層がメインのWantedlyでは人起点でアトラクトできる社員インタビュー記事を中心に発信。転職潜在層も含めた幅広いテーマ接点で多様なセグメントにリーチできるnoteではイベントレポートや社員が書いた記事がメイン。Twitterはそれら含めイベントや登壇情報、プレスリリースなども含めたフローの最新情報をキャッチアップできる場所として活用しています。

渡邉:使い分けで悩ましいのは、オウンドメディアだと数字を追いやすいですが、Wantedlyやnoteだと、別で管理しなければなりませんし、サービス間でユーザーの遷移データを計測しづらいという課題もあります。サービス間のデータ連携や数字管理などはどのようにされていますか。

浅野:無理にデータ連携しようとしたり、採用計画から逆算してひたすらPVを追っていくといったことはしてないですね。一般的に採用経路はオーガニック、ダイレクトスカウト、人材紹介、リファラルなどそれぞれ分けて管理していることも多く、採用広報はその中でもとくに「オーガニック」の流入を高める施策として捉えられがちです。しかしどの経路で流入したとしても、自社で発信しているコンテンツに一つも触れずに内定承諾まで至るケースってほとんどないですよね。つまり採用広報自体は結局全チャネルの底上げをするような役割を果たしていることになります。

渡邉:弊社でも、とある候補者が人材紹介経由でナイルのことを認知したのに、紹介フィーがかかるとの理由でオーガニックで応募してきたことがあります。全チャネルの地道な施策が後々となってから、いろいろなところでジワジワと効いてきますよね。どこで認知されるか、何がきっかけで応募されるかはわからないので、全部やれることはやる。

浅野:理想を言えば、もちろん全チャネルに全力を注げられたらいいと思いますが、リソースの限界があるベンチャーではそうもいきません。言葉にするとシンプルですが、結局は「フォーカスすること」と「捨てることを決めること」の2つが重要だと考えています。

渡邉:なるほど。そんな潔さを持っていながらも、キャディさんでは、リファラルやイベント開催イシュー採用などそれぞれの施作がリッチだという印象を持っています。どのようにメンバーを巻き込んでいるのでしょうか。

浅野:リファラル採用はメンバーがまだ数十名のころから進めました。初期は私がそのプロジェクトのリードをさせてもらっていたんですが、リファラル採用というと「採用」がゴールな感じがしてハードルが高い気がしたんですよね。採用の手前には必ずその会社の「ファンになる」という過程があるだろうと思って、社内へのメッセージも「リファラル採用はキャディのファンの輪を広げるような取り組みです」としました。そうしたことでファン化に繋がる活動として個人の発信も増えていきました。

渡邉:すぐに採用に繋がる結果を求めるのではなく、ファンを増やす。たしかにそれなら取り組む上でのハードルは下がりますよね。しかし、SNSで発信したり、知り合いに声をかけることが苦手なメンバーもいませんか。

浅野:はい、たくさんいますし、私も広報ですが発信はそこまで得意ではないので気持ちはわかります(笑)。最初は少しずつ火をつけていくように、少しでもやってくれそうなメンバーに声かけすることからはじめました。「⚪︎⚪︎さんにはぜひ〜をテーマに記事を書いてほしいです!」と期待を明確に伝えることも有効かと思います。少しずつ発信が増えて、周りへの波及や反応が見えはじめると、「自分もやってみようかな」と挑戦してくれる人が徐々に広がっていきましたね。

ポイント・チーム制とすることでコミュニケーションの醸成にも寄与

渡邉:仲間が楽しそうに取り組んでいるポジティブな姿が伝搬し、今のように全メンバー、スクラム体制で採用広報やリファラルをおこなうムーブメントに成長していったのですね。そのような草の根的な施策は、時間がかかったのではありませんか?

浅野:時間はかかりましたね。リファラル採用プロジェクトはもう2年以上やっていますが、人数が増えると勝手も変わるので常に試行錯誤して今もトライアンドエラーの繰り返しです。いろいろやってきた仲で効果的だったのはポイント制度の導入です。noteを1記事書いてくれたら◯ポイント、会食に行ったら◯ポイントといった具合で、ファン化に繋がる活動を可視化する仕組みを作り、かつそれをチーム戦にしました。

新しく入ってきた人は、リファラル採用を共通のテーマに業務以外の接点をもてるきっかけにもなり、社内の活性化にもつながっていると思います。ポイントが貯まるとキャディオリジナルの記念品をプレゼントしています。

(メンバーの発信を可視化したアドベントカレンダー)

渡邉:リファラルの多くは採用に対しての報酬ですが、モチベーションが続かないことが多いですよね。キャディさんの場合は過程も明確に評価しており、素晴らしい取り組みだと思います。ところでリファラルチーム戦のリーダーは組織のチームリーダーが兼務していますか。

浅野:いえ、リーダーは新しく入ったメンバーに担ってもらうことが多いですね。いろいろな人を巻き込む必要が出てくるので、その過程で交流を促進できたらという期待もあります。個人戦にしたこともあったのですが、キャディはバリューに「一丸で成す」とあるように、チーム戦のほうが圧倒的にワークすることがわかりました。なので今はなるべくチームで実施するような形にしています。

キャディの「MVC」を深く知りたいと思う人へ届けていく

渡邉:ここまで採用広報に対する意識や考え方、具体的な施策を伺ってきました。具体的な採用基準についても聞かせてもらえますか。

浅野:「MVC(ミッション・ビジョン・カルチャー)」への共感を重要視していて、カルチャーが明文化した「カルチャーブック」をまだ社員が20名ほどの段階で作成しています。

渡邉:「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」とのミッションを掲げていますが、製造現場にコミットした人材が基準になると?

浅野:いえ、正確にはそうではありません。製造業がどうかということよりも、大きな社会課題解決に携わりたい、というマインドです。他にも「前線で活躍する人を支えるインフラを作りたい」「構造上の問題で不利益を被っている状態を仕組みから変えたい」という思考性を持っている人が多いです。

渡邉:専門性よりも、課題に向き合える人材ですね。資金調達を終え、多くの人がキャディさんのこれからに期待していると思います。今後の採用広報の展望を教えてください。

浅野:事業や会社はヒトが作ります。その仲間集めをする上で、大きなドライバーになるのが採用広報です。会社のフェーズの変化に合わせて発信内容やHOW自体は今後も変わっていくと思いますが、軸はぶらさずにこれからも根気よく「伝わる」ことにこだわっていきたいです。今後さらに拡大していっても、メンバーの一人ひとりが異口同音にストーリーを語れる状態をつくっていけたらいいなと思っています。

渡邉:製造業ということで、一見するとフィットする人材が限られているのではと思っていました。ところが本日の対談を通じて、キャディさんはジョブではなくカルチャー重視の採用を行っていることがわかりました。つまり、認知・広報がうまくいけば、多くの人材が共感し採用がうまく進むだろうと。本日はありがとうございました。

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