Wantedlyは2022年2月に702名のユーザーを対象に「企業のパーパスに関する調査」を行いました。
本日は、その調査結果をご紹介するとともに、株式会社ココナラのCHRO佐藤邦彦氏をお招きして、ココナラのパーパスに基づいた採用・組織づくりについてお話をうかがいます。
※なお、この対談では「パーパス」を「企業の存在目的や社会的意義」と定義します。企業によっては「ミッション」や「ビジョン」と表現されていることもあります。
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ゲスト
株式会社ココナラ 執行役員CHRO
佐藤邦彦2008年(株)リクルート入社
2017年 リクルートを退職し、家族4人で世界放浪
2018年 起業・(株)リクルートキャリア出戻り・他2社を兼業
2020年(株)ココナラ入社▼Wantedly Profile
https://www.wantedly.com/id/kunihiko_sato_923
モデレーター
ウォンテッドリー株式会社 広報
奈良英史広報PR担当。元エンジニア/ゲームプランナー
平成元年茨城県つくば市生まれ。1児の新米父。▼Wantedly Profile
https://www.wantedly.com/id/hidefumi_nara
【Wantedly調査データ】企業のパーパスが就職・転職の際にどう影響したか
奈良:佐藤さん、本日はよろしくお願いいたします。お話をうかがう前に、ウォンテッドリーが2月行った「企業のパーパスに関する調査」の結果をご紹介します。
▼「企業のパーパスに関する調査」サマリー
就職・転職の場面で高まるパーパスの重要性
・自社のパーパスを「よく知っている」といった回答が62%
・パーパスを知るにあたり「とても参考になった」情報源のTOP3は企業HP、採用活動、メディア取材記事
・直近の就職・転職で重視したのは67%、これからの就職・転職でパーパスを重視するのは84%
・パーパスを重視する人の割合は年々増えている。2017年→2021年で+13%パーパスへの共感度の高さとモチベーションの高さ
・パーパスへの共感度合いによってモチベーションの高さに5.3倍の差が
・仕事探しで最重視することが「パーパス」と「給与水準」とでモチベーションの高い人の割合に2倍以上の差が仕事におけるパーパスの大切さ。給与換算で倍額に相当
・パーパスに「とても共感できる」→「まったく共感できない」の転職では、57%が倍以上の年収が必要と回答
・パーパス、面白さ最優先で転職しようと思った人が78%
・パーパス、面白さ最優先で転職しようと思った経験がある人とない人で今のモチベーションに差が
【トークセッション】ココナラのパーパスを重視した採用・組織作りについて
半期ごとに、パーパスを実現するための1人ひとりのMissionを定める
奈良:ここからは、上記のデータもふまえながら、ココナラ様のパーパスに基づいた採用と組織づくりについて、佐藤さんにお話をうかがいます。まず佐藤さんにお聞きしたいのは、パーパスを実際の採用や組織づくりにどう結び付けているか。多くの企業がパーパスやビジョンを掲げてはいるが、それがパフォーマンスになかなか結びつかないのが実情だと思います。その中でもココナラ様は、パーパスが企業と社員の行動に反映され、実践されているイメージがあります。その秘訣をお聞かせください。
佐藤:私たちがどこまで上手くいっているかはさておき、パーパスを組織づくりの起点に置き、すべてをそこからスタートさせる姿勢はぶれないように努めています。
上図の中央にあるパーパスは、まずこの半期・1年の事業計画で重視して取り組むテーマとして「全社Missionシート」に言語化されます。それを日々の仕事にブレイクダウンするのが、個人の「Missionシート」です。会社のMissionと個人のWillが合致するように、上司と部下が1on1で定めます。
成果と行動を50:50で評価
次のステップが、四半期ごとの「評価」です。ココナラが「Value評価制度」と呼んでいる評価には2つの特徴があります。
1つは、仕事の「成果」と「行動」を50:50の割合で評価することです。もう1つは、評価をするのは直属の上司だけでなく、本人の自己PRと横軸(他部署)の上司の評価を加味することです。
