採用・定着の側面から考える福利厚生施策を徹底討論

2024年6月24日に、「採用・定着の側面から考える福利厚生施策を徹底討論」と題する共催セミナーが開催されました。このイベントでは、株式会社OKAN 代表取締役の沢木恵太氏とウォンテッドリー株式会社 Engatement事業部 事業部長の橋屋優理氏が登壇し、対談形式で「採用・定着を福利厚生で紐解く3つのテーマ」についてディスカッションが行われました。

採用・定着を福利厚生で紐解く3つのテーマ

藤田:本日の共催セミナーは、「採用・定着を福利厚生で紐解く3つのテーマ」を元に、株式会社OKAN 代表取締役の沢木恵太氏とウォンテッドリー株式会社 Engatement事業部 事業部長の橋屋優理氏の対談を行っていきます。司会進行は株式会社OKANの藤田が担当させていただきます。対談後、各社からサービス紹介をさせていただきます。では早速ですが、橋屋さんからお願いいたします。

橋屋:ありがとうございます。ウォンテッドリー株式会社の橋屋と申します。ウォンテッドリーって採用のイメージが強いかと思いますが、私はそのあとのフェーズである定着や活躍を支援するエンゲージメント領域の事業に携わっている者です。

今回は「採用定着に必要な要素とは?」「良い福利厚生とは?」「福利厚生で日常性を実現するには?」という3つのテーマを用意しています。まず最初のテーマになっている「採用や定着に必要な要素とは?」から行きましょう。

私は3年前に福利厚生の事業に携わるようになってから、お客様からよく「福利厚生を入れて離職率は減りますか」「採用は増えますか」といった質問をいただきます。でも、例えば「離職者が5人減ります」というような具体的な回答が難しい領域だなあと日ごろから感じています。

弊社は採用サービスも合わせて提供していますが、採用や定着というのは、福利厚生を考える上ではかなり上段の部分の概念になるのかなと思っています。まずはこの「採用と定着」と「福利厚生」の位置関係について、皆さんと目線を合わせながら議論していければと思います。

働きがいとは?

「働きやすさ」については、快適に働き続けるための就労条件や環境面、報酬条件などが含まれます。これらは衛生要因と呼ばれます。まさに株式会社OKAN様が提供されているサービス領域ですね。

衛生要因は減点方式で機能しやすいという特徴があります。例えば、ウォーターサーバーを導入した際の従業員の反応を見ると、最初は感謝の言葉が多かったものの、時間が経つにつれて当たり前のものとなり、むしろ水が切れているとクレームが来るようになるというエピソードがあります。このように、衛生要因は「ないと不満になる」という特性があります。

この「働きやすさ」について具体的に何があるのかを考えると、例えば給与や勤務地、オフィス環境、人間関係などが挙げられます。そのうちの1つに福利厚生があるという位置関係になっていると思います。

一方、「やりがい」については、仕事に対するモチベーションに関わる部分で、特に大規模企業が課題を抱えやすい傾向にあります。これは加点方式で機能し、ミッション・ビジョン・バリューがメンバーに適切に伝わっているかどうかが重要です。大企業で課題が生じやすい理由としては、人数が多いため全員の方向性を揃えることの難しさが挙げられます。

ここまでの話をまとめると、採用・定着に必要な要素としてまず「働きがい」というものがとても重要で、その働きがいを構築するのが「信頼」であり、それを支える5つの要素(信用、尊重、公正、誇り、連帯感)がある、ということになります。そしてそれを支える関係に「働きやすさ」があり、さらにその下に「福利厚生」があるという構造で私たちは捉えています。

福利厚生の充実の最終目標が採用や定着である場合、そこから逆算して、信用・尊重・公正・誇り・連帯感を担える福利厚生とはどういう形なのだろうか、ということを日々考えています。

私よりもずっと前からこの領域で活動されている沢木さんに、ぜひご意見やご感想をお伺いしながらディスカッションをスタートしたいと思いますが、沢木さんいかがでしょうか。

「二要因理論」から考える福利厚生

沢木:株式会社OKANの沢木です。橋屋さん、貴重なお話ありがとうございました。「働きがい」を向上させることが、採用にも定着にも非常に有効で、その働きがいは「働きやすさ」と「やりがい」に分解できるという話だと理解しました。

