多くの企業が、内定を出しても入社前に辞退されてしまう課題に頭を悩ませています。
人口減少が進み採用環境が厳しくなる中で、企業はどうすれば内定者に自社を選んでもらえるのでしょうか。内定者に入社を促すための働きかけが「クロージング」です。
本記事ではクロージングの目的や新卒採用と中途採用の違い、それに押さえておくべきポイントについて解説します。また、無理なクロージングをせずに採用を成功させるための手法についても説明しています。
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採用に役立つ「マーケティング」の考え方とは
これからの採用に欠かせない、マーケティングの基本的な考え方をご存知ですか?
求職者が求める価値観が多様化し、優秀な人材層の獲得競争が激化する現代において、自社に最適な人材を採用するためには「マーケティング」の視点が欠かせません。
そこで、採用担当者なら知っておきたいマーケティングの基本的な考え方を、1つの資料にまとめました。
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採用活動におけるクロージングとは
クロージングとは、採用活動において企業が候補者に内定を出してから入社までのタイミングで実施するフォロー活動を指します。
企業が候補者に対して内定を出しても、内定者側の入社意思が固まっているとは限りません。求職者は複数の企業に応募するのが一般的だからです。
そのため、自社に魅力を感じていたとしても、より魅力的な他社から内定が出れば辞退されてしまう可能性があります。また、もともと自社に対して十分に魅力を感じていないというケースもあるでしょう。
厚生労働省によると、令和4年度の平均有効求人倍率は1.31倍で、前年度の1.16倍を0.15上回っています。有効求人倍率1.31倍とは、あらゆる求職者がひとりあたり1.31社から内定が出る状態です。
優秀な人材であればさらに多くの企業から内定を獲得します。こうした状況が、クロージングの重要性を高めています。
引用:【厚生労働省】一般職業紹介状況(令和5年3月分及び令和4年度分)について
クロージングの目的
クロージングの最終的な目的は内定者からの入社承諾を得る点にあります。そのためには、内定者が入社を決断するためのハードルになっている要素をひとつずつ解きほぐすのが重要です。
まず、求職者は内定を得た段階でも「きちんと仕事をこなせるだろうか」「人間関係を上手に作れるだろうか」など、多くの不安を抱えています。したがって企業は内定者の不安や心配、疑問を解消する必要があります。
また、内定者の入社意欲が十分ではない場合も少なくありません。その場合、志望度を高めるための取り組みが求められます。
内定者の不安解消や志望度の向上といったハードルを除去し、入社を承諾してもらうために代表的な3つの手法を紹介します。
1.オファー面談
内定者と雇用条件をすりあわせ、入社意思を固めてもらうための面談です。
2.メール・電話フォロー
内定者に対し個別に連絡し、相談に乗って不安を除去するなど入社意欲を高めるための手法です。
3.内定者懇親会
内定者と社員、また内定者同士の交流を目的としたイベントを用いる手法です。
内定後の企業の対応は入社意欲に大きく影響します。適切なクロージングを通じて内定者の不安を解消し、志望度を高め入社承諾を獲得しましょう。
新卒と中途の状況の違い
クロージングを行うにあたっては、新卒採用と中途採用で注意すべき点に違いがあります。新卒と中途ではそれぞれ、就職・転職で入社する企業に求める要素が異なるためです。
新卒入社する学生と、中途入社する求職者が何を求めているのか説明します。
内定者懇親会の具体的な企画や事例について知りたい場合には、こちらの記事をご覧ください。
▶内定者懇親会の内容は?具体的な企画や事例を紹介
新卒採用の場合
新卒入社する学生が中途入社する社会人ともっとも大きく異なるのは就業経験がないという点です。そのため、自社に就職してどのようなスキルやキャリアを積めるのか、具体的なイメージを伝えられるかどうかが重要となります。
では、学生は就職にあたってどのような価値観を持っているのでしょうか。就職活動中の学生を対象にした「2023年就活実態調査」によると、全体の7割を超える73.2%が「将来への不安がある」と回答しており、不安の内容として収入やキャリアをあげています。
また、収入とやりがいのどちらを重視するかという設問に対して、やりがいを重視すると答えている学生が56.7%と過半数を占めています。そして、やりがいとは何か、という設問に対してもっとも多かった回答が「自身の成長を実感できること」でした。
学生は、先が不透明な現代においてどのような環境や企業でも通用するスキルや経験の蓄積を通じて自身の成長を実感し、将来への不安を解消したいと考えています。
もちろん、自身の成長以外の点を重視する学生もいるため本人の思考を確認した上で適切にアプローチするのが大切ですが、自社に就職すればどのように成長できるのかという点をクロージングにおけるポイントとすべきです。
引用:Job総研による『2023年 就活実態調査』を実施 6割強が就活中に転職を計画 7割が5年以内に動く世代
新卒採用で学生の納得感を尊重するとともに徹底的に寄り添ってキャリアをサポートし成功している企業の事例もご覧ください。
