2024年8月29日に、「効果的なカジュアル面談とは~エンゲージメント向上のための採用活動~」と題したウェビナーが開催されました。このイベントでは、株式会社VOLLECT代表取締役の中島大志氏とウォンテッドリー株式会社の橋屋優理氏が登壇し、それぞれ「エンゲージメント向上のための採用・定着施策」と「効果を出すカジュアル面談の手法」をテーマに行われました。
エンゲージメント向上のための採用・定着施策
橋屋:
本日は多くの方に起こしいただき、誠にありがとうございます。ウォンテッドリー株式会社の橋屋と申します。本日はよろしくお願いいたします。私からは、入社する前から入社した後の採用やその後のエンゲージメント施策についての構造をお話しし、皆さんにイメージを持っていただければと思います。
弊社のミッションは「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとを増やす」で、皆さんが生き生きと働けるよう支援させていただいています。今日のお話にもこのミッションを反映したものをいくつか含めたいと思います。
提供サービスとしては、採用サービスの「Wantedly Visit」に加え、福利厚生、パルスサーベイ、社内報など、入社後の定着・活躍支援を応援するツールを「エンゲージメントスイート」と呼んでいます。私自身はこのエンゲージメントスイートの事業責任者を務めていますが、採用サービスと一気通貫でサービスを提供する立場ですので、今日は網羅的にお話ができればと思います。
エンゲージメント施策の仕組み
まず、エンゲージメント施策の仕組みについてお話しします。エンゲージメントとは何かという質問に対して私がお答えしているのが、「従業員と組織の矢印を揃える施策である」ということです。
矢印が揃うと、それぞれの生産性が向上します。具体的には、阿吽の呼吸で仕事ができる、意思疎通がしやすくなる、フィードバックを素直に受け入れやすくなる、組織としての優先順位の認識ずれが減る、などが挙げられます。モチベーション高く働いてもらえて、定着に繋がり、熟練度の高い社員が増えると、結果として生産性が向上するよね、という話だと考えています。
有名な調査・研究でも「エンゲージメントの向上は生産性改善や業績向上、離職率低下につながる」という報告もあり、先ほどの「従業員と組織の矢印を揃える施策である」ことを念頭に置くと、改めてエンゲージメントの重要性を共通認識として持っていただけることと思います。
究極の適材適所とフロー状態
次に、マズローの承認欲求について考えてみましょう。上位欲求を仕事で叶えるには、好きなことと得意なことで成果を出すことが大切です。好きなこと・得意なことと、それが実現できる場所を掛け合わせたものが、私たちがミッションに含めている「究極の適材適所」です。
これらを叶えられる状態になると、いわゆる「フロー状態」に入ります。能力が足りなくて仕事が難しすぎると不安がいっぱいになってしまいますし、逆に能力が高いプロフェッショナルに単純作業をさせ続けると退屈になってしまいます。適切なバランスで働いてもらうことでフロー状態になり、モチベーションが高く、矢印も揃いやすい状態になります。
このフロー状態は、単純にマッチングの話だけでなく、入社前の見極めや採用活動の設計、入社後のオンボーディング施策などで科学的に再現できることだと思っていて、その再現方法について少しお話させてください。
2つの適応~組織適応と業務適応~
フロー状態の再現、矢印を揃えるために必要な要件として、2つの適応があると考えています。1つは組織適応で、ミッション・ビジョン・バリューへの共感やチームへの順応などです。もう1つは業務適応で、ベーススキルや業界・ドメインの適合などです。
今日は、組織適応の方が業務適応以上に大事なことがある、というお話をさせていただきたいと思います。
採用フェーズでの組織適応
採用フェーズでの組織適応について、主に入社前と入社後に分けてお話しします。
組織適応を意識する際に大切なのは、共感を従業員から得ることです。共感の定義は、「会社・チームのミッションやビジョン、つまり向き合うべき方向が明確に示されており、それらを心から有意義なものであり、達成することを自分の使命と感じられる状態」です。
この共感については、採用のタイミングで80%ほど決まってしまうと言われています。
会社のミッションやビジョンへの共感が軸になるため、内発的動機の獲得は採用時が重要なタイミングとなります。採用活動では、お互いが目を見つめ合って入社していただけるような状態を作れる設計が必要です。
