2024年4月25日に、「スタートアップ企業が陥るマネジメント不全のパターンと解決に導く、4つの基準」についてのウェビナーが開催されました。このイベントでは、株式会社EVeMの鈴木純也(ジェイ)氏とWantedly株式会社の橋屋優理氏が登壇し、それぞれ「急成長期に訪れる、マネジメント不全の再現性」と「知っておけばよかったマネジメントにおける「4つの基準」」をテーマに行われました。
急成長期に訪れるマネジメント不全の再現性
こんにちは、Wantedlyでエンゲージメント領域の事業責任者を務めております、橋屋優理です。本日は、スタートアップ企業が陥るマネジメント不全のパターンとその解決策についてお話しできることを楽しみにしています。まずは、私の経験や背景について少しお話しさせていただきます。
私のキャリアは2009年に始まり、シャープ株式会社でスタートしました。ご存じの通り、リーマンショックの影響を大きく受けた世代で、就職活動をしていた当時と入社時の経済状況が全く異なるという経験をしました。このような環境の中で、組織がどのように変化し、成長していくのかを目の当たりにし、組織作りに対する興味が芽生えました。
そうした経緯があり、現在はWantedlyで、採用やエンゲージメントに関するサービスを提供しています。Wantedlyという会社を知っている方の多くは、人材の採用プラットフォームのサービスとして認識していただいているのではないでしょうか。このサービスは、図で言うと左側に当たる部分です。
私が現在関与しているのは、右側の3つのプロダクトです。福利厚生のサービスやマネジメントのサービス、そして社内報のサービスがあります。これらのエンゲージメント起点の課題は、人の出入りや増減に依存して発生することが多いと考えています。採用のサービスと連携して提供することで、私たちのミッションをより立体的に実現していこうという意図で、これらの3つのプロダクトを推進しています。
こうしたサービスを提供している立場上、さまざまな企業からマネジメントに関する悩みや苦労の声を多く耳にします。特にスタートアップ企業では、急成長に伴うマネジメントの課題が顕在化しやすく、どのように対応すべきか悩む経営者やマネージャーが少なくありません。しかし実は、スタートアップ企業が直面するマネジメントの課題は、特定のパターンに従って発生することが多いんです。だからこそ、このパターンを理解することで、企業は早期に対策を講じることが可能になります。まずはその構造やパターンについて、私の方から簡単にご説明できればと思います。
マネジメントの不全の再現性
組織論やマネジメントの話の中で、いわゆる「何名の壁」みたいな話を聞いたことがある方も多いかと思います。簡単に言うと、組織の成長段階に応じて発生する「組織の壁」という概念があり、具体的には、20名、50名、100名といった規模での課題が存在すると考えられています。じゃあそれぞれの壁にぶち当たった時に何が起こるのか、という話からしていきます。
20名の壁
基本的には、PMF(プロダクトマーケットフィット)を目指すまでは、事業に集中することが多いですよね。PMFを達成して、量産体制に入り、人材を2倍3倍に増やす必要が出てきます。そして無事に人材が増えたとき、はじめて事業の課題がPMFからマネジメントにシフトします。ここが最初のマネジメントの壁です。売ることに集中していたところから、急に組織課題や経営課題がマネジメントにシフトする瞬間が訪れる、ということですね。
このような状況では、これまでパワープレイで何とか乗り切っていたところが回らなくなってきて、新しいマネージャーを立てたり採用したりしたい、というニーズが生まれます。しかし、新しいマネージャーを採用するのは非常に難しく、創業からの流れを理解していないと、熟練のマネージャーでも活躍が難しい場合があります。一方で、社内でマネージャーを立てる場合も、経験がない人を立てるとスキルが追いつかないことがあります。これが、20名の壁にぶち当たったといに起こりがちなことです。
この構造を理解していると、PMFのタイミングでマネージャーを先に採用したり、教育を始めておくことが可能になります。これにより、離職を防ぎ、新メンバーが活躍できるように、オンボーディングをしっかり行うことができます。
50名の壁
