成長組織に必要な継続性のある発信の本質 │ FUZE2022【Event Report】

企業は個人を選ぶだけでなく、企業は個人から選ばれる存在になっています。企業から情報を公開、発信の重要性がますます増える中、組織成長のために必要な発信の本質や必要性、何を発信していくべきなのかをマネーフォワードPeople Forward本部 本部長石原氏と、Voicy執行役員勝村氏から語っていただきます。

▶︎採用担当者なら知っておきたいマーケティング知識を公開中|資料を無料ダウンロードする

採用広報を手軽に開始するには?

採用広報の必要性は感じているけど、はじめるのはコストがかかりそう…と考えていませんか?

採用サービス「Wantedly」では、会社のページやブログを簡単につくることができます。

作成した会社ページは高い確率でGoogle検索の1ページ目に表示されるため、オウンドメディア代わりとしても活用可能。手軽に採用広報を開始したいと考えている方は、ぜひ一度無料トライアルをお試しください。

まずは無料でお試し

▼ゲスト

石原 千亜希様

(株式会社マネーフォワード People Forward本部 本部長)

2016年に株式会社マネーフォワードにジョインし経営企画部長・IR責任者を務める。2021年より人事に主軸を移し、現在はPeople Forward本部 本部長として、主に人事制度・育成プログラムの設計、D&Iプロジェクト等を主導。

勝村 泰久様

(株式会社Voicy 執行役員)

東証プライムの株式会社クイックにて営業部長や新規事業開発を経験後、 VPoHRとして人事を管掌。2020年にVoicyへ参画後は、人事領域を管掌しつつ、メディア編成や事業開発も兼任。2021年2月より執行役員。

司会 SESSION Bにご登壇いただくのは、株式会社マネーフォワード People Forward本部 本部長の石原 千亜希様、株式会社Voicy 執行役員の勝村泰久様です。それではよろしくお願いいたします。

石原 マネーフォワードでPeople Forward本部の本部長を務めております石原と申します。では、勝村様のご経歴とVoicyさんの簡単なご紹介をお願いします。

勝村 私は新卒で人材系のベンチャー企業に10年ほど在籍し、同社が東証一部へ成長するまでの過程で事業や人事を経験後、2020年にVoicyに転職しました。Voicyには人事担当として入社しましたが、営業やマーケティング、コンテンツ部門なども兼任し、2021年からは執行役員として人事系の責任者をしながら新規事業開発も担当しています。

Voicyは「日本発の音声プラットフォーム」として、わかりやすく言うと音声のYouTubeのような事業を行っています。音声は動画に比べ低い制作コストで発信できるため海外でも伸びており、日本ではファーストペンギンという位置づけです。

業界で唯一審査制をしいているためクオリティの高いコンテンツが集まっているのが特徴で、質が担保されている点が他社との差別化ポイントになっています。ビジネスとしてはtoCがメインですが、企業も多く配信しているのでtoBの売上もある、というモデルになっています。

石原 Voicyは私もリスナーですので、今日はお話できてすごくうれしいです。私の自己紹介も簡単にさせていただきますと、もともとは人事のバックグラウンドではなく、大学卒業後は監査法人に入り会計士として5年ほど働いておりました。

2016年にマネーフォワードがIPOするちょうど1年前に入社し、経営企画にてIPOの準備をしたり、IPO後はIRの責任者をしておりました。

人事に異動したのは去年なので、この場にいるのがとても恐れ多いです(笑)。現在は人事全体、採用や採用広報、企画、育成を含めてマネジメントしています。

社外向けの発信

変化する企業と候補者の関係

石原 本日のテーマである「成長組織に必要な継続性のある発信の本質」ですが、発信と言ってもいろいろな発信があります。大きくは、社外向けの発信と従業員向けの社内向け発信というふたつの側面がありますよね。

今日は、Voicyさんがどのような取り組みをしているのか、どんな想いでやられているのか、HowというよりWhyについて深掘りしていきたいと考えています。はじめに、社外向けの発信についてお伺いします。採用広報としてどんな点を意識されているか、誰にどう伝えるかについてのお考えを伺ってもよろしいでしょうか。

勝村 採用広報は、担う役割が時代とともに変化しており、そのベースには企業と候補者のパワーバランスの変化があると考えています。

たとえば僕たちが就職した00年代中頃のプチバブル期や、90年代初頭までのバブル期は候補者側が強く、どちらかというと候補者が企業を選ぶ関係性でした。

でも、90年代中頃からの氷河期や00年代後半からのリーマン・ショック期には企業側が候補者を選ぶという関係性でしたよね。広報の本質って、こういったタイミングによって変わるんだろうと思っているんです。

