転職者の思考や行動、意思決定ポイントを明らかにすることで、採用活動のヒントを探る本企画。第7回目は、フラー株式会社でサーバーサイドエンジニアとして活躍する筒井規子氏です。
大学院時代に結婚し、スキル・キャリアアップの真っ最中に出産、産休を経験した筒井氏。エンジニアとしてキャリアアップしたい一方で、子育てもしっかりと行いたい。そのようなマインドの結果、転職を決意します。
以降、どのような計画を立て面接を進め、最終的にフラーに決めたのか。「変な汗が出てきた(苦笑)」と取材中に本人が苦笑いするほどの本音トークを、詳らかに紹介します。
優秀なエンジニアを採用するコツを公開
自社にマッチした優秀なエンジニアにアプローチできていますか?
開発に馴染みのない採用担当者や経営者にとって、エンジニア採用の要件を正しく設定することは容易ではありません。
そこで、優秀なエンジニアを採用するために押さえておきたいポイントを、1つの資料にまとめました。
専門知識を持たない採用担当者の方にも簡単に理解できる内容になっていますので、ぜひご覧ください。
フラー株式会社
サーバーサイドエンジニア
筒井規子氏福岡県出身。筑波大学を卒業し、大学院に進学。図書館情報学を学び、その後自然言語処理に関して実績のあったテックファーム株式会社に就職。pythonを用いたレコメンドシステムの開発や、Java等を用いたバックエンド側の開発、システムのAWS移行に伴うネットワーク設計・開発を担当。フラーにジョイン後は、Web、アプリケーションの案件のインフラ構築業務に携わる。
▼Wantedly_Profile
https://www.wantedly.com/id/noriko_tsutsui
「自然言語処理」を武器にIT企業でアプリ開発を中心に幅広いプロジェクトに従事
――本日はよろしくお願いします。まずは、筒井さんのこれまでのキャリアについて、聞かせてもらえますか。
筑波大学ならび同大学院で、図書館情報学を専攻していました。次第に「自然言語処理(解析)」に興味を持つようになり、同技術を追求していきました。自然言語処理とは私たち人間がふだん使っている言葉を、コンピュータに理解・処理させる一連の技術になります。そのため言語学の知識はもちろん、統計学、AIなどの知識も必要です。
――大学院では具体的にどのような研究をされていたのですか。
大学に入ったころ、アメリカでトレンドとなっていたラーニングコモンズが、日本にも入ってきました。教室で学ぶのではなく、図書館など開かれた場で議論を出し合いながら学ぶ手法です。ラーニングコモンズにおいて、どのようなキーワードが飛び交っているのか。議論の活発度合いや参加者のコミュニケーションなどを、自然言語処理や解析技術を活かし、測るような取り組みを行っていました。
――卒業後は自然言語処理をビジネスに活用しているIT企業に就職されます。そちらでは、どのような業務に携わったのでしょう。
大手通信会社の音声エージェントサービスの開発業務に携わりました。当初はサービスの拡張や変更といった業務でしたが、サービス名が変わるタイミングで新たなサービスを一から開発することになり、同業務も担当しました。なお同業務は、主にJavaを使ったバックエンドでの業務になります。
――iPhoneのSiriのようなサービスですよね。他のプロジェクトはどうですか。
社内コンペが活発な企業でしたので、積極的に手を挙げ、参画しました。たとえば、画像解析を用いた空間の利用状況把握システムです。
自然言語処理以外の案件も携わりました。学習塾に提供していたシステムをオンプレからAWSに刷新するプロジェクトです。同プロジェクトではネットワークの設計・開発を担当。そのほか、開発チームのリーダーなども経験しました。
子育てしながらの通勤時間1時間半は限界だと感じ、転職を決意
――リーダーも任されるなどエンジニアとして着実に成長していた中で、なぜ転職をしようと思われたのですか。
通勤時間が一番の理由でした。私は大学院生時代に結婚をしていて、夫の職場があるつくば市で暮らしています。そのため会社がある新宿までの通勤時間は、約1時間半。毎朝6時前に家を出ていました。
以前はとくにキツイと感じていなかったのですが、子どもが生まれ、子育てをするようになってからは毎日の通勤がしんどくて。さらにマイホームを購入する予定があり、新居の場所はさらに職場から遠くなってしまう。
仕事自体のやりがいはありました。でも、子育てや自分の体力を考えると、このまま通勤し続けるのは難しいのではないか。通勤する度に、考えるようになっていきました。
そんな私のモヤモヤを晴らすきっかけが、ある日起きます。TX(つくばエクスプレス)の終点、秋葉原駅の改札を出たところに掲げられた、フラーの採用広告です。
――つまり駅の採用広告を見て、本格的に転職を決意されたと?