奈良:数字に表れない「行動ぶり」を評価するのは難しい面がありそうですね。
佐藤:人事の専門家に言わせると、成果ではなく行動やスタンスを評価するのはタブーだそうです。なぜかというと、上司の感性や相性に評価が左右される恐れがあるから。しかしココナラは『一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中を作る』をビジョンに掲げ、ワンチームでその実現に向けて活動しています。そのためには短期的な成果だけを評価するのではなく、将来の持続的な成果に繋がる日々の行動を評価することが大切。ミッション実現のために一人ひとりが大切にしたい行動・スタンスをバリューとして定め、その体現度を多角的に評価するのが「Value評価制度」の趣旨です。
もちろん、慎重かつフェアに評価しなければいけないため、上司だけでなく本人や他部署の上司の意見も考慮する仕組みにしました。行動を評価するのは決して簡単ではなく、弊社もまだ試行錯誤の最中です。作って終わりではなく、これから先も良い制度にするために日々アップデートしていきたいと考えています。
企業はパーパスを実現するために集まっているプロジェクトチーム
佐藤:また、ココナラは企業を「パーパスを実現するために集まっているプロジェクトチーム」と位置付けています。いわば、これが企業のスタンスです。評価会議は私たちがそういうチームの一員であることを思い出し、立ち返る良い機会になっています。
奈良:数字には表れない社員のスタンスを評価するのは抽象度の高い作業だと思いますが、具体的にはどんなプロセスで評価するのでしょうか?
佐藤:まず評価の前に、上司との1on1で個人の「Missionシート」を作ります。このときに「今期はココナラが掲げるバリューの内、どれを重視したいか」という選択をしてもらいます。
ココナラの3つのバリュー(2020年に改訂)
One Team, for Mission : チームとして大事にしたいこと
Beyond Borders : 個人として大事にしてほしいこと
Fairness Mind : 会社を支える基盤としての価値観
その選択をもとに、「どういう行動をしたいか」をイメージしてMissionシートをつくり、四半期ごとに「どうだったか」を上司と一緒に振り返ります。評価の次には「表彰・表出」があり、成果の高かった社員には「MVP」が、行動が高評価された社員には「Value賞」が贈られ、その内容について全社員の前でシェアします。
中途採用でもパーパス重視の人が増えている
奈良:最初にご紹介した調査データでも、就職や転職の際にパーパスを重視している人が増えていることがわかります。ココナラ様の採用でもその傾向は見られますか?
佐藤:ココナラは以前から「共感採用」、言い換えると「パーパスドリブンな採用」を標榜しているので、自然とパーパスを重視する人材が集まっていると思います。
Wantedlyのページでも、ココナラは「パーパスドリブンな採用」を掲げていますし、代表の南が昔から「ビジョンと関係ないけど儲かる新規事業があったとしてもやらない」と宣言していますから(笑)
人材業界に長くいた経験からも、2010年くらいまでは「仕事内容」や「スキルを養える」が企業を選ぶ軸のメインでしたが、2015年あたりから「やっていることに共感できる企業」を選ぶ人が増えたと感じています。とくに新卒ではそれが顕著ではないでしょうか。
奈良:学生のころから、自分が何をしたいのかを重視して仕事を探す人材が増えていますね。
佐藤:そうですね。中途採用ですらその傾向があります。一部上場企業でかなりの立場にある人材が弊社にエントリーいただく例もあります。そういう方々にお話を聞くと、成熟した市場でのシェアの取り合いではなく、ビジョンに共感でき、未来に繋がると思える仕事がしたいと仰る方も少なくないです。
パーパスへの共感とモチベーションの相関
奈良:ウォンテッドリーの調査では「パーパスへの共感とモチベーションの相関」がはっきり読み取れる結果が出ていますが、企業として社員のモチベーションを測るのは案外難しいと思います。ここについて、ココナラ様はどういった取り組みをされていますか?