そして、アベノミクス以降また関係性が変化してきており、人的資本経営でも言われますけれども、現在は相互選択関係になってきていると考えています。どちらかが選んでいるのではなく、お互いに選び合うという関係性です。

したがって、昔のようにとにかくマスに露出させ広く情報を大量に届ければよいというのではなく、お互いがコミュニケーションをするために必要な情報の提供をし合うことが求められています。

そのために、目的を持ち、誰に対してどんな情報をどのような手段でデリバリーしていくのかを設計する必要性が高まっているのだと個人的には考えています。

石原 おっしゃる通り「選ぶ」「選ばれる」というよりも、対等な立場でお互いが合うかどうかをチェックするという方向に、採用広報だけでなく面接も変わってきているなという感じがします。

採用広報戦略のあるべき姿とは

石原 具体的にはどんな訴求をされているのでしょうか?

勝村 認知〜喚起〜応募〜選考〜内定という各々のフェーズにおいて、何をどのように訴求するのかの設計をしています。

「認知」で候補者に知ってもらい、「喚起」を繰り返すことで興味をお持ちいただき「応募」してもらい、「選考」でアトラクトしつつ期待値調整をし、「内定」でイメージを具体化させます。それぞれで達成したい「目的」を設計し、そのためにどのような「訴求」を、何を使って(「手段」)すればいいのかを細かく考えます。

またポイントとしては「手段」を考える上で「時間」の概念を大切にしています。候補者がどれくらい時間をかけてくれるのかということですね。たとえば「認知」フェーズにおいては、秒を割いてもらうのが限界だと思うんです。

にも関わらずこの段階でガッツリした記事を書いて届けようとしてしまう会社さんも多いと思います。これでは折角いい内容であっても届かない。

候補者が割いてくれるであろう時間を考え、それに適した「手段」を使い、その上で目的が叶うためにはどのようなコンテンツがいいのかを検討しています。

また、デリバリーの設計と合わせて重要なのがコンテンツの設計です。

そしてコンテンツを設計する上で最も重要なのは「僕たちがどう見られたいのか」という視点だと考えています。採用時に候補者ペルソナを設定すると思いますが、同じように外部から僕たちがどう見られたいのか、というペルソナを5つ用意しています。

「新興産業」「プロダクトが魅力」「組織もプロダクト」「人と環境の良さ」そして「テックカンパニー」です。これら「こう見られたい」という姿と手段・目的をあわせ、どんなコンテンツに落とせばいいのかを考えるわけです。

その上で、先程の認知〜内定を横軸、そしてペルソナを縦軸にしたマトリックスにおいて必要なコンテンツをマッピングし、コンテンツ量において色分けをしていくと、明確に色がつかない部分が意外に出てきます。たとえば弊社ですと「プロダクトが魅力」が現在スカスカです。

ですから外部の人から見ると、Voicyってプロダクトが良いから魅力的な会社だよね、とは思ってもらえていない状態ということになりますので、今まさに増やそうとしているところです。

石原 非常に細かくフェーズや課題にわけて考えられていてすごくわかりやすいです。弊社でも早速マネしたいですね。

勝村 採用広報では社内についての情報の方が出しやすいし、組織の情報って出すといい会社ですねって言ってもらいやすいので、気づくと組織側・内側の情報ばかり出てしまっていたのが反省点でした。

ですからプロダクトについてももちろんですけれども、どのような展望でどのように事業を成長させたいのかなどを現在は意識的に増やしています。

石原 採用広報がプロダクト広報・企業広報とも被ってくるわけですね。

勝村 そうですね。ただ採用広報として考えた場合、候補者の方に届ける、という点を重視しなければいけませんから、一般的な広報とは棲み分けて、対象はあくまで候補者に置いた内容にしています。

そして冒頭でお伝えした候補者との関係性を意識した上で、盛った情報やキラキラした情報を提供して弊社を選んで欲しい、という形ではなく、対等な立場でチェックしてもらうために、詳しくファクトを伝えて候補者さん側が判断しやすい環境を提供するよう意識しています。マネーフォワードさんはどうですか?

