Wantedlyが2022年4月に実施した「企業のパーパスに関する調査」では、企業のパーパス(ビジョン、ミッション)への共感を重視する採用や就職が増えていることが、はっきりと見て取れる結果になっています。
今回はこの結果をふまえながら、共感採用を重視する採用広報でエントリー数を大幅に伸ばしたアンドパッドさんをお招きして、採用広報のあり方や工夫すべき点についてお話しいただきます。
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共感を軸にした採用を始めるには?
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Wantedlyは、会社の目指すことや、はたらく人の想い、価値観への共感を軸にした採用サービスです。
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▼ゲスト
株式会社アンドパッド 組織戦略部 部長
米山 諒早稲田大学大学院に在学中、創業期のビズリーチにインターンとして参加。
2011年4月、リクルートに入社し、プロデューサーとして新規事業の立ち上げに携わり、事業運営責任者を務める。フリーランスとして複数社のスタートアップを支援後、株式会社LiBを創業し取締役CTOに。現在はアンドパッドの組織戦略部の部長として、開発本部の組織戦略にコミットしている。株式会社アンドパッド 組織戦略部 技術広報エンジニア
鳩 洋子フリーランスのエンジニアとして8年ほどの活動経験を経て、受託開発会社にて、月額制アジャイル開発チームを提供するサービスの立ち上げを行い、事業企画と事業部CTOを兼任。現在はアンドパッドの組織戦略部にて、技術広報エンジニアとして採用広報・技術ブランディング活動を推進している。
▼司会
ウォンテッドリー株式会社
中沢夏美2015年新卒で大手保険会社に全国型総合職として入社し、顧客の動向分析を中心に行う。2018年5月にウォンテッドリー株式会社に転職。インサイドセールスリーダーやビジネスチームの組織づくり、採用担当などを経験。現在は、一児の母として子育てをしながら、Onboarding(Customer Success)チームのリーダーとして、顧客体験の向上に努めている。
第1部 パーパス重視の傾向と共感採用の重要性について
中沢:アンドパッドさんとのトークセッションに入る前に、企業のパーパスを重視する求職者の傾向と、それに対応する採用手法とされる共感採用について、簡単にお話しさせていただきます。
企業のパーパスを重視する求職者が増えている
みなさまもご存知の通り、パーパスという言葉がHR界隈で流行っておりまして、Googleトレンドを見てもこの5年で急上昇しています。パーパス関連の書籍も、多数出版されています。
Wantedlyの「企業のパーパスに関する調査」でも、パーパスを重視する求職者が増えていることが示されています。
入社時にパーパスを重視したという求職者は、この5年で2倍に増えています。
採用側も、パーパスに共感して入社した人は仕事へのモチベーションが高いと感じています。
この調査結果から「パーパスへの共感」は、いまや採用や組織づくりの重要なファクターになっていることが分かります。
調査結果は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/pr_purpose/
共感採用とは
では、会社のパーパスやそこで働く人の想いを知りたい人、言い換えると「働く意味」を大切にする人を採用するには、どんな採用手法が適しているのか、ということが問題になります。
この問題に対する1つの答えが「共感採用」です。共感採用とは、会社の目指すことや、働く人の想いや価値観への共感を軸にした採用です。「働く意味」を大切にする人を採用するには、給与や福利厚生ではなく、価値観のマッチで入社を呼びかけよう、という考え方が共感採用です。
共感採用を行うためには採用広報が重要
このような共感採用を行うためには、従来の「募集要項」の情報だけでは不十分です。募集要項だけでは、求職者が本当に知りたいことの多くをとりこぼしてしまいます。また、企業のパーパスを定義して、それを文章にするだけでも充分ではありません。
そこで注目されているのが、会社の中で働く人の具体的な姿や声を通じて知ってもらう「採用広報」です。
今回は、採用広報に力を入れることでエントリー数を約2倍に増やした株式会社アンドパッド様をお招きして、採用広報の具体的な施策や工夫していることなどをお伺いしました。
第2部 トークセッション「お互いに期待を超えあう」採用が人事ポリシー
中沢:ではトークセッションに移らせていただきます。米山さん、鳩さん、よろしくお願いいたします。
米山、鳩:よろしくお願いします。
中沢:まず、アンドパッドさんの事業内容について、簡単にご説明いただけますか?
