メンバーの力を最大限に活かす。急成長を支える「バリュー重視」の組織づくり|NEXT UNICORN RECRUITING #8 |FLUX CEO永井元治氏

スタートアップのシード期は、プロダクトの拡大に応じて組織をどう変化させていくか、が今後の成長の大きなカギになってきます。合理的な戦略がなされることで、ミニマルにスタートしてもわずか数年で急成長へとつながっていきます。

注目を集めるスタートアップの経営者や人事責任者にインタビューを行い、組織づくりや採用戦略におけるヒントを探っていく本企画。8回目は株式会社FLUXのCEO永井元治氏です。創業から3年弱で従業員90名の組織に成長させ、上場の準備もしているという永井氏に、シード期から現在まで各成長フェーズにおけるプロダクトと組織の変化・拡大への取り組みを聞きました。

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スタートアップの最適な採用方法

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株式会社FLUX
代表取締役
永井元治 氏

慶応義塾大学法学部法律学科卒。米系戦略コンサルティング会社にて、大手通信キャリアの戦略立案・投資ファンドのデューデリジェンス・商社のM&A 案件などに従事。その後2018年5月に株式会社FLUXを創業。マーケティング効率化 SaaS「AutoStream」及び「siteflow」を展開している。

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未開拓の領域でのサービス開発から資金調達、そして組織拡大へ

――本日はよろしくお願いします。FLUXさんは、はじめの事業として、メディア/アプリ向けのソリューションを提供されていますが、その背景を教えてください。

日本のインターネットのマーケティング分野では、メディアはバリューチェーンにおける川下にあると感じていました。広告主がいて、大手代理店から中小代理店へ、そしてメディアという流れですね。そんな流れのなかで広告主向けのMAツールは世の中にたくさんありますが、メディアに特化したものは極めて少なかったんです。そこに可能性を感じたことがきっかけです。

――具体的にどのようなサービスを開発したのでしょうか?

これまでメディアやアプリ領域に特化したバーティカルSaaSは、ほぼ存在していませんでした。この領域に存在するペインを解決することにニーズがあると考え、ヘッダービディング技術を用いた広告収益を最大化するプロダクトを開発・提供しました。それが「FLUX Header Bidding Solution」です

その後、市場ニーズに合わせてアップデートを重ねながら大手メディアから中小メディアへと拡散していきました。サービス提供以降マーケットからの支持が着実に増え、これまで500以上の企業様にご利用いただき、継続率も99%と高い評価をいただいています。

――同業社が着目してこなかった領域で事業を拡大し、その後企業としてどのように成長していったのでしょうか?

まずは、クライアントに対してさらに幅広い価値提供をしていこうと考えました。既存メディア向けのソリューションを統合し、「AutoStream」というAll – in One Solutionへとプロダクトをアップデートさせていきました。その後、「AutoStream」のさらなるアップデートやサポート体制の強化、新たなサービスの開発を目指していくなかで、2021年3月末にシリーズAラウンドにて総額10億円の資金調達を実施。そして、今年の5月にWebサイト制作サービス「siteflow」をローンチしました。

このサービスは、サイト制作そのものは私たちが行いますが、完成後の日々の更新は、弊社が提供するノーコードツールでお客様自身が簡単にできるような仕様となっています。コストパフォーマンスが高いことも特徴であり、弊社のサービスの強みです。

資金調達、2つ目のサービスをリリースしたことで、組織自体も拡大。現在は各サービスの開発・営業・サポートを中心に、約90名のメンバーが在籍しています。

ボードメンバー4人の視点でプロダクト・組織を拡大

――創業から3年弱で90名の従業員を抱える企業に成長してきました。あらためて、創業期の体制についてお聞かせ願えますか。

私はもともとテクノロジーに興味があり、また自分で組織を作る経験をしたいと思っていました。創業前、とくにビジネスプランやメンバーなども決まっていないとき、中学校時代からの友人である平田(現CPO)と食事をしながら起業への想いを話したところ、興味を持ってくれて「一緒にやろう」となったことがきっかけです。私はコンサルティングファーム出身、平田はカカクコムでマーケティングやマネタイズを担当と、異なる分野の2人で2018年5月にスタートしました。

――その他のボードメンバーとはどのような出会いだったのでしょうか。

創業して3カ月ほどしてから、現在のボードメンバーでもある李(現CTO)と布施(現COO)が入社。李は共通の知人を介しての紹介でした。プロダクト開発ができるエンジニアを探していると知人に相談したところ、巡り合うことができたんです。彼は、父親の影響で幼少期からエンジニアリングを学んでいたそうです。ビジネスでの実務経験はなかったのですが、自分の技術を活かせる場所を探していたので、スムーズにジョインすることに。布施は私の大学時代の後輩です。

