離職率の高さに悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。離職率が高いのは、従業員エンゲージメント(従業員の企業に対する愛着心)が低いのが原因かもしれません。
従業員エンゲージメントを向上させるには、さまざまな角度から施策を行う必要があります。今回は、従業員エンゲージメントを向上させる施策について解説します。
▶︎従業員エンゲージメント向上にきく福利厚生!Perkとは?
従業員エンゲージメントが低い理由
従業員エンゲージメントを向上させるためには、まず従業員エンゲージメントが低い理由について考えなければなりません。従業員エンゲージメントが低い理由としては、主に以下の3つが考えられます。
- 自分の仕事が役に立っている実感がない
- 企業独自のルールが厳しい
- 会社のビジョンが浸透していない
それぞれひとつずつ説明します。
自分の仕事が役に立っている実感がない
企業が大きくなると、仕事が細分化されて営業担当や上層部といった一部の方しか顧客に会えない状態になります。その状態では従業員は顧客の喜んでいる姿や感謝している様子などをイメージしづらくなり、自分の仕事が役に立っている実感を得るのが難しくなります。
その結果、仕事に対するモチベーションを維持しにくくなり、従業員エンゲージメントの低下につながってしまうのです。
企業独自のルールが厳しい
企業が独自に設けているルールが従業員エンゲージメントを下げる原因になっている場合があります。代表的な例として「副業禁止」というルールがあります。
従業員によっては「もっと収入を増やしたい」「自分の好きなことでお金を稼ぎたい」と考えている方もいるでしょう。副業が禁止されてしまうと、それらを実現するのが難しくなるため、不満が溜まり従業員エンゲージメントが下がる要因となるのです。
今まで当たり前だと思っていたルールを従業員が不満に思っている可能性があることは理解しておきましょう。すべての従業員が納得できるルールを制定するのは難しいですが、適宜見直しを行う必要があります。
企業のビジョンが浸透していない
パーソル総合研究所が2023年に行ったアンケートによると、企業理念について内容を十分に理解している人の割合は41.8%でした。つまり、従業員の2人に1人が企業のビジョンを理解していないことになります。
企業のビジョンを従業員が理解していないと、企業が進みたい方向と従業員の考え方にズレが生じやすくなり、エンゲージメントが下がる要因となります。
企業のビジョンは従業員に徹底して周知しなければいけません。わかりやすく心に響く企業のビジョンがあれば、自然と従業員が内容について理解して、仕事の意義も感じてくれるでしょう。ただ周知するだけでなく、企業のビジョンの内容について見直すことも検討してみてください。
出典:企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査(パーソル総合研究所)
従業員エンゲージメントを高めるメリット
従業員エンゲージメントを高めるメリットは、下記のとおりです。
- 企業の成長や利益につながる
- 従業員の定着率が上がる
- 企業への対外的な信用が高まる
それぞれ詳しく解説します。
企業の成長や利益につながる
エンゲージメントの高い従業員は、仕事に対してより積極的になるため、企業の課題や問題を自発的に見つけて解決してくれます。今までになかったような提案をしてくれ、そこから新たな利益が生まれる可能性もあります。
仕事をやらされている状態ではなく、自分から仕事をしたいと思ってくれる従業員が増えると組織全体が活発になるため、企業の成長や利益の拡大にもつながるでしょう。
従業員の定着率が上がる
エンゲージメントの高い従業員は、自社に対する不満が少なく、意欲的に仕事に取り組んでくれる傾向にあります。従業員自身が自発的に企業に所属して働く価値を見出してくれるため、離職する可能性が低く、定着率の向上が期待できるのです。
実際にモチベーションエンジニアリング研究所が行った研究によると、エンゲージメントスコア(エンゲージメントを数値化したもの)が高い組織ほど、退職率が下がる傾向にあることがわかっています。
従業員の定着率が上がれば、従業員の採用や教育にかかるコストの削減も期待できます。先ほど紹介した企業の成長や利益を高めるうえでも、離職率を下げて経験とスキルが豊富な従業員に働いてもらうことは重要です。
出典:「エンゲージメントと企業業績に関する研究結果を公開」(リンクアンドモチベーション)
企業への対外的な信用が高まる
エンゲージメントが向上すると企業はより成長して利益を生み出せます。質の高い商品やサービスを提供すると、顧客からの信用や評価は高まります。企業からの信用も高まるため、新たな取引先との契約につながりやすくなるのです。