ええ。広告を見てもらうと一発ですが、エンジニアとしてフルコミットで働ける場所が私の家の近くにあったんです。通勤時間を計算するとわずか20分。一方で募集職種を見ると自然言語処理が活かせるような職種ではありませんでした。
でも、私の気持はフラーへの入社も含め、転職に動いていました。さらにはこの先の転職を考えた際、トレンドの技術や資格を身につけておくことも必要だろうとの考えに至り、まずは1年間をスキルアップに充てようと思いました。
――フラーの採用担当者は、意図的に秋葉原駅に採用広告を出していたんですかね。
後から聞いた話ですが、TX沿線で暮らすエンジニアをターゲットにしていたそうです。エンジニアとしてバリバリ働きたい、一方で、プライベートも充実させたい。「通勤、辛くないですか?」との裏メッセージも、この広告には込められているとか。
まさに、私が感じていたモヤモヤが解消できる。私に向けたメッセージだと思いましたね。そしてそのように感じたエンジニアは私だけではありませんでした。
実際、私と同じくこの看板をきっかけに入社しているエンジニアが当社には複数名います。また当社は新潟オフィスもあるのですが、同じ意図で上越新幹線の駅構内にも同様の広告を出しています。
―それで実際1年後に、本格的に転職活動を始められたんですよね。
はい。ただ、先の求人広告には連絡先の記載がなかったので、Google検索で「フラー」と調べました。すると出てきたのがフラーのWantedlyページでした。コーポレートサイトでも募集はしていましたが、Wantedlyにはメンバーの顔写真や業務内容が深堀りされているなど情報のボリュームが圧倒的であったので、転職活動は主にWantedlyで進めていきました。
ただ転職活動ははじめてでしたし、せっかくの機会なので他の企業も平行してチェックしていきました。
面接段階から何でも気軽に相談できる“雰囲気”と“人柄”が入社の決め手
――比較の際に重視したポイントについて聞かせてください。
通勤時間のほか、メンバーの人柄や社風、給与などがポイントでした。そのため候補にあがった先のトップページは、どれも雰囲気やカルチャーが一発でわかるような写真やタイトルを多く掲げている企業でしたね。
私はフラットで楽しそうな雰囲気が好みです。実際、フラーのトップページは楽しそうに微笑むメンバーの集合写真でしたし、一人ひとりのメンバーページを見ても多くの人が楽しそうな笑顔でした。
引用:フラー株式会社
――フラーさん以外で候補にあがった企業についても教えてもらえますか。
人材系サービスを中心に、ITも含め幅広いサービスを提供しているいわゆるコングロマリット企業。前の会社と同等規模のIT会社。従業員数名の機械学習スタートアップなどでした。
実際に面接を進めていくと、採用ページだけではわからなかった企業の本当のカラーや社風が見えてきました。
――具体的に、どのような社風やカラーですか。
年齢層が高い経営層や人事担当者としか面接ができない会社は戸惑いました。私としては、一緒に働くエンジニアの人柄やチームの雰囲気が知りたかったからです。直接業務を共にしない方々とやり取りしても、雰囲気はイメージできませんからね。
ほかには、たとえば私に子どもがいることがわかると「子育てをしながらフルコミットできるんですか?」と言われたときは、この会社は合わないと思いましたね。
――フラーさんの採用フローはどうでしたか。
最初のカジュアル面談で話した、採用担当者の人柄に、いきなり心をわしづかみにされましたね。Wantedlyのプロフィールに非常に笑顔が素敵なアイコンを掲載しているのですが、実際にお会いしたらまさにページそのもの。物腰が低く穏やかで優しい人柄でした。
そのような素朴で飾りっ気のない人柄を知ることで、さらに印象がよくなりました。また、スーツを持っていなかったので聞くと、「まったく問題ない。うちの社長はそもそも金髪だから」と言われたのも印象的でしたね。「襟付きが望ましいのでは」と、遠回しにスーツの着用を促された会社もあり、フラットな社風に好感を持てました。
――技術的なやり取りも含め、エンジニアの方との面接はどうでしたか。
エンジニアの方もトップページの写真と同様、皆がニコニコしていて穏やかでした。事前のコードチェックもなく、面接でのやり取りやキャッチボールを通して、私の技術レベルを測ってくれていたのも、好印象でしたね。
面接を重ねていくにつれ、フラーしかないと思うようになっていきました。ただ1つ、ネックがありました。女性エンジニアがいなかったことです。2次面接の後で聞いたのですが、最初聞いたときは、二度聞き返すほど、驚きました(笑)。(※現在は3名の女性エンジニアが在籍。)
――社内に女性エンジニアがいないのは、ボトルネックにはならなかったのですか?
