スタートアップに必要な「採用・組織づくり」のポイントについて河合聡一郎氏と探求する連載。今回は少し趣向を変えて、スタートアップで活躍する若手社員との鼎談です。ウォンテッドリー株式会社の横澤拓海さんと株式会社TENTIALの木林毅さんは、学生時代にバスケットボールに打ち込み、全日本大学バスケットボール選手権大会(通称、インカレ)にも出場するほどの有力選手でした。学生時代にハイレベルな環境に挑んだ経験は、スタートアップで活躍する要件とも重なるとか。自他ともにバスケ好きを認める河合聡一郎氏とスポーツとスタートアップの共通項を見出していきます。
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横澤 拓海 氏
1995年生まれ。京都府出身。関西学院大では主将としてインカレベスト8。コクヨ株式会社に入社後はオフィス家具の営業や企業オフィス移転のプロジェクトマネジメントを担当。2019年にウォンテッドリー株式会社に移り、インサイドセールスやカスタマーサクセスを行う。
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木林 毅 氏
1994年生まれ。東京都出身。筑波大学ではインカレ三連覇、世代別日本代表にも選出される。Bリーグからの誘いもあるなか三井住友海上火災保険に就職し代理店営業などを担当。2019年に株式会社TENTIALに移り、商品開発を担当。現在は営業部門の立ち上げと開拓を行う。
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大学バスケ部、インカレで活躍したメンバーがなぜスタートアップで働くのか
河合聡一郎氏(以下、河合):今回は少し趣向を変えて、スタートアップで活躍している若手人材にフォーカスを当ててお話をお伺いできればと思います。インカレで全国制覇やベスト8と、バスケに対してストイックに取り組み、非常に高い成果を出されてきたおふたりの経験が、その後のキャリアや現在にどのように活きているかをお伺いできればと思います。まず、おふたりは1社目に大企業を選んでいますが、選ばれた理由や、前職での1年目~2年目について教えてください。
横澤拓海氏(以下、横澤):大企業の新卒は「裁量がなく先輩の案件の手伝いが多い」という印象を持っていましたが、僕が新卒で入ったコクヨでは1年目からプロジェクトを担当させてもらっていました。成果も200%達成を経験し、「こんな大きな案件を一人で回せるんだ」と、良い意味でギャップを持っていましたね。
木林毅氏(以下、木林): 僕は新卒当時それほど目立った存在ではありませんでしたね。三井住友海上火災保険で東京の代理店を20数社担当していました。どの代理店さんも不動産など他に本業があるなか、兼業での保険販売だったため、なかなか本腰をいれて販売していただけなかった。成果がでず四苦八苦していましたね。配属された部署はあまり体育会系の方も居なかったので、少し合わない感覚も持っていました。
河合:その後、おふたりとも2019年に転職を経験されています。転職を意識しはじめたきっかけや、スタートアップを選ばれた理由は、何だったのでしょうか?