米山:アンドパッドは、建築・建設業に特化したクラウドサービスを提供している会社です。タスク管理ツールもあれば、図面を管理するツールがあったりと建設・建築業の業務はとても多岐に渡り、アンドパッドで展開するプロダクトは新規プロダクトを入れると十数を超えています。
建設・建築業界の皆様がより効率的に、そしてプロフェッショナルな領域に専念いただけるようにアンドパッドのプロダクトを開発・提供しており、目指す世界観は、アンドパッドのプロダクトを使って建設される建物が日本全国に広がっていくことです。
おかげさまで、弊社の施工管理アプリはシェアNo.1を達成し、2021年には、Forbes JAPANの「日本版 CLOUD TOP20」で2位に選出されました。
中沢:アンドパッドさんは最近、組織体制を変えられたそうですね。
米山:はい。今年の1月に人事組織を再編しました。現在は採用に携わるチームが3つあります。1つは会社の人事部、もう1つが特にボリュームの多いセールス系の職種(インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス)を採用するチーム、3つ目がエンジニア、プロダクトマネージャー、デザイナーなどの開発系の職種を採用するチームです。鳩と私は3つ目のチームに所属しています。
中沢:今回の体制に変えた理由は何ですか?
米山:エンジニア領域は使われる用語が難しくて、それをある程度理解できないと採用活動ができない面があります。以前から人事部の中でも「エンジニア担当はこの人」みたいなのがあったので、それを部署として独立させました。
中沢:その組織体制を踏まえつつ、1つ目のテーマ「なぜ共感採用を重視しているか」についてお話しいただきたいと思います。
米山:社内では共感採用というワードは使用していませんが、採用時のみならず採用後も一貫して「共感」を気にかけています。
私はこの半年間、「採用ストーリー」の重要性をチームに言い続けてきました。「採用ストーリー」とは何かというと、一貫性のある候補者体験・従業員体験を組み立てるための設計書のようなものです。
候補者がアンドパッドへ入社をし、その後どう活躍するのかまでをイメージし、候補者一人ひとりに寄り添ったストーリーを組み立てることで、候補者はアンドパッドの人事ポリシーである「期待を超え合う」パフォーマンスが発揮できると考えています。
「採用時にどうやってパフォーマンスを発揮したいか話したはずなのに、入社してみたら違うじゃん」ではモチベーションを損ないます。
ミッション・ビジョンへの共感を前面に出しつつ、エントリーを募り、面談・面接を重ねる中でお互いに共感できている状態を作り上げることを重視しています。
求職者は「入社したらこんなことをしたい」と思い描き、会社側は「この人には、こんな風に活躍してほしい」と願います。その結果が、お互いの期待を超えるのが理想的な「採用ストーリー」だと思います。
中沢:アンドパッドさんが共感採用を重視するようになったきっかけは何でしたか?
鳩:アンドパッドは、建設業界に特化したサービスなので、候補者のエンジニアがプロダクトのユーザーにはなり得ません。触ったこともないプロダクトに興味・関心を持つのは難しいと思います。
なので、候補者がこの企業で働きたいと思うには、アンドパッドのミッション・ビジョンに共感することが必要です。それには、先輩社員がどういう経緯で入社するに至ったとか、どういう仕事をしているとか、どういう取り組みをしているとか、そういったものを候補者に十分に伝える必要性があると考えています。
アンドパッドのミッションとバリュー
▼ミッション ▼バリュー Mission Driven Reality Customer Success Technology First Love ANDPAD |
共感採用のための広報の3つの具体策
中沢:候補者に興味を持ってもらい、共感してもらうために、具体的にどのような広報をしているのですか?