先ほど「衛生要因」というキーワードも出ましたが、これについて少し専門的な話を整理させていただきます。私の方で画面を1枚表示させていただきますね。

採用や定着、あるいは福利厚生の話をする際によく出てくるキーワードや考え方として、「モチベーター」と「ハイジーンファクター」、日本語では「動機付け要因」と「衛生要因」と呼ばれるものがあります。これらは「二要因理論」と呼ばれる理論の一部です。

この理論を提唱したのはフレデリック・ハーズバーグというアメリカの有名な臨床心理学者で、人々が会社を辞めたり入ったりすることに影響を与える要因について長年研究していました。

この理論では、要因を大きく2つに分けています。先ほど出てきた「やりがい」の話がモチベーターに当たり、「働きやすさ」の話が衛生要因に当たります。その内容については、先ほど橋屋さんがお話しした通りだと思います。

皆さんが採用や定着について考える時、どちらに注力すべきかという疑問が出てくると思いますが、結論としては両方に取り組む必要があるということになります。

働きがいの性質について、家を建てる例を使って説明しましょう。家を建てる時、間取りやデザインを考えることは楽しく、意味を感じられる部分です。これはモチベーター的な要素で、やりがいの部分に当たります。このモチベーターややりがいの部分がないと、そこに住みたい、働きたいという気持ちは生まれません。

一方、衛生要因(ハイジーン・ファクター)は、一見目立たない土台の部分に相当します。家を建てる時、上物の建屋はとても重要ですが、土台の部分を疎かにすると、災害時に全てが崩壊してしまう可能性があります。これが衛生要因、つまり働きやすさの部分です。先ほど「減点方式」という表現があったのは、この点を指していると言えますね。

したがって、様々な施策を考える際、それが福利厚生の一環だとしても、その施策がモチベーターを狙ったものなのか、衛生要因(ハイジーン・ファクター)を狙ったものなのかによって、施策の性質を変えていく必要があります。

特に福利厚生については、主に衛生要因の部分をしっかりとケアすることで、「働き続けられない」「この会社には居続けられない」といった根本的な問題をなくすことを目指すものだと位置づけられます。

離職理由から考えるアプローチ

採用よりも離職の話に焦点を当てると、厚生労働省の統計から興味深いデータが得られます。この統計では、退職理由が複数項目にわたって調査されています。これらの理由は、モチベーターとハイジーン・ファクター(衛生要因)に容易に分類することができます。

そして、この分類に基づいて集計し直してみると、衛生要因を理由に離職している人が一定数以上いることが分かっています。これは先ほどの例で言えば、家の土台が崩壊してしまって退職しているような状況と言えるでしょう。

この衛生要因は目に見えづらい部分であり、加点方式ではない性質を持っています。しかし、福利厚生でしっかりとケアしておくことが正しいアプローチだと考えられます。私も10年ほどこの領域で活動していますが、この点を改めて痛感しているところです。

時代とともに変化する「福利厚生」のニーズ

橋屋:ありがとうございます。まず率直な興味として思ったのは、今お話しいただいた原理原則のような長年変わらないベースとなるものがある一方で、例えばコロナ禍のような時代の変化によって、福利厚生に関する考え方が変わったり、より重視されるようになったり、あるいはお客様の性質が変化したりしたことはありますか?そういった時代の変化について、何か感じることはありましたか?

沢木:そうですね、私たちが活動している分野も含めて、福利厚生の歴史を遡ってみると、ニーズや目指している方向性が変わってきていると感じています。福利厚生について、まずは日本語的な観点から見ていきましょう。

福利厚生は「福利」と「厚生」という単語の組み合わせです。広辞苑によると、「雇用主が従業員向けに健康の増進や生活の充実を図ること」と定義されています。「福利」と「厚生」に分けて意味を調べてみると、「福利」は幸福と利益、幸福をもたらす利益のことを指し、「厚生」は人民の生活を豊かにすることを意味します。

