企業の採用活動でミスマッチの防止やマッチング率の向上が重要視される傾向が強まっています。
採用活動のゴールは人材の入社ではなく、定着と活躍つまり戦力化であるという認識が広まっているためです。
では、人材が戦力化するかどうかを見極めるための判断基準はどのように設定すべきなのでしょうか。
そのための基準として近年注目を集めているのがカルチャーフィットです。
本記事ではカルチャーフィットが注目を集める背景やメリット、そしてカルチャーフィットを活用するためのステップについて解説します。
またカルチャーフィットした人材採用の成功事例も紹介しています。
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カルチャーフィットとは
カルチャーフィットとは「Culture = 文化」と「Fit = 適合」からなる造語で、採用活動では「企業文化への適応性」という意味で用いられます。
個人の価値観が企業の文化とマッチしているかどうか、「社風に合っているか合っていないか」と言い換えることもできます。
一方、カルチャーフィットと対になる言葉として「スキルフィット」があります。
スキルフィットは個人のスキルと企業が求めるスキルの一致度を表しており、近年まで採用活動における中心的な役割を果たしてきました。
しかし、設立したばかりで少人数のベンチャー企業と組織が確立している大企業では活躍できる人材の質が異なるように、企業の文化は事業の成長フェーズによってさまざまです。
採用活動にカルチャーフィットを取り入れると、スキルや経歴からはわからない部分について人材の適応性を測ることができます。
そこで、スキルフィットだけでなく、自社の企業文化になじめるかどうかを示すカルチャーフィットも重要視する傾向が強まっているのです。
カルチャーフィットに注目が集まる背景
ここではカルチャーフィットが注目されるようになってきた3つの背景について説明します。
中途採用の一般化
採用活動におけるカルチャーフィットの重視は、中途採用の一般化が影響を与えています。
終身雇用が当然ではなくなり転職への抵抗感が薄れるとともに、大企業でも中途採用を積極的に活用する時代になりました。
即戦力を期待される中途採用ではスキルフィットが重視されますが、一方で転職者は以前勤めていた企業にカルチャーフィットできなかったことが退社理由である場合も少なくありません。
そのため、中途採用においては早期離職を防止する観点からもカルチャーフィットしない人材を不採用とする、いわゆる「カルチャーフィット切り」も行われています。
売り手市場化
2021年8月に総務省が発表した令和3年1月1日現在の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、日本人の人口は12年連続で減少となっています。
また生産年齢人口も毎年最少の記録が続いており、国内では急速に人手不足が進みつつあります。
一方、企業側が採用活動で人材に求める要件は高度化しているため、企業のニーズに応える優秀な人材の確保が難しくなっているという現状があります。
こうした背景から採用活動におけるマッチング率の重要性が増し、カルチャーフィットへの関心が高まっているのです。
参照:【総務省】住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和3年1月1日現在)
働き方の変化
また、新型コロナウィルスの感染拡大による働き方の変化もカルチャーフィットへの注目を高める要因となっています。
リモートワークの普及によりさまざまな業務がオンライン化し、離れた場所にいる従業員同士が協力し合いながら仕事を進める機会が増加しました。
採用活動でも選考のオンライン化によって企業文化になじめるかどうかの判断が難しくなっています。
そのため、スムーズな意思の疎通を図る上でカルチャーフィットの度合いがこれまでより大きな影響を与えるようになってきたのです。
カルチャーフィットを重視した採用のメリット・デメリット
人材が企業にカルチャーフィットしていることのメリットにはどのような点を挙げることが出来るのでしょうか。
ここでは、カルチャーフィットのメリット・デメリットを解説します。
メリットその1:早期離職を防止できる
カルチャーフィットしていることのメリットとしてはまず早期離職の防止に効果がある点を挙げることができます。
入社した人材が「この会社は自分に合わない」と感じた場合には早期離職につながってしまいます。
しかし、カルチャーフィットしている人材は価値観の近い従業員とともに業務を遂行し、企業に適応するため早期離職につながりにくいのです。
またカルチャーフィットしなかった人材の退社は定着率の低下を招き採用コストを上昇させるうえ、長期的な企業の成長に影響を与えてしまいます。
