難易度が高まり続けるエンジニア採用で結果を出すために、いま何が必要とされているのでしょうか。
採用と組織づくりの意義を「Reframe(再定義)」するオンラインイベントFUZE2021のセッションCは、エンジニア採用の最前線でご活躍されているDeNAの立花氏とサイバーエージェント峰岸氏に、新卒、中途採用それぞれの視点から語っていただきました。
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優秀なエンジニアを採用するコツを公開
自社にマッチした優秀なエンジニアにアプローチできていますか?
開発に馴染みのない採用担当者や経営者にとって、エンジニア採用の要件を正しく設定することは容易ではありません。
そこで、優秀なエンジニアを採用するために押さえておきたいポイントを、1つの資料にまとめました。
専門知識を持たない採用担当者の方にも簡単に理解できる内容になっていますので、ぜひご覧ください。
▼ゲスト
株式会社サイバーエージェント 技術人事本部マネージャー兼 新卒エンジニア採用責任者
峰岸 啓人 氏2012年エンジニアとして同社に入社。2016年エンジニア採用人事にキャリアチェンジ。 現在は技術人事本部というエンジニアのための全社の人事組織の責任者として、採用、育成、ブランディングなどに従事。
▼ゲスト
株式会社ディー・エヌ・エー CTO室 室長
立花 啓 氏DeNAに入社後、ECサービスやモバイルゲームなどのバックエンド開発に従事。その後、エンジニアマネジメント、事業責任者を歴任。2016年からエンジニア採用、組織開発、技術広報などを担当し、2019年よりCTO室 室長。
▼モデレーター
ウォンテッドリー株式会社 エンジニア採用担当
竹内みずき2015年レバレジーズ株式会社入社。主にWEBスタートアップ、ベンチャー企業への中途エンジニア転職支援を担当。
2018年からウォンテッドリー株式会社にエンジニア採用担当として入社し、新卒インターンシップの企画や中途エンジニア採用、技術カンファレンスへのスポンサー対応など幅広くエンジニアリングに関する取り組みを行っている。
現場のエンジニアに本気で採用にコミットしてもらうには
竹内 本日は「新卒・中途採用の勝ち筋を探る」というテーマで、採用の最前線でご活躍、ご苦労されているお二人にお話を伺います。峰岸さんは2016年から採用を担当されていますが、「勝ち筋」につながるポイントは何だとお考えですか?事前に用意いただいた「振り返りの年表」を見ながらお話しいただきたいと思います。
サイバーエージェントの採用施策の振り返り 2016年 就業型インターンを本格的に実施 |
現場のエンジニアを巻き込むには何が必要か
峰岸 エンジニア採用は人事だけが頑張っても限界があるため、いかに現場のエンジニアに採用にコミットしてもらうかが重要なポイントになります。
そこを大きく学んだ施策の1つが、2017年に経営者の発案で立ち上げた「YJCプロジェクト」です。「Y-よい人を J-自分たちで C-ちゃんと採用する」という単に日本語を略したネーミングなのですが(笑)。エンジニアに採用にコミットする意識を持ってもらうための取り組みです。
具体的には、次の4点を1つのフレームとして、2017年~2019年にかけて取り組みました。
- トップからエンジニアに採用の現状についてメッセージを送る
- 現場に裁量権を与え、現場発案のイベントを開催する
- ワンチームの一体感を醸成する
- 現場の試みや成果を表彰し、ほめる機会を設ける
このYJCプロジェクトでは良い面もありましたが反省点も多くありました。ここでの反省を活かして後々採用の体制を変更したり、戦略を方針をどう現場に伝えるなどいまも試行錯誤を繰り返しています。
たとえば、(1)のトップからのメッセージで学んだことは、単に役員や採用責任者が「採用協力してよ」とメッセージするのではなく、ら「いま会社がどんな状況で、なぜ採用が重要なのか」を語りかける必要があること。単に「〇人の採用をお願いします」ではなかなか動いてくれませんでした。逆に「なぜ採用に協力してもらう必要があるのか」について納得感を持ってくれれば、協力してくれるエンジニアは多かった。採用側が発信するメッセージの納得性が、エンジニアを巻き込むにおいて最も重要だと感じましたね。
「Q共有会」で4半期ごとに現状と課題を共有
峰岸 2019年には、エンジニアに採用にコミットするモチベーションを維持してもらうために「Q共有会」をスタートしました。QはQuauter(四半期)の意味です。これは、定期的にエンジニアに採用の現状と課題を赤裸々に伝えて、採用のテーマを共有するのが目的です。口で伝えるだけでなく、きちんと資料を作りファクトを示します。
現在は「300人のエンジニア全員が採用に携わろう」というスタンスで取り組んでいますが、エンジニア本来の業務は採用ではありません。彼らに採用に対してのモチベーションを保ってもらうには、できるだけ説明の機会を増やすことが重要だと思っています。