つまり、福利厚生の目的は、従業員に幸福をもたらす利益を提供し、従業員の生活を豊かにすることだというのが、そもそもの言語的な背景にあるのです。

福利厚生の歴史

次に福利厚生の歴史を遡ってみましょう。

福利厚生は、最初は明治時代、つまり戦前に始まったと言われています。この時代は労働環境が非常に過酷で、国民の生活も相対的に豊かではなく、様々な物資が不足している状態でした。そのため、従業員の生活の面倒を見る、例えば住む場所を用意したり、食事を提供したりするなど、生存に関わるような部分の面倒を見ることで、「だからうちで働こう」と言い出したのが福利厚生の起源だと言われています。

実は戦後も同じような傾向があり、さらに労働力を確保する必要があったため、より積極的に福利厚生が取り組まれ、ようやく制度として成り立っていきました。しかし、大きな変化を迎えたのが昭和の時代なんです。

昭和のバブル期に、人々の生活が豊かになり華やかになったことで、日常生活の支援ニーズが極めて低下しました。その代わりに、他社が提供していないような特別なサービスを提供することが福利厚生のニーズとして生まれてきました。例えば、特別なホテルに泊まれたり、高級な場所に遊びに行けたりするような非日常的なものが注目を集めていたのがバブル期の特徴でした。

福利厚生の変化トレンド

しかし、現在はまた状況が変わってきており、日常に対する着目が集まっています。直近では、コロナ禍による在宅勤務の増加に伴い、求められる福利厚生の形も変化してきています。また、働く人々の価値観も変わってきました。10数年前はバリバリ働くことへの志向が強かったのに対し、現在はコロナの影響もあり、健康や安全といったキーワードが注目されています。

さらに、時代の流れに伴う人口の変化、生活習慣病の比率の変化、核家族や共働きの比率の変化などの要素によっても、福利厚生で何が人々にとって重要なのか、言い換えれば人々が求めている衛生要因としての問題が変わってきています。

加えて、企業ごとに異なる部分もあります。各企業の従業員が今どんなことに困っていて、どんなニーズがあるのかまで考慮して施策を立てるのが理想的ですが、それは難しい面もあります。そのため、できるだけ多くの人に響くものを基本的な福利厚生として提供するという考え方もあるのではないかと思います。

橋屋:ありがとうございます。非常に勉強になる話でした。弊社はコロナ禍でサービスを立ち上げているので、お客様の声を聞いていても、その変化がよく分かりますね。これまでの福利厚生では、分かりやすい例として「いかに旅行に行けるか」といったことが重要なポイントだったけれども、例えば、リモートワークの普及に伴い、「どこでも使える」サービスへの需要が高まっていたりとか。日常生活に密着したサービスへの関心も増えていますよね。

時代の変化に敏感に反応し、それに適応していくことがこの領域では非常に重要だということを、実際にサービスを提供する中で強く感じています。

福利厚生の目的

沢木:そうですよね。この流れで福利厚生についての話を少し広げさせていただきます。先ほどから出ているように、福利厚生の目的は人材定着や採用の差別化にあるだろうと思います。ウィキペディアで福利厚生を調べると、まさにそういったことが書かれていて、「従業員の経済的保障を通じて組織貢献度を高めること、勤労意欲や能率の向上を図ること、離職率の低下や定着を図る」ことが目的とされています。

しかし、福利厚生で結局何が大切なのかという話になると、時代のトレンドを押さえることも重要ですが、もう少し普遍的な視点も必要です。私たちも10年間の経験の中で、多くの企業の人事担当者とお話をし、様々な福利厚生の施策やサービスを見てきました。その中で、うまくいっている会社とそうでない会社の違いが徐々に見えてきています。

福利厚生が成功するための3つの視点

そうした会社を見てきたなかで、福利厚生が成功するために3つの視点があると考えるようになりました。

1つ目が発信性です。福利厚生はただひっそりと行っても意味がありません。誰のために、何のためにやっているのかということが伝わらないと、従業員の皆さんからも愛や価値、意味を感じづらい部分があります。実施する際も、なんとなくではなく、「こうした目的のために私たちは今回この制度を追加しました」とか「皆さんに向けてこういうサービスを始めます」ということをメッセージとして伝えられるかどうかが非常に重要です。これが成功のための一つの視点となります。

2つ目が公平性です。これは非常に難しい問題なんですが、福利厚生をやって、ある人だけが得をして、他の人が損をしているように感じてしまうと本末転倒になってしまいます。

