セカンドキャリアは、本当にやりたいデザインを求めて|LIG デザイナー 花澤早紀 氏| Career Insight〜求職者の心理〜 #6

近年、副業やフリーランスなど働き方の多様化により、デザイナーをはじめとするクリエイティブな人材を正社員として迎えることが難しくなってきています。実際に経験豊富なデザイナーを迎えられた企業は何が違うのでしょうか。

Wantedlyを活用し、転職先への共感を得て入社を決意したユーザーのリアルな転職体験をもとに、採用活動のヒントを探っていく本企画。第6回目は、株式会社LIGでデザイナーとして活躍する花澤早紀氏にインタビューを行いました。

新卒でゲーム会社に入社後まもなくチーフデザイナーに抜擢されるなど、デザイナーとして着実に経験を積んできた花澤氏。ステップアップを目指して挑戦していくなかで、転職活動の詳細や思考の変化について伺いました。

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株式会社LIG
デザイナー
花澤早紀 氏

2015年、新卒で株式会社gloopsに入社。IPもの(他社版権を持つコンテンツ)を扱ったゲームのチーフデザイナーに抜擢され、その後、新規開発チームでゼロベースからのUI設計・デザインを経験。LIGにジョイン後はLIGブログや外部メディアのアイキャッチや記事内画像の作成を担当。現在は企業やサービスだけでなく、地方創生に関わるロゴ制作やサイト制作を積極的に行う。

着実にステップアップを果たしたファーストキャリア

――本日はよろしくお願いします。まず花澤さんのこれまでのキャリアについて教えていただけますか。

美術系の大学院を卒業後、デザイナーとして新卒でゲーム会社に入社しました。主にソーシャルゲームの開発・運営をしている会社で、すでに作られたゲームを運用する運用チームと新しくゲームを開発していく新規開発チームの2つのチームがあり、私は入社してすぐに運用チームにデザイナーとしてジョインしました。そこで、ゲーム内で行われるイベントのバナーや演出などのビジュアル作成を担当。その後、運用チームでIPものを扱ったゲームのチーフデザイナーを経て新規開発チームに配属され、ゼロベースからUI設計やデザインを担当するようになりました。

――もともとゲームのデザイナーを志していたのでしょうか。

大学院では、地方創生に関わる機会があり、デザインで地域を活性化していくことに興味を持っていました。そんな経験から、将来は広告やグラフィックの仕事をやりたいと考えていました。ただ、在学中に業務委託としてゲームのキャラクターのイラストを描いていたこともあり、当時デザイナーになるために一番近道だったのがゲーム業界だと思ったんです。そのため、まずはゲーム会社でデザイナーとしての経験を積もうと考え、前職の会社に入社しました。

――前職のデザイン業務について、具体的にどのようなことを行っていましたか。

スマホゲームの画面内で見えるすべてのデザインを手掛けていました。多くの人にプレイしてもらうにはどうすれば良いかを常に考え、デザインを突き詰めていくんです。たとえばゲーム内に出てくるボタンがあるとして、そのボタン一つひとつについてどうすればゲームの世界観により合うのか、色使いや装飾などしっかりと考えて形にしていきました。

――なるほど。途中、チーフデザイナーを経験し、新規開発へとステップアップしていくなかで業務内容はどのように変化していきましたか。

チーフデザイナーになってからは通常のデザイン業務に加え、クリエイティブ管理をするようになりました。同じチームで働くデザイナーへのフィードバックからゲームのアップデート時の品質チェック。また、メンバーの管理やチーム全体のタスク調整など、チームのマネジメント業務も行っていました。当時はまだ新卒で入社して間もない時期だったので、非常に大変でしたが、今振り返ると良い経験をさせてもらえたなと思います。

自身のデザインスキルを活かせる、本当にやりたい仕事を求めて

――前職のゲーム会社では着実にキャリア・スキルを重ねていたようですが、転職を思い立ったきっかけは何だったのでしょうか?