▶徹底的に寄り添いキャリアをサポート。高い内定承諾率を実現する新卒採用チームの強さ|Best Team of the Year SILVER:Sansan株式会社
Wantedlyでは、若手世代の会社選びの軸について採用アナリストの解説インタビュー記事を紹介しています。こちらの記事をご覧ください。
▶会社選びの軸は「年収」「出世」ではない? 若手世代の本音を聞いてみた
中途採用の場合
新卒入社する学生に就業経験がないのに対して、中途入社する人材は即戦力である点が大きな違いです。
すでに実績のある優秀な人材には他社からも内定が出るため、奪い合いとなるケースも少なくありません。そのため、クロージングにおいては内定者にとって自社がもっとも魅力的な転職先であると伝える必要があります。
では、自社への入社が最適な選択肢であると示すためには、クロージングでどんな点に留意すべきなのでしょうか。まず、内定者が前職を退職した理由(現職の場合は何らかの不満など)をしっかりと把握します。
その上で、自社に入社するにあたっての懸念事項を内定者とともにひとつひとつ、解消していきます。根拠と理由を明示し、アピールポイントを明確にした上で説得力のあるクロージングを行いましょう。
また、内定者はすでに社会経験を積んでいるため、企業を見る目も厳しく採用担当者の対応や社内の雰囲気など細かな点までチェックしています。したがって中途採用の場合はすべてのタッチポイントで自社の魅力を適切に伝えられているか、クロージングの前から注意しておく必要があります。
新卒採用では将来の魅力をどう伝えるかが決め手であるのに対し、中途採用では現在の魅力をどう伝えるかが鍵と考えるのが重要です。
クロージングで押さえるべき3つのポイント
クロージングを成功させるためにはどのような点に留意すればよいのでしょうか。「内定前に候補者の情報を把握する」「意思決定者を想定する」「内定承諾率にとらわれすぎない」の3点から説明します。
内定前に候補者の情報を把握する
採用活動の失敗は内部要因、すなわち企業側から候補者へのアプローチ不足に起因するケースが少なくありません。アプローチ不足は候補者のネガティブ要因を払拭できていないために生じます。
では、どのようにして候補者のネガティブ要因を払拭すればよいのでしょうか。ポイントは事前情報をどれだけ得られているか、にあります。
事前情報無しにネガティブ要因を払拭するのが難しいのは、基本的にそうした要因が「個別事情」によるものであるためです。「個別事情」である個人的な状況にはセンシティブな要素も含まれるので、採用の原理原則として候補者に直接的に聞くのはNGと考えるべきです。
しかし、面接など採用に直接関係する場面ではNGでも、それ以外の場なら「相談」という形で聞き出せる情報は数多くあります。カジュアル面談や面接前後の電話フォロー、会食などはその一例です。
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候補者との間にきちんとした関係性を構築できているのが前提となりますが、クロージングまでの段階で「相談」などの形でネガティブ要因を払拭しておきましょう。候補者に対して効果的にアプローチするためには、採用活動におけるあらゆるタッチポイントを通じて情報を把握しておくのが重要です。
意思決定者を想定する
候補者に対して効果的にアプローチし相思相愛の関係と思っている場合でも、内定を辞退されてしまう場合があります。新卒であれば親など「家族が知らないベンチャー企業への就職に反対している」、中途であれば「実は、結婚を考えていてパートナーから難色を示された」など、「家族ブロック」と呼ばれる候補者の周囲からの意見で内定を辞退されてしまうケースです。
家族ブロックを回避するためには、入社についての決裁者が候補者本人以外に存在するかどうか確認しておきましょう。家族やパートナー、候補者の関係者による話し合いなどが考えられます。
そして、存在する場合にはその決裁者がどこまでを許容範囲としているのかを探っておく必要があります。給与条件をはじめとする待遇については、しっかりとプランを示せれば候補者本人の希望を実現できるかもしれません。
しかし家族ブロックに対しては難しい部分があります。そのため、目の前の候補者だけでなく、その背後にまで想像力を働かせ「意思決定者を想定しておく」のがクロージングを成功させるためのポイントとなります。
内定承諾率にとらわれすぎない
クロージングの成果を内定承諾率の向上に求める企業は少なくありません。
内定承諾率の高さを採用戦略上の売りにしている企業も見られます。一見、非常にいい企業に見えますし、採用戦略が上手く機能しているようにも思えます。
しかし、内定承諾率は「確実に承諾することを条件に内定を出す」「他社との面接を中止させる」など候補者に圧力をかければ操作できてしまう数字です。クロージングについて考えるにあたっては、内定承諾率を重視しすぎないという姿勢を持ちましょう。
採用活動は今後、従来の「フロー型」から「ストック型」への移行が進みます。「ストック型」の採用活動とは、カジュアル面談などソフトな選考の導入やタレントプールの活用に代表される候補者の意向度を高めるための継続接触を取り入れる手法です。