そのためには、給与や条件といった要素よりも先に、ミッション・ビジョン・バリューに注目してもらうことが大切です。Wantedlyが、あえて給与が見えないフォーマットでお届けしているのはこのためです。
誤解のないように申し上げますが、給与が大事ではないと言っているわけではありません。順番が大切だということです。最初のフィルターが給与であると、そこから入って無理やり自分を合わせようとしてしまいます。そうではなく、最初のフィルターとしてそれを外し、その後で給与や環境面のすり合わせをしていただくのが大切だと考えています。
共感を軸にマッチングを行うには、カジュアル面談を上手に活用することも重要です。
このあたりは後ほど中島さんの方から詳しくお話があると思いますので私もとても楽しみにしているんですが、選考前に候補者と社員がカジュアルに話をし、お互いの情報交換をする中で、私たちが候補者から見極めてもらう場としても大切な機会になるという点は組織適応という観点からも重要だと言えます。
Wantedlyの場合
共感という観点から、弊社のサービスを事例として、なぜWantedlyが今のようなプロダクト設計であるのかについて、おさらいも兼ねてお話しさせてください。
まず、会社ページを作成できる機能がありますが、ここで最もこだわっているのは、ミッション・ビジョン・バリューをまっすぐ伝えられることです。共感してもらえるかどうかが重要なので、ここを非常に大切にしています。
募集ページには、メンバーの情報を掲載しています。単に求人情報だけでなく、どのような人が働いていてどう活躍しているのかが分かるようにしています。また、先ほど述べたように、報酬をあえてこの募集ページに記載しないフォーマットになっています。
さらに、人柄や奥行きを感じていただくために、ブログ記事のような形で採用候補者に向けて情報を発信できる機能も用意しています。
ポイントは、経営メンバーの思いだけでなく、同じ立場のメンバーがどのような思いで働いているか、どのような苦労があってそれをどう乗り越えたかなどを書けることです。こういった情報が集まると、「自分も頑張れるかもしれない」「自分の思いが報われるかもしれない」といった気持ちが芽生え、応募意欲が高まっていきます。
入社後フェーズの組織適応
続いて、入社後フェーズの組織適応についてお話しします。
よくあるオンボーディングでは、入社して検証し、それぞれの会社のサービスやプロダクトの理解をし、営業ロールプレイをするなどの活動が行われます。もちろんこれらも大切ですが、多くの企業ではこうした業務適応が組織適応よりも優先される傾向があるのかなと感じています。
実際には組織適応と業務適応は順番が重要で、組織適応が満たされないと、業務適応が上積みされていかない構造になっています。要は組織適応がきちんと行われていないのはバケツに穴が開いている状態と同じで、どれだけ業務適応を頑張っても、なかなか効果が発揮されない、ということになりかねないんです。
このように組織適応は非常に重要なのですが、多くの企業で後回しにされがちで、かつ人事部門に丸投げされる傾向があります。しかし、これは事業部の管轄として取り組むべき課題です。組織適応が進まないと、能力はある人でも活躍するのに時間がかかるといった状況が生じやすくなるんです。
組織適応を進めるポイント
組織適応で意識すべき重要なポイントの1つは、同じコミュニケーション特性を帯びさせることです。例えば、Slackでのスタンプの使い方や、特定の状況で誰に相談すべきかといった「癖」が揃ってくると、既存社員と新しい社員のコミュニケーション特性が一致し、馴染みやすくなります。このため、採用の段階から、コミュニケーション特性が合うかどうかは重要な観点となります。
組織適応のための施策としては、歓迎ランチや飲み会、ミッション・ビジョン・バリューが使われるコミュニケーションの工夫などがあります。これらの施策の成功は、例えば飲み会が盛り上がったことが成功なのではなく、新しいメンバーが上司に相談しやすくなったり、発言が増えたり、既存社員と同じような言動をするようになったりすることで測ることができると言えます。
もう一つのポイントは、バリューの浸透です。
これは、人数が10名から始まって20名、30名、50名と急激に増えていくとカルチャーが揺れがちになり、難しくなっていく部分でもあります。その中でバリューやミッションをどう浸透させていくかが重要です。
弊社では、バリューの浸透のためには、コミュニケーションで使われる仕掛けづくりが大切だと考えています。