ここで大事なのは、公平性と平等性の違いを理解することです。平等性は全員が一律同じものを受けることですが、公平性は必要な人に必要なものを提供して、他の人と同じ状態に持っていくという考え方なんです。

だから、この公平性という考え方を持って、「この問題についてはこの福利厚生、あの問題についてはあの福利厚生」というように組み合わせることで、AさんもBさんもCさんも同じ状態で働けるようにすることを目指すべきなんです。

これを間違えてしまうと、不満が溜まってしまうことになりかねません。福利厚生は従業員全体の満足度を上げるためのものなので、公平性を意識しながら設計することが重要なんです。

橋屋:そうですね。この発信性と公平性って2つで1セットというか、密接に関連しているんですよね。例えば施策を導入する時、なぜこれをやっているのかをちゃんと丁寧に発信することが大切で、そして同時に、「こういう形で公平にやろうと思っているんだよ」ということも伝えていく。

沢木:本当にうまくやっている企業を見ると、感心させられることが多いんです。例えば、福利厚生の施策を実行する時に、トップの方がこれはこういう理由でやるんだよ、というのを全体の場で発信しているとか、あるいは従業員の皆さんにその意味をより深く伝えるために、テキストや手紙のようなものを添えて提供しているような企業を見たことがあります。

そういった企業で働いている従業員の方は、明らかに感じ方が違うんです。満足度も高いし、福利厚生の目的を履き違えずに利用されているなという印象を受けました。

この発信性と公平性をより高めようとする時、利用できるシーンが多い方が公平性を担保しやすいんです。また、発信性についても、1回言っただけだと伝わりづらいので、繰り返し伝えることで理解が深まりやすくなります。

そこから導き出されるポイントとして、日常性が高いものほど、これらの発信性や公平性を担保しやすいんです。これが3つ目の視点である「日常性」です。

予算も無限ではないので、その中で優先順位をつけて、どこから始めるかを決める必要があります。これら3つの要素(発信性、公平性、日常性)を満たせるものから優先順位をつけて施策を実行していく。そういったアプローチをとっている会社は、本当にうまくやっているなという印象があります。

橋屋:サイバーエージェントさんの「macalon(マカロン)パッケージ」という施策は、まさに今沢木さんがおっしゃっていただいたポイントをしっかり押さえているなと思いましたね。

「macalon(マカロン)」という名前には意味があって、ママさんのMA、サイバーエージェントさんのCA、そして長く働けるのLongを組み合わせてマカロンという名前がついているそうです。女性、特にお母さんが気持ちよく長く働いていただくためという目的をはっきりと打ち出したメッセージになっています。

この事例は、中身ももちろん素晴らしいんですが、名前をちゃんとつけて、その意図を明確に示しているところが本当に素晴らしいですね。こういった工夫があると、社員の方も、男性社員も含めて、「なんで女性だけ?」とは絶対に思わないだろうなと感じます。

弊社もサービスを進化させていく上で、発信性をしっかりケアをするサービスってあまりなかったんです。でも、そこをちゃんと担えるようなサービスになりたいねという話をちょうどしていたところでした。

良い福利厚生とは?

橋屋:弊社がやっているような総合型の福利厚生サービスって、やっぱりいろんなお客さんにお話を聞くと、「全然使われていないよ」とか「年に1回コンタクトレンズ変えて終わりだよ」とか、そういう声をすごく多くいただくんです。結局のところ、従業員の方々の日常生活に密着したサービスを提供することが、高い利用率につながるという実感があります。

まず使われることによって、いろんなフィードバックが得られます。例えば、「もうちょっと発信をしなきゃいけない」とか、「もうちょっと公平性を担保するようなメニューにしなきゃいけない」とか、そういった気づきが日常的な利用から起点として始まる感覚があるんです。

結局のところ、福利厚生サービスは使われなければ意味がありません。日常的に使われるサービスを提供することで、従業員の方々の生活に密着し、そこから得られるフィードバックを基に、発信性や公平性といった他の要素も改善していく。そういった循環を作り出すことができるんじゃないかと思います。

