Wantedlyを日々運用している採用担当者さんたちが集うコミュニティ「Lab W,」。ここでは参加者全員が経験を元にアウトプットし、知識や情報をアップデートする場として、Slackでのコミュニケーションや、月に1回のイベントを実施しています。
本記事はLab W,で開催された「ランチタイム トークセッション第9回」のイベントに着目。「エンジニアのカジュアル面談」をテーマに、harmo株式会社の経営企画(人事・総務)である佐野瑛士氏にお話をうかがいましたので、その様子をお届けします。
今回のトーク内容は以下のとおりです。
・カジュアル面談は最初の10分が勝負
・「オーダーメイド設計」のカジュアル面談
・CX(候補者体験)重視の選考プロセス
セッションの最後に行われたQ&Aもご紹介します。
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カジュアル面談を効果的に実施するコツを紹介
カジュアル面談を実施してもなかなか成果が出せない、と感じていませんか?
カジュアル面談には採用に繋がるメリットがたくさんありますが、効果的に進めるためには、正しいやり方が必要不可欠です。
そこで、カジュアル面談の実施方法やポイントをまとめた資料をご用意しました。
時間だけが取られてしまうマイナスな面談ではなく、採用に繋がる面談にしたい方は、ぜひ資料をご覧ください。
▼ゲスト
harmo株式会社 経営企画(人事・総務)
佐野瑛士
シミックグループの新卒採用・中途採用・人事企画を経験したのち、SONYから継承したヘルスケアプラットフォーム「harmo」のエンジニア採用および組織開発等に関わる。
プライベートでは1児の父。最近のトレンドは“健康って大事だね”
▼モデレーター
ウォンテッドリー株式会社
藤田真也
2019年8月にWantedlyへジョイン。入社当時はインサイドセールスチームに所属。
現在はカスタマーサクセスとしてWantedlyの活用支援を行う。
ユーザー数40万人のアプリを支えるひとり人事
藤田:本日はよろしくお願いします。佐野さん、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
佐野:はじめまして。私はharmo株式会社のひとり人事として人事・総務・労務+(法務・広報サポートも少し)などを担当しています。
harmo株式会社は医薬品開発を行っているシミックグループの子会社で、ユーザー数約40万人の「harmo電子お薬手帳」や「harmoワクチンケア」などのアプリを運営しています。
もともとITに関するノウハウはありませんでしたが、2020年にエンジニアのチームを立ち上げ、カスタマーサクセスなどたくさんのメンバーを採用してきました。
藤田:ありがとうございます。harmo電子お薬手帳は今日ご参加頂いている方の中に利用している方がいらっしゃるかもしれませんね。
佐野:いらっしゃったらうれしいです(笑)電子お薬手帳を使っていない方も多いと思うので、これを機会に興味がありましたらダウンロードいただければと思います。
選考移行率80%超えのエンジニアに刺さる面談とは?