木林:「より本気で打ち込める仕事をしたほうが長い目で見て良いのでは」と新卒1年目が終わったタイミングで考えはじめました。大学でバスケをやり切った燃え尽き症候群もありました。加えて、両親は自営業でしたから、就職する際に「大手で金融ならば、年収も安定も」という想いもあり就職を決めたんです。しかし、正直「この仕事で定年まで働くのか」と疑問符を抱えていました。
横澤:僕も入社して1年後くらいに転職を考えはじめました。大学バスケでは「どうすれば部員のポテンシャルが発揮されるか」「どうすればチームが同じ方向を向くのか」を考えていたので、組織をオフィス環境から支えるコクヨに共感して入社しました。しかしオフィス環境は社員のコミュニケーションを活性化する反面、あくまで間接的な影響しか与えられないなと思うようになりました。より本質的に組織に影響を与えられる仕事を探してウォンテッドリーに辿り着きました。
転職活動の際、さまざまな会社様とカジュアル面談をしましたが、スタートアップ企業の方は物事の思慮深さや頭の回転の速さが違うと感じました。僕は昔から、優秀な人をベンチマークし、その人に追いつき追い越せ精神で行動すると「成長できる」という感覚を持っているんです。ですから「優秀な人たち」と働ける環境があったことも転職した理由の一つでもあります。自分の知識やスキルを高めないことの方がリスク。自分を高める環境に飛び込んだ方が成功につながると考えています。
木林:僕は次の職を決める際、「スポーツに関われる企業」を探していました。そのなかで、前職の同期が先にTENTIALに移っており、彼をきっかけに代表の中西と話してジョインを決めました。中西は僕と同い年にも関わらず、見ている世界の視座や知識の深さが違う。
尊敬する経営者や先輩もですが、中西は「ロマンとそろばんの両立を」とよく話しています。ありたい姿や実現したい未来について、ビジョンを語る方はたくさんいますが、きちんとしたロジックや打ち手を考えて実行できている方は少ない。その解像度が高いと成功確率が高いと思っています。
バスケで中学、高校、大学と所属するチームを決めた際も同じでした。加入する前に選手や監督の話を聞いて、「全国優勝するために必要な解像度」が高かったので「このチームは強くなる」と思って加入してきました。
バスケは練習試合でいくら連戦連敗しても、最後の1か月間にある全国大会ですべて勝てば日本一になれます。最終的にそれでいい。結局、20代で成功や勝つことにあまり意義はないと思っています。その先の人生を考えたら、20代以降の時間の方がずっと長いですから。むしろ、20代は人生100年における修行の10年だと思っています。
スタートアップと、強いスポーツチームの共通項
河合:おふたりともご自身のキャリアや、その為の働く場所の選び方という視点に対して、非常に合理的に考えている印象です。学生時代にバスケットボールに取り組んだ環境や、その時の選択軸なども影響していると思うのですが、大学時代のバスケを振り返って、社会人になっても再現性を持って取り組めていることはありますか?
横澤:やはり「優秀な人」「強いチーム」を見つけて、自分との差分を明確にして埋める努力かなと。「何をどう埋めれば次のステップに行けるのか」を図解で描いたり、頭で考えて自主練習したりはバスケでもずっとやっていました。よく「素直に馬鹿になって聞きに行け」と言いますが、監督や周りの人にアドバイスを求めるように社会人になっても聞くようにしています。
木林:僕はバスケを目的として捉えておらず、キャリアの一つとして捉えていたのが大きいと思います。バスケはみんなシュート練習をして大量得点を取ることを目指しがちです。でも、チームに足りていないディフェンス統率能力や、直接点を取るわけではなく周りに点を取らせる能力も必要です。僕はいわゆるスタッツの数字はそれほど高い評価ではなかったのですが、監督からは絶大な信頼があったと自負しています。
ニッチな業界で1位を取っている、知名度はなくても売上がある企業はたくさんあります。同じように、「この考え方ができるから、周りがこの業務で活かされた」という柔軟な発想をするのは心がけています。
河合:おふたりは目標設定や、そこに向けた現状把握や分析、課題やその打ち手に至るプロセスがとても上手ですよね。戦略から戦術までの設計とでも言えるでしょうか。それはやはり競争も激しい、勝つことを強く標榜するトップクラスな環境でバスケをやっていたからだと感じます。
横澤:高校バスケまでは割と身体能力が高いだけで試合には出られるんです。でも、大学バスケでは通用しない。たとえば、『実況パワフルプロ野球』のオール3の選手は試合にはなかなか出場できないんですよね。どこか大きく尖っていないと。「自分ならどの価値が発揮できるか」を現状把握して頭を使うとチャンスは広がっていくと思いますね。
木林:監督の評価基準は「試合に対してバリューを出す」です。大学4年間を経て、4年時に試合に出れたメンバーはそれを理解していたと思っていました。監督も交代理由をイチからすべて説明してくれるわけではありません。チーム状況に応じて伸ばして欲しい能力を見極めないと。みんなと同じ練習ばかりしていると差別化ができず、オール3の選手になってしまうと思います。
河合:「チームが何を求めているか」や、「どうやってアジャストして価値を出すか」などの目標設定や現状分析、そして課題設定やアクションプランなどが自然とできるようになったのは、どういう背景からなのでしょうか?