20名の壁を突破すると、組織の人員が加速度的に増加します。この段階では、組織構造がフラットからピラミッド型に移行し、階層が増えていくことになります。
人数が増えることで、専門部署が形成され、専門性や効率が向上するという利点があります。例えば、これまではいちメンバーがマーケティングもやっている、という状況だったところから、マーケティング部門を設立して専門のマーケターを採用する、といった状況にシフトしていくともこのタイミングでしょう。
でも、こうした変化に伴って、マネジメントがうまくいかなくなることもあります。具体的には、まずマネージャーの数が足りなくなります。それから、既存のマネージャーがスキル不足で、メンバーをうまく管理できないこともあります。さらに、マネージャーが経営の考えをメンバーに伝えられないという問題も出てきます。そして、メンバーの状況を把握するのが難しくなることもあります。
また、新しく入った人が社内の文化に馴染めず、力を発揮できないこともあります。逆に、既存の社員が新しい人を受け入れにくくて、組織にうまく適応できない場合もあります。こうした問題があると、マネージャーを外から採用するか、社内から育てるかという選択が必要になりますが、どちらにも難しさがあります。外部からマネージャーを採用するのは限界がありますし、社内から育てる場合も、スキルが追いつかないことがあります。だからこそ、マネージャーの品質を一定に保つための育成システムが必要になってくるんですね。このように、50名の壁を越えるためには、組織の変化に対応した柔軟なマネジメント体制の構築が求められます。
100名の壁
じゃあ100名の壁だとどうなるか?組織が100名の壁を超えると、さらに人員が増えていく中で、経営者は新たな課題に直面します。この段階では、「拡散と集約」を交互に行うことが重要だと言われています。つまり、組織が大きくなるにつれて、経営者は勇気を持って権限を委譲しなければならないという課題にぶつかります。
認知限界という概念があり、これは通常7名程度と言われています。このため、組織が大きくなると、思い切って権限を任せないと、組織がうまく回らなくなるんですね。うまくいけば、各部署がさらに成長しますが、うまくいかないとエンゲージメントが低下し、離職や生産性の低下といった問題が発生します。
ただし、ずっと放任しておけば良いというわけではなくて、放任しすぎると、組織が自律しすぎてしまい、統制が取れなくなるという課題に直面します。例えば営業組織で、最初に「自由にやっていいよ」と言った結果、全員がバラバラに動き、話している内容が全然違うということが起こることがあります。ぶっちゃけて言うと、やや調子に乗ってきちゃう、みたいなことが起こります(笑)。
このため、定期的に統制を取る必要があります。統制を取ることで、組織が再びまとまり、自律が薄れるとまた権限を委譲し、統制を取るというプロセスを繰り返すことが重要です。
課題解決の3つの要点
最後にお伝えしたいのは、課題というのは隣接していて、ひとつの課題が解決すると次の課題が生まれるということです。これがクリアできるとまた人が増えて、そうするとまた新しい課題が起こる。この構造を理解して先回りできれば、タイムラグなく対応できると思います。
要点を簡単にお伝えすると、まず適正なマネージャー配置は大体1対7くらいが良いとされています。認知限界がそのくらいと言われているので、これを超えるとかなりしんどくなります。ですから、10人を超えるような組織になったら、マネージャーの目が行き届いているかを考える必要があります。例えば、50人の組織にしたいなら、マネージャーが7人くらいいるかを考える必要があるということです。
もう一つ言えるのが、組織が成長する中で、カルチャーやコミュニケーションの揺れという問題についてです。特に、1年以内に入社した人が全体の15%を超えると、組織が変わる要素があると定量的に言われています。例えば、100人の会社で15人が新しく入ると、組織の雰囲気が変わることがあります。人数が少ない会社では、30人の組織で2人入るだけで15%を超えてしまいます。だから、新しい人が入ってくるたびに、文化が揺れないようにしっかりとした基盤を作る必要があります。
