ウォンテッドリー株式会社が主催する、年に一度の大型カンファレンス『FUZE』。こちらでは、毎年素晴らしい採用実績とWantedlyの運用実績を誇る企業をAWARDにて表彰しています。2021年のFUZEにて、見事【Best LOCAL Team】を受賞したのは、株式会社サン・クレア(以下、サン・クレア)の採用チームでした。
少子高齢化による慢性的な地方企業の働き手不足、そして新型コロナウイルスの流行による旅行需要の急激な落ち込みが地方の観光産業に大きな打撃を与えている中、着実に採用実績を上げ、事業を伸ばしているサン・クレア。Wantedlyを使い、ホテルマネージャーやレストランスタッフをはじめ、業務委託でマーケターやライターを採用するなど、計15名もの採用に成功しています。
今回は人事 / 執行役員である栗田さんに、厳しい市場状況下でも採用を成功させるため、重要視しているポイントについてお話を伺いました。
【登場人物】
人事、執行役員 /栗田康二さん
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地方の人材不足に加えてコロナの大打撃。厳しい状況下で、サン・クレアが実践したこと
ーー昨今、観光産業は大変な苦境の最中にあります。サン・クレアさんのご状況はいかがでしょうか?
栗田さん(以下略):昨年の春以降、事業戦略やホテル開業スケジュールの見直しが迫られるなど、他社さま同様、非常に厳しい状況です。ただ、インバウンド需要を見込んで、コロナ禍前から準備を進めていた小規模型ホテルや森林リゾートホテルを、従業員や関係者、地域のみなさんと知恵を絞って、国内の近距離旅行需要に応えられるようサービス内容を切り替え、お客様をお迎えできる状況を保っています。
ーー栗田さんのご入社から3年で、運営されているホテルの数が2棟から7棟に、そして従業員数も60人から120人へと倍増されています。採用活動ではどのような工夫をなさったのですか?
入社した当時は、広島と愛媛でビジネスホテルを2棟運営しているだけの、現在よりもっと目立たない存在でした。目新しさやアピールできる要素が少なく、新しいことにチャレンジしたくても、意欲のある候補者を集めることが難しかったです。採用に関しては、かなり苦戦を強いられていました。
私の入社以前から、Wantedlyやその他の採用媒体は使って採用活動こそしていましたが、当時は専任の採用担当者はおろか独立した人事部門すらない状態でした。あるものといえば、30年ほどの運営実績がある2棟のビジネスホテルと、マンションをコンバージョンした地域を感じることができるホテルを創ろうという計画だけ。給与や待遇で関心を引くのも難しい状況でしたから、できることをとにかく必死にやるしかありませんでした。
ーーできること、とはどのような取り組みだったのでしょうか?
とくべつ画期的な工夫をしたわけではありません。ダイレクトスカウトを打つ際には、あらかじめキーワード検索で「ゲストハウス」「バックパッカー」「ホテル」「企画」「地方創生」など、旅や宿泊事業に関心がありそうな人をターゲティングしたり、1日以内にサービスにログインした履歴のあるアクティブな候補者を中心にアプローチするといった程度のことです。あえて口にするのも恥ずかしいくらい、ごくごく当たり前なことばかり取り組んでいました。
ーーWantedlyについてはどんな印象をお持ちでしょうか。率直な印象を聞かせてください。
サン・クレアが地方ホテルの枠を超え、地方創生や地域おこしの拠点として、新しい宿泊業態をつくるための取り組みやビジョンを伝える場、もしくは実際に働いている従業員の紹介を通じて職場の雰囲気をお伝えする場として、とても重要な存在だと思っています。共感を主体とした採用広報が無理なくできるので、今後も活用していくつもりです。
即レスと心を込めたスカウトメッセージで候補者の心を掴む
ーーWantedlyでの採用において特に心がけていることはありますか?
例えば「オープニングスタッフ」などの検索されやすい人気のキーワードを求人票に出せば、ある程度の母集団形成は見込めます。ただ私は、会社として「初めての人事」として入社したので、採用以外にもやるべきことがたくさんあります。
採用したいと思える人が1人応募してくれて、そのまま入社してくれたら、それでいいという割り切りもありましたし、そもそも大量の応募数を集めて、そこからじっくり選考する時間的な余裕もありません。そのため募集の際には、英語力を必須にするなど、あえて応募の間口は狭くし、そのぶん応募を受けてからのレスポンスの速さを心がけ、ダイレクトスカウトを送る相手の選定、メッセージ文面のカスタマイズに時間をかけるようにしました。
ーーレスポンスの速さと、文面の書き分けにこだわったのはなぜですか?
