採用数は右肩上がり。大企業がボトムアップで変化を起こした「DevRel」の裏側

TOPPANデジタル株式会社のICT開発センターは、総務(人事)部主導の採用の他に、現場の1チームがボトムアップでWantedlyの運用を開始し、その動きが他チームへも広がりつつあります。

今回は、ICT開発センター DevRel担当である椿 紗代子さんをゲストに招き、採用数を右肩上がりに増やした、ボトムアップでの採用方法についてうかがいました。

今回のゴール

  • 新しい採用の取り組みをどのように推進していったのか、ケーススタディを知る
  • 継続し、結果を出すDevRelのやり方を理解し、明日からの採用活動のヒントを得る

ゲスト

TOPPANデジタル株式会社 ICT開発センター DevRel担当
椿 紗代子

2016年にTOPPANデジタル株式会社に入社し、7年間システム開発のフィールドで経験を積む。2023年4月からDevRel(Developer Relations)を主な活動領域として、社内のコミュニケーションデザインや社外への情報発信を担当。

▼Wantedly Profile
https://www.wantedly.com/id/sayoko_tsubaki

モデレーター

ウォンテッドリー株式会社
越石 翔子

新卒ではIT・Web・ゲーム業界に特化した人材紹介会社に入社。RA・CA両面の経験を通して数多くの求職者の転職先決定を実現。2018年1月にウォンテッドリーに入社。Onbordingやコミュニティの立ち上げ、カスタマーサクセスなどを経験し、現在はマーケティングチームにてオウンドメディアの運営やセミナーを開催。

▼Wantedly Profile
https://www.wantedly.com/id/koccey

TOPPANデジタル株式会社について

越石:本日はよろしくお願いします。まずTOPPANデジタル株式会社の事業についてご紹介をお願いします。

椿:TOPPANデジタルは開発者を主なメンバーとするデジタル企業で、トッパングループ全体のDX事業を推進するのが、ホールディングスの中での役割です。

もう1つ、社会の中のTOPPANデジタルという意味では、凸版印刷の時代からの歴史と伝統を持つ、いわばジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーであるトッパンとスタートアップが掛け合わさった存在を目指し、社会や企業のDXを支援する企業です。

例えば次のような掛け合わせで「新旧の良いとこどり」をするハイブリッド企業を目指しています。

  • 受託開発 × 自社サービス
  • アナログの手触り × デジタルシフト
  • 個別開発 × SaaS
  • ハードウェア(IoT)× ソフトウェア
  • 事業変革 × 組織変革

採用要件

越石:TOPPANデジタルの採用要件について教えてください。

椿:TOPPANデジタルの中でも、私が所属するICT開発センターの採用要件についてお話しします。

職種としては、次のような方を募集しています。

  • プロダクトマネージャー、クラウドエンジニア、UIUXデザイナー
  • BtoBマーケター、DevRel(Developer Relations担当)、CCoE(クラウド戦略担当)

ピンポイントで職種を挙げましたが、一番はマインド要件がマッチしているかだと思っています。

歴史が長い企業ではありますが、デジタル会社としてスタートアップ企業に習う部分も多くあるためマインド要件では、プロダクトづくりの土台となる組織・カルチャーのアップデート、新旧の良いとこどりに、私たちと一緒に取り組んでくれる人、それを楽しんでくれる人財を求めています。

越石:椿さんご自身の担当でもある、DevRelというお仕事はどのようなものですか?

椿:Developer Relationsの略語なのですが、この4月にできたばかりのポジションで、現在は私一人で担当しています。仲間を増やしたいです(笑)

DevRelの仕事は、リクルーティングの対象でもある外部の開発者に、自社や自社製品を理解してもらい、継続的に良い関係を築いていくことです。

理想としては、社員全員がDevRelの意識をもって、社内外の開発者との関係を良好にしていくことなので、そのようなマインドや環境を醸成していくのが現在の私の仕事だと思っています。

チームでスモールな採用をはじめたきっかけとは…?