石原 マネーフォワードという会社は金融やFinTechというイメージを持たれることが多く、候補者が「お金には詳しくないけれど大丈夫かな?」とハードルを感じてしまうケースがあります。実際にはお金に詳しくなくても大丈夫なんですけれどね。

また、私が入社した2016年には200人ほどだった規模が、今ではもう2,000人近くになっています。かなり速いスピードで伸びておりますし、マザーズ上場から東証プライムにステップアップするなど、組織としてのフェーズも変化しています。

そのため、ベンチャーというより制度の整った大企業、というイメージを持つ方が多いですね。実際はまだ全然整ってないんですけれど(笑)。新入社員も毎月かなりの人数が入ってきますので、社内がカオスなんですよ。

先ほどの、どんな課題があるかをマネーフォワードに当てはめると、これらの点が十分に伝わっていない点があげられます。なので、「金融」の堅いイメージを取り払うような発信だったり、会社としてはまだまだ整っていないけれど、でもその分やりがいもたくさんある、というところを発信するように心がけています。

勝村 Voicyも2020年以降の入社者が全体の9割を占めていますが、一気に人が増えてしまうとどうしても元からいるメンバーとの比率が変わってきますよね。古くからいるメンバーの数が少なくなることは、カルチャーを体現する人が減ってしまうことを意味するので、文化づくりにおいて広報などでこれを事前に解決できる部分もかなりあるのかな、と考えています。

採用広報がしっかりと機能していれば、オンボーディングで会社やカルチャーについて丁寧に説明する必要もなくなりますよね。成長している会社の本質って、入社後まで見据えた採用広報というか、合う人にだけしっかり届くような形が重要なんだろうな、と感じています。

カルチャーアンマッチを防ぐために

石原 カルチャーアンマッチを防ぐためにこういう発信をしていこう、と工夫されている点もあるのですか?

勝村 Voicyの場合、サービス自体にインフルエンサーが多かったり、TwitterやInstagramで認知を高めている面があるので、キラキラして見えてしまうようなんです。でも、実際にはイケイケの人はあまり多くありません(笑)。

どちらかというと柔らかいタイプの人が多いので、たとえば営業会社にいて、イケイケで、ガンガン成長したいんだみたいな人が入社してしまうと、違和感を感じてしまうんですよね。

ですからカルチャーの部分については期待値調整が必要そうなコンテンツを積極的に出して、応募の段階やできればそれ以前の段階でわかっていただけるようにするとか、あとは、僕たちのキャッシュポイントはBtoCがメインなので、BtoCの会社と思われがちなんですが、実際の利益はBtoBの方がずっと多いんです。

でも、音声でBtoBをやっているってイメージしにくいし、具体的に何をやっているんだろう、と思われてしまうので、その辺をきちんとご理解いただけるように具体的な職務内容のコンテンツを適切なタイミングで提供しています。マネーフォワードさんはどうですか?

石原 当社はカルチャーが大事という発信が強いので、面接のタイミングや、入社前後でカルチャーに対して全然認識が違うということはあまりないんです。みなさん、記事も読んでいただいて、面接前に情報収集していただいています。

ですからカルチャーアンマッチはあまりないのですけれども、スピード感やカオスさ、みたいなところのイメージは伝わりにくいんだな、と感じています。面接のタイミングで「結構カオスですけれども大丈夫ですか?」みたいなことは言ってます(笑)。

マネーフォワードは「いい人」が多いよね、と候補者の方にもよく言っていただけるのですが、入社して3ヶ月くらい経過した段階で聞いても同じように言ってもらえるので、ズレは少ないです。

そこは採用広報や採用面接で一貫して伝えているポイントですね。

社内向けの発信

入社後に発信する情報の届け方

石原 社内向けの発信についてもお伺いしたいと思います。社外と社内の発信で意識的に変えているところはありますか?逆に変えないようにしている部分とか。

勝村 採用広報に出す情報と入社後に出す情報にそれほど差分はないように思います。明確な差をつけて入社後に違う情報が届くと不信感につながってしまいますから。

ただし、届け方には差がありますね。入社後はSlackや全社MTGでコンテンツを提供する方法がメインですが、流れてしまう可能性が高い。

また、オウンドメディアに出しても届かなかったりしますよね。そこで当社では自社サービスでもある「声の社内報」、いわゆる社内ラジオを使ってデリバリーしています。

外に出す広報としては求人票を音声にしたりしているんですけれども、社内に対しては社内ラジオという届け方を利用しているんです。より距離感を近づけたり、社員自身の本人性が伝わる情報に変えた上で発信し情報共有して巻き込んでいく形です。