「ストック型」の採用活動では、ある時点で候補者が内定を辞退したからといってその後の関係がなくなってしまうとは考えません。候補者側の事情が変わったり、自社の事業フェーズが変化するなどの要因によって、別のタイミングで再度声をかければすれば入社につながる、という可能性もあるからです。
「ストック型」の採用活動では、候補者にとって最初に思い浮かぶ企業を目指すという考え方が大切です。ある時点の結果を切り取ったに過ぎない内定承諾率にとらわれすぎないという視点を持っておく必要があります。
ストック採用に求められる「ソフトな選考」や「タレントプール」については、こちらの記事もご覧ください。
▶なぜ採用に”ファンづくり”と”カジュアル面談”が必要なのか【採用の新常識】
無理なクロージングをしない理想の採用方法
内定者から強引に入社承諾を得るなど、無理なクロージングを避けるためのポイントについて「候補者視点のクロージングをする」「潜在層へのアプローチで競争を避ける」の2点から説明します。
候補者視点のクロージングをする
採用マーケティングの考え方が普及するにつれて、候補者体験(Candidate Experience)の重要性への理解も広がっています。企業は候補者を選考しつつ候補者からも選考されているという意識を持ち、採用活動における「候補者体験」を改善しようという考え方です。
そのためには、採用活動を常に候補者視点で捉えるという観点が求められます。
まず、候補者はイメージを先行させて選考に臨みがちであるため、ミスマッチにつながる可能性があります。ギャップを防止するために、企業には事実に即した内容を語るよう心がける姿勢が必要です。
また、候補者がそれぞれのタッチポイントでイメージに一貫性を持てるよう、採用活動全体の流れを設計しておきましょう。
さらに、社内の基準を整えておくのも重要です。面接官やカジュアル面談の担当者、採用担当者とのコミュニケーションは候補者体験に大きく影響します。接し方やコミュニケーションの構造・技術など「伝え方の基準」と、面接官による「評価の基準」の二軸について統一しておきます。
「事実に即した内容を語る」「イメージに一貫性を持たせる」「社内の基準を整える」の3点を心がけ、企業側の押し売りなど独りよがりなクロージングとならないよう注意しましょう。候補者視点の選考フローについてはこちらの記事でも詳しく説明しています。あわせてご覧ください。
▶【採用の新常識】内定辞退を回避する、候補者視点の選考フローとは
潜在層へのアプローチで競争を避ける
「ストック型」の採用活動では、自社に応募してくれた候補者だけでなく潜在層へのアプローチも重視します。タレントプールなど自社独自のデータベースをもとにしたアプローチによって、採用市場にまだ現れていない人材にアクセスするのです。
転職意欲が高くない段階から候補者とつながれるため、他の企業が気づく前にアプローチできるという利点があります。
従来の「フロー型」採用は転職顕在層へのアプローチであるため、候補者はすでに他社との比較をはじめている状態でした。候補者側は、カタログに並んだスペック一覧を見るように待遇や条件の比較を前提に転職活動を行うため、もっともよい条件を提示する企業を選ぶというマインドになりがちです。
一方、転職潜在層である段階から候補者にアプローチできれば、本選考の前に志望度を高めておけます。一社だけに応募して転職の意思決定をする候補者はほとんどいませんが、少なくとも自社を軸にして転職判断をする形となるため、優秀な人材を確保する上での大きなアドバンテージとなります。
転職潜在層へのアプローチで競争を避けるという考え方を取り入れれば、他社より有利な状態でクロージングを行えるのです。
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潜在層へのアプローチならWantedly
Wantedlyなら転職潜在層へのアプローチも可能です。各企業に用意されているトップページでは40以上の選択肢の中から自社にマッチしている「価値観」を最大で6つ選択し、それぞれについて詳細に語れます。
また、事業紹介である「私たちについて」では「なにをやっているのか」「なぜやるのか」「どうやっているのか」のそれぞれについて、事業の「なぜ」を中心に解説できるようになっています。
そしてブログ機能の「ストーリー」なら、自社独自の魅力を多彩なビジュアルとともに自由に伝えられます。メンバーの個性やカルチャー、制度など企業の素顔を伝えられるため、転職潜在層の共感を醸成するために欠かせません。
もちろん、転職潜在層が企業とフラットに話せる場であるカジュアル面談にも対応しています。転職潜在層は共感を抱いたり興味を持った企業に対して「話を聞きに行きたい」ボタンを通じて、カジュアル面談を申し込めます。
カジュアル面談はビジョンや価値観、抱えている課題について飾らずに共有できる場です。
Wantedlyのサービス概要や料金については、以下の資料をご覧ください。
まとめ
採用活動におけるクロージングの目的や押さえておくべき3つのポイント、そして無理なクロージングを避ける採用手法について解説しました。クロージングの効果を高めるためには、新卒採用と中途採用の違いを理解するとともに候補者視点や潜在層へのアプローチなど採用マーケティングの考え方を導入するのも重要です。
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書籍:すごい採用