そのため、カルチャーフィットは人材が企業に定着し長期間活躍するための大きな要因であるとともに、企業側にとっても成長性を保つための必要な要素なのです。
メリットその2:円滑なコミュニケーションに結びつく
カルチャーフィットしている人材は周囲と考え方や感じ方が近いため良好な人間関係を構築できます。
そのため、社内のコミュニケーションが円滑になるというメリットがあります。
カルチャーフィットしていない場合、入社した人材のモチベーションが価値観の違いから低減してしまう可能性があります。
また考え方のズレから周囲がストレスを感じ業務効率の低下につながることもあるでしょう。
カルチャーフィットによりコミュニケーションが円滑であれば、スムーズな意思の疎通や考え方の浸透が可能となるため業務の効率化にも結びつくのです。
メリットその3:生産性が高まる
カルチャーフィットしていると企業やチームと共通の価値観のもとで業務に取り組むことができます。
したがって、カルチャーフィットしている人材は主体的に行動することができるという特徴があります。
さらに企業の考え方を深く理解した上で高いモチベーションを持って業務に当たるため、早期に戦力となるのです。
こうした点からカルチャーフィットしていると生産性が高まり、企業にとっても成長に寄与する人材であると言えます。
カルチャーフィットを重視した採用のデメリット
ここまでメリットをご紹介しましたが、カルチャーフィットを活用するうえで注意しておきたいポイントもあります。
それは、カルチャーフィットが行き過ぎると企業にとって多様性の喪失を招いてしまうという点です。
同じような考え方や価値観の社員が集まってしまうと、新しい発想や社内での議論が起こりにくくなってしまいます。
変化のスピードが速い現代においては、カルチャーフィットを重視しすぎると停滞した企業文化が成長の阻害要因となる場合があるのです。
そのため、採用活動ではカルチャーフィットをひとつの指標にとどめ、社内にない新たな考え方を持った人材を獲得する姿勢を持つことも重要と言えます。
カルチャーフィットを採用に活用する4つのステップ
カルチャーフィットを採用活動で活用するためには、いくつかの準備を進めておく必要があります。
1.自社のカルチャーを明確化する
最初に必要なステップは自社のカルチャーを定義し、明確にしておくことです。
採用担当者が自社のカルチャーについてきちんと理解し説明できなければ、人材がカルチャーフィットするかどうかを客観的に判断することができないためです。
カルチャーを明文化するためには、「文化と経営」についての世界的権威であるオランダ・マーストリヒト大学名誉教授のヘールト・ホフステード博士による組織文化モデルを参考にすると良いでしょう。
博士は組織文化を「6つの独立した次元と2つの半独立の次元」と表現し、6つの独立した次元について次のようにモデル化しています。
「手段重視か、目標重視か」「内部論理か、顧客優先か」「仕事の規律は厳格か、ゆるやかか」「職場の関心は、上司か専門性か」「組織はオープンか、クローズドか」「従業員志向か、仕事志向か」
参考:【Hofstede Insights JAPAN】組織文化
2.カルチャーを考慮した採用ペルソナを設定する
自社のカルチャーを明確にしたら、次にカルチャーを考慮した採用ペルソナを設定しましょう。
ペルソナの設定とは対象となる架空の人材を想定して人物像を詳細に作り上げることです。
ターゲットが性別や学歴などの属性を中心に構成されるのに対し、ペルソナは価値観やライフスタイルなど多くの要素からきめ細かく決めていきます。
採用ペルソナの設定にあたっては、社内で活躍する社員を対象にヒアリングを実施してどのような考え方・価値観に基づいて行動しているのかを分析するとよいでしょう。
採用ペルソナの設定方法についてはこちらの記事で詳しく説明していますので、合わせてご覧ください。
【参考】採用ペルソナの簡単な作り方|新卒・中途別に徹底解説
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/persona/
3.候補者の価値観や志向性を選考時に確認する
設定したペルソナとマッチする候補者に対しては、選考段階で価値観や志向性を確認しましょう。
自社カルチャーとして明確にした項目について、同様のシーンで候補者がどのような思考や行動に至ったのかを質問するのです。
候補者が過去にどのような経験をしてきたのか、その際の意思決定に至るまでのプロセスはどのように進んだのかについてヒアリングします。
選考時の確認は面接で行うのが一般的ですが、別の手法も併用するとカルチャーフィットについて多面的な判断が可能となります。
配属先のメンバーやキーパーソンとの面談機会を設ければ採用担当者とは異なる視点から評価することができます。