そのためには、コミュニケーションの施策が非常に重要です。トップダウンでのアプローチも大切ですが、各メンバーにフォーカスし、当事者意識を均一に保つことも効果的です。特に、組織が20名を超えると、当事者意識を均一に保つのが難しくなります。そのため、しっかりとフォローアップすることが重要です。
3つ目の要点が、「任せる?任せない?」問題です。
この後、ジェイさんの話にも出てくると思いますが、どこかでメンバーをどんどん活用していかないといけないという話をしてくれるんじゃないかなと思っています。やっぱり、勇気を持って任せないといけないんですよね。任せたら任せたで苦労があるっていうのは、私も経験しているんですけど、そういうのがゲームのルールなんだって分かっていると、ミスをしないで済むかなと思っています。
全体を通してお伝えしたいのは、拡散と収束を交互に繰り返すことが大切なんだということです。「自律」という言葉が評価されすぎて、委ねることが100%正しいという風潮もありますが、やっぱりバランスを持つことも大事なんですね。
以上、マネージメント不全の再現性についてお話させていただきました。当社では、こうした課題に対して個別にソリューションのご提案をおこなったり、ここでは踏み込めなかった採用の面でのサポートも行っておりますので、ご興味があればぜひお声がけいただければと思います。
秋山:橋屋さん、ありがとうございました。組織作りの予定をフェーズ ごとに分かりやすく解説いただきました。それでは次に株式会社EVeMより、鈴木(ジェイ)さんお願いいたします。
鈴木(ジェイ):橋屋さんのお話、めちゃくちゃ勉強になりました!ありがとうございます。
僕の方からはですね、自分のストーリーを交えながら、「これを知っておけばよかったな」っていうマネジメントの4つの基準についてお話ししたいと思います。
知っておけばよかったマネジメントにおける「4つの基準」
まず簡単に自己紹介させてください。鈴木と申しまして、ジェイというあだなで呼ばれています。今はマネジメントトレーニングを提供している株式会社EVeMで、ビジネスデベロップメントセールスチームというところでセールスを担当しています。
僕のキャリアですが、もともと従業員30人くらいのアーリーフェーズのベンチャーで営業としてキャリアを重ねてきました。前職では3年間、Rocketsという会社でCSO(最高戦略責任者)をやっていましたが、プレイヤーとして営業していて、成績が上がってきて、リーダーになり、マネージャーになり…という感じで、大企業にいたわけじゃないので、管理職研修を受けたこともなく、気づいたらマネジメントする立場になっていたという感じです。
当時は、ベンチャーだしスタートアップだしで、まずPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を達成すること自体が非常に難しく、事業に集中するあまり、人材のマネジメントがおろそかになりがちで、メンバーからの不満が募ることも多々ありました。「思っていたのと違う」といった声が上がり、30人の壁を超えることができないという経験を何度もしました。
最初は意欲的なメンバーが集まっても、時間が経つと「ジェイさんのようには営業できない」とか、「戦略が何なのかわからない」といった不満が出てきて、会議の雰囲気も悪化し、メンバーの不満が溜まっていく状況になってしまいましたし、役員からも、「もっと成果を出して資金調達をしなければならない」と言われる一方で、「メンバーにもっと向き合ってチームを作ってほしい」とも言われ、マネジメントの基準も「俺はこういうマネジメントだ」「私はこうだ」みたいなのがあって、あんまり共通言語はなかったなと思っていて、すごく辛かった思い出があります。これが原体験にあるかなと思っています。
その後、株式会社EVeMに入社し、マネジメントの基準を学ぶようになりました。こうした経験もふまえて、今回は、私が学んだマネジメントの4つの基準についてお話ししたいと思います。
マネジメントの4つの基準
せっかくなので、皆さんにも次の質問について考えてみてほしいと思います。「半期目標は達成しているけど、自分で何でも巻き取ってしまうマネージャーは良いマネージャーでしょうか?」という問いです。
あ、チャットありがとうございます。「場合によります」っていう意見をいただきました。そうですよね、おっしゃる通りです。ちなみに、橋屋さんはどうですか?