木林:僕の場合は端的に言えば、「ハングリーさ」です。実は両親は中国出身で30~40年前に来日しています。両親は中国で裕福な暮らしをできていたわけではなく、生活に大変だった話もたくさん聞きましたし、小学生時代の90年代の中国に両親と何度も行き、闇市のようなスラムの世界も見てきました。
両親からは「あなたは私たちから“身長”という才能を渡されたから。バスケで将来ご飯を食べられるまで登るか、勉強するか。どちらかを選びなさい」と言われて育ちました。学費も「中学までは面倒を見るけれど、高校以降は自分で特待生を勝ち取って進学しなさい」と言われたので周囲の「楽しくバスケをしたい」とは出発点が違ったんです。
ただ、悪い言い方をすればバスケでしか自分の存在感を示せなかったのもコンプレックスでした。大学に進学したらまったくスポーツに関わっていない世界の人もたくさんいるので、「狭い世界で生きてきたな」と思い、漠然と「普通に就職する」という選択肢も考えたんです。
横澤:僕の場合は小中高大とすべてのチームでキャプテンを経験したのが大きいかと思います。小中では「監督がどんな戦略でチームを勝たせるか」なのですが、高校以降は「どうやってチームを一つにまとめるか」に腐心していました。すると、自分が活躍するよりも、視座を一つ上げて、「チームをどうしたらいいか」を考えていましたね。
河合:採用面接の時に大切にしていることなのですが、未経験でチャレンジする人や、まだポテンシャルである若手の社会人に対して私は「再現性」や「拡張性」を見ています。バスケの場合、「狙って全国優勝している」のか「偶然優勝できた」のかでは内容が全然違います。「目標をどう立てていたのか」や「結果に対して、どんな道筋を立てて山を登ったのか」を聞くと、言語化できて話せる方は優秀だと思います。
更に「拡張性」は厳密に言うと2つあります。違う課題を与えたときに「考え方を広げられるか」と「時間軸や持っている専門性を広げられるか」です。また同時に役職者であれば、本人が拡張性の視点を持って、他の人を育てていけるかも重要です。自分が活躍するだけでなく、周りを自分と同じレベルまで引き上げて活躍する人を増やしていくことがスタートアップでは必要ですね。
加えて、優秀な若手人材を惹き付けるには「自社は健全な競争環境である」というのを伝えるのが大事だと思っています。そういった観点だと、スポーツの世界はとくにわかりやすいですよね。つまり、年齢やバックグラウンド、競技の経験年数は関係ありません。さらに言えば、性別も国籍も関係ない。パフォーマンスを出している人が一番重宝されるべき。フェアに価値提供している方にはより良い環境を提供するのが必要ですね。
そういった環境だということを、企業側がロールモデルと共に伝えていくのが大切だと思います。もちろん、各社のバリューにちゃんとフィットをしていることは大前提ですが。
河合:最後におふたりは今後どのようにキャリアを築いていきたいと考えてらっしゃるのか。是非展望をお聞かせください。
木林:漠然と興味があるのは「アスリートのキャリア形成」です。漠然と将来に不安を持っていながらもビジネスについての理解が浅いので付け込まれて、怪しいビジネスに手を出してしまうアスリートもいます。「ビジネスで稼げるようになりたい」という動機は健全なのに、その受け皿があまりにも少ないように感じます。正しい努力や正しい考え方をしている方が、知識がないだけで知識ある方から搾取される環境はやはりおかしいですよね。自分が努力したりした結果の対価を得られるキャリア形成を手助けしていきたいと思っています。
横澤:僕は長い時間軸のなかで変わる前提ですが。ゆくゆくは起業にチャレンジしたいです。もちろん、今まで感じたことのない負荷もかかるでしょうが、必死にもがいて結果成長した20代でありたいと思います。そして、30代~40代でスポーツに何かしら還元できたらと思っています。
河合:おふたりの今後のご活躍が益々楽しみです。今日はありがとうございました。
▼スタートアップが取るべき採用戦略とは?
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