例えば、弊社のプロダクトである社内報も有効な手段の一つで、社内報として想いを絶えず発信することで組織に芯を通し、かつ共感の醸成にも有効だと考えています。
こういった施策には経営陣が積極的に参加することも大切かなと思っていて、例えば弊社の代表は社員の投稿に必ず目を通し「いいね」をしてくれますが、社員からは「代表がいいねしてくれて嬉しかった」という声もよく聞きます。このような施策を継続的に行うことで、コミュニケーションが揺れにくくなります。
バリュー浸透施策の事例
バリュー浸透施策としては、メッセージを意識させる工夫も重要です。例えば、弊社のパルスサービスには、行動規範の一つである「#movefast」というハッシュタグを送ると、自動的にSlackの専用チャンネルに転送される機能があります。このチャンネルには社内の様々な「#movefast」の事例が集まります。こういった仕組みがあると、単に言葉を覚えてもらうだけでなく、どのような行動が称賛されるのか、何が「#movefast」を体現しているのかが、行動とセットで浸透していきます。
もう一つ、弊社の取り組みの一例として、各バリューをデザイナーがポスターにして、オフィスの様々な場所に飾っています。また、社内イベントの粗品にミッション・ビジョン・バリューを刻んだものを使用するなど、日常的に目にする工夫をしています。
エンゲージメントの高い人とは、組織適応と業務適応ができ、活躍する人です。つまり、組織適応と業務適応をしっかりと行うことで、エンゲージメントの高い人材を育成することができます。
採用フェーズでは、共感を高めながらスキルも見定められるよう設計し、活躍できる人材を見出し、導いていくことが大切です。入社後は、コミュニケーションの癖を揃えることが重要で、そのための組織適応のオンボーディングができているかを確認する必要があります。また、組織適応は人事部門に丸投げになりがちですが、ぜひ現場のマネージャーを巻き込んで取り組んでいただきたいです。
コミュニケーション特性が近いかどうかをお互いに確認するという意味では、カジュアル面談は、採用においてもその後の活躍においても非常に重要な工程です。一方で、顕在化されにくく、個人の能力に依存しがちな面もあるかなと思います。そのあたりのことをぜひ今日は中島さんから勉強させていただければと思います!
効果を出すカジュアル面談の手法
中島:
橋屋さん、ありがとうございました!私のパートではカジュアル面談について担当させていただきます。私が代表を務める 株式会社VOLLECTは、企業様のダイレクトリクルーティングを支援している会社です。
ダイレクトリクルーティングは、企業が候補者に直接アプローチするスカウト型の採用方法です。候補者から応募が来るのではなく、企業側からアプローチするので、最初の接点となるカジュアル面談が非常に重要になります。
最近、色々な企業さんと仕事をする中で、よく聞く悩みがあります。スカウトメッセージの返信率が低いといった声もあるのですが、それ以上に多いのが、「カジュアル面談はできたけど、その後の採用プロセスに進んでくれない」というケースです。
カジュアル面談は、ダイレクトリクルーティングだけでなく、リファラル採用など新しい採用手法でも重要な役割を果たします。皆さんも、このカジュアル面談をどのように行うべきか気になっているのではないでしょうか。私たちの会社では長年この分野に取り組んできましたので、今日はその経験をもとにお話しさせていただきます。
株式会社VOLLECTのサービス紹介
弊社では、ダイレクトリクルーティングに関連する3つのサービスを提供しています。
1つ目は、メインサービスの「PRO SCOUT(プロスカウト)」です。これは、ダイレクトリクルーティングの導入からスカウトの配信、カジュアル面談のコンサルティングなど、採用決定まで一貫してサポートするサービスです。
2つ目は、「HRpedia」という人事向けメディアです。ダイレクトリクルーティングに関する疑問や悩みを解決するための情報を提供しています。
3つ目は、最近リリースした「ダイレクトリクルーティング検定(DRT)」です。ダイレクトリクルーティングの運用方法にはまだ確立された正解がないと考えています。私たちの考える理想的な方法を伝えるための手段として、この検定を作りました。今日のカジュアル面談についての学びを活かして、ぜひ検定にもチャレンジしていただければ嬉しいです。
これら3つのサービスに共通する目的は、「ダイレクトリクルーティングで採用の在り方をRe・デザインする100年パートナー」という私たちのパーパスを実現することです。
カジュアル面談とは?