もちろん説明するだけでなく、面接に立ち会ったエンジニアが感じた課題の吸い上げと、それに対する改善も大切です。
技術コミュニティでの存在感の回復に取り組む
竹内 立花さんにもディー・エヌ・エーの採用の取り組みを年表にしていただきました。これを見ながらお話しを伺いたいと思います。
ディー・エヌ・エーの採用施策の振り返り 2016年 社外の技術コミュニティを積極的に支援 |
まず社内の技術コミュニティから温めていこう
立花 過去のディー・エヌ・エーは、Perlコミュニティなどの社外の技術コミュニティでの存在感がありましたがだんだんと薄れていきました。エンジニアの採用と技術コミュニティとのかかわりは切り離せないので、なんとかしなければならない問題でした。
そこで取り組んだのが、まず社内の技術コミュニティから温めていくことです。たとえば、Androidのエンジニアは社内の複数の事業にバラけてお互いに交流がない状態だったので、勉強会を開いてそこに集まってもらうのです。時間はかかりましたが「スナック食べてもいいよ制度」や「技術勉強会カレンダー」を作るなどで、少しずつ人が集まるようになりましたね。
社外イベントにも「自分が登壇します」という発言が増えた
立花 勉強会に参加したエンジニアに話を聞いてみると、個人の活動で社外のコミュニティやカンファレンスに参加している人が意外に多いことがわかりました。
そういう人たちも含めて、勉強会に集まった人たちに「スポンサー予算を取ったから企画しよう」と一緒にコミュニティの支援に取り組んでいくとと「自分が登壇します」という声がどんどん増えてきたんです。
竹内 いまだとカンファレンスでディー・エヌ・エーの登壇者を見ない日はないですよね。
立花 積極的に「面」を取りに行っています。1つのイベントにDeNAのメンバーが10人登壇することもありました(笑)。採用面でも、社内の技術コミュニティが温まっていくにつれて、積極的にコミットしてくれるようになりましたね。
ただ、登壇するには資料やスライドを作るのに非常に工数がかかります。そのためCTO室がCTO室が必要な工数を負担するなど、エンジニアが体外活動をしやすい環境を整備しました。
技術視点を持ったトップ、役員の踏み込んだ参画が必要
竹内 厳しいエンジニア採用の現状と今後を考えると、エンジニアのコミットとともに経営トップのかかわりも重要になりますね。
会社として技術に対して芯の通った取り組みをしているのが、外からも内からも見えているか
立花 技術カンファレンスの話からつながるのですが、最近こうしたイベントのスポンサーになる企業が増えてきました。これだけさまざまな企業が技術やエンジニアに注目する中で、エンジニアがそれぞれの技術領域で発信する、あるいは採用にコミットするのでは限界があります。
やはりトップから「この会社は企業の芯(中心的な課題)として技術に取り組んでいる」と内外から思われる発信をするのが重要です。
ディー・エヌ・エーでは、先ごろ実施したクラウドシフトでも、技術者に検討をゆだねるのではなく、経営陣が技術的なところまで踏み込んで検討を重ねて決断しました。こういう姿勢はもっと社外のエンジニアにもアピールすべきだと思い、会長の南場にGoogle Cloud Next ’19 in TokyoやAWS Summit Online 2021などに登壇してもらいました。
竹内 AWS Summit Online 2021では南場さんがエンジニアを「高い技術力と応用力をありがとう」とかなりほめていましたよね(笑)。
「技術人事連邦」でエンジニアの評価制度を見直す
峰岸 サイバーエージェントでは、2019年に事業部ごとに縦割りでやっていたエンジニア採用を、技術に関する役員である長瀬の下に移管しました。これは、縦割りの良さも活かしつつ、経営陣からの「説明責任」をきちんと果たす試みです。
具体的には、エンジニアの声をよく聞いて、「いま何が必要なのか」「どういう課題があるか」を丁寧に説明しました。それによって、これまでの仲の良いエンジニアにあれこれ依頼する偏りがなくなり、採用力が上がったと考えています。
この体制で行ったのが「技術人事連邦」の立ち上げです。エンジニアと人事スタッフの交流を深めるとともに、役員が加わって、これまで縦割りで行っていたエンジニアの評価制度に横の評価軸を加える見直しを実施しました。
2021年の「CTO総括室」の設立も、縦割りの良さを生かしつつ統合的な視点を確保するための施策です。各事業を担当しているCTOが集まって、事業部だけでは生まれないパワーを生み出していこうと、現在積極的に進めています。
気がつくと新卒採用の比率が減っていた
竹内 各社ともエンジニアが不足している中で、即戦力の中途採用が多くなる傾向があると思います。新卒社員の採用や育成についてはどう対応していますか?