入社前だと必要が無いようなコミュニティや趣味の情報をインプットしてもらうことで関係性を深めていく。したがって届け方に差が生じていると思います。

石原 そういった対外的な発信は、人事からメンバーに対して働きかけをしているのか、皆が自発的にやっているのか、どちらでしょうか。

勝村 当社では人事2:現場8くらいの比率ですね。社内ラジオに限らず、代表の思想で組織もプロダクトであるという考えがあるんですよね。

スタートアップはサービスと組織というふたつのプロダクトを持っていて、これらが噛みあわないとグロースしないというのが会社の大事なカルチャーとしてあるんです。

そのため組織もプロダクトとして考えており、PdMに当たるのが人事で、全員がメンバーとして関わるんだという意識が強くあるので、クロスファンクショナルチームという手挙げ参加型の現場メンバーで組織される組織開発チームがあり、その中の1チームが社内ラジオを主導しています。

彼らが自発的にやるんですが、組織の課題みたいな部分は十分にわかっていない面があるので、人事が加わって手伝います。でも、基本的に企画やアレンジは現場メンバーが率先して運営しています。

石原 組織開発に現場メンバーが密に関わって、人事とその他の事業部の垣根を設けずに発信や活性化をやっているわけですね。

勝村 それもカルチャーだ、という捉え方でやっています。マネーフォワードさんでは社外と社内の広報に差分があるんですか?

石原 差分はあまりないですね。ただし、発信が非常に多いので情報が流れていってしまい、改めて見たいな、となった時に見返しにくいという面があります。テーマごとに、ストックしておけるものを作ろうとしているのが今の状況です。

会社の成長と社内向け発信の変化

勝村 会社が大きくなっていき社会的な認知が高まる、組織の状態が変わるという流れの中で発信についての変化は意識されていますか?

石原 すごくありますね。とくに社内向けの発信が大きく変わっています。私が入社した頃はワンフロアーに全員の顔が見えて、社長もそのへんにいました。今もそのへんにいるんですけれども(笑)、当時は割と近い距離で顔と名前がわかるギリギリの規模だったんですね。

そこから今はM&Aでグループにジョインする会社が増えたり、拠点が増えたりしています。国を超えて、ベトナムにも開発拠点があるんですね。そのため、私でも新しく入社した方の顔と名前がわからない状態になっています。

マネーフォワードの場合、メインの収益源はクラウド会計等のバックオフィス向けのSaaSなのですが、家計簿のサービスやもっと金融寄りのサービスなど色々出しているんですね。

サービスが多い上に、それぞれの事業フェーズがどんどん変わっていくので、各事業が今、何をやっているのかを理解することの難易度が上がっています。そこで、できる限り経営陣から背景を含めた発信をこまめにするようにしています。

200人の時の距離感と2,000人になった時の距離感はどうしても違いますし、意思決定の場に直接居合わせないメンバーも増えているので、背景をシェアするのは非常に重要だと思っています。

毎週の朝会や半期総会といった全社員が参加できる場で、どうしてこういう意思決定になったのかを話す機会を意識的に設けて、会社の方向性について経営陣が考えていることや組織を大切にしていることを伝えるための時間をかけていますね。

勝村 当社も結構近いかな、と思って聞いていました。社内向けについては、規模の割に職種がとても多いので、ジョブ型で自分の職務をやっておけばいいという感覚になってしまい事業への意識が下がってしまったり、自分の仕事が事業にどう連関しているのかのイメージがつかなくなってしまったりする課題があります。

社内受託的な意識になっていきがちなので、最近ではどうすれば事業やサービスに対する彼らの意識が高まるのかな、という点を意識して発信しています。時間とともに変わってきたな、と感じます。

終わりに

石原 時間が迫ってきてしまいましたので、内向き・外向きの発信に困っている企業様に向けて、是非メッセージをお願いします。

勝村 人事の役割や責任、ポジティブにいうと存在感はこの10年で非常に高まったと思います。管理部門の1職種から会社をグロースさせるための重要なポジションになっていると感じていますので、やりがいを感じられるのではないでしょうか。

採用における主役は選考でしたが、今では採用もいろいろ分岐し、その中でも採用広報は主役級のスキルになっていますよね。それも自分が書くだけではなく従業員を巻き込むスキルとか。

とてもやることが増えて大変にはなっていますけれども(笑)、人事は情報共有がなかなかできない面もありますが、共有しながら、賞賛し合いながら、お互い情報交換しながら頑張っていけるとうれしいなと思っています。

石原 私もぜひ、今後ともいろいろと教えていただきたいなと思っています。人的資本経営の重要度はさらに高まっていますし、本日視聴されている皆さんともインタラクティブにお話できる機会があればうれしいなと思っています。

石原・勝村 ありがとうございました。

Wantedlyのサービス資料を見る
タイトルとURLをコピーしました