沢木:本当にそうですよね。私の方でも、日常性が高い福利厚生施策って何だろうというのを考えてきたので、これについて、ちょっと図を使って説明させていただきます。日常性が高いというのは、単純に発生頻度が高いか低いかだけでなく、そのサービスがどういうシーンで使われるのかも考える必要があります。そこで、2つの軸でマトリックスを作ってみました。

1つ目の軸は発生頻度です。例えば、毎日の食事は発生頻度が高いですし、親族が亡くなった時の支援は発生頻度が低いです。

2つ目の軸は、そのサービスがどういうシーンに使えるかです。勤務中でも使えるものなのか、それとも休日に使うものなのかという軸です。

この2つの軸で考えると、日常性が高い福利厚生というのは、発生頻度が高くて、勤務時間中でも使えるもの、あるいは特定の休日だけでなく日常的に使えるものを指すんじゃないかと思います。

ただ、実はもう1つ考えるべき軸があって、それは解決しようとしている問題の大きさや代替困難性です。例えば、家族が亡くなった時の支援は発生頻度は低いですが、インパクトは大きいですよね。だから、発生頻度が低いからといって重要でないわけではありません。

ただ、福利厚生の施策を考える時の順番としては、まずは発生頻度が高くて、日常的に使えるものから始めるのが理にかなっているんじゃないかと思います。

今、自社の福利厚生施策をこのマトリックスに当てはめてみて、左上の象限(発生頻度が高く、勤務中でも使えるもの)が少ないなと感じたら、そこに何か施策を追加するのが良いかもしれません。そうすることで、先ほど話した発信性や公平性、そして日常性を担保しやすくなるんじゃないでしょうか。

橋屋:ありがとうございます。おっしゃる通り、日常性と一回のインパクトの話は、かなり綱引きの関係にあるというか、両方を1つの特典で満たそうとするとなかなか難しいですよね。

私たちの例で言うと、200円相当のギフトチケットをお届けするというのが目玉の特典になっているんですが、やっぱり有名なテーマパークに行くような特典と比べると、一生の思い出にはならないだろうなと思います。でも、日常的に使っていただけるという点では、こちらの方が優れているんですね。

だから、まず最初にこの日常的に使える方の特典を揃えるべきなのかなというところで進めています。日常性と一回のインパクトは、どちらも大事なんですが、同時に1つの特典でやろうとすると難しいんだということを知っておくだけでも、全然違うかもしれませんね。

沢木:そうですね。先ほど歴史の話に触れましたが、バブル期には特別で非日常的なものが重視されていましたよね。この時代は、マトリックスで言えば右下の象限を狙っていたんです。つまり、休日に特別なことを、発生頻度は低くてもいいから大きなインパクトでやる、というような福利厚生が目立っていました。

面白いのは、当時はそういった福利厚生の利用率が低いからといって、それが問題だとは考えられていなかったんですよね。むしろ、特別感や非日常性が重視されていた時代だったんです。

ただ、現在は状況が変わってきています。日常生活に対する必要性や、日常と仕事の両立の難しさが当時と比べて明らかに上がっています。だからこそ、左上側の日常性の高い象限を意識した方がいい時代になってきているということだと考えています。

福利厚生で日常性を実現するには?

橋屋:ありがとうございます。すごくしっくりくる部分がありますね。お話を聞いていて、「福利厚生で日常性を実現するには?」というテーマで2つの重要なポイントが浮かび上がってきたのでお話させてください。

まず1つ目は、先ほど話した信用、尊重、公正、誇り、連帯感といった側面からも、日常性が大事なんじゃないかということです。

これら5つのキーワードを見ると、家族のような関係性を作ることが目標なのかなと思えてきます。特に今の時代、企業はどんどんオフィスに来なくても働けるようになってきて、企業と従業員の関係性を持つのが難しくなっています。だからこそ、日常的に利用できる福利厚生があると、この「家族のような関係」を作りやすくなるんじゃないかなと思うのです。この観点でいうと、年に1回しか使えないサービスだと、ちょっと遠距離恋愛的な感じがしてしまいますよね。

2つ目のポイントは、日常性を実現するための具体的な方法についてです。弊社の例を挙げると、200円相当のクーポンを数量限定で発行し、ローソンや吉野家など様々な選択肢を用意しているんですね。これがうまくいっている理由として、「人を選ばない」という観点があるのではないかと考えています。

