キャディ 小橋 cto エンジニア 組織づくり 採用

革新的なサービスが陥る「採用すべき人材像が定まらない」問題の乗り越え方|TECH TEAM BUILDERS #10 キャディCTO小橋氏

躍進するテックカンパニーのリーダーたちに、エンジニア採用や組織づくりの秘訣を聞く『TECH TEAM BUILDERS』。第10回のゲストは、金属加工業を中心に製造業における調達、見積を自動化し、モノづくりまでを一貫して届けるサービスで注目を集めるキャディのCTO小橋昭文氏です。イノベーティブなサービスゆえどのようなスキル、経験を持つエンジニアを採用すべきか悩んだこともあったという小橋氏。キャディは創業直後に直面したエンジニア採用やエンジニア組織の壁をどうやって乗り越えたのでしょうか。

▶︎採用担当者なら知っておきたいマーケティング知識を公開中|資料を無料ダウンロードする

優秀なエンジニアを採用するコツを公開

自社にマッチした優秀なエンジニアにアプローチできていますか?

開発に馴染みのない採用担当者や経営者にとって、エンジニア採用の要件を正しく設定することは容易ではありません。

そこで、優秀なエンジニアを採用するために押さえておきたいポイントを、1つの資料にまとめました。

専門知識を持たない採用担当者の方にも簡単に理解できる内容になっていますので、ぜひご覧ください。

まずは無料ダウンロード

キャディ株式会社
最高技術責任者
小橋昭文 氏

スタンフォード大学・大学院にて電子工学を専攻。世界最大の軍事企業であるロッキード・マーティン米国本社で4年超勤務。ソフトウェアエンジニアとして衛星の大量画像データ処理システムを構築し、JAXAやNASAも巻き込んでの共同開発に参画。その後、クアルコムで半導体セキュリティ強化に従事した後、アップル米国本社に就職。ハードウェア・ソフトウェアの両面からiPhone、iPad、Apple Watchの電池持続性改善などに従事した後、シニアエンジニアとしてAirpodsなど、組み込み製品の開発をリード。2017年11月に、キャディ株式会社を加藤と共同創業。
https://www.wantedly.com/id/a_kobashi_a

創業期のスタートアップにおいて、CTOの「T」はテクノロジーの頭文字とは限らない

caddi cto

——本日はよろしくお願いいたします。まずはCTOとしての役割についてお聞かせください。現在、どのような業務に携わっているのでしょう?

よく社内でネタにするんですが、CTOの「T」って、普通は「テクノロジー」の頭文字ですよね。でも弊社の場合は別の意味も含まれています。たとえば「トイレ掃除」のTだったり、電話番の意味で「テレフォン」のTだったり。最近は「突貫工事屋さん」のTでじゃないかっていわれたりしています(笑)。私の肩書きはCTOですが、果たすべき役割を突き詰めれば「ビジネスをサクセスさせること」にほかなりません。ですから、そのときどきで必要なことは何でもやるわけです。それは創業以来、いまもずっと変わりません。

——必ずしも技術戦略をリードするだけの立場ではないのですね?

はい。それこそ創業したての頃は、さっきまでアルゴリズムについて頭をひねっていたかと思ったら、募集記事を書いたり、労務作業をしたり。実はキャディの当時の就業規則をつくったのは私なんですよ。そもそもサービスを機能させるためには、実際につくったモノを動かす物流プロセスの仕組みを整えなければなりませんし、管理部門の立ち上げも必要です。

やるべきことがあり過ぎて、なかなか開発に集中出来ない大変さはありましたが、スタートアップの経営者って多かれ少なかれそいうものですよね。どれもなくてはならない仕事だし、起業しなければ経験出来ないことばかり。いまにして思うとともていい勉強になったと思っています。

「ホールプロダクト」だからこそバランスを重視

——当初、エンジニアとしての経験をお持ちだったのは小橋さんお1人だけだったと聞いています。プロダクト開発を担うエンジニア組織はどのようにスケールされたのですか?

2017年の創業時点では、エンジニアは私だけでしたが、翌年、業務委託で開発に加わってもらったのが1人目のメンバーです。その後は19年に6名、20年に14名、21年の5月時点でエンジニアは35名になりました。現在は、デザイナーやプロダクトマネージャーを含め総勢40名でサービス開発にあたっています。

キャディ エンジニア組織 年表

——開発組織のマネジメントも小橋さんがご覧になっているのでしょうか?