2人ともはじめからボードメンバーとして迎え入れたのではなく、お互いの適性を見るためにも「まずは一緒にやろう」と声をかけて、参画してもらいました。布施は営業とカスタマーサクセス、李はプロダクト開発とそれぞれ得意分野が違う4人でのスタートとなりました。

(左上より時計回りに)CEO 永井氏、CPO 平田氏、COO布施氏、CTO李氏)

――4人が揃ったのち、どんな戦略や流れでサービス開発を行っていきましたか。

ファーストステップとして、プロダクトが市場ニーズに合致しているかどうかを探ることに重点を置きました。プロトタイプを作り、いち早く営業をかけてお客様の声をヒアリング。アップデートを重ねながらニーズに沿ったプロダクトの開発を進めていきました。

はじめは、あえて具体的な数字目標を立てず、資金調達もしませんでした。4人の自己資本を出し合い、ユーザーニーズに合致したプロダクトになるよう、それぞれの得意分野で仕事に打ち込んでいましたね。1年ほど経つと市場からの手応えを感じ、サービスの概要が固まってきたので事業計画を作成。同時に、2億円の資金調達も実施しました。

――具体的に、どのような計画だったのでしょう。

まずは、サービスを業界で名の通ったオピニオンリーダー的な企業に使っていただけるよう、営業をかけました。トップに指示されることで、自然と多くの企業へ浸透していくだろう、と考えたからです。しかし営業活動をしていくうえで、営業マンを増やすことはしませんでした。平田と布施の2人だけで営業活動を行い、1社1社のお客様にじっくりご案内。1年ほどかけて大手を中心に30~40のメディアやアプリ運営会社との契約に至りました。大企業に導入いただいたことで、いよいよサービスの拡販フェーズへ移行していくことになります。

▼株式会社FLUXのPMF(Product Market Fit)ストーリー 紹介記事https://markezine.jp/article/detail/35845

――サービスが計画通りオピニオンリーダーに受け入れられ、拡販フェーズに向けた組織の変化を教えてください。

導入企業数が順調に増えていき、4人だけでは業務が厳しくなってきたので、新たなメンバーを2名迎え入れることにしました。CS(カスタマーサービス)人材として、1名は布施のリファラル、もう1名はエージェント経由で入社。また、プロダクトの機能強化ならびに、新しいプロダクトを開発しようとの計画がありましたので、エンジニア採用にも力を入れていきました。

――新たなプロダクトの開発やメンバーの採用戦略は、どのような流れで決めていきましたか。

私がベンチマークを立てトップダウンで提案したケース、顧客からのフィードバックをもとに布施や平田から起案するケース、李が技術的な観点からか起案するケース、3つのケースがありました。いずれの場合も4人で意見を出し合い、その中でベストだと思う施策を選択していきましたね。当時は4名しかいませんでしたから、1日中同じオフィスで全員が顔を突き合わせているので、日常のコミュニケーションから自然発生的に戦略や施策は生まれていきました。

――4人がそれぞれの分野で動いていたことで、多方向からの意見が出たのですね。具体的にどんなメンバーを何名採用したんですか。

先の調達で得た資金を原資に複数の転職サービスを利用し、半年ほどで営業・CS・エンジニアメンバーを約20名迎え入れました。さらに2020年の後半で同じく20名ほどを採用。今年に入ってからはペースがあがり、現在90名ほどの体制となっています。siteflowは顧客が増えればそれだけサポートする人材が必要ですし、AutoStreamも機能を増やすために、これからもメンバーを増やす予定です。

理想の組織づくりのために、メンバーの力を最大限レバレッジする

――短期間にそれほど多くの人材を採用されたことに驚きます。採用活動をしていくうえで工夫していたことはありますか。

まずは、採用したい職種・ポジションごとに相性のよい媒体を選択する。Wantedlyであれば、CS希望の方が多く登録されており、実際、多くのCSをWantedly経由で採用することができました。

次に専門のコンサルタントに依頼し、求人媒体を効果的に活用するサポートをお願いしたことです。募集広告のタイトルや本文の記事作成についても、コンサルタントにお任せしていました。実際、タイトルを変えることで募集が大きく伸びることがありましたし、工夫をしても応募が少ない募集は削除するなど、細かくチューニングしていきました。このあたりの施策は、ある意味SEOに近いと思います。そして私たちが担当するのはその先、面談・面接からのフローと明確に役割を分けていました。

――募集における細かな作業や運用を自分たちでやろうと思わなかったのはなぜですか?