以前はコンビニでコーヒーがもらえるサービスをやっていて、それはそれで人気を博していたんですが、改善を進めていくにつれて、これ以上はもうコーヒー好きの人を増やすしかない、という限界まで来てしまったことがあります(笑)。だから、水と交換できるようにするなど、趣味や嗜好に左右されないサービス設計にすることで、より多くの人が日常的に利用できるようにしたわけです。

結局のところ、福利厚生の日常性を高めるには、「家族のような関係性を作る」という大きな目標と、「できるだけ多くの人が利用できる」という具体的な設計の両方が必要なんですね。この2つの視点を組み合わせることで、より効果的な福利厚生サービスが作れるのではないでしょうか。

沢木:とても興味深い視点ですね。御社の事例を通して、福利厚生の本質的な部分が見えてきたように感じます。弊社は元々、働いている方々が働き続けられる支援をすることを目的に創業したのですが、結果的に選んだのが食事という切り口でした。

これは、マズローの5段階欲求理論とも関連していて、人間にとって最も基本的で必要性が高いものは、生きていくために必要な生理的欲求ですよね。食事はまさにその典型で、誰もが必要としているものです。だからこそ、食事に関するサービスは日常性が担保しやすく、多くの方々に喜んでいただきやすいという判断があったんです。

各社サービス紹介

藤田:橋屋さん、沢木さん、本当にありがとうございました。このようなディスカッション形式でお話を聞ける機会はなかなかないので、とても貴重な時間でした。

働きがいを持って働いてもらうために、会社としてどのように行動すべきか、また福利厚生を選ぶポイントについて、多くの方が課題を感じていると思います。今回のお話で、日常性や個人の趣味嗜好に左右されないサービスの重要性など、たくさんのヒントがあったのではないでしょうか。

株式会社OKANについて

では、ここからは各社のサービス紹介に移りたいと思います。まず、株式会社OKANについて、特に置き型社食サービス「オフィスおかん」について、私からご紹介させていただきます。

株式会社OKANは、「働く人に、おせっかいを。」というミッションで事業を運営しています。日本では多くの人が、仕事以外の理由で働き続けることを諦めなければならないという問題に直面しています。例えば、健康問題、家庭との両立、子育て、介護などがあります。これらの問題は特定の誰かに限った話ではなく、誰もが直面する可能性があります。

人口減少や超高齢化社会と言われる日本において、働き続けられない状況は、個人にとっても企業にとっても、そして国にとっても望ましくありません。そんな中で、会社として働き続けられる支援をたくさん提供できると考えています。

働き続けることを妨げる課題を明らかにし、その課題を解決するために必要な施策を立案し、実行することで、望まない離職を生まない組織づくりを支援することが弊社のミッションだと考えています。

置き型社食サービス「オフィスおかん」

ここから、弊社が提供している置き型社食サービス「オフィスおかん」のご紹介をさせていただきます。このサービスも、先ほどお話した課題解決のソリューションの1つとして生まれました。

置き型社食サービス「オフィスおかん」は、1品100円(税込)程度で従業員さんにお惣菜を食べていただけるサービスです。事務所やオフィスなどの拠点に冷蔵庫や自動販売機を置き、従業員さんは好きなタイミングで好きなお惣菜を取って食べられます。お昼ご飯としてはもちろん、朝ご飯や夜食としても利用できます。

実は、このサービスは代表の沢木が不健康な生活習慣で体調を崩し、思うように働けなくなってしまった経験から生まれました。食事を後回しにしてお菓子で済ませることが多く、乱れた食生活が原因で体調を崩したんです。その経験から、職場でもっと気軽にバランスの良い食事を食べられるようにできないかと考えたのが、「オフィスおかん」の始まりでした。

※これは2024年5月の提供メニューです。現在提供していない商品が含まれている場合がございます。

オフィスおかんでは毎月約20種類の商品をご提供しています。、人気の定番メニューから季節に応じた商品まで、様々な味を楽しむことができます。メニューは弊社の管理栄養士が監修し(レシピ等の内容や商品の選定の監督・指示を行うこと)、製造パートナー企業と開発・選定しています。また、食品添加物を極力控えて製造しており、授乳中のお母さんや小さなお子様も安心して召し上がっていただけます。