早速、カジュアル面談をどのように行うべきか、ご説明させていただきます。
まず、カジュアル面談の理解度テストとして、カジュアル面談のポイントを5つ挙げました。この中で正しいものはどれか。実は答えは「全て間違い」です。一つずつ解説させていただきます。
カジュアル面談が始まった理由
まず、カジュアル面談が始まった理由について簡単にご説明します。これまでの求人広告や人材紹介では、企業は応募があってから面接をすればよいという考え方でした。つまり、すでにその企業に興味を持ち、積極的に転職活動をしようと考えている方々が対象でした。
しかし、その後ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、企業から個人にスカウトを送る手法が登場しました。この場合、候補者からすると、スカウトをもらってすぐに面接というのはハードルが高いと感じることがあります。まずは企業やポジションについて話を聞いてから応募を検討したいというニーズがあり、そこからカジュアル面談が始まったのだと考えています。
カジュアル面談は今や登場してから約10年ほど経ち、かなり一般的になってきたと思います。しかし、先ほど橋屋さんがおっしゃっていたように、他社がどんなカジュアル面談をしているのか、なかなか見る機会がないのが現状です。そのため、多くの企業が試行錯誤を重ねているのではないでしょうか。
カジュアル面談のよくある誤解と正しい理解
カジュアル面談に対するよくある間違いは、「企業側が」候補者を見極めてしまうことです。実際のカジュアル面談の目的は大きく2つあります。
1つ目は、「候補者に」正しくフィット感を見極めてもらうことです。これまでの面接では、候補者は「お断りされるのではないか」「こんな質問をしたら興味がないと思われるのではないか」といった不安がありました。しかし、カジュアル面談では候補者が優位な立場で率直な質問ができるので、候補者側からも正しくフィット感を見極められます。これは将来的に、入社後のエンゲージメントにも繋がる重要なポイントです。
2つ目の目的は、候補者に正式に応募してもらうことです。これは企業にとって非常に重要です。カジュアル面談の際、まだ多くの企業が候補者の見極めに重点を置いてしまっているのが現状です。
カジュアル面談を効果的に行うためには、まず社内で「正式に応募してもらうこと」が目的だという共通認識を持つことが大切です。この認識がないと、「この候補者はあまり良くなかった」といった評価が先行してしまい、せっかくのカジュアル面談の機会をうまく生かせないという事態に陥りがちです。
カジュアル面談参加者の心理属性
目的を理解していただいた上で、カジュアル面談の意義についてもう少し詳しくお話しします。
カジュアル面談を受ける方の心理状態を、転職意向度と会社への興味度という2つの軸で分類してみましょう。この分類では、A、B、C、Dの4つのグループに分けられます。
まず、Dグループの会社に対して興味がなく、転職も考えていない人たちは、そもそもカジュアル面談に参加しないので、ここでは考慮しません。重要なのは、カジュアル面談に参加する人は、何らかの形で興味があるか転職を考えているということです。
我々としては、「カジュアル面談に参加したけど、全然興味を持ってもらえなかった」という結果を、単に「その人に転職意向がなく、会社への興味もなかったから」と簡単に片付けてしまわないでほしいと思っています。そのような解釈では、企業側に何の学びもありませんよね。カジュアル面談に参加する人は、必ず何かしらの自社に興味があるか、転職を考えているはずです。。図でいうと、A、B、Cのいずれかのグループに属しているということになります。
Bグループは、すでに転職活動を考えていて、かつその会社に強い興味がある人たちです。これらの人々は正式な応募を決めている可能性が高いのですが、全体の約8%しかいないと言われています。
カジュアル面談の対象となる残りの92%の人々は、転職の選択肢を増やしたいと考えているか、将来の転職先候補として興味を持っている人たちです。これらの人々に対して、カジュアル面談を通じて会社の魅力を伝えられれば、正式な選考に参加してもらえる可能性があるのです。
この点を十分に理解することが、効果的なカジュアル面談を行う上で非常に重要です。カジュアル面談参加者の大多数が潜在的な候補者であり、適切なアプローチによって正式な応募につながる可能性があることを常に念頭に置く必要があります。