働きやすい企業としてイメージが定着すると、求職者が魅力を感じやすいです。今までよりも優秀な人材を獲得できる可能性も高まるでしょう。
従業員エンゲージメント向上までの流れ
従業員エンゲージメントを向上させる流れは以下のとおりです。
- 従業員エンゲージメントを定義する
- 現状の課題を洗い出す
- 従業員エンゲージメント施策を策定する
- 施策の効果を検証・改善する
それぞれ詳しく解説します。
従業員エンゲージメントを定義する
まずは具体的に従業員エンゲージメントを定義する必要があります。従業員がどのような状態になれば、従業員エンゲージメントが高いといえるかを考えましょう。
エンゲージメントの定義付けの例として、下記のような内容が考えられます。
- 会社から与えられた目標に対して前向きになっている状態
- 自社で働くことを誇りに思っており、周りにも進めたいと感じている状態
- 仕事に必要なスキルを自発的に伸ばしたいと思っている状態
企業ごとに理想としている組織の状態は異なるでしょう。企業がどのような状態になったら理想的かイメージして、従業員エンゲージメントの定義付けを行ってください。
現状の課題を洗い出す
自社がどのような課題を抱えているかを明らかにしましょう。例えば、離職率の高さは企業が抱えている課題のひとつです。
現状の課題を明らかにしたら、エンゲージメントサーベイ(エンゲージメントの調査)を行いましょう。エンゲージメントサーベイは従業員に対して質問を行い、回答をスコア化してエンゲージメントを測定する方法です。
エンゲージメントサーベイを実施するためのツールを提供している企業は数多くあるため、ぜひ利用してみてください。
従業員エンゲージメント施策を策定する
従業員エンゲージメントの測定を行ったら、エンゲージメントを向上させるための施策を策定しましょう。重要なのはひとつの施策だけを実施するのではなく、複数の施策に取り組むことです。
ひとつの施策を実施しただけでは効果が得られない可能性があるため、複数の施策と同時並行で実施していきましょう。
従業員エンゲージメントを向上させるための施策は、長期的に取り組むことも大切です。施策を短期間実施しただけだと、一時的に従業員エンゲージメントが向上することがあっても、企業全体の風土は変わりません。企業全体の風土が定着するまで、根気強く施策を行い続けましょう。
▶︎従業員エンゲージメント向上にきく福利厚生!Perkとは?
施策の効果を検証・改善する
施策を実施したら効果測定を行います。施策の内容にどのような方法で効果の検証を行うかも含めておきましょう。エンゲージメントサーベイを効果測定に活用するケースも多いです。
効果測定の結果、エンゲージメントの向上や改善が見られなかった場合は、施策の内容を修正する必要があります。実施した施策のどういった点が問題だったのかを検証し、新しい施策の策定に反映させましょう。
エンゲージメントが改善するまで「施策の策定→効果測定→施策内容の修正」というプロセスを繰り返し行います。時間はかかるかもしれませんが、徐々に効果的な施策を策定できるようになるため、エンゲージメントも改善していくでしょう。
従業員エンゲージメントを向上させるための施策
従業員エンゲージメントを向上させるための施策としておすすめなのは下記の6つです。
- 企業の目標やビジョンの共有
- 報酬・福利厚生の見直し
- 人事評価制度の見直し
- 従業員が学べる環境の構築
- ワークライフバランスの改善
- コミュニケーションの活性化
企業によって抱えている課題は違うため、エンゲージメント改善に効果がある施策も異なります。数多くの施策を考えておき、どれが効果あるのか検証していくことが重要です。
企業の目標やビジョンの共有
企業の目標やビジョンが伝わっていないと、従業員のエンゲージメントは低下しやすくなります。入社時に企業理念について説明するケースが多いと思いますが、仕事をしていく中で忘れてしまう場合もあります。
そのため、定期的に企業の目標やビジョンを共有する機会を設けることが大事です。例えば、1on1ミーティングを導入したり、チーム会を開いたりすることがあげられます。
従業員1人ひとりがどのような考えで仕事に取り組んでいるのか、仕事において何を大切にしているのかなどをリサーチする場としても効果が期待できます。
報酬・福利厚生の見直し
競合他社と比べて報酬が少なかったり、福利厚生が乏しかったりすると、従業員エンゲージメントは下がりやすいです。従業員エンゲージメントを改善するためには、少なくとも競合と同じくらい魅力的に思える報酬を支払ったり、福利厚生制度を整えたりする必要があります。
