近年、福利厚生のひとつである社会保険料の適用範囲が拡大しており、2024年10月にも新たな拡大計画が実施される予定です。これを機に、「そもそも福利厚生や社会保険のことをしっかり理解していないかもしれない」と感じたご担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は福利厚生の基本的な仕組みと、社会保険をはじめとする必ず導入しなければならない福利厚生の種類や仕組み、運用時の注意点などを解説します。社会保険について理解を深めたい方は、ぜひお役立てください。
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福利厚生とは?必要性も解説
福利厚生担当者になった場合、まずは福利厚生の構造や必要性を理解する必要があります。ここでは福利厚生全体の目的や具体的な内容、充実させるべき理由を解説します。
そもそも福利厚生とは
福利厚生とは、企業が賃金や賞与とは別に従業員に対して提供する保障制度のことです。福利厚生には以下の3つの目的があります。
・従業員の生活を安定させる
・安心して働ける労働条件や環境を整備する
・従業員とその家族の福祉を向上させる
福利厚生には、法律により企業に義務づけられている法定福利厚生と企業が任意に設けている法定外福利厚生のふたつがあります。
具体的な福利厚生の内容については、以下のとおりです。
- 法定福利厚生 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 子ども、子育て拠出金
- 法定外福利厚生 住宅手当
- フレックスタイム制
- 健康診断
- 交通費の補助
- 書籍代の補助
- 財形貯蓄制度
- 社員食堂
- 社内活動およびサークル活動
法定外福利厚生は、企業側が自由に内容を決めることができるため、自社らしい個性的な福利厚生を設けることもできます。
企業が福利厚生を充実させる必要性
福利厚生の導入には多くの費用がかかるため、最低限の内容だけで済ませたいと考えている方もいるかもしれません。しかし、企業が福利厚生を充実させると、以下のようなメリットがあります。
・従業員の生産性を高めることができる
・求職者の増加および従業員の定着につながる
福利厚生の充実により、従業員はオン・オフがしっかりしたライフスタイルを実現できます。この働き方によってリフレッシュする時間を確保することができ、仕事で抱えたストレスや疲労も解消することができます。
場合によっては従業員の労働時間は減ってしまいますが、しっかり体と心を休めることで仕事に対する集中力が高くなり、モチベーションもアップするため、結果的に生産性が向上しやすくなるのです。
また、もうひとつのメリットとして求職者の増加や従業員の定着率アップがあります。福利厚生を企業選びの基準としている方へのアピールになるため、求職者を集めやすくなります。昨今人手不足に悩んでいる企業が多いなかで、より優秀な人材を集めることができるのです。
さらに、従業員は働きやすい環境を提供してくれる会社に対して満足度が向上するため、離職率も大きく下がる可能性があります。
福利厚生にはこのような費用対効果の高いメリットがあるため、売上アップやブランドイメージアップの手段として導入する意義があります。
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法律で義務付けられた「法定福利厚生」
ここからは導入が義務付けられている福利厚生に焦点を当てて解説します。
法定福利厚生とは、法律により必ず実施しなければならない制度です。例えば、健康保険は健康保険法、年次有給休暇は労働基準法第39条で定められています。
求人情報でよく目にする「社会保険完備」「社保完備」は、法定福利厚生のひとつです。
法定福利厚生は、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険、子ども・子育て拠出金の6種類があります。
このうち雇用保険と労災保険を労働保険、健康保険、厚生年金保険、介護保険と労災保険を合わせて社会保険と呼ぶこともあるので覚えておきましょう。
- 労働保険 雇用保険
- 労災保険
- 社会保険 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 労災保険
ここからは、それぞれの法定福利厚生について順番に解説します。
健康保険
健康保険とは、従業員やその家族が病気やケガなどが原因で治療を受けた際に、治療費の給付や手当金を支給する制度です。
健康保険料は事業主と従業員が半分ずつ折半します。従業員分の健康保険料は、毎月の給料から天引きされます。
厚生年金保険
厚生年金保険とは、会社で働く従業員が加入するもので老後に備えるための公的年金制度です。1週間の所定労働時間や1ヶ月の所定労働日数がフルタイムで働く従業員の4分の3以上ある方が対象となります。
正社員だけでなく、パートやアルバイトも条件を満たすと厚生年金保険への加入義務があるので、必ず対象者に漏れがないか確認しておきましょう。厚生年金保険も従業員と企業で費用を折半します。
介護保険