藤田:早速ですが、今回のタイトルにもなっているポイントにフォーカスしてお伝えできればと思います。
harmo様の特徴はまず、カジュアル面談後に選考へ進むための課題提出率がエンジニアで85%、事業企画では100%と驚異的に高い点にあります。
また、課題でスキル面を見極めるだけでなく、カルチャーフィットの見極めについてもかなり工夫されていると事前の打ち合わせで感じました。
そこで、カジュアル面談から選考に移行する率を高めるため、そしてスキル及びカルチャーフィットを見極めるためにharmo様が取り組んでいることに迫っていきたいと考えています。
佐野:harmoではエントリーから内定までのフローをこのように設定しており、フローだけを見ると他の企業とそれほど違いはないと思います。
藤田:そうですね。ただ、カジュアル面談、課題、プレゼン&FBで解像度を上げるための面白いポイントが見えてくるので、この3つのフェーズについてお話を伺っていきたいと思います。
カジュアル面談の冒頭10分は「傾聴」を徹底
藤田:カジュアル面談をいろいろと工夫されていると思いますが、どのように進めているのか、特に注意されている点についてお話いただけますでしょうか。
佐野:カジュアル面談では最初に、「今日お話する内容に選考要素は全くありません、私たちとしては、ミスマッチを防ぐための場所にしたいです」と伝えるようにしています。
その上で、私たちはあなたに入社して欲しいと思っているからお声がけしたし、ぜひとも、あなたがやりたいことを教えて欲しいと冒頭で必ず話すようにしているんです。
はじめに10分くらいかけて、じっくりその人がやりたいことや転職をして何をしたいのか、という部分を深く聞いていくんですね。そして中盤以降でharmoの事業説明や技術スタックなどを説明します。
でも、ひとりひとり知りたい情報が全く違うんです。キャリアを形成するための新しい技術に触れてみたいという方もいればヘルステックに関わりたいと考える人、それに事業で共感した領域にチャレンジしてみたいなどニーズが千差万別なんです。
ですから、カジュアル面談は最初の10分間が勝負だと思っています。10分間で一気に聞いて、それに対する答えをお伝えするという場にしないと、相手の気持ちがどんどん離れていってしまうからです。
そこで、冒頭の10分間は傾聴に近い形でしっかりと話を聞いています。
「オーダーメイド型」設計のカジュアル面談に
藤田:相手のニーズに応える形で候補者ごとにカジュアル面談をカスタマイズしているんですか?
佐野:がっつりカスタマイズしています。資料を用意しておいて、話を聞いている時にメモを取っておき、相手に合わせて資料の順番を変えたり他の資料を持ってきたりして、PowerPointもその方独自のオーダーメイド型にして説明しているんです。
そのため、技術を重視する方には開発環境について解説し、事業について知りたいという方に対してはharmoがなぜ誕生したのかなどしっかりと説明しています。
相手が興味を持っている領域についての話をした上で、最終的には私たちのパーパス、なぜharmoが世界にあって、何をしたいのかという部分に到達するよう話を進めていきます。
藤田:候補者ごとにPowerPointまで変えているというのは、自分のためにわざわざ説明してくれているんだな、と感じられるのでCX(候補者体験)としてもいいですよね。
佐野:そこは打算的に伝えてます。「ちょっと今、資料を作っていますので待ってくださいねー」と(笑)
藤田:なるほど、「あなたのために作ってますよ」というのを伝えているんですね。
佐野:でも、本当にそう作ってるんですよ。ですから「あなたのために作っていますからごめんなさいね、ちょっとお時間をもらいますね」と言って、その間に何をやりたいのか聞きながらメモして。同時並行でやっている感じですね。
harmoの「オーダーメイド型」カジュアル面談
冒頭:候補者自身のやりたいことに触れる
中盤:harmoの成り立ち、解決したい社会課題について
中盤:技術スタック、開発環境の説明
終盤:選考や課題について
選考を受ける価値に着目し課題提出率アップ
藤田:カジュアル面談の最後には選考と課題についてご案内するという形ですけれども、課題を出す上で注意すべきポイントはあるんですか?