橋屋:そうですね、僕も割と巻き取っちゃう派の時期が長くて、耳が痛いですね。優先度や緊急度が高い時にいつも悩みますよね。
鈴木(ジェイ):おっしゃる通りですね。チャットでいただいた意見を読ませていただくと、結構たくさんの方が「場合によります」とか、「育成観点で見るとあんまり良くない気がします」とか、「メンバーの稼働時間内に収めようとすると巻き取っちゃいます」とか、「良くないマネージャーだと思います。部下が育たないので」とか、いろんな意見をいただいてます。ありがとうございます。
ちなみに僕は、かつて完全に「なんでも巻き取ってしまう」タイプのマネージャーでしたね。だからこそマネジメントの基準を学ぶことで、スムーズなマネジメントができるようになったと実感しています。
では本題に入りましょう。4つの基準についてです。それは「執行」「活用」「伸張」「連携」です。
1つ目の「執行」ですが、これはチームの成果を出すために重要な業務を見極めて実行することです。目標や戦略を立て、それを執り行います。あなたがマネージャーになった瞬間からこの「執行」が求められます。
2つ目の「活用」ですが、これは会社から大事なメンバーを任されているので、そのメンバーを持続的にパフォーマンスを発揮し続けるためにリソースや意欲、能力をフル活用することです。
3つ目の「伸張」は、採用と育成を通じてチーム全体の力量を上げることです。チームを大きくし、できることを増やしていくことが求められます。
4つ目は「連携」で、他部署や経営チームと適切に情報を共有し、ブラックボックスにしないことです。他部署や上長がちゃんと意思決定できるように情報共有しましょうね というものです。
マネージャーになった瞬間から、執行もしなきゃいけないし活用もしなきゃいけない、伸張もしなきゃいけないし連携もしなきゃいけません。
僕自身の話をしますと、当時は「活用」についてはあまり考えていませんでしたし、「伸張」の観点でも、育成とか採用とか、そういうのは人事とか他の部署でやってくれればいいと思っていました。「連携」も、そもそもいちいち連携をしたくないからベンチャーに行ったんだ、という感じでした。だから僕は「執行」しかできなかったんですね。それでマネジメントがうまく回らなくて、「期待していたマネジメントができていませんね」と株主に言われたこともありました。
この4つの基準について、このような整理ができるんじゃないかなというのが、以下の図です。縦軸が会社全体、つまり自分のチームの広がりで、横軸が時間軸になっています。ここでは、短期の成果と中長期的な成長でざっくりと分けています。
先ほどの4つの基準でいうと、「執行」ができていると短期のチーム成果には貢献できますよね。巻き取ってやっちゃうかもしれないですが、その分コミットしているので短期のチーム成果には貢献できそうに思います。
ただし、「活用」していないと、人は辞めていきますよね。全然活用されていないメンバーは辞めていってしまうので、中長期的なチームの成長に貢献できなくなっちゃいます。
僕も経験があります。「執行」しかしなくて誰も「活用」していない時がありました。僕がマネージャーだった時、ある特定のエースはすごく可愛がっていました。言ったことを全部改善してくれるので、その1人のエースだけはすごく可愛がっていましたが、他の2人はほったらかしにしていました。そうすると、この両サイドの50%や30%しか活用されていない人は辞めていったりします。
全然楽しくないとか、能力がフル活用されていないと感じると楽しくないですし、成果も出ないので、人は慢性的に辞めていってしまうんです。活用ができていないと中長期的な成長はできないですよね、という話です。
3つ目に「伸張」というのがありました。育成とか採用でチームをどんどん大きくしていく、できることも増やしていくことで、中長期的な右側の軸に行くんですけれども、もし伸張ができていないと、両方とも貢献できませんね。
今期の自分のチームの能力が「3、3、3」だとした時に、来期も「3、3、3」のままだったら全然成長していないですよね、ということです。仮にメンバーが成長・伸張して、この能力3のメンバーが10になり、マネージャーのポジションを任せられるとなれば、自分が新規事業の方に行けたり、他部署に人材を輩出したりできるので、全体の貢献にもつながります。
最後に「連携」ですね。言わずもがなですが、連携ができていなければ、短期的にも中長期的に他部署や経営チームの足を引っ張ってしまいます。
このように、仮に「執行」がちゃんとできていたとしても、他が欠けていると、短期成果に貢献できても中長期的には貢献できていないといった状況に陥ってしまうことが分かったと思います。ベンチャーマネージャーがコミットしなければいけないのは、この4つの基準をすべて満たすことで4象限で貢献していくことだと考えています。経営者と距離が近く、経営者の代わりにある領域を任されている人間ともいえるベンチャーマネージャーだからこそ、チームのことだけしか考えない、チームの短期成果しか残らないマネジメントではなく、経営者と同じ目線で全社の中長期的成長に貢献しましょう、という見方が重要なんです。
