注目を集めるスタートアップの採用、組織戦略にフォーカスする「NEXT UNICORN RECRUITING」。今回お話を伺うのは、キャリアのパーソナル・トレーニングという新しい概念を生み出し、事業を伸ばし続けているポジウィル株式会社の代表取締役の金井芽衣氏。
コロナ禍で働く環境が大きく変化し、キャリアに不安を抱える人々が増加しています。その中、キャリアのパーソナル・トレーニング「POSIWILL CAREER」が注目を集め、20~30代の若手ビジネスパーソンを中心に支持を集めるサービスへと成長しています。多くの人に受け入れられたのは、ユーザーの人生と真摯に向き合い伴走する「ユーザーファースト」のサービスだから。「POSIWILL CAREER」の事業内容や採用方法の変遷についてお話を伺いました。
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スタートアップの最適な採用方法
スタートアップ企業において、採用は非常に重要なミッションです。そして、会社のフェーズによって、適切な採用手法は変わるもの。成長フェーズに合わせた採用ができるかどうかで、採用成功の確率は大きく変わってきます。
この資料では、急成長するスタートアップ企業のために、成長フェーズごとに考えるべき採用戦略、適切な手法を事例付きで紹介しています。
ポジウィル株式会社
代表取締役
金井芽衣氏1990年群馬県出身。埼玉純真短期大学で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入。キャリアカウンセリングを習得する。2013年、リクルートキャリアに新卒入社し、人材会社の法人営業(RA)として勤務。2017年に国家資格キャリアコンサルタントとして登録。同年8月にポジウィル株式会社を設立し、同社代表取締役に就任。「どう生きたいか?でキャリアをきめる。」キャリアのパーソナル・トレーニング事業「POSIWILL CAREER」(旧「ゲキサポ!」)を運営している。
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最初は社員1人。良いも悪いも言われない「無風」からのスタート
――2020年10月の資金調達とあわせてブランドリニューアルを実施し、依頼数も伸びているとお伺いしました。あらためて、詳しい事業内容を教えていただけますでしょうか。
2017年の8月に創業し2021年で4期目になります。提供しているサービスは、「どう生きたいか?でキャリアをきめる。」キャリアのパーソナル・トレーニング「POSIWILL CAREER」です。現状のキャリアに不満や不安があり、軸が定まらないユーザーに対して、専属のキャリアトレーナーが伴走し、ともに解決してキャリアのステップアップを図っていくサービスです。転職エージェントとは異なるので、就職の斡旋はせずキャリア戦略を立てていきます。
――キャリア相談で求職者がお金を支払う、HR業界では不可能と言われていたサービスを実現されたわけですが、「POSIWILL CAREER」にたどりつくまでの経緯を教えてください。
創業当初はフリーランスでの独立を考えていたのですが、仕事の取引上、法人化が必要となり株式会社化したのがはじまりです。最初は大きくするつもりもなく、社員は私1人。大学時代の同期と一緒に「ネイルサロンに行くような感覚でキャリアカウンセリングができたら」と、「ミレニティ」というサイトを立ち上げました。30分500円だったのですが、課金ユーザーはたったの1人。しかも、リクルート時代の後輩が育休明けのキャリア相談のために使ってくれただけでした。私の中で一番しんどいのは、注目もされなければ良い/悪いも言われない「無風」の状態で、2017年の年末はまさに「無風」でした。
私は「無風」の状態なのにリクルート時代の同期たちは起業して業績をどんどん伸ばしていて。正直、焦りました。また、同じタイミングでスタートアップの人たちと出会う機会が増え、成長スピードの違いに愕然としたんです。私は1年目の1期目は自分で食べていけるようになるので精一杯だったのに、他の企業は爆速成長しているわけですから。
そこでまずはTwitterでの認知拡大を狙うために、キャリアの悩みを抱えている若手社会人に向けたメッセージをツイートしはじめました。はじめは、「キャリアコーチングやキャリアカウンセリングが大事」とつぶやいてもまったく伸びなかったのですが、ある時、「キャリアの相談が大事」というツイートをしたら、かなりバズったんです。同じ意味なのにこれほど違うのかと驚きました。そこから日本人は「相談」のほうが抵抗がないのでは、と感じ、「ミレニティ」とほぼ同じサービスである「そうだんドットミー」を立ち上げました。