このサービスの大きな特徴は、24時間いつでも利用できるという点です。シフト制や夜勤の方、お昼は外出せずに済ませたい方など、働き方に合わせて自由に活用いただけます。気軽に手が伸びやすいので、自然な食生活の改善につながるというのも大きなポイントです。

企業様にご導入いただく理由は本当に様々で、健康経営の一環として導入される企業もあれば、人材採用や定着率の向上を目指して導入される企業もあります。また、従業員満足度の向上やコミュニケーションの活性化を目的とする企業もあるなど、導入の目的は多岐にわたっています。

それぞれの企業様が抱える課題に応じた導入事例もご紹介できますので、もしご興味がおありでしたら、セミナー後のアンケートにその旨をご記載いただければと思います。

※掲載情報はセミナー開催日時点(2024/09/27)の情報です。

ウォンテッドリー株式会社について

橋屋:藤田さん、ありがとうございます。私も先日の大雨でカップラーメンランチを強いられたので、このサービスの必要性を非常に強く感じております(笑)。

では続いてはウォンテッドリー株式会社についてご紹介させていただきます。

我々は「究極の適材適所より、シゴトでココロオドルひとを増やす」というミッションを掲げており、採用プラットフォームとエンゲージメント領域のサービスを展開しています。

採用サービスでは、最近ではオフラインイベントも用意しており、企業様と求職者の方が直接会える機会も提供しています。

福利厚生サービス「Perk」

エンゲージメント領域では、福利厚生マネジメントツールを運営しています。これは日常性にこだわった総合型の福利厚生サービスで、1000以上のサービスを提供しています。利用率が非常に高いのが特徴で、先ほどお話したギフトチケットなど、皆さんが使いやすいものを重視してサービスを作っています。

また、採用サービスを作っているチームが福利厚生サービスも作っているため、「綺麗」「使いやすい」といった評価をよくいただいているそうです。

特に注目すべき点として、サポート体制が充実しています。サービスの内容ももちろん重要ですが、それと同じくらい運用方法も大切だと考えています。今日お話に出た「発信」の部分なども含めて、丁寧にサポートさせていただいています。

質疑応答

藤田:橋屋さん、ありがとうございます。
では視聴いただいている方からいくつか質問をいただいていますので、その中から一つ、簡単にお伺いしてみたいと思います。「地域柄、日常性を担保することが難しいです。どのようにすれば良いでしょうか?」という質問がありました。まずは橋屋さん、いかがでしょうか?

橋屋:弊社の場合、地域が都心か地方かで、サービスの利用イメージや利用のしやすさに差が出ることがありますね。簡単に言えば、東京のような都会ならサービスを使えるお店がたくさんあるけど、地方だとそもそもお店自体がない、といった問題があったりします。その対策として、弊社のサービスでは全国チェーンのお店のギフトチケットを提供するなどの方法を取っています。

このように、環境に合わせて使えるものを注意して選ぶことが非常に重要な観点だと考えています。私どものサービスもどんどん全国で使えるサービスになってきているので、是非参考にしていただければ嬉しいです。

沢木:そうですね。リーチの問題だとしたら、3つの観点から考えることができます。1つはオンラインでサービス利用できるかどうか、2つ目は自宅に届けることができるかどうか、3つ目は出勤される場合はオフィスで提供できるかどうかです。これらであれば、近隣に店がないといった問題は関係なくなってくると思います。この観点を考えていただくと、日常性を担保しやすいのではないでしょうか。

藤田:ありがとうございます。ほかにもたくさんの質問をいただいているのですが、時間の関係で本日はここまでで締め切らせていただきます。皆さま、ご視聴いただきありがとうございました!

まとめ

たくさんのご質問や感想をいただき、共催セミナーは好評でした。これからも、皆様のマネジメントやエンゲージメントにおける課題解決に役立つ情報を提供できるよう努めてまいります。Wantedlyでは、そんな組織課題に寄り添うサービスとして採用のVisit、Engagement Suite(Perk、Story、Pulse)を提供しています。ぜひお気軽に相談会にお越しください!

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