新卒で入社し、チーフデザイナーや花形である新規開発チームでの業務も経験させてもらえたので、私としては一通りの仕事をやらせてもらえたかな、と。そろそろ次のステップへ挑戦しても良いかなと考えたんです。デザインを活かして本当に自分がやりたいことを仕事にしたい。大学院時代に関わっていた、地方創生に関わるデザインの仕事をしてみたいと思うようになりました。

――具体的には何年目くらいの時期に転職を意識したのでしょうか?

入社して2年半ほど経過したときですね。まずは、転職サービスに登録し、ポートフォリオを作りはじめました。当時、同じタイミングで転職を考えていた職場の先輩やデザイナー仲間に相談をしていましたね。

私自身、大学院を卒業してから企業での経験はまだ1社だったため、自分が培ってきたキャリアを推すのではなく、自分がデザイナーとしてどういう力を持っているのか、スキルをアピールし、転職活動を行っていこうと決めていました。具体的には、ポートフォリオはグラフィックやビジュアルを中心とした構成にしたり、作品の一つひとつの根拠や情報を示すなど、デザインスキルを示すものを作成しました。

――周囲の意見を参考にしながら、少しずつ準備をしていたのですね。転職サービスも積極的に活用していたのでしょうか。

はじめに転職エージェントに登録し、何度か面談をしました。希望条件や年収などを伝え、自分に当てはまりそうな企業候補を挙げてもらい、その中から気になる企業にエントリーして面接を進めていく流れでした。ただ、エージェント経由だと会社の雰囲気や実際の仕事内容があまりわからず、自分に合った環境や本当に望んだ仕事ができるのかの点で情報が足りないと感じました。

――紙や文字ベースだと会社の雰囲気まではわからないですからね。

そうなんです。ちょうど同じ時期にWantedlyにも登録して、使っているうちにサービス特有の「カジュアルさ」が自分に合っていると感じました。Wantedlyは空いた時間に手軽に利用できて、条件に合った企業をすぐに検索できる。また「話を聞きに行く」というボタンがあり、いきなり面接にならず気軽に企業の話を聞きに行けるので、これはいいなと。

他の転職サービスだと最初に面接ですから、書類を送るところからスタートなんですよね。どうしても慎重になってしまいます。私は自分にプラスになりそうな企業はとりあえず話を聞きに行くようにし、そこから興味があればエントリーするようにしていました。

――なるほど。ちなみに会社を検索する際にはどういった視点で選んでいたのですか?

基本的にやりたいことベースです。地方創生に関するデザインの仕事が行える会社かどうか、その企業がどれくらい地方創生にコミットしているか、もし入社したら自分がやりたい仕事がきちんとできるかといった具合です。実際に私がエントリーして面接を進めていたのはWeb制作会社や広告代理店、地方創生関連の企業を中心に計10〜15社ほど。あと今の職場であるLIGですね。

入社の決め手は”ファン”になれるかどうか

――LIGにはどういった流れでエントリーすることになったんですか?

LIGは地方創生など自分の中の条件がすべてクリアしていたこともあるのですが、実は、最初は写真に惹かれたんですよね。Wantedlyに掲載されていた写真なんですけど、デザイナーの女性が冬の野尻湖の前でパソコンを持っている写真が掲載されていて、「楽しそうだな」と直感で感じました。他の企業はミーティング風景とか会社の中の写真が多いのですが、写真を見て「ここは他の会社となにか違う」と思いました。

野尻湖のほとりから。地域の魅力を発信したいデザイナーを募集します。 - 株式会社LIGのデザイン・アートの採用 - Wantedly
長野チームではいま、「長野に住んで、この地域の良さや課題を実際に肌で感じながら、デザインによる課題解決や魅力発信をしていきたい」 と考えて...

入社してからわかったのですが、LIGはWantedlyなどの採用ページに出す写真をこだわって作っていて、目を引くような写真を掲載していたようです。

――選考を進めていく中でこれは良かったなと思うことはありましたか?

連絡のやりとりにおいて、定型文のような無機質なメールではなく、きちんと私に向けて送ってくださる企業にはいい印象を持ちましたね。一緒に働きたい気持ちが伝わってくるメールだったり、ちょっとしたコメントが添えてあったり、担当者の感情が見える内容ですと、選考を受けている身としては嬉しく感じます。LIGは人事担当者が面接後に毎回丁寧にコメントを送ってくださっていたので、入社への思いが高まりました。

――逆にさまざまな選考を受けていく中で、マイナスに感じた点などはありますか?