新卒は企業カルチャーの伝道師
立花 ディー・エヌ・エーでも2017年には「気がつくと中途採用の比率が上昇している」状況に直面していました。採用を現場に移譲するとどうしても即戦力の採用が多くなるのですが、会社のカルチャーを作っていく上では問題があります。
新卒はいわば企業カルチャーの伝道師。彼ら・彼女らがいるからこそディー・エヌ・エーらしさが保たれるとも言えます。中長期の組織戦略が機能していなかった可能性がありました。この反省の上で、CTOが新卒採用にフルコミットするようになり、全国を行脚して地方のイベントに出たり、最終面接には必ず出たりするなど取り組みが大きく変わりました。
峰岸 サイバーエージェントも最終面接は技術担当役員の長瀬がすべて行っています。また、2020年からは人材の評価基準を明確にした「構造化面接」に取り組んでいて、そのおかげてカルチャーのミスマッチも減ってきた印象がありますね。
IT産業に来る人材を業界全体で育成するのも必要
立花 エンジニアを目指して就職活動をしている学生をどう採用するかだけでなく、まだ就職活動をする前の学生にIT産業に目を向けてもらうことも重要だと思います。
数年前からサイバーエージェントさんとディー・エヌ・エーが一緒にやっている、学生にソフトウェアの仕事の面白さや未来を伝える「BIT VALLEY」はその1つです。
峰岸 IT人材の母集団が増えず、参入企業が増えているのが現在の状況なので、少ない人材を取り合うのではなく、会社の大小にかかわらず業界全体で人材を育てていく活動が必要ですね。一社で勝とうではなく、みんなでハッピーになることがこの先必要になると思います。
次世代の技術者による技術カンファレンス「CA BASE NEXT」
竹内 新卒をどう採用するかに劣らず重要なのは、入社した新卒社員をどう育てるかだと思います。新卒社員のキャリア形成ではどのようなことをしていますか?
峰岸 今年から「CA BASE NEXT」という、新卒5年目までの社員が企画して運営する技術カンファレンスをはじめました。次世代を担う技術者に企画から運営まで任すことで、成功体験を積み、当事者意識が芽生えるのを期待しています。
立花 新人育成とは直接関係ないのですが、ディー・エヌ・エーは2019年に「デライト・ベンチャーズ」をスタートしました。これはディー・エヌ・エーの社内の人、辞めた人、外の人の起業を支援する取り組みです。採用して人材を社内に囲い続けるのではなく、辞めて起業したいという人に対して、積極的に背中を押すというスタンスです。人材の流動性が高いという社会情勢に合わせた取り組みだと思っていて、社内にいる人も辞めた人も皆で、デライトの総和を大きくしたいという新たな取り組みです。
竹内 本日は貴重なお話をありがとうございました。最後にお二人から、このセッションをお聴きいただいた方に一言お願いします。
立花 採用の仕事は人事だけでは解決しないことが多く、ご苦労されていると思いますが、課題を一つひとつ解決しながらじっくり組織づくりをしていくのが重要だと思います。
峰岸 ひとりで考えて悩まないで、人に相談することが大切です。同じ仲間なので明るく相談に乗ってくれる人が多いと思います。そうやって仲間を増やすことが何より大事ではないでしょうか。
時代の変化に伴い、採用への考え方はアップデートしていく必要があります。
以下の記事では、これからの採用に必要な基本的な考え方や、採用のトレンドについてわかりやすくまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。
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