――コーチングやカウンセリングといった耳馴染みのない言葉よりも、「相談」という身近な言葉を使ったことによってハードルが下がったのかもしれませんね。
伝え方は非常に大切だなと実感しました。「そうだんドットミー」を立ち上げてまもなく、Twitterで10分の無料相談を実施して、2週間で100人くらいの方の話を聞いたんです。そのときに、「お金を払うからもっと相談したい」という方が2割ほどいらっしゃったこともあり、新しいサービスが生まれる可能性を感じました。しかも、相談してくださるのは東大出身で商社やメガバンクへの勤務といった、華やかなキャリアを歩んでいる方が非常に多かったんです。憧れられるような会社で働いているにも関わらず、どうしてそこまで悩んでいるのか不思議でした。大企業にいる方ほど、悩んでいることすら言えないことが多いのかなと。
無料相談で手応えを感じたので、2019年の1月に悩んでいる方たちを集めたリアルイベントを開催しました。そのイベントで相談に乗った方の軸がブレブレで、「そうだんドットミーを使ってくださいよ」と話したら、「5回使っています」と言われて。「5回使ってもらっても何も解決していないなんて」と衝撃を受け、その方に1カ月フルサポートをしてみることに。すると、これまでに40社くらい落ちていた方が、希望の1社に採用されたんです。
そのときに、少し相談するくらいじゃ根本的な部分は解決しないことに気づきました。課題を見つけたうえで解決するために伴走することが大事なのだと。そこから転職をフルサポートできる事業がやりたいと思い、翌月には「転職活動フルサポートパック」をLINE@で告知しました。すると、興味を持ってくださった方が何人かいて、有料で利用していただけることが増えていきました。それが「POSIWILL CAREER」の前身のサービス「ゲキサポ!キャリア」です。
「ゲキサポ!」のサービスをはじめるときには、「1万円でも大変なのに30万円なんて払うわけがない」と私以外の社員全員から言われましたが、すでにいくつか実績があったのと、「必ずニーズがある」という確信がありました。そこから、「そうだんドットミー」をやめて「ゲキサポ!キャリア」一本に絞ったのが2020年の9月です。
事業を伸ばしたいと思う一方で、クオリティは下げたくない
――現在では「POSIWILL CAREER」は多くの方々に支持され、トレーニングを開始するまで1、2カ月待ちだとお聞きします。現在、社員数は何人でしょうか?
社員は正社員とインターンをあわせると40人ほどです。外部トレーナーに依頼していたこともありましたが、現在は社員として採用し、内部でまかなっています。創業時の採用は、リクルート時代の後輩など、知り合いに声をかけることがほとんどでしたが、最近では「ポジウィルで働きたい」と応募してくださる方も増えていて、ありがたく感じています。Wantedlyからの応募も非常に多いです。
ニーズが高まっていると感じてはいるものの、人材がいないと回らない事業なので、もどかしい部分もあります。多くの人材企業では入社後短期間で現場に出て学んでいくケースが多いですが、弊社は現場で学ばせることはしません。入社したメンバーをきちんと育てたうえでクオリティの高いサービスを提供したいという思いがあるので、入社後、独り立ちできると判断できるまで育成してから現場に出てもらっています。人材を投下すれば業績はさらに伸ばせるし、その一方で、サービスのクオリティは絶対に下げたくないんです。
そもそも採用については、応募していただいて書類選考から入社に至るまでの採用倍率が、現在は100倍くらい。転職エージェントの方には、「大手企業よりも基準が厳しい」と言われています。
――数よりも質を重視しているのですね。採用される際に大切にしているのはどのようなことでしょうか?
共通しているのは、自分も傷ついてきた人。ある程度心の痛みを知っていて、それを乗り越えて来た人を採用しています。痛みを乗り越えていない人を採用してしまうと、「自分もしんどい思いをしたから力になりたい」と思ってくれたとしても、自分の悩みが解消していないので、キャリアに対して客観的にアドバイスができないことが多かったんです。
その反省を活かし、今は自分の悩みを克服して、成功体験として積み重ねてきた人ばかりを採用しています。また、ユーザーが気づいていないような悩みに対しても問いかけができる能力など、さまざまな要素を加味して選考しています。
――「Missionへの高い共感度」「自ら考えて行動できる機微力」「変化に対応できる柔軟性」を軸に採用を行っているそうですが、具体的にはどのような部分を見て判断されるのでしょうか?