バリューのひとつに「Leverage The Team」があります。これは社内に限らず、必要であれば社外の方にもご支援いただき、会社のグロースに貢献していこうというバリューです。そういった企業文化が大きな影響を与えていると思います。

当時はまだ採用スキル、とくに母集団を形成することに関するスキルを持つメンバーが社内にはいませんでした。であれば、外部のプロフェッショナルに頼もうという判断です。とくにシード期は、エージェントを通じた採用がまだまだ難しいフェーズでもあるので、外部のコンサルタントに媒体活用に注力いただくことは、重要な施策だと思います。

――採用におけるその他の工夫はどうですか。

リファラル採用には創業期から注力しました。実際、ボードメンバーはほぼリファラルですし、その後、媒体経由で入社するメンバーが増えるようになってからも、知人を紹介してくれたメンバーを評価するような仕組みを設け、積極的にリファラル採用を推し進めており、現在も継続しています。

また、「無理して採用しない」というのも私たちの特徴だと思います。適している人材がいなかったら、妥協して採用するのではなく、今いるメンバーで対応できる仕組みをつくればいい。このような姿勢も意識していましたね。実際、人事担当者はつい最近までいませんでした。

――これまで人事がいない中で採用活動を行っていたとは驚きです。

はい。人事が欲しいとは思っていましたが、それまで適する人材が現れなかったため、採用はしていなかったんです。2021年2月にようやく弊社の採用を任せられる鷲田を迎え入れることができました。当初鷲田はビジネスサイドでの入社予定でしたが、採用でもバリューを発揮してもらえると考え、ビジネスと採用兼任で活躍してもらっています。

――ここでもまさに先ほどのバリュー「Leverage The Team」が実践されているのですね。

同バリューに関しては、候補者の職種により面接担当者を変えることも該当します。Bizの募集であれば、布施や平田が担当。エンジニアであれば李が担当。そして最終的には必ず私が面接をすると、それぞれが該当する職種・ポジションの人材を担当することになるため、ベストマッチが起きるように工夫しています。

メンバーファーストな組織を実現するために“バリュー”を最も重視

――創業当初から採用や組織づくりにおいて、バリューをとくに重視されているようですが、その背景を教えてください。

創業当初からメンバーファーストな組織にしたい、と常に考えてきました。そのために、日々の行動規範であり会社の雰囲気を作り出すバリューの浸透に力を入れています。組織が変化するにつれ、それぞれのフェーズで規範とすべきバリューも変えてきました。

たとえば、「Be Open(常にオープンに考えを共有する)」は一度削除したものの、やはり必要だろうと再び追加。組織が複層化するにつれ、メンバー全員が思っていることを言えるような環境をつくり、コミュニケーションの活性化には不可欠と感じたからです。「Zero-based Thinking(前提を取り払って考える)」も同様です。創業当時に抱いていたスタートアップならではの、イノベーション気質を事業が安定化するフェーズの今だからこそ、あらためて忘れないようにしよう。そのような想いから加えました。

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――その他に、バリュー浸透のために工夫していることはありますか。

候補者がエントリーの際にバリューフィットするかどうか、を見極めることです。面接の際にはバリューを評価する指標を作成し、それをもとに採用を進めています。また入社前にイメージしていたバリューがズレないよう、働くメンバー全員に浸透しているかどうかを確認する工夫をしていますね。

たとえば、全メンバーに対し、上長が2週間に一度の割合で1on1ミーティングを実施。さらに1カ月もしくは3カ月に一度のペースで私ともミーティングを行い、バリューにズレがないか確認しています。評価においてもバリューを重視し、業務評価と同様の50%の割合で設定。メンバーのバリューの実践度合いを数値化し、評価しています。

――バリューが浸透することで共通の価値観が醸成され、同じバリューを持つ人が集まってきそうですね。

実際、バリューを重視することで、採用にも寄与していると感じています。求職者の多くの入社理由が「働いている人、メンバーに魅力を感じたから」と答えているからです。また、採用だけでなく離職を防ぐためことにもつながっています。創業から4期目を迎えた現在までの退職者は、正社員に関して言えば誰もいません。

サービスもメンバーもより一層充実させ大型上場を実現させたい

――本日はありがとうございました。さいごに、今後の戦略や展望についてお聞かせください。

採用に関しては、媒体でのアピールがまだまだ弱いと考えています。そのため先ほど紹介した施策も含め、より工夫をしていくことで、さらに多くの方に弊社を知ってもらい、興味を持っていただきたいと考えています。

AutoStreamに関しては、おかげさまで順調に導入企業数が増えています。さらに顧客数を伸ばす努力をするのはもちろん、お客様に対する付加価値を高めるための機能追加を行うなど、プロダクトのさらなる改善を続けていきます。siteflowに関しては、広告を中心としたマーケティングにもさらに注力していくことで、多くの方に認知してもらいたいと考えています。

事業の急拡大に合わせて、メンバーもどんどん増やしていきたいと考えています。ただ、あくまでメンバーファーストな組織であることと、妥協のない採用は続けていきたい。そのため、幅広いポジションで常に弊社のカルチャーにマッチする優秀な方々を迎え入れられるようにしたいと考えています。

――その先に目指している目標を教えてください。

まずは上場を視野に入れており、実際、準備をはじめています。ただ、とくにいつまでに、といった明確な目標は掲げていません。昨今のトレンドも鑑み、できるだけ事業が成長してから上場したいと考えています。

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