とはいえ、いつでもこの4つをすべて同じ重要度で注力すべきかというと、そうではないとも考えています。極端な例ですが、たとえば「来月キャッシュアウトします」といった状況で、じゃあ育成しましょうかというとそうはなりませんよね。そこは「執行」を大優先すべきでしょう。
状況に応じて、その遂行状況を見極め、チームや上層部とも目線を合わせておくことも、マネージャーの仕事の一つだと言えます。
EVeMでは100社以上のマネジメントのトレーニングをやらせてもらっていまして、今日お話しさせていただいた4つの基準から始まって、マネジメントの60の型やそれを引き出すための技術を習得できるトレーニングプログラムを提供しています。
今日は4つの基準という前提の部分のお話しかできませんでしたが、もしご興味があればまた声かけていただければいつでも個別にお話もできますので、ぜひよろしくお願いいたします。
橋屋:ジェイさんが話してくれた内容に基づいて、いくつか掘り下げてみたいと思います。お話を聞いていて、「執行」は分かりやすいと感じるんですが、一般的につまずくことが多い要素ってどこなんでしょうか。みんながつまずくポイントってどういう順番なのかなと思いまして。あと、社内の人を登用するパターンと外部から取るパターンがあると思うんですけど、それぞれの傾向の違いがあったら教えていただきたいです。
鈴木(ジェイ):まず傾向の違いについてお話しすると、大きい会社にいた人は「執行」よりも「活用」や育成の観点からマネジメントを行う方が多いという印象です。
例えば、100人とか50人の会社に、何万人もいる会社のマネージャーさんが来ると、もう連携しかしていません、みたいなマネージャーになりがちですよね。大きい会社って連携、連携って感じですが、ベンチャーはどちらかというと「執行」に寄っている気もしますので、その比重は考えた方がいいかなと思います。ちゃんと分かった上でやっているのと、それしかできないのは違いますよね。
橋屋:確かに、大手出身で鳴り物入りで入ってきたけど、結果を出すのに時間がかかる人が多い気もしていて、まさに今お話しいただいたところなのかもしれないですね。
鈴木(ジェイ):あとは職種でも傾向があるかなと思っていて。営業とかマーケティングとか、ビジネスサイドはやっぱり「執行」面が強いというか、プレイング的にやってきたという方も多いのかなと思います。一方でビジネス職じゃない方は、自身も育成されながら育ってきているので、マネージャーとは育成する人だよね、みたいに思っている人もいる印象です。
この4つに照らした時に、どういう比重で今どういう風にやっていくかっていうのを、横とも上ともすり合わせていただくとすごくいいのかなと思います。
橋屋:経験が浅いメンバーをマネージャーに登用する時に、ジェイさんが気をつけてることはありますか?
鈴木(ジェイ):マネージャーに抜擢するっていう意味で言うと、自分目的思考より、チーム目的思考であるっていうのがすごく大事かなと思うので、そういったところを見て判断していくのはいいのかなって感じですね。先ほど60個の型があるとお伝えさせていただいたと思うんですけど、こんな感じでして、23番タイプ「will can」みたいな型があったりするんですよね。
これは、最適なメンバーアサインメントを実現するための型なんです。最適なアサインメントを行うために、メンバーのタイプとwillとcanを把握しましょうというものですね。
タイプわけは以下のように、縦軸に自己評価重視、他者評価重視を、横軸にチーム目的思考、自分目的思考をおいて考えます。上に行けば行くほど自分で自分を評価し、下に行けば行くほど他者の評価に依存する。右に行けば行くほどチームに貢献したい気持ちが強く、左はどちらかというとプロフェッショナル、自分がやりたいことをやりたいという気持ちです。
例えば自分にメンバーがいた時は、「あの彼は自分がやりたいプロフェッショナルな仕事をやってくれるな、マイスター(左上)だな」という人もいましたし、チームに貢献したいというパートナータイプの方、チームに貢献したいけどちょっと他の人の評価を気にするっていうコントリビュータータイプの方もいました。コントリビュータータイプでもマイスタータイプでも、マネージャーの働きかけでだんだんチーム目的思考になったりもするので、タイプに合わせたアプローチをするのも重要です。
