Wantedlyは2022年4月に「企業のパーパスに関する調査」を行いました。調査対象は求職者1,182名 と 採用担当者158名です。(Wantedly利用者/非利用者の双方とも含む)
本日は、調査結果をご紹介するとともに、株式会社グッドパッチの小山 清和氏と高野 葉子氏をお招きして、パーパスに基づいた採用・組織づくりについてお話をうかがいます。
※「パーパス」とは「企業の存在目的や社会的意義」の意味で、企業によっては「ミッション」や「ビジョン」と表現されています。
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共感を軸にした採用を始めるには?
共感を軸にした採用の必要性は感じているけど、何から手をつけていいかわからない…と考えていませんか?
Wantedlyは、会社の目指すことや、はたらく人の想い、価値観への共感を軸にした採用サービスです。
パーパスへの共感度合いでモチベーションに2.5倍の差がでるとも言われている昨今。会社のミッションやビジョンを発信して、新しい世代の特徴にフィットした採用活動を始めませんか?
共感採用を始めたいと考えている方、まずはWantedlyのサービス資料をダウンロードしてみてください。
▼ゲスト
株式会社グッドパッチ
小山 清和富山県出身。40歳。新卒時代は松屋フーズで店長、その後はディップを経て2008年以降から人事の道に。2016年10月にグッドパッチに入社。入社後はグッドパッチの採用面から組織づくりに関わり、2020年6月の東証マザーズ上場に貢献。
2021年からはデザインパートナー事業を担うDesign Divisionに異動。同年4月に設立されたDesign Opsに配属され、事業サイドからデザイン組織づくりに関わる。現在はOpsHRチームのマネジメントにもチャレンジ中。株式会社グッドパッチ
高野 葉子千葉大学大学院工学研究科修士課程修了。学生時代にはデザイナーを目指し高度デザイン教育プログラム受講。UI/UXデザイン、デザインマネジメントを学び、卒業後はベンチャー・スタートアップ企業にて新規事業開発・事業推進を担当。2016年1月から株式会社グッドパッチに社長室広報として入社。PR/PXグループを立ち上げ、現在に至る。
▼モデレーター
ウォンテッドリー株式会社
奈良 英史茨城県つくば市出身。33歳。
慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。
大手化学メーカー、ITベンチャー、大手総合PR代理店を経て、2019年4月にウォンテッドリー株式会社の広報担当としてジョイン。
PR/Communicationの担当として、コーポレート、プロダクトの広報戦略立案から実行までを行っている。
Wantedlyが実施した「企業のパーパスと採用」に関する調査結果
この調査の詳しい結果は下記にアップされています。
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/pr_purpose
【調査結果の概要】
◆ 求職者への調査
・入社時にパーパスを「かなり重視した」人は年々増加し、直近5年間で倍増
・給与よりもパーパスを重視して転職した事がある人は43% 、今後そうすることがあると思う人は63%
・ パーパスに共感している人とそうでない人とでモチベーションが高い人の割合に2.5倍の差
◆ 採用担当者への調査
・選考時にパーパスへの共感度を重視すると87%が回答、スキルよりも優先する場合があると32%が回答
・ パーパスへの共感性を重視して採用した人の特徴として63%がモチベーションの高さについて言及
・ パーパスに共感する仕組み作りに注力しているのは78%。しかし53%が十分に浸透していないと回答
今回の調査からわかるのは、①企業のパーパスに共感できるかを重視する求職者が増加していること、②パーパスへの共感性が高いと仕事のモチベーションも高いことです。
上記2点が示唆するのは「パーパスへの共感」が採用・組織づくりで、今や無視できない、というより最重要のファクターの1つになったことです。
ミレニアル世代そしてZ世代の求職者は、働く「意味」を大切にする世代であり「会社のパーパスやそこで働くひとの想いを知りたい」と思っています。
そんな世代の採用に必要なのが「共感採用」という手法です。共感採用とは、会社の目指すことや役割への働く人の共感を軸にした採用です。
共感採用を実践するためには、自社のパーパスを定義するだけでは不十分で、それらを伝える採用広報活動が重要です。
【Wantedlyを利用した採用広報】
従来型の採用サービスでは、求職者はまず給与などの処遇が目に入ってしまい、その会社のパーパスに心を打たれるかどうかに集中することができません。
そこで生まれたのがWantedlyです。Wantedlyはパーパスへの共感を軸にした「人と会社の出会い」を2012年から創出し続けてきました
Wantedlyの募集ページは、「会社のパーパスに心が動くか」が仕事選びの最初のフィルターになるように設計されています。給与や福利厚生は掲載はできない分、会社のパーパスや働くメンバーの想いを魅力的にアピールすることができます。
企業の想いが伝わるフォーマット
- タイトル、カバー写真に想いを乗せる
- なにをやっているのか(事業内容)
- なぜやるのか(ミッション、バリュー)
- どうやっているのか(雰囲気/組織風土/キャリアプラン)
- こんなことやります(ビジョン)