越石:今回のテーマである「ボトムアップの採用」についてうかがいます。

ICT開発センターでは2020年に、社内のあるチームが使い始めるという形でWantedlyを導入したとうかがっていますが、そのきっかけや、それ以前の採用手法について教えてください。

従来の採用のやり方

椿:従来は、事業部が年に1度採用計画を立てて、それに基づく採用を総務(人事)に依頼するという形でした。

事業部は、人事が進行・管理するスケジュールにしたがって、書類選考や面接に加わるという「待ち」のスタンスです。

新卒採用は、本社(現ホールディングス)の人事部による一括採用で、中途採用は事業部の総務(人事)がエージェントにオーダーするという形で行われていました。

チームで取り組みを開始し、Wantedlyを導入したきっか

越石:その中で、2020年に事業部のあるチームが自発的な採用活動を始めて、Wantedlyを導入したと聞いていますが、そのきっかけ、理由は何だったのでしょうか。

椿:ボトムアップでの採用の機運が生まれたのは、仕事の仕方の変化、それを担うために必要な能力の変化を、現場が強く感じていたからだと思います。

自社のプロダクト開発の変化が年々速くなる中で、未来の事業をいっしょに創っていく仲間は自分たちで探すという意識が生まれたのです。チームに必要な人財の解像度は、やはり現場で働くメンバーがいちばん高いのですから。

ボトムアップ採用の3つのポイント

越石:ボトムアップ採用がスタートしてから4年がたった現在、現場のチームが主体となる採用の意義や大切なポイントは何だとお考えですか?

椿:目指すところは、人財の獲得方法を未来の事業に最適化することです。具体的には次の3つがポイントだと思います。

1.変化の速い自社プロダクト開発に必要な新しいケイパビリティ(能力・才能)を導入する

2.リクルートマーケティングにおいて、現場を伝えるメディアとして機能する

2021年4月にスタートしたCM「すべてを突破する。TOPPA!!!TOPPAN」などを通じて、TOPPANデジタルがDXの会社だという認知が少しずつ拡大してきました。

次のステップとして、具体的にどんな事業を行う、どんなプロダクトがある会社なのか、さらには、どんなミッション、バリュー、ビジョンを持つ企業で、どんな人が働いているのかを、現場から伝えるメディアが必要だと考えました。

3.エージェントに任すのではなく、社内での利用が定着し、活用できる採用サービスを導入する

ボトムアップでの採用を最初に始めたチームが導入した採用サービスがWantedlyでした。
Wantedlyには、採用サービスを定着化するノウハウや体験談について、利用中の企業からの情報発信が豊富にあると感じたからです。

また、これは導入して分かったことですが、Wantedlyのカスタマーサクセスの担当者が、こちらの希望や意図に寄り添って親身に支援してくれるのが、ボトムアップの採用にはありがたかったです。

これら3つのポイントでWantedlyが求めるところに合致しました。

越石:ありがとうございます!

Wantedly導入後(2020年〜)の運用規模と採用実績

越石:導入後の運用規模の推移や採用実績はどうでしたか?

椿1つのチームからWantedlyを使い始めて、じわじわと運用するチームが増え、現在はICT開発センターの半数以上のチームが利用しています。


いっしょに働く仲間は自分たちで探そうという機運は、Wantedlyの運用を通じてセンター全体に広がりつつあり、徐々に採用実績も伸びています。

運用の役割分担

越石:Wantedlyを運用する際の、社内での役割分担について教えてください。

椿:次のような分担になっています。

  1. DevRel担当(現在は私一人)とチームマネジャーが、募集記事とストーリーを作成
  2. チームマネジャーとメンバーが、応募した候補者とカジュアル面談を実施
  3. チームマネジャーと総務(人事) が、一次・二次・最終面接を実施

カジュアル面談は回数を決めずに、お互いにしっくりくるまで何度でも行うようにしています。チームには負担になりますが、カルチャーに合う人が採用できたという評判がセンター内で広まり、協力的になってきました。

チームでスモールに始めるDevRelの裏側

越石:ここからは、DevRel担当の椿さんの具体的な仕事の進め方についてうかがいたいと思います。

募集記事やストーリーをどのように作成しているか

越石:まず、募集記事やストーリーの公開頻度、作成にかけている工数について教えてください。

椿:頻度と工数は、おおよそ次のとおりです。

● 募集

公開頻度:2週間に一度
工数:初期制作は1日程度、複製・修正は1~2時間程度

● 応募者へのメッセージ

頻度:メール通知が来る毎に、メールと同じ要領で返信
工数:毎朝30分の時間を確保 

● ストーリー

公開頻度: 2週間に一度を目標
工数:取材・インタビューは1時間~半日
記事制作(レビュー含)は半日~2日

越石:応募数や採用数などのKPIは設けていますか?