また社内のイベントに参加してもらい、社員と自由に交流してもらえばカルチャーフィットするかどうかをより診断しやすくなります。
4.社内のカルチャーを発信する
明確化した自社のカルチャーは、外部に対して積極的に発信しましょう。
求職者は待遇だけでなく自分にマッチしている会社かどうかについての情報を求めています。
またカルチャーや価値観が自分に合っていると判断した場合には転職潜在層からの応募につながる可能性もあります。
自社カルチャーの発信においては、社員ひとりひとりが発信者となり社内の雰囲気や考え方を伝えることが重要です。
採用サイトやオウンドメディア、それに各種サービスを利用した自社カルチャーの発信を採用広報の柱の一つとして位置づけましょう。
Wantedlyでは企業のページやブログを簡単に作成することができ、自社のカルチャーを本格的に発信することが可能です。
カルチャーフィットを見極めるために面接で質問すべきこと
カルチャーフィットした人材を採用するためには、面接での質問内容がカギとなります。次の4項目を質問することで、候補者の価値観や志向性を見極めましょう。
1.自社のカルチャーに沿った質問
自社のカルチャーにフィットするかどうか、まず候補者の価値観・行動特性を確かめましょう。
このとき、自社のカルチャーが「失敗を恐れず、積極的に挑戦するカルチャー」だからといって、「チャレンジ精神は高いですか?」などと直接的な聞き方をするのはよくありません。合否が決まる面接の場では、誘導尋問となってしまうでしょう。
したがって以下のように、過去の実体験から候補者の価値観・行動特性を引き出すのがオススメです。
質問の例
・失敗を恐れず、積極的に挑戦するカルチャー
→「これまで一番挑戦したと思えることはどんなことですか?」・変化のスピードが早いカルチャー
→「業務のやり方を改善した経験はありますか?具体的な内容・期間を教えてください」・仕事に対する責任感を重視するカルチャー
→「リーダー経験はありますか?どんな課題があり、どのようにして解決しましたか?」
また、候補者の経験・考え方を深掘りする際は、以下の「STAR」の順に質問するとよいでしょう。価値観や行動特性と同時に、スキルや実績も見極められます。
S(状況:Situation)
これまで一番挑戦したと思えることはどんなことですか?なぜ取り組もうと思ったのですか?T(課題:Task)
目標を達成するうえで、どんな課題がありましたか?A(行動:Action)
課題を解決するために、どんな行動を取りましたか?R(成果:Result)
結果として、どのような成果が得られましたか?
2.仕事をするうえで大切にしている価値観
次に、仕事をするうえで大切にしている価値観やこだわりを聞いてみましょう。
オープンなコミュニケーションや協調性を重視するカルチャーに対して、個人の成果や自己成長を重視する人材はあまりマッチしません。
回答の仕方が限定される1の質問と違い、自由に回答できる質問のため、候補者の率直な意見を引き出せます。意外な価値観も発見できるため、ミスマッチ防止につながるでしょう。
3.成し遂げたいこと・キャリアプラン
候補者のやりたいことが、企業のミッション・経営方針と一致していることも重要です。ミッションに共感していなければ、たとえカルチャーに馴染めたとしても入社後のモチベーションが維持できず、早期離職してしまう恐れがあります。
したがって、「仕事を通して実現したいことは何か」「今後どんな仕事にチャレンジしていきたいか」など、候補者の今後の展望やキャリアプランも質問してみましょう。
4.逆質問
いくつか質問した後に、「何か質問はありますか?」と候補者からの逆質問を促すのもオススメです。
候補者は逆質問の際、企業選びで重視するポイントや興味関心の高い分野について質問する傾向があります。業務内容・社風・福利厚生・評価制度・研修制度など、あらゆるジャンルの中で候補者がもっとも知りたがっているポイントがわかれば、仕事に対する考え方や価値観の理解につながるでしょう。
カルチャーフィットした人材の採用に成功した企業事例5選
ここではカルチャーフィットした人材の採用に成功している企業の事例について紹介します。
1.株式会社ココナラ
株式会社ココナラは、採用においてカルチャーマッチを最も重要している企業です。独自の施策を行い、会社のバリューに共感するカルチャーフィットの高い人材の採用に成功しています。
- 「カルチャーブック」を制作しバリューを言語化
- ダイレクトスカウトは「個人のWill」とのマッチングを重視
- カルチャーフィットするかしないかの判断基準は「その人が人生のターニングポイントで何を選択基準にしたか」