ちなみに僕はマイスター(左上)タイプで、チーム目的思考というよりは自分目的思考のタイプなんですよね。だから実はマネージャーには向いてないんです。でも、今マネージャーとしてやっていけているのは、だんだんパーパスとか事業に共感したりとか、チームのオーナーシップを任されて「こういうチームにしていきたいんだ」という気持ちが芽生えたから。それでだんだんチーム目的思考に寄っていったところがあります。
橋屋:そういう意味では、タイプを踏まえてどうバランスしていくかを組み合わせていくことで、より最適化していけるみたいな事例を、ジェイさん自身も追体験してる感じなんですね。
鈴木(ジェイ):そうですね、おっしゃる通りですね。
橋屋:ありがとうございます。では次です。4つの基準のお話で、状況によって比重を変えていこうという話がありましたが、スタートアップって緊急度の高いタスクある時になかなか「活用」に切り出せない、結局自分でやらざるを得ないみたいなことに陥りがちだなと思っていて。業務の切り出しみたいな観点も含めて、「活用」の実践について教えていただきたいです。
鈴木(ジェイ):「結局自分でやらざるを得ない」状況に陥るようなときって、ちゃんと方針を立ててタスクを整理したり、リソースを空けることができていないことが多いのかなと思います。マネージャーとして、「このクオーターはこういうことをやっていこう」「緊急度が高いっていうのはこういうことだよ」という点を明確に伝える必要があるかなと思います。
もう1つは、活用するためにさっきのタイプやwill・canをちゃんと把握できてるのかという観点です。緊急度の高いタスクの中に、その人の能力を活用できるものもあったりすると思うんですよね。例えば、差し込みでどんどんコミュニケーションしなきゃいけないタスクが発生したときに、そうした処理が得意な人はそこでパフォーマンスすると思うんです。それをちゃんと活用されていればいいのかなって思いますね。
橋屋:ありがとうございます。あとは、それでも緊急度が高いタスクに毎日埋もれてるってことは、まだ「執行」100%かもしれないですよね。
鈴木(ジェイ):そうですよね。だとしたら、「乗り切るためにこういうことを私は考えてるんだけど、今は執行100%だから、一旦まずはこのタスクやりきろう」ということをみんなにも伝えるのが良いですよね。みんなのwillを把握して、それに合わせたアサインとかも考えていきたいんだっていうのをちゃんと言ってあげるが大事ですよね。
秋山:お二人とも、ありがとうございます。質問が来ているので、お二人に回答いただければなと思います。
「裁量を与えて業務を任せるにあたって、稼働時間の調整をどうしているか伺いたいです。時間との戦いや人との付き合いの延長など、自分でやらざるを得ない部分が結構重要な部分になると思っていて、結局自分が核になってしまうことに悩んでいます。」
こちらについていかがでしょうか。
橋屋:1つは、緊急度は低いけどレベルがアップする仕事はどんどん切り出すことですね。もう1つは、最初は一緒にやってあげること。全部任せてしまうと、あとで出戻りコストがかかって稼働時間に間に合わず、メンバーも結局できるようにならない…みたいなサイクルになってしまうので、その時間の中で終わるように一緒に伴走してあげるみたいなのは割と有効だなと思っています。
鈴木(ジェイ):撤回条件とかはやっぱ大事かなと思いますね。裁量と業務を渡して、この時間稼働時間内にやってほしいけど、できないんだったら巻き取るよっていう感じですよね。
橋屋:さっきの話とも関連しますが、やっぱりマネージャーが考えていることをちゃんとメンバーに 丁寧に伝える、ということが重要ですね。
鈴木(ジェイ):前提条件を伝えるってやっぱり大事ですよね。ベンチャーだと方針が変わることがあるので、急に方針を変えると「また役員が何か言ってる」みたいになっちゃうじゃないですか。でも、先に「方針は不確実性が高くて変わる可能性があります。ただ、今の方針はこれです」と言っておくだけで全然違いますよね。僕は全然できていなかったですけどね(笑)。そんなこと言わずにコロコロ変えて、どんどん不満がたまっていって、撤回条件とかも付けずに勝手に巻き取って、信頼関係を失っていました。
橋屋:そうですよね。言わないで変えると大変なことになりますよね。僕は逆にバーッと言った後に自分の上が変わっちゃって、「やべえ、変わっちゃった」という感じで、自分が大変なことになるのは若い時に経験しました。そういうのも含めて、ちゃんと上にも下にも情報を通していく活動が大事になるんですね。
まとめ
たくさんのご質問や感想をいただき、セミナーは好評でした。これからも、皆様のマネジメントにおける課題解決に役立つ情報を提供できるよう努めてまいります。Wantedlyでは、そんな組織課題に寄り添うサービスとして採用のVisit、Engagement Suite(Perk、Story、Pulse)を提供しています。
ぜひお気軽に相談会にお越しください!