カジュアル面談の担当者の選び方
カジュアル面談の担当者の選び方について、いくつかのポイントをお話しします。理想的な担当者の特徴としては、人を惹きつける力があること、候補者と同じ専門領域の知識を持っていること、そして一定の裁量権を持っていることが挙げられます。
企業の規模によって、適切な担当者は異なります。100名以上の会社では、現場の次長や部長クラスの方々が適任かもしれません。一方、100名以下の会社では、役員やCxOクラスの方々が面談を担当するのが良いでしょう。
裁量権を持っていることが重要な理由は、カジュアル面談を通じて、当初想定していたポジションとは異なるポジションの方が候補者に適しているかもしれないと判明することがあるからです。そういった場合に、柔軟に対応できる権限を持った人物が面談を行うことで、より効果的な採用につながる可能性があります。
カジュアル面談の進め方
次に、実際のカジュアル面談の進め方についてお話しします。これはあくまで参考ですが、多くの成功している企業で見られる流れです。
まず、面談の冒頭でアイスブレイクを行います。緊張をほぐし、リラックスした雰囲気を作りましょう。
次に、面談の目的を確認します。企業がこのカジュアル面談をどういう目的で行っているのか、何を期待しているのかを明確に説明することで、候補者の理解を深め、より効果的なコミュニケーションを図ることができます。とくに「選考要素がない」という点は最初にしっかりと伝えましょう。候補者としても「選考要素がないなら、少しぶっちゃけた話も聞いてもいいのかな」という気持ちで、安心して率直な話ができる雰囲気を感じ取ることができます。
次に、すぐに会社やポジションの説明に入るのではなく、まずは候補者からのヒアリングを行います。なぜこの面談に参加したのか、今後のキャリアをどう考えているのか、現在の職場での課題は何かなどをしっかりヒアリングした上で、ポジションを説明することを大事にして欲しいと思っています。
ここで注意すべきは、単に求人票やスカウト文面に書かれていることを繰り返すのではなく、候補者の状況や希望に合わせた説明をすることです。候補者からしてみると、求人票の内容を繰り返されてもカジュアル面談に参加した意義がないと感じてしまうので、しっかりその人に合わせて説明することを何より大切にしてほしいです。
最後に、意外に重要なのが、次の選考に進むかどうかの意思確認を先延ばしにしないことです。多くの企業が、面接後に「後日メールで確認します」や「興味があればご連絡ください」といった形で、次のステップへの意思確認を候補者に委ねてしまいがちですが、実はその場で意思確認をすることが非常に大切です。
スケジュールの確認も忘れずに行いましょう。もし候補者が「検討します」と答えた場合でも、いつまでに連絡すればよいかなど、具体的な次のステップを決めておくことが重要です。これらのポイントを押さえることで、より効果的なカジュアル面談を実施し、優秀な人材の獲得につながる可能性が高まります。
カジュアル面談の惹きつけで必要な3要素
面談中は、以下の3要素を意識してほしいと思っています。
1つ目は、先ほどお伝えしたように候補者が求めるものに対してきちんと情報提供すること。
2つ目は、弱みや自社の課題も見せること。どのような会社であっても課題や弱みは必ずありますし、課題があるからこそ採用を進めているはずです。候補者としても、そういう課題であれば自分はフィットできそうだ、こういう風に貢献できそうだといった判断もしやすくなるので、強みだけでなく、しっかり課題感も伝えていただきたいです。
3つ目は、転職意向がないと言われてもすぐ諦めないこと。先ほども説明しましたが、本当に意向がなければわざわざカジュアル面談すら来ないはずです。「もう一度違う担当者と面談してみないか?」「社内で交流会を開催するから来てみないか?」と誘ってみる、FacebookやLinkedInでつながるなど、候補者と次に繋がるようなアクションを提案する姿勢がとても大事です。
面談設定率をあげるために
面談設定率についても触れておきましょう。カジュアル面談の設定に難航する会社もあると思います。そういった場合、最も効果的な解決方法の一つは、オンライン会議ツールや対面での面談ではなく、電話での短時間(15分程度)の面談を提案することです。
これにより、最初のタッチポイントを作りやすくなり、面談設定率が大幅に向上する可能性があります。