初期の頃は「Mission」「Value」もなく、とりあえず会社の雰囲気に共感してくれそうな人を採用していました。ただ、2020年の夏に活躍してくれていたメンバーが、「同じような事業をやるから一緒にやろう」と何人かと一緒に辞めていったんです。そのときに誰を信じていいのかわからなくなり、残ったメンバー全員と1on1でじっくり話したうえで再スタートしたので、今は信じられるメンバーだけが残ってくれています。そのときに一度原点に立ち返り、「Mission」「Value」を立て直しました。現在は、ポジウィルの「Value」を理解できる、カルチャーに合った人しか採用しないと決めています。
この5つの「Value」に合っていることが第一で、そのうえでどんな人生を生きてきたか、何かをやりきった経験があるか、自分自身のコンプレックスやしんどい部分をどう捉えているかを聞くようにしています。
その点で言うと、Wantedlyを集客チャネルとして最大限活用しています。Wantedlyに掲載しているメンバーのエピソードに共感してくださる、カルチャーの近い方が応募してくださるんです。今はストーリーで共感する時代なので、これからもきちんと伝えていきたいと思っています。
早めの失敗によって会社の成長過程で起こる問題に対処できた
――前職でのキャリアがある方だと、育成する際に難しい部分はありますか?
アンラーン(脱学習)できるかできないかが大事だと思っているんです。たとえば、前職でムービーを撮っていたからと言って、それだけが強みの人は伸びないですよね。今の強みではなく、ポジウィルでの正しさを見つけていけるかどうかを重点的に見ています。
採用するときのキーワードは、「胆力」と「メタ認知」です。ここぞというときにふんばれるかどうかと、これまで経験してきたことや「自分は何なのか」を客観的に自分で分析する力があるかどうか。この2つを持っている方じゃないと伸び悩むなとは思っています。これは今のマネージャー陣と共通して持っている認識なので、採用の際のズレはあまりないです。
――今後の事業拡大に向けて、組織づくりの観点で変革された部分はありますか?
「Mission」「Value」を作ったのと同時に、制度設計を行いました。そのために、コンサルの方に入ってもらい、ここ1年で評価制度を作成しました。今はグレード(等級)や給与の決め方もすべてフェアな状態にしています。今後、規模が大きくなろうとこの制度は変わりません。
総括して言えることは、やはり面倒くさいことは早めにやることだと思います。評価制度の制定を「もっと早くやっていたら」と思うこともあります。ただ、最初からはできなかったなとも思っていて。私は失敗して気づくタイプで、痛い目を見てようやくわかった部分はあるので、難しいですね。
――失敗して学んだからこそ、時間をかけて緻密な評価制度を設計できたとも言えますよね。
そうだと思います。プロダクトや組織、採用の失敗はみんなぶつかる壁だと思います。先日、投資家に「金井さん気づくのが早かったね」と言われたんです。何が早かったかと言うと、私は地雷を踏みまくったのが早かったんです(笑)多くのスタートアップが、50〜100人くらいの規模になってから組織に問題が発覚し、人員制度を作っておけば良かったとなるのですが、先ほどもお話しした通り、私の場合は昨年の夏に大失敗をしているので、起こりうる問題が前倒しになっただけ。何をやっておけばいいかを周りの起業家の方たちに教えていただいて、早めに失敗して早めに学ぶスタンスに自然となっていました。そのため、失敗してよかったと今は思っています。
0から1を作るのが好き。自分の仕事をやりきりたい
――今後は、「POSIWILL CAREER」以外の新しい事業も考えていらっしゃるのでしょうか?
社会のありとあらゆる”不”を事業を通じて解消していける経営者になっていきたいなと考えています。不便だなと思うことや、もっとこんなことができたらいいのに、と思うことを事業化して力になれる会社でありたいなと。
個人的には、私は一つの大きな事業を作って伸ばすような起業家ではなく、数十億の事業をたくさん作るほうが向いているタイプではないかと思ってます。なので、今の事業が落ち着いたら、次の事業を仕掛けていきたいですね。
――次にどんなサービスが生まれるのか非常に楽しみです。本日はありがとうございました。
▼スタートアップが取るべき採用戦略とは?https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/su_strategy
時代の変化に伴い、採用への考え方はアップデートしていく必要があります。
以下の記事では、これからの採用に必要な基本的な考え方や、採用のトレンドについてわかりやすくまとめているので、ぜひ合わせてご覧ください。
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【採用の新常識】上手くいかない採用から脱却するために必要な考え方
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