【参考】ココナラが語る、組織が急成長してもぶれないカルチャーを築く方法|共感採用はなぜ必要か vol.01【Event Report】
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/eventreport_20210803/
2.株式会社estie
株式会社estieは不動産データプラットフォームの開発・提供を行っている企業です。
創業当時はミッションやビジョンを持たずにリファラル採用を行っていた同社。採用は順調でしたが、組織が大きくなるにつれて「社長が何を考えているのかわからない」という声があがるようになり、企業の指標が言語化されていないことが課題となっていきました。
同社は課題解決のため、ディズニーやマッキンゼー・アンド・カンパニーなど、アメリカの有名企業の手法を真似てパーパスを作成します。
これまでなんとなく抱いていた「なぜ事業を行っているのか」を言語化しました。
パーパスの発信にはWantedlyを活用。ブログ機能などでオープンに発信を開始した結果、必然的にパーパスに共感した人と面接ができるようになり、採用活動に多大な効果をもたらしました。
同社の事例ではパーパスを軸にした情報発信は大きな価値を生むことがわかります。これからの時代、パーパスの発信力は企業の採用力に大きく貢献していくことでしょう。
以下の記事は、同社社長のインタビューです。
パーパスの策定から情報発信、採用までの一連のフェーズをお話しているため、より詳しく知りたい方はご覧ください。
【参考】ミッション・ビジョンではなく、バリューとパーパスを重要指標に/株式会社estie
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/rc_nur10
3.TonTon,inc
株式会社TonTonは2013年の設立以来、不動産ビジネスを展開してきました。
同社では「人」と「繋がり」を重視しているため自社の理念に共感してくれる人の採用に取り組んでいます。
しかし、大手求人媒体への求人広告の掲載は採用単価の高さや会社理解度の低さがネックとなっていました。
そこで不動産業界だからではなく、TonTonという「会社」に「惚れて」入社する人材の採用を模索し、自社カルチャーの言語化に取り組み、読み手に刺さる表現についての試行錯誤を繰り返しました。
同社では社内に対してもカルチャーを伝えていく姿勢を心がけた結果、カルチャーフィットした人材の採用に成功しています。
【参考】共感型採用で、不動産業界のターゲットにリーチするためのWantedly活用方法
https://www.wantedly.com/customer_stories/131
4.株式会社Wiz
株式会社Wizは2017年の創業以来、「ヒト」と「企業」の課題をITで解決する企業としてIoT事業やICT事業を核に幅広いITビジネスを展開してきました。
同社では大手求人媒体を利用していたため、求人条件を元に検索し応募する求職者の多いものの理念やカルチャーに共感した人材からの応募が少ないことが課題となっていました。
そこで自社のカルチャーを積極的に発信し、カジュアルなやり取りを取り入れ、条件に頼らない募集記事を増やしたところ「一緒に働きたい」と考える求職者からの応募が増加しました。
【参考】「ヒト」重視の採用だからWantedly Adminがしっかりマッチしたhttps://www.wantedly.com/customer_stories/83
5.株式会社manaby
株式会社manabyは2016年の創業以来、独自のe-learning学習システムを展開しWeb制作やデザインなどITスキルを学ぶ機会を障害者の方々に提供する事業を展開してきました。
同社は「一人ひとりが自分らしく働ける社会の実現」を目指すソーシャルベンチャー企業として事業所を増やし採用活動を積極的に行っています。
採用にあたっては想いやビジョンの共有、そして共感をベースにしていることからカルチャーフィットを重視しています。
そのため、同社の方針や考え方、価値観に共感した人材からの応募が増加しました。
またWantedlyを活用することで応募に至らなくとも同社を認知し、ビジョンやミッションを知ってくれるという効果もあります。
共感に基づくカルチャーフィット採用が会社の規模拡大にも貢献しています。
【参考】共感に基づくカルチャーフィット採用に合っていたhttps://www.wantedly.com/customer_stories/92
まとめ
今回はカルチャーフィットについて説明しました。
カルチャーフィットしている人材は社内コミュニケーションも円滑で自律的な活躍も期待できるなど大きな戦力となることが可能です。
スキルフィットとともにカルチャーフィットをバランス良く取り入れ、マッチング率の高い採用活動を実現しましょう。