佐野:以前は課題を「お願いします」と渡していたのですが、実はあまり提出してもらえなかったんです。そこで、昨年の10月から「課題の意味を伝える」ことを徹底的にやっています。
我々の課題は難しいんですね。どんなに熱意があったとしても課題を見た瞬間にガクッと下がってしまう。そのため、課題を案内する際にはまず、熱意が高いうちに送付するため面談の場でアドレスを頂いて「今、送りますね」という形で送ってしまうんです。
そして、実際の課題の内容を説明します。課題全体の構成や、なぜこんな問題を作って渡しているのかについても全部説明します。だからこそ、途中で諦めるというか受けずに終了する人がどんどん減ってきたのかな、と分析しているんです。
藤田:なるほど、ふつうは課題を受けて合格する、良い点数を取るのがゴールになると思うんですが、カジュアル面談で選考の意図をしっかりと伝えることで、選考を受けること自体のハードルを下げる、価値を提供して選考を受けてもらう、ということですね。
佐野:お互いにとっての勉強の場だと考えているので、単純に選考を受けて終了、ということではないんです。私たちも、もちろん勉強しますし、候補者さんもフィードバックを受けて成長できるという場になっているんです。
単純な選考ではなく、学びの場にもなっているし今後の成長にもつながっていく場にしているので、相手にとってのメリットを挙げるというのが大きなポイントなのだと思っています。
harmoが注意して伝えていること
課題を通じて見ているポイント・判断軸・問題内容について
時間をいただいてまで、課題をやることの価値
単に“選考の足切り”のための課題ではないこと
プレゼン&FBで入社後の違和感もなし
佐野:課題をプレゼンテーションいただく際はオンラインで約30分ほど実施します。総合的なコミュニケーションを心がけており、まずはじめにプレゼンテーションしていただきます。
出席する部門メンバーはメンバーだけでなくリーダー、部長陣や場合によってはCEOも入るんですね。全員で見て、ひとりひとりの感想とフィードバックを行い、ここが良かったけれどもここが足りていなかった、ということを率直に言い合います。
すると「ああ、確かにそこが足りなかったか、次は頑張ろう」という感じになるなど素直なコミュニケーションが実現できるんです。ですから、あまりストレスにはなっていないんじゃないかなと思っています。
現場のメンバーも課題を経験していますし、どんなふうに言ってもらったのが嬉しかったなど記憶していますので、フィードバックは上手ですね。課題を深掘りしてダメ出しするだけではなく、相手のいいところを引き出しますし、相手が何をしたらいいのかわからないときにはアドバイスする。
また、自分たちがプレゼンテーションを直接受けると、入社してからの違和感がないんです。マッチングという意味でも、またカルチャーフィットを見極める上でもいい取り組みだなと考えています。
藤田:たしかに。通常だと、入社直後はお互い「どんな人だろう」と探り探りだと思いますが、harmoさんの場合は入社初日から相互の理解度が高いですよね。
佐野:「あ、お久しぶりです」みたいな感じで来てくれます(笑)
課題通過後にも面談設定しCX(候補者体験)を徹底
藤田:harmo様では課題通過後、内定前にCEOの2人と部門長との顔合わせ面談をオフィスで実施しているということで、とてもおもしろい取り組みだなと感じています。
佐野:そうですね、オフィスの真ん中に配置され、社員全員から見える場所にあるソファ席で行っています。仲間になる方に最終面談に来ていただいているわけなので、社内の雰囲気を知ってもらいたいんですよね。
会議室などでは形式張ってしまうし、本人も緊張してしまいますから。役職にかかわらず腹を割って話そう、というのが我々の大切にしたい価値観なんです。そうした考え方をもとにオープンな場所で面接ではなく面談という形で話すことにしています。
CEOのふたりが同じソファに並んで座り、求職者の横でそれぞれのビジョンを語ったり、なぜharmoに入社したいんですか?何を実現したいんですか?など、キャリアや人生観についてカジュアルに情報交換をする場になっています。
佐野:もちろん、見送りになってしまう場合もあるんです。面談まで行っても、目指している方向が違う場合などですね。その場合は理由や背景をかなり丁寧に伝えています。
あなたのこういうところはとても良いし、スキルも高い。でもやろうと思っているキャリアのこの部分が私たちの現在のフェーズでは実現できないので、今入社したらミスマッチになる可能性が高いと思う、といった話をして、結構な行数の文章を作ります。
嫌な気持ちになって欲しくないんです。ここまで来てくれてコーディングテストも頑張ってやってくれた人で、人生についても聞かせていただいている方々にそんな対応はできないと考えていますので、理由や背景を事細かに丁寧に説明するよう心がけています。
そのためか、見送りの連絡をしたら「ありがとうございます」と言っていただいたこともあります。採用活動を担当していて人生初だったんですけれども、悪いイメージを持たずに我々のことを覚えてくれている、人と人の話し合い、面接ではなく面談ができているんだな、と感じているんです。
藤田:CX(候補者体験)を重視した求職者第一主義ということですね。
佐野さんへ質問殺到!気になるカジュアル面談のアレコレ(Q&Aコーナー)
佐野さんには、イベントに参加した方々からの質問にも多数回答いただきました。すべてを載せきれないのですが、一部ご紹介します。
Q1:カジュアル面談のカスタマイズについて、具体的にどうやっているんでしょうか?