男性に混じってサッカーをやっていた経験があるので、男性の中に女性が交じるのはとくに違和感を持ちませんでした。
ただ以前の会社で産休育休のタイミングと評価のタイミングがかぶってしまい、評価される機会を逃したことで昇給ができず、新卒のときからほとんど変わらなかったので給与面は気にしていました。
そのため、産休や育休も含めた入社後の評価制度については、かなり突っ込んで確認しました。すると、女性エンジニアの産休・育休に関してはこれまで事例はないけれど、ケースバイケースで真摯に対応していくとの誠意あるお言葉がいただけたので安心しました。
――誠意ある対応が好印象だったのですね。
何でも相談できる、相談するときちんと対応していただけたのはかなり好印象でしたね。
――女性エンジニアならではの転職における価値観やトレンドがありましたら、教えていただけますか。
正直、女性エンジニアが子育てをしながら最新技術のキャッチアップや勉強をするのは難しいと感じています。そのため、以前は現場最前線でバリバリ活躍していたのに、結婚、出産を機にトレンドを追う必要のない運用・保守業務に移るエンジニアが多いと感じています。
ですから保守・運用業務でスキルの高い人材を求めている企業は、女性エンジニアの採用を検討してほしいです。
――貴重なご意見をありがとうございます。筒井さんが一緒に働きたいエンジニア像についても、聞かせてもらえますか。
チームの輪を大切にできる方がいいですね。
また、技術面も含め、これまでのチームや会社とは異なる属性を持っている方が入社すると、会社がより強くなると感じています。自分ごとになりますが、自然言語処理のスキルであったり女性初のエンジニアといった要素です。実際、私が入社したことで男性社員の育休取得率がアップしたり、女性エンジニアの採用につながっているので。
運用保守領域の注力ならびに、自然言語処理を活用したサービスを手がけるのが目標
――入社後のギャップはありませんでしたか?
いい意味でのギャップはありました。まずはメンバーとの関係性ですが、年齢が近く、子育てをしている男性エンジニアも多かったんです。そのため、子育てトークですぐに馴染めました。また新しいメンバーが業務や会社に馴染めるよう、メンター・トレーナー制度があるのですが、この制度が私にはとてもよかったです。
――メンター・トレーナー制度は多くの企業で導入していると思いますが、フラーさんなりの工夫や特色があったのですか?
これも後から人事の方に聞いた話ですが、メンバーの属性や性格を配慮した上で、アサインしてくれます。実際、私の場合メンターは同い年の女性デザイナー。トレーナーは数歳上の子育て中の男性エンジニアでした。
実はそれまで私はデザインの知識が希薄だったため、メンターからは業務についても。またトレーナーからは、業務・技術的なことはもちろん、子育てを中心にプライベートなことまで。まさに2人ともから、仕事・プライベート両方に関して相談できたことは、非常に大きかったと思っています。
――あらためて、現在の業務内容ならびに、今後の目標などを聞かせてもらえますか。
現在はサーバーサイドエンジニアとして、Web案件のインフラ構築業務に携わっています。今後の目標はまずは運用・保守事業の拡大を考えています。というのもフラーは、開発フェーズでは圧倒的なスピード持っていながら、運用保守フェーズ領域が弱いと感じるからです。前の会社は同フェーズに強かったので、そのノウハウを活用することで、実現したいですね。
――そのほかの目標も聞かせてください。
フラーのエンジニア一人ひとりはとても優秀な方々ばかりです。一方でいわゆるドキュメント文化が整備されていないため、チーム、組織としてせっかくのエンジニア力を活かせていないと感じています。
こちらも前職との比較になりますが、前の会社は規模がフラーの倍近いこともあり、体制が整っていました。前の会社で得たノウハウを導入することで、チーム・組織としてさらに強くなれると考えていますし、私が貢献できればと考えています。
また私の強みであり、入社時にアピールした自然言語処理を活用したプロジェクトやサービスにも携わることができれば、と考えています。
――筒井さんがジョインしたことで、フラーの組織にも変化が起こるかもしれませんね。本日はありがとうございました。
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