Wantedlyの「会社ページ」や「ストーリー」でも、さらに想いを伝え、パーパスの認知を広げることができます。これらは、採用の場面でパーパスをアピールするのにとても適した場所です
また、求職者の「個人プロフィール」からその想いを覗き、スカウトを送ることも可能です。
グッドパッチのビジョン、ミッションと事業を紹介
奈良 : 本日はよろしくお願いします。
小山、高野 : よろしくお願いします。
奈良 : 今回ゲストにお招きしたグッドパッチ様は、2018年 WANTEDLY VISIT AWARDでSCOUT賞を受賞されており、Wantedly全利用企業の中でダイレクトスカウト返信率No.1。また、共感採用や採用広報において輝かしい成果を挙げられています。
このトークセッションでは、グッドパッチさんの採用広報からヒントを得て、みなさまの採用活動に活かしていただくことをゴールにしたいと思っています。
では、グッドパッチさんの事業内容とパーパスのご紹介からお願いします。小山 : グッドパッチは2011年創業のデザイン会社で、自社を「デザインの力でビジネスを前進させるグローバルデザインカンパニー」と位置づけています。従業員数は236名(2022年2月末現在)です。東京と名古屋の他、ドイツのベルリンとミュンヘンに拠点があります。
企業ビジョンは「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」で、ミッションは「デザインの力を証明する」です。社員の規模が30人に達し、デザインファームとしては異例の大型資金調達をした2014年に定めました。
2016年にはバリューにあたる行動指針を策定しましたが、その浸透に失敗して、2018年に下記のような5つのコアバリューを再構築しました。
- Inspire with why(Whyが人を動かす)
- Go beyond(領域を超えよう)
- Play as a team(最高のチームのつくり手になる)
- Craft details, create delight(こだわりと遊び心を持つ))
- Good design equals good business(良いデザインを良いビジネスにする)
このビジョン、ミッション、バリューの下に、2つの事業部門「デザインパートナー事業」と「デザインプラットフォーム事業」を運営しています。
パーパスへの共感を重視する求職者が増えていることを、実際に感じるか?
奈良: 今回のWantedlyの調査では、就職にあたって企業のパーパスを重視する人がこの5年間で倍増したという結果が出ていますが、グッドパッチさんでもそのような実感がありますか?
小山 : とくに2020年のコロナ禍からその傾向が強まっていると感じています。リモート面接で、実際にその会社に足を運んだことがなくても「入社したい」という気持ちになるには、待遇や仕事の内容に納得するだけでは足りないのだと思います。
足りないというより、それだけでは不安で、応募や入社に踏み切るには「共感」の後押しが要る、という方が近いかもしれません。
それまで採用に強かった企業がコロナ禍で弱くなったケースもあるし、その逆もあると聞いています。コロナ禍によって本当の採用力が問われているのではないでしょうか。
パーパスへの共感と仕事のモチベーションには、本当に関係があるか?
奈良 : 採用担当者への調査では、パーパスに共感して入社した人はモチベーションが高いという結果が出ていますが、この点はどうですか?
小山 : 私自身の例からも、それは言えると思います。私がグッドパッチに入社したのは2016年の10月で、これまで何度も辞めようかと思ったことがあるのですが、結局残ったのは「この会社が好き」「この会社でやりたいことがある」という気持ちがあったからです。
人間なのでモチベーションが低いときも高いときもあるし、よそから転職の誘いがあるタイミングもあります。そんなときに最後の決断を左右するのが会社のパーパスへの共感だと思います。私の場合は「デザインの力を証明する」への共感でした。
グッドパッチでは、重要な採用要件として「共感度合い」があります。能力があっても共感がないと続かないし、お互いに良い結果になりません。
高野 : グッドパッチは、ビジョン、ミッションを定めて1年半後の、社員数が急拡大した時期に組織崩壊を経験しています。その時はモチベーションの谷底だったわけですが、そこからモチベーションクラウドで計測を始めました。それ以来モチベーションは上昇を続け、最近は3,000社中で10位以内をキープして、モチベーション・アワードを受賞しています。
奈良 : なるほど、確かにモチベーションは高いときもあれば低いときもありますよね。ビジョンやミッションは、モチベーションが低いときにそこに立ち止まる錨にもなるし、道しるべの北極星にもなるのですね。
小山 : エンディングような素晴らしいお言葉で(笑)
高野 : 私も、Wantedlyで見かけたグッドパッチのビジョン、ミッションに共感して入社したクチなのですが、それがまさに組織崩壊の時期でした。そこで頑張れたのは、共感という「錨」があったからだと思います。
採用広報の内容と「面接官や経営者が言うこと」の一貫性はどうすれば保たれる?
奈良 : 採用担当者が「これだ!」と思って、共感採用を軸にした採用広報を始めるのは大切だと思うのですが、それを見て応募した人が面接官や経営者に接して「採用の人が言っていることと違うじゃないか」というケースもあると聞いています。グッドパッチさんは、広報と会社の一貫性という点はいかがでしょうか?