意向醸成はマスト
最後に、カジュアル面談後のフローについても触れておきます。
カジュアル面談から入社・内定受諾までのプロセス全体を通じて、候補者の意向醸成は必須です。内定段階に入ったからといって意向醸成が不要になるわけではありません。現在の求人倍率を見ても分かるように、企業側が選ぶ時代から企業が選ばれる時代に変わってきています。そのため、しっかりと意向醸成を行う必要があります。
例えばある企業では、候補者が話してみたい社員がいれば、カジュアル面談だけでなく座談会をセットしたりする工夫したり、転職活動を急いでいる場合には1日に複数の面談を設定したりするなど、候補者の状況に応じて柔軟に対応しています。このような工夫が、採用成功につながっていきます。
カジュアル面談のスキルは、今やあらゆる部門に求められる重要なスキルになってきています。カジュアル面談のスキルチェックシートを使って、自分のスキルを確認し、改善点を見つけることをお勧めします。
カジュアル面談における間違いとあるべき状態
最後に、改めてカジュアル面談における間違いとあるべき状態を振り返ってみましょう。
スカウトしているにも関わらず志望動機を聞くのは間違いで、志望動機を聞くのは正式応募後にすべきです。また、できる限り採用担当者ではなく、現場責任者や役員がカジュアル面談を実施すべきです。求人票やスカウト文面の内容をそのまま説明するのではなく、候補者のヒアリングをメインにしましょう。そして、カジュアル面談の目的は候補者を見極めることではなく、候補者がフィット感を見極めたり正式応募を獲得することです。
後日メールで相談や面談設定をするのではなく、その場で次のステップを決めましょう。そして、カジュアル面談は候補者に合わせて複数回行ったり、交流会など他の方法も活用して、継続的な関係を築くことも効果的です。
以上が、私たちが考える「効果的なカジュアル面談」のポイントになります。
橋屋:
中島さん、ありがとうございました。お話、非常に面白かったです。個人的には、諦めないことや、カジュアル面談参加者の中に、自社に全く興味がない人は存在しないというのがすごく好きでした。結局コミットなんだなと思って。カジュアル面談って名前がカジュアルだからけっこう緩くなりがちですが、ちゃんとファネル管理をするんだという意思があるかないかで全然数字が違うよなと改めて感じました。
小松:
お二人とも、ありがとうございました。早速いくつか皆さんから質問をいただいているので、質問へお答えいただければと思います。
まずは橋屋さんへの質問です。
「入社後に“コミュニケーションの癖を揃える”というお話があったが、もう少しイメージが湧くようにご説明いただけると嬉しい」というコメントです。ぜひ解説いただければと思います。
橋屋:
ありがとうございます。具体的に言うと、コミュニケーションの量と内容、そして方向性ですね。この3つが既存社員と新入社員が近づいていくイメージを持っていただければと思っています。
特に私が前職でSlack解析のプロダクトを扱っていたんですが、大学と一緒になって研究して分かったこととして、やはり活躍する社員はSlackのコミュニケーション量やコミュニケーション人数が他の活躍人材と似てくる、という傾向がありました。量と方向性のところがけっこう大事です。
具体的に言うと、1日何回発言があるかとか、ちゃんと困ったら上司に相談ができているかとか、そういったものが揃ってくるんです。コミュニケーション内容ももちろんなのですが、そこが揃ってくると場に馴染めてどんどん活躍していく、というのが研究結果として出ているんですね。
量は分かりやすくて、新入社員って全然Slackとかに出てこなかったりするんですけど、やはり活躍していく人やチームに馴染む人って、Slackのコミュニケーションもバンバン発信するんです。それがだんだん増えてくる人と増えてこない人がいるので、増えてこないなと思ったときにじゃあ手を差し伸べた方がいいかもな、というのをバランス感覚として持てるといいんじゃないかなという風に思いました。
小松:
ありがとうございました。次は中島さんへの質問です。「カジュアル面談の場でなぜ募集の意思確認をした方がいいのか?」というご質問でした。ここの部分がイメージが湧き切らなかったようなので、もう少し補足いただければと思うんですが、いかがでしょうか。
中島:
ありがとうございます。シンプルが、やはり面談が終わってしまってからだと、その後に応募していただける可能性が少なくなるからです。