福利厚生制度を見直す際は、従業員のニーズに沿っているかどうかを第一に考えましょう。例えば、福利厚生制度の一環として社員旅行を実施したとします。会社の仲間と出かけるのが楽しい人にとっては、嬉しい福利厚生制度となるでしょう。しかし、自分の時間を大事にしたい従業員にとってはエンゲージメントを下げる要因となってしまいます。
福利厚生を見直す際は従業員に対してリサーチを行い、どのような内容の制度があれば嬉しいか確認しましょう。
Wantedlyの提供する福利厚生「Perk」
多様な属性の従業員が集まる企業の福利厚生の導入には多くのリソースがかかりがちです。そんな課題を解決するためには福利厚生のアウトソーシング化。代行サービスを利用することは有効な手段となります。
福利厚生サービス「Perk」は、各企業に代わって充実した福利厚生を提供するサービスです。ライフスタイル・グルメ・子育て・ファッション・旅行・など豊富な福利厚生メニューを初期費用無料、おひとり様月額350円〜ご利用いただけます。
人事評価制度の見直し
従業員は上司から正当に評価されていないと感じると、仕事へのモチベーションを維持するのが難しくなります。従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員が納得できる人事評価制度を設けることが欠かせません。
上司だけではなく、さまざまな社員から評価してもらえるような仕組みを設けたり、社内で優秀な成績を残している社員を基準として評価したり(コンピテンシー評価)することで納得感のある人事評価ができます。
マネジメント力の向上
上司のマネジメント能力の低さが従業員エンゲージメントの低下につながっているかもしれません。従業員は自身のスキルが向上したり、仕事で達成感を得られたりすると、エンゲージメントが向上します。その状況を作るためには、上司のマネジメント能力の向上が欠かせません。
上司を育成するためのプログラムを導入したり、管理者向けの研修を実施したりしてマネジメント能力の向上を目指しましょう。
従業員が学べる環境の構築
従業員は自身のスキルが向上すると、満足感や充実感を得られます。従業員のスキルを高めるためには、従業員が自発的に学べる環境を構築する必要があります。
書籍を提供したりオンライン研修を導入したりして、学びたい意欲のある従業員がよりスキルを伸ばせるようにしましょう。研修の内容は従業員が抱えている課題や希望に沿ったものにすると、さらに効果が高まります。従業員に対してリサーチを行うのも忘れないようにしましょう。
メンター制度を設けて、知識やスキルのある先輩がメンタル面や知識面でのサポートを行うのも効果的です。OJT制度を設けて実務を行いながらスキルを伸ばせるような環境を構築するのもおすすめです。
ワークライフバランスの改善
従業員エンゲージメントは仕事に対する満足感や充実感だけでなく、生活面にも大きく影響します。仕事の内容が面白く、魅力的なものだったとしても、残業時間が多くプライベートの時間を確保できなければ、モチベーションを維持するのは難しいでしょう。
残業時間が長くなりすぎると、労働基準法に違反してしまう可能性もあります。残業時間を管理するのはもちろん、従業員1人当たりの適切な業務量を把握して、過度な仕事を任せないように配慮する必要があります。
残業時間は短くても、仕事に対するストレスが溜まっているかもしれません。ストレスチェックを実施して、従業員の業務の適性を判断することも大切です。
産業医を設置して従業員の健康や心理的安全を確保するのもおすすめです。企業によっては形式上のストレスチェックや産業医の設置を行うだけになってしまい、エンゲージメントの向上につながらない場合があるため注意しましょう。
コミュニケーションの活性化
従業員エンゲージメントを向上させるためには、上司と部下、従業員同士のコミュニケーションを活性化することが重要です。業務についての相談だけでなく、プライベートについても話し合えるような人間関係を構築できれば、従業員エンゲージメントは大幅に向上するでしょう。
コミュニケーションを活性化するためには、気軽に会話できるようなイベントが欠かせません。1on1ミーティングを行って定期的な対話を行ったり、ランチや社内イベントといった交流を深める企画を実施したりするのがおすすめです。
まとめ
従業員エンゲージメントを向上させる施策には数多くの種類があります。企業によって抱えている課題は異なるため、どの施策を実施すればエンゲージメントが改善できるかはわかりません。
施策を実施した後は効果測定を行い、改善が見られなければ別の施策を試すことが重要です。エンゲージメントを改善するまでに時間がかかるかもしれませんが、根気強く施策を行っていけば徐々に良い状態へと変化していくでしょう。