21年の頭までは、私がすべてのメンバーのマネジメントを受け持っていました。しかし、さすがにメンバーが40名を超えてくると目が行き届かない部分が出てきます。そのため、昨年あたりから少しずつ採用や育成、日々のマネジメント関する権限を現場に委譲するようになりました。いまはマネージャーを介して開発組織全体を統括しています。

——創業CTOとして技術的な基盤づくりだけでなく多岐にわたる職務を担っていたことがよくわかりました。これまでご自身が抱えていらしていた業務を現場に手渡すにあたって、気をつけていることがあれば教えてください。

業務の目的を言語化して伝えることですね。創業者が担当している分には、自ずと意思決定に創業の精神や願いが反映されますが、メンバーに業務を託すとなるとそうはいきません。守るべき基準がふんわりしたままだとどうしてもブレてしまいます。とくに採用は組織や開発に与える影響がとても大きいので、エンジニア採用のアクセルを踏もうと決めた2019年頃から、実際どんな人と一緒に働きたいか、きちんと言語化して共有するようになりました。

——「一緒に働きたい人」というのは、具体的にどのような人を指すのでしょうか?

私たちが一緒に働きたいのは、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションに共感してくれて、「卓越しよう」「もっと大胆に」「一丸で成す」「至誠を貫く」というバリューに沿う価値観を持っている人材です。

キャディ バリュー

——スキルについてはいかがですか? 技術力や経験などの面でとりわけ重視しているポイントがあれば教えてください。

私たちが手掛けているのは、製造業が抱える調達や見積、受発注にまつわる手間や無駄を解消するサービスです。精度の高い解析技術、使いやすいWebアプリケーション、親しみやすいUI/UXが必要不可欠です。サービスの成長段階やその時々のニーズによって採用ニーズが変わることはあります。ただどれもサービス開発には欠かせないスキル。基本的には必要な技術を持つエンジニアをバランスよく採用するようにしています。

——Webの世界とモノづくりというフィジカルな世界の両方に軸足を置くサービスを提供されるにあたって、とりわけ大切にされているポイントがあれば、ぜひ聞かせてください。

キャディでは、コアとなる原価計算や図面・受発注管理などの社内システムから、さらに発注、製造、物流、に至るまでのオペレーションやサプライチェーン構築まで、入り口から出口まですべての要素を包括した「ホールプロダクトという概念で捉えています

いくら優れたコアテクノロジーがあったとしても、それだけでは成立しません。そのため私たちは、ドメイン駆動開発と呼ばれる手法を採用し、お客様と接点を持つオペレーション部門やカスタマーサクセス部門と連携し、お客様にソフトウェアで実現すべき部分と、人手を介したほうがいい部分を切り分け、最適なバランスを模索しながらサービス開発にあたっています。

人間も社会も複雑で多様な存在です。設計図面1つ取っても、情報の欠損や間違い、曖昧さ、例外を挙げればキリがありません。でもこうした不確実性を理由に、自社の都合に寄せた解決策しか示さないのも違うでしょうし、人海戦術で頑張ることを前提にしていたら、製造業の抜本的な変革は望めません。テクノロジーで効率を追求しつつ、サービス全体でバランスを取ることを心がけています。

可能性を感じたら無邪気に助けを求め、必要な採用要件を明確化

キャディ cto 小橋

——創業間もないスタートアップにとって、エンジニア採用は悩みの種です。なかなかうまくいかないという話をよく耳にします。御社の場合はいかがでしたか?

初期の頃、一番難しかったのは必要な人材の定義することでした。何しろつくりたいのは前例がないサービスです。当然ながら参考にすべきお手本は何なのかも明確ではありません。三次元の設計データから形状や素材を読み取り、加工工程を解析し見積を算出するサービスをつくるなら、最初に採用すべきなのは、有名CADソフトメーカーの開発経験者かも知れませんし、製造業で金属加工を熟知している人かも知れません。

当時はまだその判断材料を持っておらず、確信を持って「こんな人を採用すべきだ」とは、なかなかいい切れませんでした。技術的には出来るだろうという見込みはあっても、採用すべき人材のイメージを掴むまでが非常に難しかったんです。

——イノベーティブなサービスを開発するスタートアップに共通する悩みかも知れませんね。具体的なイメージがつき難い状況のなか、どうやって技術的な課題を解決してくれるエンジニアを集められたのでしょうか?