介護保険とは、健康保険加入者のうち40歳以上の方が加入する保険のことです。介護保険の目的は介護が必要となった高齢者やその家族を皆で支えていくことです。介護保険料についても従業員と会社が折半で費用を負担します。
雇用保険
雇用保険とは、従業員が失業した場合の保険給付や再就職を支援するための制度です。1週間に20時間以上働いていて31日以上継続して雇用する見込みのある従業員に加入義務があります。
令和5年度の雇用保険料率は、労働者負担が0.6%、事業主負担が0.7%と決まっています。雇用保険の負担割合は、毎年変わる可能性があるので注意が必要です。
労災保険
労災保険は、業務中に病気やケガをした従業員に一定の費用を給付する制度のことです。
労災保険料については、会社側が全額負担しなければなりません。すべての従業員に加入義務があります。
子ども・子育て拠出金
子ども・子育て拠出金は企業が納める税金で、主に児童手当や子育て支援事業などのために当てられます。この税金は結婚や子どもの有無にかかわらず、厚生年金加入者全員が対象になります。
令和5年4月からの子ども・子育て拠出金率は、0.36%です。
法定福利厚生についてはこちらの記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
「法定福利厚生とは?法定外福利厚生との違いや種類、費用を紹介」
社会保険の仕組み
社会保険は、企業が労働者の給与から一定の割合を保険料として支払う仕組みです。保険料は、企業が従業員の給与から毎月天引きします。
社会保険料の会社負担は給与の約15〜16%です。各保険によって、会社と従業員の負担割合は変わるので注意しましょう。
保険 負担割合
健康保険料・厚生年金保険料 会社と従業員で50%ずつ
雇用保険料 会社が多く負担
労災保険料 全額会社が負担
社会保険に加入できる条件
社会保険は全員に加入する義務があるわけではなく、雇用契約を結んだ従業員のみが対象となります。
さらに、以下の条件を満たした従業員のみが加入できます。
・企業側または個人事業所で従業員を常時5人以上雇用している
・週の所定労働時間および月の所定労働時間が正社員の4分の3以上
また、パートやアルバイトなどの短期労働者(学生以外)についても以下の条件を満たすと、加入が義務づけられます。
- 常時100人超の従業員がいる
- 1週間当たりの所定労働時間が20時間以上
- 2ヶ月を超えて雇用される見込みがある
- 月々の給与が8万8,000円以上
正社員でなくとも条件を満たせば、社会保険に加入しなければならないことを理解しておきましょう。
社会保険の対象となる人
以下のケースに該当する方は、社会保険の対象となります。
- 正社員や法人の代表者、試用期間中の社員などである
- 中学卒業後15歳以上からの労働者である
- 未成年であっても労働者であれば社会保険の対象となるので注意が必要です。
社会保険で従業員が得られるメリット
ここでは社会保険によって、従業員が得られるメリットについて紹介します。
保険料の半分は会社が負担
先述したとおり、健康保険料と厚生年金保険料については、企業側が保険料のうち50%を負担します。保険料を全額支払わなくても、病気やケガの治療費、老後へ備えることができます。
扶養家族も対象
健康保険は、保険料を支払った本人だけでなく、扶養家族(配偶者や子ども)の治療費なども給付される制度です。
また、扶養控除が適用されることで、税金を抑えることができます。社会保険があることで、従業員は安心して働きやすくなります。
社会保険を運用するときに把握しておきたいこと
社会保険は導入が義務付けられているものの、会社で社会保険を運用する際、企業側には注意点やデメリットもあります。
高額な保険料負担が伴う
従業員にとってはメリットの多い社会保険ですが、会社側の立場で考えると高額な保険料の負担が必要です。
特に従業員の数が多ければ、その分保険料負担が増えます。また、個人事業主が法人化した場合も社会保険へ強制加入となる場合があるので、事業が軌道に乗るまでは負担が重くのしかかります。
定期的に保険料の見直しが必要である
社会保険料は原則1年に1度、場合によってはそれ以上の見直しが義務付けられているため、その作業に労力を割かなければなりません。
昇給や役員手当の追加など、従業員の報酬は一定ではありません。社会保険料は報酬によって変動するため、見直しをする必要があるのです。
また、社会保険料改定のタイミングや方法も法律で定められているため、それに則って行います。
万一適正な改定を行わず、最悪の事態となった場合は「最大で過去2年間遡って保険料を徴収」、「6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」が課せられる可能性があるため、細心の注意が必要です。
まとめ
福利厚生には法律により義務化されている法定福利厚生と会社が独自に導入している法定外福利厚生の2種類があります。社会保険は法定福利厚生に該当し、導入が義務化されている福利厚生であるため、内容や仕組みについては必ず理解しておくべきです。
高額な費用負担や定期的な保険料の改定など、企業側としてはデメリットもありますが、従業員が安心して働くために必要最低限な福利厚生であるため、法令に従ってしっかりと運用しましょう。