佐藤:ココナラでは「エンゲージメントサーベイ」サービスを導入しています。これは、用意した多くの項目の中から「企業に期待していること」と「企業に満足していること」に評価をつけてもらい、そのギャップを測ってスコアを算出するものです。サーベイの結果を見ると、スコアの高い8項目(ココナラの8つの強み)の多くがパーパスに直結したものだとわかります。具体的には、次のような項目です。
即時の意思決定
1.オープンでフランクな姿勢
2.部下の意見の傾聴姿勢
3.理念の現場浸透
4.事業の社会的意義や貢献感
5.魅力的な人材
6.事業の成長性や将来性
7.自社の事業優位性
サーベイ項目の全体像は下図のようなものです。
ここでも、青色で囲んだところにココナラの強みが出ています。とはいえ、ココナラは昨年3月に上場したばかりのスタートアップ企業。そのため、ときには辛いことやハードなことも多いです。そんなときにモチベーションの源泉になるのは、やはり自分のパーパスと企業のパーパスの一致だと思います。
自分と企業のパーパスの一致を最もリアルに感じられるのがユーザー交流会です。ココナラは創業当初から、ユーザーの生の声を聴く交流会を行っていて、最近はオンラインで実施しています。交流会にはビジネスの社員だけでなく、エンジニアも人事などのスタッフも参加します。そこで自分の仕事がエンドユーザーの幸せにつながっていること、パーパスの実現に繋がっていることを体感できるのは、大きなモチベーションの源泉になっているはずです。
組織のパフォーマンスに、どうすればパーパスを実装できるのか
奈良:最後の質問です。パーパスはあるが、それが組織のパフォーマンスに結びついていない場合に、どうすればパーパスを組織のパフォーマンスに結びつけられるのでしょうか。
佐藤:あくまでココナラの考え方ですが「企業のパーパスを浸透させよう」といったアプローチがそもそも間違っているのではないか、と感じます。今の時代、主語は「企業」ではなく「個人」であるべき。「どれだけ企業のパーパスに共感してもらって、個人に選んでもらえるか」といった捉え方が大前提だと考えています。そのうえで、社員が企業のパーパスに共感していることを実感できる機会を仕組みとして作っていくのが、組織づくりの肝だと考えています。
その際に重要なことの1つは、個人のパーパスを企業が評価しないこと。たとえば、将来パン屋になりたいという社員に「じゃあ、どうしてこの企業にいるの」と聞いてしまうのはNGです。「とくにやりたいことはない」と話す社員を「思慮が浅い」「やる気がない」と評価するのも良くないと捉えています。
その際にマネージャーは、まず本人の言うことを受け止めたうえで、「なぜ彼はそう言うのか」の根本を深堀りすることが大切だと思います。たとえば、パン屋になりたい社員は、「自分の将来について何か不安があるのではないか」などです。深堀りしたうえで、彼にはこんなミッションを与えたら、本人にとっても企業にとってもプラスになるのではないかを考えます。
奈良:なるほど。たしかにそれは大切なことだとは思いつつも、一人ずつにそれを実施するのは大変だと思ってしまいました(笑)
佐藤:たしかに大変ですし、深掘りするには「問う力」が必要。まだまだ足りないことが多いチャレンジングなテーマです。にもかかわらずそれを行うのは、それがココナラの人事組織戦略だからなんです。「一人ひとりが自分のストーリーを生きる」社員が増えることで、個人のエネルギーが最大化され事業成長に繋がります。自分と企業のパーパスが繋がること、それを仕事で実感できるシーンを創り出すこと、この積み重ねが組織の競争優位になり、カルチャーとなっていく。「自然とそうなるだろう」と放置しておくわけにはいかないのです。これがパーパスを組織に実装させる一丁目一番地なんです。
奈良:本日は貴重なお話をありがとうございました。企業のパーパスを浸透させていくために重要かつ大切なことをたくさんお伺いでき、非常に有意義な時間となりました。
佐藤:こちらこそ、ありがとうございました。