鳩:主に3つやっています。1つはWantedlyの「ストーリー」で、エンジニアのインタビューを連載しています。
鳩:上の画像で1番上に出ているのが、最近更新したUIデザイナーのインタビューです。あとはプロダクトマネージャーやエンジニアのインタビューを「TECH FIRST」というくくりでまとめて掲載しています。ビジネスサイドの社員にも別枠の「ストーリー」があります。
中沢:インタビューのタイトルを見ると、「生物学博士からQAエンジニアへ」とか「エンタメからバーティカルSaaSへ」みたいな、今の仕事にどうたどり着いたかがタイトルになっているものが多い印象でした。それも共感を醸成する仕掛けでしょうか?
鳩:アンドパッドは中途採用が多いので、いろんなバックグラウンドの社員がいます。エンジニア自身の人生を紹介しつつ、「なぜアンドパッドを選んだのか」のその人なりの理由を表現したいと思って、インタビューに盛り込んでいます。それによって、ストーリーとして面白く、読みごたえがあるものになっていると思います。
施策の2つ目は、技術勉強会、テックイベントの開催で、3つ目が「テックブログ」です。テックブログチームというのがあって、その運営の取りまとめを私がやっています。
中沢:テックブログは自社のホームページの中にあるのですか?
鳩:いえ、コーポレートサイトの中ではなく、はてなブログを利用して「ANDPAD Tech Blog」という独立したブログサイトとして運営しています。
中沢:もう少し深堀して、工夫している点をお聞きできたらと思います。
鳩:採用広報というと、とにかく外部発信をしようとしがちですが、アンドパッドの考える採用広報は「社内広報×外部発信」です。採用広報活動をしていく中で、まず社内広報をすることが重要だと考えるに至りました。
なぜ社内広報が重要なのかというと、まず社内広報に力を入れないと、社員の本当の姿や気持ちを見てもらえる外部発信はできないと思うからです。採用広報は、広報担当者が発信するだけでは、アピールする内容に候補者から見た信憑性やリアリティが生まれません。Amazonで本を買うときに、出版社が「良い本ですよ」と言っても心が動かないけれど、良い口コミがあると読んでみようかと思うのと同じです。
アンドパッドの場合、エンジニアインタビューが「ストーリー」に出ると、すぐに社員の何人かが、それぞれの声でSNSに投稿してくれます。例えば「一緒に働いてるデザイナーの記事出たよ」とか「私がいつもお世話になってる〇〇チームの〇〇さんです」とか。本人が「インタビューしていただきましてありがとうございます」とコメントして投稿する場合もあります。
社員が次々とコメントを添えてSNSにシェアしているという現象を外側から候補者が見たときに「働きやすそうだな」とか「チームワークが良さそうだ」と感じてくれると思います。これは”社内”広報を丁寧にしているからこそ生じる現象だと思います。
中沢:なるほど。アンドパッドさんが社内広報で重視していることはどんなことですか?