高野: グッドパッチの社員は、全員がビジョン、ミッション、バリューを空で言えると思います。社員の一人ひとりが「自分たちがなぜここに集まっているか」を人に語れるので、求職者が社員のだれに接しても「広報と違う」とはならないはずです。
奈良 : 素晴らしいですね。どうやって、そこまでビジョンやミッションが社員に浸透したのでしょうか。
高野 : グッドパッチはバリューの1番目(Whyが人を動かす)にあるように、Why(なぜそれをするのか)が行動の起点になっています。「なぜするのか」と問うたときに立ち返るのはビジョン、ミッションなので、いわばバリューの中にビジョンとミッションを浸透させる仕掛けがあるわけです。
理屈で言うとそうなるのですが、実際にもグッドパッチが社外発表するもののすべてがビジョン、ミッション、バリューに紐づいています。事業発表やプレスリリースはもちろん、採用広報の社員インタビューや代表インタビューも、ビジョン、ミッション、バリューが起点あるいは源になっています。
採用広報は何から始めたらよいのか
奈良 : これから採用広報を始めようとしている担当者もいると思うのですが、その方のために、採用広報はどこから始めたらよいのかについてお話しいただけますか?
高野 : 私は2016年に社長室広報として入社したのですが、広報はまったくの未経験でした(笑)見よう見まねでプレスリリースなどを作っていたときに、小山さんが入社して「採用広報をしたほうがいいよ」と提案してくれました。
私は「採用広報って何?」というレベルだったのですが、小山さんが言うには、グッドパッチの良いところが応募者に伝わっていないし、面談に出てくる人と現場にギャップがあるので、そこを埋める情報が必要だと。
奈良 : そこで高野さんは、どんなことから始めたのですか?
高野 : Wantedlyのフィードに週に1回必ず書くと決めて、2年弱の間続けました。
奈良 : 2年はすごい!
高野 : ちょうど組織崩壊の時期だったので、沈みそうな船から水をかい出しながら、小山さんと二人三脚でやっていました。
奈良 : ちなみにフィードでは、どのようなことを書かれたのですか。
高野 : デザイン会社なので、なかなか仕事の内容や社風など、中のようすが求職者に伝わりにくい面があります。そこを埋めるような、かみ砕いたライトで短い記事を出すという方針で書いていきました。小山さんが全社の採用を担当していたので「こういう職種の人はこういう情報を求めている」などを教えていただきながら。
奈良 : 小山さんが応募者目線で課題を拾いあげて、高野さんが広報に落とし込むというサイクルでしょうか。
高野 : まさにそれが最初の一歩でした。
奈良 : 小山さんから見ると、採用広報の立ち上げでは何が必要だと思われますか?
小山 : 私は社員数20名規模の前職で「3ヶ月応募ゼロ」という状況で採用と採用広報を担当しました。そこでやったのは「とりあえずWantedlyのフィードで発信しよう」でした。そうしたら、ぽつぽつ応募が来るようになり、その他の施策からの決定も含めて年間10名エンジニアを採用できました。
この原体験から、世間に知られていない会社でも、予算がなくても、広報の仕方次第で認知されるし、応募数を増やせると感じました。知られていないからこそ、広報する(会社の中を伝える)努力が大事なのだと思います。
グッドパッチに入社したときも、まだポテンシャルが活かしきれていないなという感じがあったので「グッドパッチの中身を伝えていこう」と高野さんと話し合いました。
奈良 : なるほど。小山さんも高野さんも、まずWantedlyを使っていただいたことに感動しました(笑)
小山 : 私はWantedly歴10年ですから。
高野 : まだ10周年なのに(笑)
共感採用にはどのような効果があるのか
奈良 : これまでのお話と重なる部分もあると思いますが、共感採用に取り組んだことでどのような効果があったでしょうか?
小山 : グッドパッチは組織崩壊のときも面接で「うちは今こういう状態だけど、大丈夫ですか」と正直に応募者に話しました。「それでもいい」と入社した人たちが、いまグッドパッチを支えています。マネジメント、新規事業の立ち上げなど様々な分野で活躍しています。
もちろん、広報してすぐに効果が出るわけではなく、本当の結果が出るまでには年単位はかかると思います。そこで、気をつけないといけないのは、ずっと同じことをしていたのではダメだということです。
発信する方がいいと思ったことでも、時代遅れになっていたり、魅力がなくなったりということが起きます。グッドパッチでは面談した人にアンケートを取るなどでリサーチしていますが、これまでのやり方ではうまくいかなくなっている面も実はあります。常に修正していくことは必要だと思います。
奈良 : では最後に、Wantedlyを使っていて、他のサービスとの違いを感じるのはどこかを教えていただけますか?
小山 : 先ほどお話ししたように、20人くらいの規模の会社でもエンジニアが10人採用できた経験からいうと、会社の規模にかかわらずWantedlyをうまく使えば採用できると思います。それは、会社の想いを伝えることができる媒体が意外にないからです。
こういう時代だからこそ「共感」はすごく大事で、それを伝えられるのがWandedlyの強みだと思います。現在も、グッドパッチに入社する人はWantedly経由が1番多いです。
奈良 : 本日は貴重なお話をありがとうございました!
小山、高野 : ありがとうございました!