佐野:私のPowerPointはスライドが120~130枚くらいあります。様々なネタをカテゴライズしていて、事業内容が30ページ、キャリアの内容が20ページなどズラッと並んでいるので、相手が興味ありそうな部分を取り出して、順番を変えてカスタマイズするんです。
ですから、ネタ帳としてのPowerPointをカスタマイズして資料を作っていく感じです。エンジニアに限らず、事業企画や営業などどの職種に対しても使える、盛り沢山の資料にしてあるんですよね。
また、話しているうちに別の気になる内容が出てくることもあるので、その場合はその部分を持ってくるんですね。
Q2:カジュアル面談で、エンジニアが欲しがる情報に傾向はあるのでしょうか?
佐野:最初の頃はわからなかったので、事業の話ばかりしていたんですよ。そうしたら、とても眠そうな顔をされてしまうことが多くて(笑)、失敗したなと。
相手の顔を見ながら、刺さる情報を推測して今の資料を作っていったんですが、エンジニアの皆さんはとにかく技術スタックの話にすごく興味があるんです。ですから、まず技術スタックの話をして、なぜこの技術にしたのか、という部分を絡めながら話をすると納得感のある話になると思っています。
単純に技術スタックを伝えるだけだと話が終了してしまいますが、そうではなくなぜこれにしたのか、どんな体制でどんな話をしたのかを伝える。背景まで話せば、会社の考え方や仕事に対するイメージにもつながるので、ストーリー化して話をするように意識しています。
Q3:今すぐ選考とはならない方をタレントプールしておく場合、何度も連絡して迷惑だと思われないためにはどのようなアプローチが良いでしょうか?
佐野:アプローチをしすぎると着信拒否をされるのではという懸念があるようですが、幸い、着信拒否されたことはまだないです。迷惑だと思われない工夫としては、最初に「この日に連絡します」という約束をしておきます。
例えば「今転職は考えていませんが事業については興味があります」という方に対しては「次に落ち着かれるのは半年後くらいですか?」と質問すると「12月くらいです」などと教えてくれます。そこで「12月中旬にもう一度メールを差し上げますので、その時の状況をお話しませんか?」と伝えています。
また、気をつけている点としては、メールでやり取りするようにしています。エンジニアの方は電話を嫌がる場合がありますから。関係性としては連絡した時に「あ、おひさしぶりですね」と感じてもらえるよう心がけています。
メールも何度も送ったりはせず、1回送ってみて返事がなければ「今、お忙しいですか?時期を変えましょうか」と連絡しています。すると、だいたい2〜3週間後に返事が返ってくるケースが多いです。忙しいから返事ができない場合もあると思うので、タイミングなど見つつ適切なコミュニケーションを心がけています。
藤田:いろいろな質問をいただいていたのですが、時間の制約から全てにお答えすることができず申し訳ございません。残りの質問への回答は「Lab W,」のSlackの方で、特別に回答いただきますので、ぜひご参加&ご確認お願いします。佐野様、本日は貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました!
【Lab W,への参加はこちらから】
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カジュアル面談については実施の理由や進め方、効果的にするためのコツまでこちらの記事でも詳しく紹介しています。
ぜひあわせてご覧ください。
【参考】カジュアル面談とは?進め方や効果的な面談のコツを解説
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前回のLab W,レポートはこちら
「リファラル採用を成功に導く空気づくりの極意とは|Lab W,【Event Report】」
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