鳩:社内広報で重要視しているのは、次の3点です。
- なぜやるのか、何のためにやるのかを理解してもらう
- 広報活動に「参加したくなる環境」を整備する
- 「やったことの結果」を協力してくれた人にきちんと伝える
1点目は、「なぜやるのか」を理解していないと、自分でSNSに投稿するなどの行動に移すことができないからです。理解してもらうために広報として工夫していることは、社内の人に共感してもらえる「記事公開のお知らせ文」を書いて発信することです。
例えば「TECH FIRSTで〇〇さんのインタビューを公開しました」と社内にきちんと広報します。そのときに、社員が共感できる・応援したくなるような表現を丁寧に考えて発信するようにしています。
2点目の「広報活動へ参加したくなる環境整備」は、参加するのが不安だという気持ちをなくしてあげることです。誰でも、外に発信したらその影響が怖いという気持ちがありますよね。エンジニアの場合はけっこうそれが強くて、炎上も気になるし、言っていいことと言ってはいけないことの境界線もイマイチ分からないので「ひとまずやめておこう」という安全に傾きがちだなと思っています。
そんな心配をしながらでは、面白い話は出てこないので、ガイドラインを作って「控えてもらいたいこと、率先して話してもらいたいこと」をまとめて、それを周知することによって発信しやすい環境を作っています。
3点目の「やったことの結果を、協力してくれた人にきちんと伝える」は、例えば、エンジニアが書いてくれたテックブログへの反響をまとめて「テックブログレポート」として社内で共有しています。「毎月どれくらい見られている」とか「こんな反応が来ている」ということを、広報担当のコメントをつけて、レポートとして発信しています。
さらに、ランキング入りとかホットエントリー入り、PVが良かったとか、数字でわかるものがあると嬉しいので、そんなニュースももちろんレポートして、書いてくれた人やシェアしてくれた人と共有するようにしています。
採用広報への協力は、社員にとってもメリットがある
中沢:現場の社員に、通常業務の合間を縫って採用広報に参加してもらうには、やはりそれなりの工夫が必要なのですね。
鳩:協力してくれる社員には感謝、感謝なのですが、社員にとってもメリットがないわけではありません。例えばインタビューに答えたり、ブログを書くことで、それが個人のストーリーやキャリアになります。その時は直接業務には関係ないかもしれないけれど、中長期的にそれが自分がやってきたことの足跡となりキャリアへ活きてくることがあると思います。
個人プロフィールはスカウトにも使える
中沢:アンドパッドさんから見て、Wantedlyと他社のサービスの違いを感じる点というと、どんなことでしょうか?
米山:私はスカウト業務もしているのですが、Wantedlyの個人プロフィールには「今後やってみたいこと」などが書かれているので、それを踏まえてキャリアを提案するようなスカウトを送ることができます。
面談でも、その話をちょっと掘り下げながらアンドパッドに興味を持ってもらい、採用面接に進めていくみたいな流れができるんですね。そういう意味ですごく使いやすいツールだなと思っています。
中沢:ありがとうございます。Wantedlyの最大の媒体特徴は「給与や福利厚生を掲載できない」ことなので、掲載する企業も求職者もパーパスやビジョン・ミッションに集中できるメリットがあると思います。
中沢:従来型の採用サービスだと、どうしても給与が目に入ってしまい、パーパスに心を打たれるかどうかに集中することができないことが多いです。そこでWantedlyは、2012年の創業から10年間ずっと「パーパスへの共感を軸にした人と会社の出会い」の創出を目標にしてきました。その意味で、最近のパーパスを重視した採用や就職の傾向をとても嬉しく感じてます。
社員数が少ない会社の採用広報はどうすれば良いのか
中沢:みなさまからの質問の中に「アンドパッドさんは社員数が約600名と多いけど、社員が少ない会社の場合は、採用広報をどうすればよいのか」というのがありました。
米山:これはWantedlyさんから答えていただく方がいいんじゃないですか(笑)
中沢:そうですね。弊社のサービスを使っていただいている企業の2、3割は、社員数10名前後の規模です。その中で、今思い出したのが、テレビの「サラメシ」ではありませんが、「ストーリー」に毎日の昼の賄いメニューをアップしている企業さんがあります。北九州の建設会社さんですが、会社の雰囲気が伝わる良い広報だと思います。そのせいかどうかは別として、採用の成果も少しずつ上がっています。
なので、社員さんのストーリーを上げるだけではなくて、会社の雰囲気が伝わる何かだったり、創業ストーリーだったりとか、ブログだと思って使うと、会社のイメージをつかんでもらえるのかなと思います。
では、このへんで今日のトークイベントを終了させていただきます。鳩さん、米山さん、本日は具体的で貴重なお話をありがとうございました!
米山、鳩:こちらこそありがとうございました!
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