椿:数値目標はとくに設けていません。私自身が昨年4月にDevRel担当になったばかりということもあり、まずは安定した運用と募集やストーリーの更新を目標にしています。カルチャーにマッチした人を採用できるかどうかは、数字では測れないという思いもあります。

ただ、今後はよりカルチャーフィットした人を採用するためにも、分析をとり入れつつKPIを設定することにもチャレンジしていきたいと考えています。

ストーリーのテーマをどう見つけるか

越石:採用担当の方から「ストーリーに書くネタに困っている」という声をいただくこともあるのですが、椿さんはどのようにテーマ設定していますか?

椿:次のようなテーマをシリーズ化しているので、とくにネタに困ることはありません。

  • 社員インタビュー
  • イベントレポート
  • メディアに掲載された記事の共有
  • その他


▼TOPPANデジタルのストーリー
https://www.wantedly.com/companies/toppan_dxd_ict/stories

ストーリーを書くのはこれまで私だけだったのですが、最近ChatGPTが好きなエンジニアからの寄稿があって、その記事がPV数を伸ばしています。こういう仲間を増やしていければいいなと思っています。

越石:さっそくシリーズ化されていますね。

椿:シリーズ化したいという願望です(笑)社内に向けては「原稿募集してます!」のアピールでもあります。

Wantedlyを利用してどんな効果を実感しているか

越石:Wantedlyを利用して実感している効果はありますか?

椿:採用に対する効果と社内に対する効果の両面があります。

1. 採用に対する効果

椿:採用に対する効果では、Wantedly経由でない候補者へもアプローチできたことが、想定外の嬉しい効果でした。

就活中の学生からも、Wantedlyの記事を見て初めてTOPPANを知って興味を持った、迷っていたときの後押しになった、という声がありました。

外部の採用サービス経由での候補者からも、Wantedlyの記事を読んでTOPPANへの理解が増し、入社意欲が増した、という声がありました。

Wantedlyの記事は、Google検索で上位表示される傾向があるのもありがたいです。「ICT開発センター」のキーワードで検索すると、なぜかWantedlyの記事が1位と2位で表示されています。


越石
:TOPPANのオウンド記事よりも上ですね(笑)

椿:そうなんですよ。採用に携わっている身からするとうれしいのですが(笑)

過去の記事をストックできるのもありがたいですね。3年前にアップした記事の「社員インタビューVol.1」は現在もPV数を伸ばし続けています。

2. 社内に対する効果

椿:Wantedlyの運用は、社外よりも、むしろ社内への影響や効果が大きかったと思います。

いちばん大きかったのは、現場が採用マーケティングを行う意味や重要性への理解が広がってきたことです。現場が採用をすることで、よりスキルマッチ、カルチャーマッチした人を採用できたことから、導入後、他事業部の2部門がアカウントを開設してくれました。

自分たちで募集記事を書くことで、自社の事業や人材市場、他社の採用手法の理解が深まる効果もありました。それによって募集したい人財の解像度が高まったと思います。

さらに、カジュアル面談を通じて、TOPPANが外部にどのように見られているか、社外視点のTOPPANを知ることができたという効果もありました。自分たちはとくに強みとは思っていなかった伝統的なカルチャーが、候補者にとって魅力的だったなどの気づきです。

例えば、印刷博物館です。「こんなものがあるなんて羨ましい」と言われて、ハッとした覚えがあります。これまでカジュアル面談という文化がなかったので、いろいろ新鮮な驚きがあります。

運用で工夫しているポイント

越石:Wantedlyの運用で工夫されているのはどのような点ですか?