応募から半日と経たないうちに、採用担当者から返事があるだけで印象は格段に良くなります。また、実際に送信するダイレクトスカウトの文面のうち、8〜9割がテンプレートだったとしても、相手のプロフィールを読まなければ絶対に書けない一言がある・ないのでは大違いです。そのため「この人はどんな志向の持ち主なのか?」「宿泊業のどこに魅力を感じているのか?」など、限られた情報を手がかりに想像を膨らませて、ダイレクトスカウトを書くように心がけるようにしています。
ーー欲しい人材に対しては手間を惜しまないわけですね。
大事なのは仮にこちらの想像が間違っていてもいいということ。即レスするのもそうですが、こちらが相手に関心を持ってくれることを伝えることができれば、まずはそれで十分です。
ダイレクトスカウトの返信率はおおよそ20%ほどです。この数字については、高いと評価してくださる方もいますが、そのぶん手間がかかっているので、いいのか悪いのか判断が難しいところだと思います。ただ無闇に応募数を追いかけたり、確度の低い面接に時間を割かなくて済んでいるいるからこそ、丁寧にもてなすような気持ちで選考できているので、私たちには合ったやり方だと思います。自分が相手側に立ったとき、されて嬉しいことをする。このスタンスはずっと変わりません。
ーー他に実践していることがあれば聞かせてください。
これも当たり前かと思いますが、募集ページは可能な限り頻繁にアップデートするようにしています。例えば内定を受諾してもらった候補者の了解を取って「来月、こんな経歴の方が入社します」といった、ちょっとした情報を載せるだけでも、当社の求人が気になっていた方の背中を押したり、似たような経歴や志向の持ち主の関心を惹いたりできるかもしれないと思ってやっています。
こうして改めて挙げてみると、やっぱり平凡な取り組みばかりです(笑)。「凡事徹底」という言葉がありますが、当たり前のことをひたすら愚直にやっているだけというのがお分かりいただけると思います。
ーー面談や、選考の段階で大切にされていることがあれば教えてください。
今はホテル・観光業界全体が厳しい時期です。経営陣と共にすでに働いている従業員の雇用を守り、働きやすい環境もつくらなければなりません。せっかく入ってもらってもすぐに辞めてしまうような状況は、お互いにとって良い状況ではないので、カジュアル面談や面接の段階で期待値の調整は、かなりしっかりやるようにしています。
ーー具体的にはどのような取り組みをなさっているのですか?
従業員のシフト表を見せながら休日休暇の取得状況や、コロナ前の稼働率と現在の稼働率、給与やボーナスの支給状況についても、早い段階で包み隠さずお話しするようにしています。入社の意思確認をする前に、当社より知名度が高く待遇もいい大手や、同じ業界でも比較的ダメージの少ない観光×ITサービス企業ではダメなのか?など率直に聞いています。
こういう時期にホテル・観光業界にあえて応募するわけですから、安易な気持ちで来られる方はほとんどいません。それだけに、応募者ご自身に合った環境を選んでほしいと心から願っているからです。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、応募してくださった方は会社の資産ではなく、業界の貴重な資産だと思って接しています。
凡事徹底した結果の受賞。地方企業だからこそ、採用は本気で取り組みたい
ーー従業員も着実に増えていますが、今後はどんな点に注力されていかれるおつもりですか?
今年の4月以降、育児休暇明けの方を中心に人事総務チームが組成でき、給与計算や労務回りの業務を任せられるようになりました。いまのところ正社員採用に関しては、本社一括採用という形態を取っていますが、今後はアルバイト同様、各ホテルが主体的にかかわれるよう権限委譲を進めていければと思っています。
従業員が増えるなか、採用したらあとは現場任せというわけにはいきません。残念ながら、ビジョンの説明不足、働きやすい環境が整っていなかったことなど様々な理由で、入社1年前後で退職になった方も少なくないのが実態です。より働きやすい会社を目指して、入社後のオンボーディングの仕組みづくり、人事労務・教育制度の構築にも力を注ぎたいと思っています。
もはやすべての企業に言えることだと思いますが、個人がしっかりと自立して行動することが求められる時代になっています。フロント業務の無人化にしても、遠い未来の話ではなく、すでに起こっています。漫然と過ごしていたら機械に代替されてもおかしくない時代に、ここで働く意味を考え、具体的な行動に移せるかが問われています。
そういう人たちが働いているホテルは、きっとお客様にも魅力的に映るはずなので、これからもそうした志向や素養を持つ方を採用し、一緒に愛されるホテル創りを進めていきたいと思っています。
ーー FUZE2021で「Best LOCAL Team」に選出されました。人事・採用責任者として率直な感想をお聞かせください。
サン・クレアは地方の小さな会社です。こうした賞をいただけて大変光栄に思っています。ただ、個人的には、競争が激しい首都圏の企業に比べれば、まだまだ至らない点も多いと感じていたタイミングでの受賞だったので、うれしさもある反面、多少、気恥ずかしさも感じています。
ただ、これまで試行錯誤しながら採用活動に携わってきた立場から言えるのは、採用広報にしろ情報発信にしろ「やったほうが良い」ものではなく「やるべきもの」であり「続けるべきもの」だということです。
特に地方企業は首都圏の企業に比べ、採用に対する意識がまだまだ薄いところがあるのは否めません。足りないもの、できない理由を挙げて、去年と同じことを繰り返すだけでは、どんどん厳しい状況に追い込まれてしまいます。リモートワークが進んだことをきっかけに地方拠点を設けたり、異動を伴わないポジション採用、副業・兼業OKなポジション採用など、数年前から様々な変化が始まっています。これは地方企業においては脅威で、今までは一定のエリアの中にある企業通しで採用を競争していたのが、いよいよエリア関係なく採用リテラシーが高い企業さまと競争するわけです。
一つひとつは小さな取り組みでも、積み重ねればいつか大きな変化が表れると信じて、できることからはじめるべきです。地方の小さなビジネスホテルでも凡事徹底でここまでやれました。やってやれないことはないはずです。
ーー採用・人へのひたむきな想いがすばらしい成果につながっていると思います。改めてこの度は受賞おめでとうございました!
時代の変化に伴い、採用への考え方はアップデートしていく必要があります。
以下の記事では、これからの採用に必要な基本的な考え方や、採用のトレンドについてわかりやすくまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。
【採用の新常識】上手くいかない採用から脱却するために必要な考え方
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