「話を聞きにいく」段階で面接のように接してこられたことがあり、否定的な意見を言ってくださる人事担当者もいました。もちろんそれが会社の方針ではなく、たまたま担当者の特有の対応だったのかもしれませんが、選考を受けるかどうかを決めるために話を聞きに行っていたため、そのような対応の企業のエントリーは避けました。否定的な意見を言われてしまうと、ファンになれないですよね。

また、ある企業の面談をカフェで行ったのですが、その時は周囲の状況もあり話づらかったですね。今はコロナ渦で難しいですが、実際に企業に行って、社内雰囲気を見て話をしたかったです。

――ネガティブな雰囲気の場になると、企業への印象もマイナスになってしまいますよね。

LIGは、面談の段階からデザイナーが対応してくれました。当時は、会社のことをあまり知らない状況でしたが、具体的な仕事の内容や会社の雰囲気を感じることができたんです。面接を重ねるにつれて、この会社に入りたい思いは強くなっていきました。

また、面接の際にポートフォリオをしっかり見て、話をしてくださったことも印象に残っています。企業の担当者によっては、ポートフォリオを流し見て終わりの時もありましたが、LIGは作品に対してコメントをしてくれたので、選考者と向き合う姿勢を感じましたね。

――LIGの人事担当者に花澤さんの選考時、意識していたことは聞いたところ、次のような答えが返ってきました。

選考過程では、私たちもジャッジされる立場である意識を常に持っています。応募時に志望度が高かったとしても、面接官の態度や発言などで、選考途中で意欲が下がってしまうこともあります。逆に、はじめは志望度が高くなくても「この人たちと働きたい」と志望度が上がる可能性もあるからです。

また、会社のファンをつくる意識も忘れません。面接のジャッジはしつつも、LIGはBtoBだけでなくBtoCのサービスも行っているので、会社のファンを増やす気持ちで会社の説明をします。たとえ採用に至らなくても、会社のファンが増えたり、また数年後に応募してくれたり、ビジネス面で協業するかもしれないですから。

(LIG/人事担当者取材内容から引用)

同じ業界で働くのであれば今後一緒にお仕事をする可能性はゼロではないですよね。そう考えるとやっぱり選考時の印象は会社も意識したほうが良いと思うんです。どのような結果であっても、いい印象を持っていればその会社のファンにもなります。

そういった点に関してはLIGの選考時に十分感じとれましたし、実際に今コメントを聞いて、やはり同じような考えを持って対応していただけたんだなと、あらためて感じました。

――お互いが同じ気持ちで話をしていたのですね。ここまで転職活動をしていくなかで、デザイナーの転職事情やさまざまな意見を耳にしてきたと思います。周囲のデザイナーは転職に対して何を求めていると思いますか。

私の周りのデザイナーは「これまで培ってきたスキルを活かせる場所」と「給料UP」を求めて転職する人が多いですね。その際「やりたいこと」と「給料面」を天秤にかけて悩む人は多いようです。また、最近は本当にやりたいことを副業でやって、所属する企業には給料面で安定を求めるデザイナーもいるようです。

会社ではなく自分の名前を指名されるデザイナーへ

――あらためて、花澤さんが現在LIGで担当しているお仕事を教えてください。

現在はLIGでデザイナーとして企業のコーポレートサイトの作成やロゴ制作などを担当しています。LIGのデザイナーの中ではちょうど中間のポジションなので、担当している仕事のほかに、後輩に対して自分の知識を共有したりデザインのフィードバックをしています。

――今後の目標を教えてください。

今後はさらに地方創生の案件を増やしていければと考えています。実績としてまだまだ数は多くないので、そこを増やしていければと。あと今はLIGのデザイナーとして会社の名前で仕事を受けていますが、将来的には自分の名前で仕事ができるようになりたいですね。お客さんから「花澤さんでお願いします」と指名されるようなデザイナーになれるように頑張りたいと思います。

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