椿:1つは、記事の執筆やDevRel活動は強制せず、執筆者を尊重することです。

記事の執筆は、文章を書くこと、発信することが好きな人がすれば良いと思っています。

文章の校閲は自社の自動校正サービス「review-it!」を活用して簡略化し、上長のレビューも、書き手の草稿から大きく変わることがないよう、最小限にとどめるようにお願いしています。

また、Wantedlyの記事はスマホで閲覧する人が多いと思うので、読みやすさを意識して、ストーリーの文体は、SNSやブログで発信するイメージで、口語表現やおちゃめな言い回しもOKにしています。

もう一つ工夫している点は、Wantedlyユーザーと改善を回すことです。Wantedly経由で面談に来てくれた人や、入社してくれた人の声に耳を傾けるように心がけています。

とくに、Wantedly経由で入社したメンバーはいちばんユーザーに近い存在なので、彼らが感じたギャップは、良いギャップも悪いギャップも改善の種として重要です。

運用開始当初は、Wantedlyユーザーはスタートアップ志向の人が多いという先入観があり、トッパンのベンチャー的な側面を強くアピールする傾向があったのですが、今はそれだけでは不十分だと考えています。

例えば、伝統のある企業で信頼できるベテランがいるとか、大企業として蓄積された歴史や土台が作る安心感があるなどの良いギャップは、積極的にアピールしていくべきとフィードバックをもらったので、表に出していきたいと思っています。

逆に、伝統や想像以上の規模感にプレッシャーを感じるとか、意思決定のプロセスが重そうなどの悪いギャップも、隠すのではなく、丁寧に向き合っていきたいと思います。

採用でいちばん大切なこととは?

越石:ありがとうございます。最後に、椿さんが採用活動をするうえでいちばん大切だと考えていることを教えてください。

椿:採用に限らず、仕事をするときにいつも掲げているのは「楽しいことをする」てす。

どんな時に楽しいと感じるかは人それぞれですが、ビジネスパーソンとしては、自分の成長と会社の成長が両立していると感じることがいちばん楽しいときなのではないでしょうか。

私自身がそういう楽しさを感じながら仕事をしたいし、いっしょに働く仲間にもそういう楽しさを感じながら仕事をしてもらいたいと思っています。

越石:本日は貴重なお話をありがとうございました。

質疑応答

Q 採用活動に現場の協力を得るのに苦労しています。なにか工夫していることはありますか?

椿弊社でも「本業をやりながら採用マーケティングはできない」という声は多くありましたが、そのために私が専任としてDevRel担当になったという経緯があります。

なるべく現場に負担をかけないようにどうしたらよいかを試行錯誤しており、例えばカジュアル面談まではDevRel担当で行うといった形を採用していきたいと思っております。

スカウトは数多くはやれておらず、候補者は自然応募なので、社内協力に関するDevRelの仕事は「こんな応募があります」という形で、応募者と現場の橋渡しをすることだと考えています。

Q 募集記事やストーリーの掲載から、その効果を実感するまでにどれくらいの期間がかかっていますか?

椿:記事の更新頻度をKPIにしてから半年くらいで「記事を見て応募した」というような声が聞こえてくるようになりました。

頻度を高く更新していると、記事に対する信頼感が増し、また読みたいという気持ちになるのか、フォロワー数やPV数がじわじわと上昇しています。

Wantedlyについて

Wantedlyは、給与などの条件ではなく、会社が掲げる「想い」への共感を通じて候補者とのマッチングをはかる採用プラットフォームです。

共感採用を実現するWantedlyの機能

募集では「なにをやっているのか」だけでなく「なぜやるのか」「どうやっているのか」といったビジョンや価値観を記載します。

また、Wantedly上でブログを投稿したり、社員をメンバーとして公開できるため、企業の魅力や雰囲気を伝えやすいのも特徴です。

良い会社があれば話を聞きたいと考えている転職潜在層にも知ってもらい、興味を持ってもらうことができます。

スカウトで優秀層にアプローチ

ダイレクトスカウトは、会いたい候補者に直接メッセージすることで、無駄の少ないピンポイントな採用につながります。

Wantedlyでは、新卒・インターン / 中途・副業採用 / 全職種対応など、あらゆる職種に対してアプローチすることも可能です。

Wantedlyのサービス資料を見る
タイトルとURLをコピーしました