カジュアル面談を受ける多くの候補者は、選考に進もうかどうか悩んでると思います。そこに対して企業側として「興味あったらでいいですよ」というようなスタンスではなくて、「是非面接に参加してくださいよ」と言うと、個人側からすると嬉しいと思うんですよね。
カジュアル面談の中でスキルややりたいことをヒアリングして、その人のことが少し分かった状態で「ぜひ選考に進んでいただきたい」と言われることって、プラスになることはあってもマイナスになることはなく、デメリットもないのかなと思うので、是非前のめりにアプローチしていただきたいと思っています。
小松:
ありがとうございます。次の質問です。カジュアル面談の進め方のところで、候補者の現実と理想のギャップを探るヒアリングについてご説明いただきましたが、実際、どこまで深く聞いてもいいのかというところでお悩みの方もいらっしゃるようです。実際の事例や「こういうところまでは聞いても
いいんじゃないか」というお考えがあればお伺いできればと思います。
中島:
そうですね。先ほどの4象限の資料があったと思うんですけれども、そこをポイントにするのがいいのかなと思っています。まずはそもそも転職活動をしているのかしていないのか、という転職活動状況を確認します。
その後に、うちの会社って知ってましたかというような話をしていただいて、会社に対する興味度を確認します。
その2軸を聞いた上で、先ほどABCDでお示ししましたが、その内のどこに所属する人なのかを特定をするための質問をしていただきたいなと思っています。
特定した上で、今転職活動し始めたばかりとか、これから本格的に始めるという方であれば、なぜ転職活動しようと思ったのかを聞いてみる。今の状況に課題や理想と現実とのギャップがないという方はカジュアル面談にそもそも参加されないと思うので、何かしらのギャップがあると思うんです。そこのギャップが何なのかというところを見つけるというところがカジュアル面談におけるヒアリングのゴールかなと思います。
小松:
ありがとうございます。続いてはテクニック的な部分のご質問です。
「カジュアル面談で双方とも良い印象を持った場合に、どのような流れで応募に持っていくのがおすすめですか」というところを質問。例えば具体的な勤務条件の提示だったりとか、履歴書とか職務経歴書をどういったタイミングでお話をすればいいのかというところで迷っているということですが、この辺りはいかがでしょう。
中島:
それであれば、選考を早める。履歴書や職務経歴書もすぐに提出していただくとか、企業側としては最初に役職の高い、決裁権があるような方を先に持っていったりとか。とにかくスピーディに選考を進めていくと良いと思いますね。
小松:
ありがとうございます。次の質問です。「企業への印象は良いが、年収面や条件面で乖離がある場合、どのように選考を進めていくべきか」というお悩みです。諦めずにアプローチして選考につながることはあるのでしょうか、ということですが、いかがでしょうか。
中島:
そうですね。ゼロではないかなとは思います。個人のご経験だったりスキル感だったりとかが、その企業にとってどのぐらい不可欠なのか、どのぐらい欲しい人材なのかによるかとは思いますね。
年収面に限らない話かと思いますが、企業側で変えられない部分が候補者にとってNGになってしまうケースというのは少なからずあると思います。ただ、先ほど橋屋さんからお話あったように、懸念は年収だけなのか?というところから少しずつ切り口を広げていく。本当に今の転職は年収だけが理由なんですかとか、現職で年収が上がらない理由は何ですかという話だったりとか。絶対的にこの年収でなきゃいけないことはあまりないのかと思うので、年収以外の部分、その根っこにある課題を見つけていくのが大事だと思いますね。
小松:
ありがとうございます。その他にもいくつかご質問はいただいていたんですが、お時間の都合で一旦本日はお答えをこの辺りにさせていただければと思います。本日はありがとうございました。
まとめ
たくさんのご質問や感想をいただき、セミナーは好評でした。これからも、採用活動やエンゲージメント向上に役立つ情報を提供できるよう努めてまいります。Wantedlyでは、そんな組織課題に寄り添うサービスとして採用のVisit、Engagement Suite(Perk、Story、Pulse)を提供しています。
ぜひお気軽に相談会にお越しください!