少しでも状況を前に進められそうな人と出会ったら、無茶振りなのは承知の上で、無邪気に助けを求めました。こちらの無茶な申し出を快く受け止めてくださった方のなかには、業務委託や正社員として仲間に加わっていただいた方が何人もいます。こうした方々と一緒にPDCAのサイクルを回し、いま、そしてこれから必要になるスキルや能力からエンジニア像を割り出し採用活動に活かしていきました。

——ご苦労されて採用されたエンジニアは、現在どのような課題と向き合っているのですか?

当初、私たちは三次元の設計データから見積を自動で行うサービスの開発からスタートしました。しかし一部の大手製造業を除くと、多くの製造現場では三面図と言われる二次元の設計データを印刷したものが数多く使われています。とくに多品種少量生産を主体とする現場ではこの傾向が顕著です。そこで2020年の前半から新たな試みとして、二次元の設計データと向き合いはじめました。二次元の設計図面には、これまで活用されてこなかった有益な情報がたくさん詰まっています。この情報を知的財産として活用出来ないか、技術開発を含めその可能性を探っているところです。

銀の弾丸は存在しない。採用というよりも「仲間探し」の精神で

キャディ cto 小橋

——優秀なエンジニアがますます必要になりそうですね。

はい。エンジニアといってもその志向やモチベーションの源泉はさまざまです。熟慮に熟慮を重ね、一分の隙もないアルゴリズムを生み出すことに喜びを感じる人もいれば、お客様に近いところでサービス開発に携わりたい方もいるでしょう。すべての希望に応えることが難しいかも知れませんが、極力皆さんの希望沿う仕事を提供しながら、個人の強みが生かせる環境、新しい技術に挑戦しやすい環境を整えていければと思っています。

——開発組織をスケールさせるにあたって、工夫されていることはありますか? もしあれば教えてください。

チームやプロジェクトが増えると、どうしても「車輪の再発明」が行われてしまいます。こうした開発リソースの無駄をなくすため、近々、開発の共通基盤を担う「プラットフォームチーム」を立ち上げる予定です。

もう1つ日常的な工夫で申し上げると、週に一度開かれる開発定例での情報共有には力を入れています。単に情報を伝えるだけでなく、なるべくエンジニアの印象に残るようなユニークな話題を集め、今後取り組むべき開発の方向性やお客様の動向・事例を共有するようにしています。大切なのは、伝えることよりも理解してもらうこと。ですから外国籍のエンジニアに対しては、なるべく情報を英訳して伝えるようにしています。情報開示を積極的に行うのは、エンジニアの内的な動機付けを促すため。それがエンジニアの成長、ひいては組織の強さにもつながると考えているからです。

——さいごに、エンジニア採用や開発組織づくりで悩んでいるスタートアップの皆さんにエールをお願いします。

エンジニアの採用はサービス開発の重要な要素です。ですから、人材を採用する時は、いつも一緒に事業をつくる「仲間探し」だと思って向き合っていますまずは自分たちが何者であり、何を目指していて、どんな人と一緒に事を成し遂げたいのか、ギブファーストの精神で積極的に伝えるべきでしょうね。

キャディの場合、創業当初からWantedlyを採用広報の手段として活用させてもらっています。事業への理解が深いエンジニアを集まるからです。とはいえ、開発組織づくりも採用も、すべてを一発で貫く「銀の弾丸」はありません。大きな壁にぶつかっても挫折せずにやり続けるのは本当に大変なことですが、何にせよ、誠実かつ、しぶとくやり続けることが大事なんじゃないかなって思いますね。

キャディ cto 小橋 エンジニア採用

<小橋氏推奨。シード期、アーリー期の技術責任者にお勧めする情報源>

「ビジョナリー・カンパニー」(ジム・コリンズ 著)

 

エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング
(広木 大地 著)

Wantedlyのサービス資料を見る
タイトルとURLをコピーしました